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2017年 04月 26日

侵害を予期した上で対抗行為に及んだ場合における刑法36条の急迫性の判断方法

事件番号  平成28(あ)307
事件名  殺人,器物損壊被告事件
裁判年月日  平成29年4月26日
法廷名  最高裁判所第二小法廷
裁判種別  決定
結果  棄却
判例集等巻・号・頁  
原審裁判所名  大阪高等裁判所
原審事件番号  平成27(う)1120
原審裁判年月日  平成28年2月10日
判示事項  侵害を予期した上で対抗行為に及んだ場合における刑法36条の急迫性の判断方法
裁判要旨  行為者が侵害を予期した上で対抗行為に及んだ場合,侵害の急迫性の要件については,対抗行為に先行する事情を含めた行為全般の状況に照らして検討すべきであり,事案に応じ,行為者と相手方との従前の関係,予期された侵害の内容,侵害の予期の程度,侵害回避の容易性,侵害場所に出向く必要性,侵害場所にとどまる相当性,対抗行為の準備の状況(特に,凶器の準備の有無や準備した凶器の性状等),実際の侵害行為の内容と予期された侵害との異同,行為者が侵害に臨んだ状況及びその際の意思内容等を考慮し,緊急状況の下で公的機関による法的保護を求めることが期待できないときに私人による対抗行為を許容した刑法36条の趣旨に照らし許容されるものとはいえない場合には,侵害の急迫性の要件を充たさないものというべきである。
参照法条  刑法36条

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# by strafrecht_bt | 2017-04-26 08:26 | 刑法Ⅰ(総論)
2017年 04月 18日

刑法1(2)罪刑法定主義

罪刑法定主義

第1章 刑法の基礎理論
第2節 罪刑法定主義(山口8以下)
【授業内容】
2.類推解釈の禁止(山口11以下):刑法で類推解釈が許されないことの趣旨を理解し、類推解釈と拡張解釈の限界について、具体的事例に即して説明することができる。
【判例】①電気窃盗事件(判例刑法10)ガソリンカー事件(判例刑法11)、
②明文なき未遂犯処罰(最判平成8年2月8日刑集50巻2号221頁(鳥獣捕獲))、
③明文なき過失犯処罰(判例刑法222、223、過失の項目でも後述)
(問)類推解釈と拡張解釈の「論理の違い」(山口11)を説明しなさい。
【文献】増田(可能な語義)
3.遡及処罰の禁止(山口12以下:事後法の禁止)
*公訴時効の廃止(山口13)
4.明確性の原則(山口14以下):罰則が広すぎるため、又は、あいまい不明確であるために違憲無効とされる理由とその要件
(評価)「合憲性に関する判例の具体的な基準はそれほど厳格だとはいえない」(山口16)
*実体的デュープロセスの理論
5.内容の適正さ(山口16以下)
(1)無害な行為を処罰する罰則
(2)過度に広範な処罰規定
6. 罪刑の均衡(山口18)
【判例】尊属殺違憲判決(最判昭和48年4月4日刑集27巻3号265頁
→2016年度/2015年度の講義。




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# by strafrecht_bt | 2017-04-18 09:00 | 刑法Ⅰ(総論)
2017年 04月 11日

刑法1(1)刑法の意義・刑罰論

刑法1【日程】①2017.04.11(火)1時限:刑法の意義・刑罰論
刑法1(1)刑法の意義・刑罰論
【教科書】山口厚『刑法』(第3版・2015年)
【参考文献】(最新のもの)松宮孝明『刑法総論講義』(第5版・2017年);松原芳博『刑法総論』(第2版・2017年)
第199条 (殺人) 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
① 刑法の意義
・実質的意義の刑法:「いかなる行為が犯罪であり、それに対していかなる刑罰が科されるかを規定した法」(山口3頁)
・形式的意義の刑法(刑法典):刑法(明治40年4月24日法律第45号)
 ・刑法総則(総論):第1篇「総則」
 ・刑法各則(各論):第2編「罪」
 特別法上の刑罰法規:「特別刑法」(広義)とは
*「特別法違反の点を除く。」の意味
* 刑法8条:総則の規定は、特別刑法にも適用される
② 刑罰論
・応報刑論(松原3-5頁:被害応報・秩序応報・責任応報)
*予防刑論(目的刑論)
・一般予防論
 ・消極的一般予防論(抑止刑論)
 ・積極的一般予防論(規範的予防論)(松原6-8頁:国民の規範意識・規範への信頼確保・規範妥当性確証)
・特別予防論(再犯防止)(松原8-9頁:消極的特別予防[隔離・排除・特別抑止]・積極的特別予防[改善・教育])
③ 刑法理論との関係
・応報刑論  (後期)旧派 意思自由論
・一般予防論 (前期)旧派 意思自由論(合理的判断能力)
・特別予防論 新派(近代学派) 決定論
*短答出題例:2014〔第1問〕(配点:2)刑罰論に関する次の1から5までの各記述のうち、正しいものはどれか。(解答欄は、[№1])
1.応報刑論は、産業革命に伴う工業化・都市化によって累犯が増加したことを契機として、支持者が増えた。
2.応報刑論に対しては、重大な犯罪を犯した者であっても、再犯可能性がなければ刑罰を科すことができなくなるとの批判がある。
3.応報刑論に対しては、論者が前提としている人間の意思の自由が科学的に証明されていないとの批判がある。
4.応報刑論に対しては、犯罪を防止するために罪刑の均衡を失した重罰化を招くおそれがあるとの批判がある。
5.応報刑論に対しては、刑罰と保安処分の区別がなくなるとの批判がある。
④ 刑罰の種類(刑法9条以下、山口196-9頁)
・生命刑:死刑
・自由刑:懲役・禁錮・拘留
*懲役・禁錮の一本化(改正案)→問題点(松宮・ⅱ頁[はしがき]):「自由刑純化論」(松宮344頁)ではなく「拡大された懲役刑一本化」
・財産刑:罰金・科料:没収
*主刑と付加刑
*代替(換刑)処分:労役場留置/追徴→刑罰でないことに注意(松宮346頁参照)
*執行猶予(25条以下)/一部執行猶予(27条の2以下)/仮釈放(28条)/仮出場(30条)
*一部執行猶予の問題点(松宮352−3頁):「全部実刑と全部執行猶予の中間的制度」か?
出題例:2013〔第9問〕(配点:4) :刑罰に関する次のアからオまでの各記述を検討し、正しい場合には1を、誤っている場合には2 を選びなさい。(解答欄は、アからオの順に[No14]から[No18])
ア.自由刑には、懲役、禁錮及び労役場留置が含まれる。[No14]
イ.財産刑には、罰金、没収及び追徴が含まれる。[No15]
ウ.有期の懲役又は禁錮は、1月以上15年以下であり、これを加重する場合においては30年にまで上げることができる。[No16]
エ.有期の懲役又は禁錮を減軽する場合においては1月未満に下げることができる。[No17]
オ.懲役は、受刑者を刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる刑罰であり、禁錮は、受刑者を刑事施設に拘置する刑罰である。[No18]
【次回】②2017.04.18(火)1時限:罪刑法定主義・犯罪の意義


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# by strafrecht_bt | 2017-04-11 09:00 | 刑法Ⅰ(総論)
2017年 04月 09日

最判平成11・10・26民集53巻7号1313頁 

平成11年10月26日
法廷名  最高裁判所第三小法廷
裁判種別  判決
民集53巻7号1313頁
[判示事項]  名誉毀損の行為者が刑事第一審の判決を資料として事実を適示した場合と右事実を真実と信ずるについての相当の理由
[裁判要旨]  名誉毀損の行為者において刑事第一審の判決を資料としてその認定事実と同一性のある事実を真実と信じて摘示した場合には、特段の事情がない限り、摘示した事実を真実と信ずるについて相当の理由がある。
参照法条  民法709条,民法710条,刑法230条の2第1項

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# by strafrecht_bt | 2017-04-09 13:32 | 刑法演習
2017年 04月 08日

最判平成9年9月9日民集51巻8号3804頁

最判平成9年9月9日民集51巻8号3804頁
【判示事項】  
一 特定の事実を基礎とする意見ないし論評の表明による名誉毀損において行為者が右事実を真実と信ずるにつき相当の理由がある場合の不法行為の成否
二 名誉毀損の成否が問題となっている新聞記事における事実の摘示と意見ないし論評の表明との区別
三 特定の者について新聞報道等により犯罪の嫌疑の存在が広く知れ渡っていたこととその者が当該犯罪を行ったと公表した者において右のように信ずるについての相当の理由
【裁判要旨】
 一 特定の事実を基礎とする意見ないし論評の表明による名誉毀損について、その行為が公共の利害に関する事実に係り、その目的が専ら公益を図ることにあって、表明に係る内容が人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない場合に、行為者において右意見等の前提としている事実の重要な部分を真実と信ずるにつき相当の理由があるときは、その故意又は過失は否定される。
二 名誉毀損の成否が問題となっている新聞記事が、意見ないし論評の表明に当たるかのような語を用いている場合にも、一般の読者の普通の注意と読み方とを基準に、前後の文脈や記事の公表当時に読者が有していた知識ないし経験等を考慮すると、証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を主張するものと理解されるときは、右記事は、右事項についての事実の摘示を含むものというべきである。
三 特定の者が犯罪を犯したとの嫌疑が新聞等により繰り返し報道されていたため社会的に広く知れ渡っていたとしても、このことから、直ちに、右嫌疑に係る犯罪の事実が実際に存在したと公表した者において、右事実を真実であると信ずるにつき相当の理由があったということはできない。
【参照法条】  民法709条,民法710条,刑法230条の2第1項


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# by strafrecht_bt | 2017-04-08 14:45 | 刑法演習
2017年 04月 04日

判決文と答案

判決

「主文」  被告人を懲役4年6月に処する。

未決勾留日数のうち120日をその刑に算入する。

「理由」

(罪となるべき事実)

被告人は,Aと共謀の上,

第1〔平成29年1月18日付け起訴状記載の公訴事実第1〕

平成27年6月21日頃,愛知県田原市a町bc番地B駐車場において,同所に駐車中のC所有の普通乗用自動車1台(時価約2万円相当)を「窃取」した。

第2〔平成28年11月2日付け起訴状記載の公訴事実〕

平成27年12月31日頃,愛知県新城市d字ef番g所在の廃屋において,D(当時71歳)の死体を同所トイレ便槽内に運び入れ,同死体に木片等をかぶせて覆い隠し,もって死体を「遺棄」した。

第3〔平成28年12月21日付け起訴状記載の公訴事実〕

別表記載のとおり,平成28年1月5日午後零時2分頃から同年3月8日午前10時31分頃までの間,前後9回にわたり,愛知県豊橋市h町字ij番地kEF店ほか6か所において,各所に設置された現金自動預払機に,不正に入手したG信用金庫H支店発行のD名義のキャッシュカード1枚を挿入して同機を作動させ,株式会社I銀行お客さまサービス部長Jほか5名管理の現金合計17万6000円を引き出して「窃取」した。

第4〔平成29年1月18日付け起訴状記載の公訴事実第2〕

平成28年3月10日頃,愛知県豊川市l町mn番地o株式会社K駐車場において,同所に駐車中のL管理の普通貨物自動車1台(時価約60万円相当)を「窃取」した。

第5〔平成28年9月9日付け起訴状記載の公訴事実第1〕

平成28年7月20日午後5時38分頃,愛知県田原市p町qr番地Mにおいて,同所に設置されたさい銭箱等からN会会長O管理の現金約200円を窃取した。

第6〔平成28年9月30日付け起訴状記載の公訴事実〕

平成28年7月23日頃,愛知県田原市s町tu番地v株式会社Pクラブハウス従業員通用口前付近において,同所に駐車中の同社取締役社長Q管理の普通貨物自動車1台(時価約20万円相当)を「窃取」した。

第7〔平成28年9月9日付け起訴状記載の公訴事実第2〕

平成28年7月30日午後8時59分頃,愛知県田原市p町qr番地Mにおいて,同所に設置されたさい銭箱を手で持ち上げてひっくり返すなどし,同さい銭箱内から前記O管理の現金を「窃取」しようとしたが,現金が入っていなかったため,その目的を遂げなかった。

(法令の適用)

1 罰条

(1) 判示第1,第4ないし第6の各行為

いずれも刑法235条,60条

(2) 判示第2の行為

刑法190条,60条

(3) 判示第3の各行為

いずれも刑法235条,60条

(4) 判示第7の行為

刑法243条,235条,60条

2 刑種の選択

判示第1,第3ないし第7の各行為につき,いずれも懲役刑を選択

3 併合罪

刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の最も重い判示第4の罪の刑に法定の加重)

4 未決勾留日数の算入

刑法21条
5 訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書

(量刑の理由)

1 事案の概要【以下略】



答案例
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# by strafrecht_bt | 2017-04-04 18:10 | 刑法演習
2017年 03月 27日

科目別事前ガイダンス:刑法演習(2)

【問題】以下の事例に基づき、甲の罪責について、具体的な事実を摘示しつつ論じなさい(特別法違反の点を除く。)。
(問題文略ーテキスト参照)
【解答例】第1 ベンチに置かれたAの財布を持ち去った行為
 【結論】甲には、以下のように、占有離脱物横領罪と窃盗未遂罪が成立する(罪数関係は後述)。
 1.客観的構成要件該当性:窃盗罪(235条)と占有離脱物横領罪(254条)との区別-占有の有無
(1)甲は、客観的にはA所有の「財物」である財布を領得しているが、Aになお占有が残っていたがどうかにより窃盗罪(235条)と占有離脱物横領罪(254条)の区別が問題となる。
(2)占有の有無の判断基準  
 ア 窃盗罪に「占有」とは財物に対する事実上の支配をいい、物の支配態様は多様であることから、占有の事実と占有の意思に照らして、社会通念に従って決するほかないが、具体的には、①財物自体の特性、②場所的状況、③時間的場所的間隔等から考えることになり、占有の意思は補充的に考慮する。特に、③については、置き忘れに気付いた時点や、取りに戻った時点ではなく、領得行為時が基準となる
 イ 本件では、②財布という遺失しやすい小物であること、②スーパーマーケット内のベンチという誰でも立ち入れる場所であること、③領得行為時との時間的間隔が2分程度しかなく、極めて近接した時点で領得行為がなされているが、場所的にみると、この時点ではすでにAは6階のベンチから地下1階まで移動しており、置き忘れに気づきさえすれば直ちに取り戻すことが可能な状態にあったとは言えないことから見て、Aの占有は否定される。
(2)占有の移転
置き忘れがあった場合でも、なお当該場所の管理権や場所的状況に照らして占有が他者に認められることがあり、Bの管理者やDに占有の移転があったどうかが問題となる。
ア スーパーマーケットBの現場管理者の占有
この場合、B店内は、誰でも立入れる場所であり、遺失物に対する特別の管理措置が取られていたということをうかがわせる事情もないので、Bへの占有移転は否定される。
イ D子の占有
 Dは、現場で見ていただけで、一度も財布の占有を確保しておらず、排他的支配を及ぼしたとは言えない以上、Dへの占有移転も否定される。
(3)従って、甲の行為は、客観的には窃盗罪ではなく、占有離脱物横領罪の構成要件に該当する。
2.主観的構成要件該当性:抽象的事実の錯誤
(1)窃盗の故意
 甲は本件財布がCのものと誤信しているが、そうであればCの占有が及んでいる物を取得する認識があるため、窃盗罪の故意が認められる
(2)抽象的事実の錯誤
 ア 主観的には窃盗罪の認識で、客観的に占有離脱物横領罪の結果を生ぜしめた場合、客観面に符合する故意を認めることができるのかが問題になる。実質的な符合は、両罪の①行為態様及び②保護法益の類似性を考慮して判断される。
 イ 両罪は、①行為態様では、他者に財物を不法に取得する点で共通し、②保護法益では、占有と所有権で異なるとも思えるが、窃盗罪が占有を保護しているのは、究極的には本権を保護するためであるから、共通性を肯定でき、軽い占有離脱物横領の範囲で実質的な重なり合いを認めることができる。
(3)主観面に対応する犯罪(窃盗未遂罪)の成否-実行の着手
 ア 法益侵害の危険性の有無で判断するが、その判断は行為時に一般人が認識しえた事情+行為者が認識していた客観的事情を基礎に、一般人の観点から行う(具体的危険説)。
 イ 本件のような場合には、D子のようにずっと観察していた場合はともかく、その場に居合わせた一般人からは、Cに占有があるかのごとく見えるので、具体的危険性が肯定され、窃盗未遂罪も成立する。
第2 A名義のクレジットカードを呈示して、売上伝票にAと署名し商品を購入した行為(他人名義のクレジッドカードの不正使用)
【結論】甲には、以下のように、詐欺罪(246条1項)並びに私文書偽造罪(159条1項)及び同行使罪(161条)が成立する(罪数関係は後述)。
1.詐欺罪の成否
 甲は、あたかもAであるかのように偽って(欺罔行為)、クレジットカード取引において名義人以外の者との取引を禁じられている加盟店を錯誤に陥れ、当該錯誤に基づいて財物を交付している点で、個別財産の損失があるほか、規約に反した取引を行えば立替払いを受けられないリスクがあり、この点で、真正名義人と取引を行うという被害者の達成できなかった目的は経済的に評価して実質的損害を肯定することができる。したがって、加盟店に対する、商品を客体とした、1項詐欺罪が成立する。
2.売上伝票への記載・交付
甲は、「行使の目的で」、他人であるAの署名を使用して「権利、義務若しくは事実証明に関する文書」である売上伝票を偽造(作成名義を冒用)し、それを交付し「行使」しているのので、私文書偽造罪及び同行使罪が成立する。
第3 罪数関係
【結論】甲には、以下のように、①窃盗未遂罪、②私文書偽造罪、③同行使罪及び④詐欺罪が成立し、②③④は牽連犯(54条1項後段)となり、それらと①は併合罪(45条)となる。
1 上記第1の行為については、①占有離脱物横領罪と②窃盗未遂罪が成立するが、①はより重い②に吸収される(包括一罪)。
2 上記第2の行為については、①私文書偽造罪と②同行使罪が牽連犯となり、これらが③詐欺罪と牽連犯となる。


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# by strafrecht_bt | 2017-03-27 19:15 | 刑法演習
2017年 03月 27日

参考人として警察官に対して犯人との間の口裏合わせに基づいた虚偽の供述をする行為が刑法(平成28年法律第54号による改正前のもの)103条にいう「隠避させた」に当たるとされた事例

平成27(あ)1266
事件名  犯人隠避,証拠隠滅被告事件
裁判年月日  平成29年3月27日
法廷名  最高裁判所第二小法廷
裁判種別  決定
結果  棄却
判例集等巻・号・頁  
原審裁判所名  東京高等裁判所
原審事件番号  平成26(う)1409
原審裁判年月日  平成27年7月8日
判示事項  参考人として警察官に対して犯人との間の口裏合わせに基づいた虚偽の供述をする行為が刑法(平成28年法律第54号による改正前のもの)103条にいう「隠避させた」に当たるとされた事例
裁判要旨  道路交通法違反,自動車運転過失致死の各罪の犯人がAであると知りながら,Aとの間で,事故車両が盗まれたことにする旨口裏合わせをした上,参考人として警察官に対して前記口裏合わせに基づいた虚偽の供述をした本件行為は,刑法(平成28年法律第54号による改正前のもの)103条にいう「隠避させた」に当たる。
(補足意見がある。)
参照法条  刑法(平成28年法律第54号による改正前のもの)103条


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# by strafrecht_bt | 2017-03-27 08:21 | 刑法Ⅱ(各論)
2017年 03月 23日

科目別事前ガイダンス:刑法演習(1)

【第1問】以下の事例に基づき甲の罪責について、具体的な事実を摘示しつつ論じなさい(特別法違反の点を除く。但し「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」5条[過失運転致死傷]の罪は含む。)。(70分)
(問題文略ーテキスト参照)
【解答例】第1 Aに対する罪責
1 Aの顔面を手拳で軽く1回殴打した行為
【結論】甲は、以下に述べるように、暴行罪(刑法[以下略]208条)の構成要件に該当するが、正当防衛(36条1項)が成立し、違法性が阻却されるので処罰されない。
(1)暴行罪の構成要件該当性
 上記行為は、Aの身体に向けられた有形力の行使である「暴行」にあたり、暴行罪の構成要件に該当する。
(2)正当防衛の成否:特に「やむを得ずにした行為」の要件
 しかし、それはAが甲の車の窓から手を入れてきて、甲の胸ぐらを掴もうとした暴行(「急迫不正の侵害」)に対して、「自己を防衛するため」の行為であり、酔っ払った36歳の男性であるAの執拗な攻撃を避けるためには、顔面を手拳で軽く1回殴打した程度であれば、防衛手段として必要最小限であるといえるので、「やむを得ずにした」ものと評価できよう。
2 ボンネット上のAを振り落とし、加療2週間を要する傷害を負わせた行為
【結論】甲には、以下に述べるように、殺人未遂罪(199条、203条)が成立するが、過剰防衛(36条2項)となり任意的に減免されうる。
(1)殺人罪の構成要件該当性
 ア.殺人罪の実行行為性は、生命侵害の現実的危険性がある場合に認められるが、高速度で走行する車から転落すれば相当の衝撃を受け、頭部などの急所を強打すれば死亡する危険性が高いことや、仮に転落の衝撃により死亡しなくとも、車道上に転落すれば他の車に轢かれ、なお死亡する危険性があることに照らせば、肯定できる。
 イ.故意(殺意)
 甲は当然上記①の事実を認識していたと考えられるにもかかわらず、Aを振り落とすべく、時速70キロの高速度で、急ブレーキや蛇行運転を繰り返す等、Aの生命に特段配慮した走行を行っていたとはいえないことからすれば、死んでも構わないと考えていたものと言え、未必的な故意を認めることができる。
(2)正当防衛・過剰防衛の成否
 ア.Aは上記1における行為後もなお甲に対する攻撃意思を持ってボンネットに乗った他者であり、「急迫不正の侵害」はなお継続していると言え、問題文からは甲が積極的加害意思と持っているという事情はうかがわれれず、振り落とし行為はもっぱら「防衛のため」に行われたものと言える。
 イ.なお、この侵害は、甲の上記1の行為による自招侵害ではないかが問題となるが、1で述べたようにその行為は正当防衛によるものなので、全体として一連の違法行為となるわけではなく、正当防衛権はそれによって制限されない。
 ウ.しかし、この行為は、高速度で振り落とさずとも、代替手段として、低速度での運転が可能であり、車道上にBが転落することがないよう,急ブレーキや蛇行運転を控え,より安全な場所に走行して他人に助けを求めるなど,Bの生命身体等の安全にいささかでも配慮した行動が可能であったと認められることからみて、防衛手段としての最小限度性を欠き「やむを得ずにした行為」の程度を超えたものとして、「過剰防衛」となり、違法性は阻却されず、殺人未遂罪が成立するが、過剰防衛による責任減少が認められ、任意的減免が可能となる。

第2 Bに対する罪責:自己の乗車する車を発進させ、Bを転倒させ、打撲傷を与えた行為
【結論】Bに対しては、以下に述べるように、傷害罪(204条)の構成要件に該当するが、正当防衛(36条1項)が成立し、違法性が阻却されるので処罰されない。
1 傷害罪(204条)の成否
 (1)暴行罪(208条)の成否
 まず上記行為は、Bの身体に直接接触はしていないが、身体的接触が無い場合でも、傷害の危険性のある有形力の行使であり、その認識・認容は認められるので、故意の「暴行」に当たる。
 (2)傷害結果の発生
 傷害罪は、暴行罪の結果的加重犯を含むので、上記暴行行為により、Bに生じた打撲傷という「健康状態の不利益な変更」である「傷害」の結果が生じているので、甲がたとえこの結果を認識していなくとも、傷害罪が成立する。
 (3)正当防衛の成否
 しかし、BはAと共同して甲に対する急迫不正の侵害を行なおうとして甲に向かってきていると考えられるので、上記行為は自己を「防衛するため」に「やむを得ない行為」といえ、正当防衛が成立する。



【解説】
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# by strafrecht_bt | 2017-03-23 21:12 | 刑法演習
2017年 03月 14日

イスタンブール条約

第36条-性暴力(強姦を含む)
1.締約国は、故意に行なわれる次の行為が犯罪とされることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。
a. 同意に基づかず、他の者の身体に対し、いずれかの身体部位または物をもって膣、肛門または口への性的性質の挿入行為を行なうこと。
b. 人に対し、同意に基づかない他の性的性質の行為を行なうこと。
c. 他の者をして、同意に基づかない性的性質の行為を第三者と行なわせること。
2.同意は、自由意思の結果として、自発的に与えられなければならない。当該自由意思は、関連する状況の文脈において評価される。
3.締約国は、1の規定が、国内法で認められた従前のまたは現在の配偶者またはパートナーに対して行なわれた行為にも適用されることを確保するため、必要な立法上その他の措置をとる。

関連論文:今井雅子「欧州評議会『イスタンブール条約』 (特集 女性差別撤廃委員会とジェンダーに基づく暴力)」国際女性 : 年報 (29), 84-88, 2015-12
Das reformierte Sexualstrafrecht –Ein Überblick über die vorgenommenen Änderungen
女性への暴力撲滅に尽力するEU

女性に対する暴力は、伝統、宗教、政治的状況以外に、男女間での経済力の差、権利の違いを理由に起きる。EU では、ドメスティックバイオレンス(DV)、性的暴力、性的嫌がらせのほか、強制結婚、人身売買、性器切除、名誉関連の暴力も女性に対する暴力と定義付けている。被害を受けるのは当事者だけではない、その家族、友人、近親者、ひいては社会全体の発展を蝕むがゆえに、EUは女性に対する暴力撲滅に尽力してきた。

© European Union, 1995-2016

2012年のEU指令では、性差に基づいた暴力、性的暴力、DV被害者の擁護と支援、被害者の最低限の権利を定めている。2014年に発効した欧州評議会の条約(イスタンブール条約)は、女性に対する暴力およびDVの予防と撲滅に関する協定で、女性に対する精神的暴力、ハラスメント、身体的暴力、性的暴力、性的嫌がらせに対する法的拘束力をもち、予防、被害者の擁護と加害者の告訴に関する最低限の基準を定めたものだ。また、2015年1月11日に発効したEU加盟国内における暴力の被害者保護では、EU加盟国内では、暴力の被害者はどこの国に移動しても同じレベルの庇護を受けることができるようになった。

2014年、EU基本権機関(European Union Agency for Fundamental Rights、FRA)が4万2,000人の女性を対象としたアンケートの調査結果「Violence against women: an EU-wide survey」によると、15歳以上の女性のうち10人に1人は性的暴力、20人に1人はレイプの被害を受けたことがある。また5人に1人は身体的あるいは性的暴力を現在のパートナー、あるいは過去のパートナーから受けたことがあり、10人に1人は15歳以下のときに幼児愛(ペドフィリー)の被害に遭っている。しかし、現在のパートナーによる暴力を警察に届け出るのは、被害者のわずか14%。他人から受けた暴力を届け出るのも13%に留まっている。

このように告訴する女性が少なく正確な統計をとることができないことが、女性に対する暴力の特徴の一つであるが、同時に、統計結果の短絡的な理解にも注意すべきである。たとえば、フィンランド、スウェーデン、デンマークでの女性に対する暴力件数は統計上多いが、男女平等が進んでいるがゆえに被害届けを出すことをためらわない女性の率が比較的多いことも考慮に入れるべきであろう。

また、被害者が身を守るための司法システムに関する情報が市民の間に行き渡っていないことも、女性に対する暴力の特徴のひとつである。そのため、欧州委員会は「権利、平等、市民権2014年—2020年」というプログラムを立ち上げ、4億3,900万ユーロを拠出し、女性と女子に対する暴力に対する市民の意識を高めるためのキャンペーン、性器切除や名誉犯罪、強制結婚に対する予防運動をしている。



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# by strafrecht_bt | 2017-03-14 15:41 | 刑法Ⅱ(各論)