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2017年 07月 18日

予備試験論文問題(2017・平29)

[刑 法]
以下の事例に基づき,甲及び乙の罪責について論じなさい(特別法違反の点を除く。)。
1 甲(40歳,男性)は,公務員ではない医師であり,A私立大学附属病院(以下「A病院」と いう。)の内科部長を務めていたところ,V(35歳,女性)と交際していた。Vの心臓には特 異な疾患があり,そのことについて,甲とVは知っていたが,通常の診察では判明し得ないもの であった。
2 甲は,Vの浪費癖に嫌気がさし,某年8月上旬頃から,Vに別れ話を持ち掛けていたが,Vか ら頑なに拒否されたため,Vを殺害するしかないと考えた。甲は,Vがワイン好きで,気に入っ たワインであれば,2時間から3時間でワイン1本(750ミリリットルの瓶入り)を一人で飲 み切ることを知っていたことから,劇薬を混入したワインをVに飲ませてVを殺害しようと考え た。
甲は,同月22日,Vが飲みたがっていた高級ワイン1本(750ミリリットルの瓶入り)を 購入し,同月23日,甲の自宅において,同ワインの入った瓶に劇薬Xを注入し,同瓶を梱包し た上,自宅近くのコンビニエンスストアからVが一人で住むV宅宛てに宅配便で送った。劇薬X の致死量(以下「致死量」とは,それ以上の量を体内に摂取すると,人の生命に危険を及ぼす量 をいう。)は10ミリリットルであるが,甲は,劇薬Xの致死量を4ミリリットルと勘違いして いたところ,Vを確実に殺害するため,8ミリリットルの劇薬Xを用意して同瓶に注入した。そ のため,甲がV宅宛てに送ったワインに含まれていた劇薬Xの量は致死量に達していなかったが, 心臓に特異な疾患があるVが,その全量を数時間以内で摂取した場合,死亡する危険があった。 なお,劇薬Xは,体内に摂取してから半日後に効果が現れ,ワインに混入してもワインの味や臭 いに変化を生じさせないものであった。
同月25日,宅配業者が同瓶を持ってV宅前まで行ったが,V宅が留守であったため,V宅の 郵便受けに不在連絡票を残して同瓶を持ち帰ったところ,Vは,同連絡票に気付かず,同瓶を受 け取ることはなかった。
3 同月26日午後1時,Vが熱中症の症状を訴えてA病院を訪れた。公務員ではない医師であり, A病院の内科に勤務する乙(30歳,男性)は,Vを診察し,熱中症と診断した。乙からVの治 療方針について相談を受けた甲は,Vが生きていることを知り,Vに劇薬Yを注射してVを殺害 しようと考えた。甲は,劇薬Yの致死量が6ミリリットルであること,Vの心臓には特異な疾患 があるため,Vに致死量の半分に相当する3ミリリットルの劇薬Yを注射すれば,Vが死亡する 危険があることを知っていたが,Vを確実に殺害するため,6ミリリットルの劇薬YをVに注射 しようと考えた。そして,甲は,乙のA病院への就職を世話したことがあり,乙が甲に恩義を感 じていることを知っていたことから,乙であれば,甲の指示に忠実に従うと思い,乙に対し,劇 薬Yを熱中症の治療に効果のあるB薬と偽って渡し,Vに注射させようと考えた。
甲は,同日午後1時30分,乙に対し,「VにB薬を6ミリリットル注射してください。私は これから出掛けるので,後は任せます。」と指示し,6ミリリットルの劇薬Yを入れた容器を渡 した。乙は,甲に「分かりました。」と答えた。乙は,甲が出掛けた後,甲から渡された容器を 見て,同容器に薬剤名の記載がないことに気付いたが,甲の指示に従い,同容器の中身を確認せ ずにVに注射することにした。
乙は,同日午後1時40分,A病院において,甲から渡された容器内の劇薬YをVの左腕に注 射したが,Vが痛がったため,3ミリリットルを注射したところで注射をやめた。乙がVに注射 した劇薬Yの量は,それだけでは致死量に達していなかったが,Vは,心臓に特異な疾患があっ たため,劇薬Yの影響により心臓発作を起こし,同日午後1時45分,急性心不全により死亡し
-2-
た。乙は,Vの心臓に特異な疾患があることを知らず,内科部長である甲の指示に従って熱中症 の治療に効果のあるB薬と信じて注射したものの,甲から渡された容器に薬剤名の記載がないこ とに気付いたにもかかわらず,その中身を確認しないままVに劇薬Yを注射した点において,V の死の結果について刑事上の過失があった。
4 乙は,A病院において,Vの死亡を確認し,その後の検査の結果,Vに劇薬Yを注射したこと が原因でVが心臓発作を起こして急性心不全により死亡したことが分かったことから,Vの死亡 について,Vに対する劇薬Yの注射を乙に指示した甲にまで刑事責任の追及がなされると考えた。 乙は,A病院への就職の際,甲の世話になっていたことから,Vに注射した自分はともかく,甲 には刑事責任が及ばないようにしたいと思い,専ら甲のために,Vの親族らがVの死亡届に添付 してC市役所に提出する必要があるVの死亡診断書に虚偽の死因を記載しようと考えた。
乙は,同月27日午後1時,A病院において,死亡診断書用紙に,Vが熱中症に基づく多臓器 不全により死亡した旨の虚偽の死因を記載し,乙の署名押印をしてVの死亡診断書を作成し,同 日,同死亡診断書をVの母親Dに渡した。Dは,同月28日,同死亡診断書記載の死因が虚偽で あることを知らずに,同死亡診断書をVの死亡届に添付してC市役所に提出した。


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# by strafrecht_bt | 2017-07-18 23:30 | 司法試験予備試験
2017年 07月 04日

刑法1(13)

2017.07.04(火)1時限(13):共犯の従属性:行為共同説と犯罪共同説
【復習問題】 2017〔第19問〕(配点:2)学生A,B及びCは,次の【事例】における甲の罪責について,後記【会話】のとおり検討している。【会話】中の①から⑤までの( )内から適切な語句を選んだ場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は, [№34])
【事例】甲は,乙がVに対して暴行を加えていたところに通り掛かり,乙との間で共謀を遂げた上,乙と一緒にVに対して暴行を加えた。Vは,甲の共謀加担前後にわたる一連の暴行を加えられた際に1個の傷害を負ったが,Vの傷害が,甲の共謀加担前の乙の暴行により生じたのか,甲の共謀加担後の甲又は乙の暴行により生じたのかは,証拠上不明であった。
【会話】学生A.私は,共犯は自己の行為と因果関係を有する結果についてのみ責任を負うという見解に立ち,後行者は,共謀加担前の先行者の暴行により生じた傷害結果には因果性を及ぼし得ないと考えます。事例の場合,甲には①(a.暴行罪・b.傷害罪)の共同正犯が成立すると考えます。事例とは異なり,Vの傷害が甲の共謀加担後の甲又は乙の暴行により生じ
たことが証拠上明らかな場合,甲には傷害罪の共同正犯が②(c.成立する・d.成立しない)と考えます。
学生B.A君の見解に対しては,甲に対する傷害罪の成立範囲が③(e.狭く・f.広く)なり過ぎるとの批判が可能ですね。
学生C.私は,事例の場合には,同時傷害の特例としての刑法第207条が適用され,甲は,Vの傷害結果について責任を負うと考えます。その理由の一つとして,仮に甲が乙と意思の連絡なく,Vに暴行を加えた場合に比べ,事例における甲が④(g.不利・h.有利)に扱われることになるのは不均衡であると考えられることが挙げられます。
学生B.乙には,甲の共謀加担前後にわたる一連の暴行の際にVに生じた傷害結果についての傷害罪が成立するのであり,傷害結果について責任を負う者が誰もいなくなるわけではないということは,C君の⑤(i.見解に対する批判・j.見解の根拠)となり得ますね。
1.①a ②c ③e ④h ⑤i/2.①b ②d ③f ④g ⑤j/3.①a ②c ③f ④g ⑤j/4.①b ②c ③e ④h ⑤i/5.①a ②c ③e ④g ⑤j

【確認問題】共犯の従属性には、①(  )従属性、②(  )従属性及び③(   )従属性の3つの問題がある。教唆の未遂は①の従属性に、行為共同説/犯罪共同説は③の従属性に関連した問題である。

【短答問題】2017年〔第15問〕(配点:2)次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄は,[№26])
1.甲が乙に対し,深夜の公園で待ち伏せしてAから金品を喝取するように教唆したところ,乙は,その旨決意し,深夜の公園でAを待ち伏せしたが,偶然通り掛かったBをAと誤認してBから金品を喝取した。乙は,人違いに気付き,引き続きAを待ち伏せして,通り掛かったAから金品を喝取しようとしてAを脅迫したが,Aに逃げられてしまい金品を喝取することができなかった。甲にはAに対する恐喝未遂罪の教唆犯のみが成立する。
2.甲が乙に対し,Aをナイフで脅してAから金品を強取するように教唆したところ,乙は,その旨決意し,Aをナイフで脅したが,その最中に殺意を抱き,Aの腹部をナイフで刺してAに傷害を負わせ,Aから金品を強取したものの,Aを殺害するには至らなかった。甲には強盗罪の教唆犯が成立するにとどまる。
3.甲が乙に対し,留守宅であるA方に侵入して金品を窃取するように教唆したところ,乙は,その旨決意したが,B方をA方と誤認してB方に侵入し,その場にいたBから金品を強取した。
甲にはB方への住居侵入罪及びBに対する窃盗罪の教唆犯が成立する。
4.甲が乙に対し,現住建造物であるA家屋に放火するように教唆したところ,乙は,その旨決意し,A家屋に延焼させる目的で,A家屋に隣接した現住建造物であるB家屋に放火したが,B家屋のみを焼損し,A家屋には燃え移らなかった。甲にはA家屋に対する現住建造物等放火未遂罪の教唆犯のみが成立する。
5.甲は,土建業者AがB市発注予定の土木工事を請け負うためB市役所土木係員乙に現金を供与しようと考えていることを知り,乙に対し,Aに工事予定価格を教える見返りとしてAから現金を受け取り,Aに工事予定価格を教えるように教唆したところ,乙は,その旨決意し,Aとの間で,Aに工事予定価格を教える旨約束して,Aから現金100万円を受け取ったが,その後,工事予定価格を教えなかった。甲には加重収賄罪の教唆犯が成立する。

【論文問題】甲は,自己の取引先であるA会社の倉庫には何も保管されていないことを知っていたにもかかわらず,乙の度胸を試そうと思い,何も知らない乙に対し,「夜中に,A会社の 倉庫に入って,中を探して金目の物を盗み出してこい。」と唆した。乙は,甲に唆されたとおり,深夜,その倉庫の中に侵入し,倉庫内を探したところ,A会社がたまたま当夜 に限って保管していた同社所有の絵画を見付けたので,これを手に持って倉庫を出て、逃亡した。


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# by strafrecht_bt | 2017-07-04 09:00 | 刑法Ⅰ(総論)
2017年 06月 27日

刑法1(12)

2017.06.27(火)1時限(12):共犯の処罰根拠
【復習問題1】平成20年〔第13問〕(配点:3)学生A、Bは、不能犯の成否の判断基準に関する次のⅠ、Ⅱの【見解】のいずれかを採って後記【事例】について後記【会話】のとおり議論している。【会話】中の①から⑦までの( )内から適切な語句を選んだ場合、後記1から5までのうち誤りを含むものはどれか。(解答欄は、[№21])
【見解】Ⅰ. 行為当時に一般人が認識し得た事情を基礎とし、一般人を基準に結果発生の具体的危険性があるか否かの判断による。
Ⅱ. 行為当時に存在したすべての客観的事情を基礎とし、結果発生の具体的危険性があるか否かの判断による。
【事例】甲は、健康な乙を毒殺するため、薬品棚から取り出した毒薬のラベルが付いた容器に入った粉を毒薬と認識してその水溶液を乙に多量に注射したが、同粉は、ラベルに表示された毒薬ではなくブドウ糖であったため乙は死亡しなかった。
【会話】A. 私は、甲の罪責については、①(a. 毒薬・b. ブドウ糖)の水溶液を注射する行為が危険であるかどうかを判断し、甲には殺人未遂罪が成立②(c. する・d. しない)と考える。
B. しかし、A君の見解だと、特定の食物の摂取によりショック死しかねないアレルギー体質を有する乙を、そのことを知った甲が、当該食物を乙に食べさせて殺害しようとした事案で、一般人が乙の体質を認識し得なかった場合には、③(e. 行為当時に存在した全事情を基礎として・f. 行為当時に一般人が認識し得た事情を基礎として)判断することになるから、未遂犯が成立しないこととなり、常識に反する。
A. そのような場合、私の立場でも、④(g. 行為時に行為者が特に認識していた事情・h. 事後的に明らかになった全事情)を考慮すべきと考えるので、B君の言う事案でも未遂犯の成立を認めることができる。それよりも、B君の立場を理論的に徹底すれば、結果が不発生に終わった事案は、ほとんど常に⑤(i. 不能犯・j. 未遂犯)となってしまうのではないか。
B. いや、私の立場であっても、事後的・科学的見地から、実際に存在した事実のほかにどのような事実があれば結果が発生し得たかを検討し、そのような事実が行為時に存在し得る可能性の程度を危険判断に取り込むべきと考える。したがって、前記【事例】でも、単に、⑥(k.ブドウ糖・l. 毒薬)を健康な乙に注射することの危険性を判断するのではなく、毒薬のラベルの付いた容器内にブドウ糖が入っていた原因・経緯なども考慮すべきだ。例えば、その原因・経緯が極めてまれで異常だったという事情は、不能犯を⑦(m. 肯定・n. 否定)する方向に働くと考える。
1. ①a、②c/2. ③f/3. ④g、⑤i/4. ⑥k/5. ⑦m
【復習問題2】2017〔第1問〕(配点:2)次の【見解】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,誤っているものはどれか。(解答欄は,[№1])
【見解】間接正犯については,被利用者の行為時に実行の着手を認めるべきである。
【記述】1.【見解】は,実行行為時と実行の着手時期が一致することを要しないとする考え方と矛盾しない。
2.【見解】に対しては,利用者にとって偶然の事情で実行の着手時期を決することになり不合理であると批判できる。
3.【見解】は,離隔犯において到達時に実行の着手を認める考え方と矛盾しない。
4.【見解】に対しては,責任無能力者を利用する場合には,責任無能力者に規範意識の障害がないというだけで,直ちに結果発生の切迫した危険があるとはいえないと批判できる。
5.【見解】は,自然的に観察して結果発生に向けた直接の原因となる行為を重視する考え方と矛盾しない。
【短答問題】(配点:2)次の【事例】に関する後記1から5までの各記述のうち,甲に窃盗罪の従犯の成立を肯定する論拠となり得ないものはどれか。
【事例】甲は,乙又は乙の友人が窃盗罪を犯そうとしていることを知り,その手助けのため,乙に対し,同罪の遂行に必要な道具を貸したところ,さらに,乙はその道具を友人丙に貸し,丙がこれを用いて同罪を犯した。なお,丙には同罪の正犯が成立し,乙にはその従犯が成立するものとする。
1.従犯には独立した犯罪性が認められる。
2.従犯の幇助には,教唆者を教唆した者については正犯の刑を科すとする刑法第61条第2項のような規定がない。
3.共犯は修正された構成要件に該当する行為であるところ,従犯もその構成要件においては「正犯」となる。
4.幇助は正犯を容易にすることであるという定義からすると,幇助行為が直接的になされたか,間接的になされたかは必ずしも問われない。
5.教唆犯に対する幇助行為は従犯として処罰される。

【論文問題】甲は,乙がVに対して暴行を加えていたところに通り掛かり,乙との間で共謀を遂げた上,乙と一緒にVに対して暴行を加えた。Vは,甲の共謀加担前後にわたる一連の暴行を加えられた際に1個の傷害を負ったが,Vの傷害が,甲の共謀加担前の乙の暴行により生じたのか,甲の共謀加担後の甲又は乙の暴行により生じたのかは,証拠上不明であった。甲及び乙の罪責につき論じなさい(特別法違反の点は除く。)


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# by strafrecht_bt | 2017-06-27 09:00 | 刑法Ⅰ(総論)
2017年 04月 26日

侵害を予期した上で対抗行為に及んだ場合における刑法36条の急迫性の判断方法

事件番号  平成28(あ)307
事件名  殺人,器物損壊被告事件
裁判年月日  平成29年4月26日
法廷名  最高裁判所第二小法廷
裁判種別  決定
結果  棄却
判例集等巻・号・頁  
原審裁判所名  大阪高等裁判所
原審事件番号  平成27(う)1120
原審裁判年月日  平成28年2月10日
判示事項  侵害を予期した上で対抗行為に及んだ場合における刑法36条の急迫性の判断方法
裁判要旨  行為者が侵害を予期した上で対抗行為に及んだ場合,侵害の急迫性の要件については,対抗行為に先行する事情を含めた行為全般の状況に照らして検討すべきであり,事案に応じ,行為者と相手方との従前の関係,予期された侵害の内容,侵害の予期の程度,侵害回避の容易性,侵害場所に出向く必要性,侵害場所にとどまる相当性,対抗行為の準備の状況(特に,凶器の準備の有無や準備した凶器の性状等),実際の侵害行為の内容と予期された侵害との異同,行為者が侵害に臨んだ状況及びその際の意思内容等を考慮し,緊急状況の下で公的機関による法的保護を求めることが期待できないときに私人による対抗行為を許容した刑法36条の趣旨に照らし許容されるものとはいえない場合には,侵害の急迫性の要件を充たさないものというべきである。
参照法条  刑法36条


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# by strafrecht_bt | 2017-04-26 08:26 | 刑法Ⅰ(総論)
2017年 04月 18日

刑法1(2)罪刑法定主義

罪刑法定主義

第1章 刑法の基礎理論
第2節 罪刑法定主義(山口8以下)
【授業内容】
2.類推解釈の禁止(山口11以下):刑法で類推解釈が許されないことの趣旨を理解し、類推解釈と拡張解釈の限界について、具体的事例に即して説明することができる。
【判例】①電気窃盗事件(判例刑法10)ガソリンカー事件(判例刑法11)、
②明文なき未遂犯処罰(最判平成8年2月8日刑集50巻2号221頁(鳥獣捕獲))、
③明文なき過失犯処罰(判例刑法222、223、過失の項目でも後述)
(問)類推解釈と拡張解釈の「論理の違い」(山口11)を説明しなさい。
【文献】増田(可能な語義)
3.遡及処罰の禁止(山口12以下:事後法の禁止)
*公訴時効の廃止(山口13)
4.明確性の原則(山口14以下):罰則が広すぎるため、又は、あいまい不明確であるために違憲無効とされる理由とその要件
(評価)「合憲性に関する判例の具体的な基準はそれほど厳格だとはいえない」(山口16)
*実体的デュープロセスの理論
5.内容の適正さ(山口16以下)
(1)無害な行為を処罰する罰則
(2)過度に広範な処罰規定
6. 罪刑の均衡(山口18)
【判例】尊属殺違憲判決(最判昭和48年4月4日刑集27巻3号265頁
→2016年度/2015年度の講義。




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# by strafrecht_bt | 2017-04-18 09:00 | 刑法Ⅰ(総論)
2017年 04月 11日

刑法1(1)刑法の意義・刑罰論

刑法1【日程】①2017.04.11(火)1時限:刑法の意義・刑罰論
刑法1(1)刑法の意義・刑罰論
【教科書】山口厚『刑法』(第3版・2015年)
【参考文献】(最新のもの)松宮孝明『刑法総論講義』(第5版・2017年);松原芳博『刑法総論』(第2版・2017年)
第199条 (殺人) 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
① 刑法の意義
・実質的意義の刑法:「いかなる行為が犯罪であり、それに対していかなる刑罰が科されるかを規定した法」(山口3頁)
・形式的意義の刑法(刑法典):刑法(明治40年4月24日法律第45号)
 ・刑法総則(総論):第1篇「総則」
 ・刑法各則(各論):第2編「罪」
 特別法上の刑罰法規:「特別刑法」(広義)とは
*「特別法違反の点を除く。」の意味
* 刑法8条:総則の規定は、特別刑法にも適用される
② 刑罰論
・応報刑論(松原3-5頁:被害応報・秩序応報・責任応報)
*予防刑論(目的刑論)
・一般予防論
 ・消極的一般予防論(抑止刑論)
 ・積極的一般予防論(規範的予防論)(松原6-8頁:国民の規範意識・規範への信頼確保・規範妥当性確証)
・特別予防論(再犯防止)(松原8-9頁:消極的特別予防[隔離・排除・特別抑止]・積極的特別予防[改善・教育])
③ 刑法理論との関係
・応報刑論  (後期)旧派 意思自由論
・一般予防論 (前期)旧派 意思自由論(合理的判断能力)
・特別予防論 新派(近代学派) 決定論
*短答出題例:2014〔第1問〕(配点:2)刑罰論に関する次の1から5までの各記述のうち、正しいものはどれか。(解答欄は、[№1])
1.応報刑論は、産業革命に伴う工業化・都市化によって累犯が増加したことを契機として、支持者が増えた。
2.応報刑論に対しては、重大な犯罪を犯した者であっても、再犯可能性がなければ刑罰を科すことができなくなるとの批判がある。
3.応報刑論に対しては、論者が前提としている人間の意思の自由が科学的に証明されていないとの批判がある。
4.応報刑論に対しては、犯罪を防止するために罪刑の均衡を失した重罰化を招くおそれがあるとの批判がある。
5.応報刑論に対しては、刑罰と保安処分の区別がなくなるとの批判がある。
④ 刑罰の種類(刑法9条以下、山口196-9頁)
・生命刑:死刑
・自由刑:懲役・禁錮・拘留
*懲役・禁錮の一本化(改正案)→問題点(松宮・ⅱ頁[はしがき]):「自由刑純化論」(松宮344頁)ではなく「拡大された懲役刑一本化」
・財産刑:罰金・科料:没収
*主刑と付加刑
*代替(換刑)処分:労役場留置/追徴→刑罰でないことに注意(松宮346頁参照)
*執行猶予(25条以下)/一部執行猶予(27条の2以下)/仮釈放(28条)/仮出場(30条)
*一部執行猶予の問題点(松宮352−3頁):「全部実刑と全部執行猶予の中間的制度」か?
出題例:2013〔第9問〕(配点:4) :刑罰に関する次のアからオまでの各記述を検討し、正しい場合には1を、誤っている場合には2 を選びなさい。(解答欄は、アからオの順に[No14]から[No18])
ア.自由刑には、懲役、禁錮及び労役場留置が含まれる。[No14]
イ.財産刑には、罰金、没収及び追徴が含まれる。[No15]
ウ.有期の懲役又は禁錮は、1月以上15年以下であり、これを加重する場合においては30年にまで上げることができる。[No16]
エ.有期の懲役又は禁錮を減軽する場合においては1月未満に下げることができる。[No17]
オ.懲役は、受刑者を刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる刑罰であり、禁錮は、受刑者を刑事施設に拘置する刑罰である。[No18]
【次回】②2017.04.18(火)1時限:罪刑法定主義・犯罪の意義


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# by strafrecht_bt | 2017-04-11 09:00 | 刑法Ⅰ(総論)
2017年 04月 09日

最判平成11・10・26民集53巻7号1313頁 

平成11年10月26日
法廷名  最高裁判所第三小法廷
裁判種別  判決
民集53巻7号1313頁
[判示事項]  名誉毀損の行為者が刑事第一審の判決を資料として事実を適示した場合と右事実を真実と信ずるについての相当の理由
[裁判要旨]  名誉毀損の行為者において刑事第一審の判決を資料としてその認定事実と同一性のある事実を真実と信じて摘示した場合には、特段の事情がない限り、摘示した事実を真実と信ずるについて相当の理由がある。
参照法条  民法709条,民法710条,刑法230条の2第1項

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# by strafrecht_bt | 2017-04-09 13:32 | 刑法演習
2017年 04月 08日

最判平成9年9月9日民集51巻8号3804頁

最判平成9年9月9日民集51巻8号3804頁
【判示事項】  
一 特定の事実を基礎とする意見ないし論評の表明による名誉毀損において行為者が右事実を真実と信ずるにつき相当の理由がある場合の不法行為の成否
二 名誉毀損の成否が問題となっている新聞記事における事実の摘示と意見ないし論評の表明との区別
三 特定の者について新聞報道等により犯罪の嫌疑の存在が広く知れ渡っていたこととその者が当該犯罪を行ったと公表した者において右のように信ずるについての相当の理由
【裁判要旨】
 一 特定の事実を基礎とする意見ないし論評の表明による名誉毀損について、その行為が公共の利害に関する事実に係り、その目的が専ら公益を図ることにあって、表明に係る内容が人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない場合に、行為者において右意見等の前提としている事実の重要な部分を真実と信ずるにつき相当の理由があるときは、その故意又は過失は否定される。
二 名誉毀損の成否が問題となっている新聞記事が、意見ないし論評の表明に当たるかのような語を用いている場合にも、一般の読者の普通の注意と読み方とを基準に、前後の文脈や記事の公表当時に読者が有していた知識ないし経験等を考慮すると、証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を主張するものと理解されるときは、右記事は、右事項についての事実の摘示を含むものというべきである。
三 特定の者が犯罪を犯したとの嫌疑が新聞等により繰り返し報道されていたため社会的に広く知れ渡っていたとしても、このことから、直ちに、右嫌疑に係る犯罪の事実が実際に存在したと公表した者において、右事実を真実であると信ずるにつき相当の理由があったということはできない。
【参照法条】  民法709条,民法710条,刑法230条の2第1項


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# by strafrecht_bt | 2017-04-08 14:45 | 刑法演習
2017年 04月 04日

判決文と答案

判決

「主文」  被告人を懲役4年6月に処する。

未決勾留日数のうち120日をその刑に算入する。

「理由」

(罪となるべき事実)

被告人は,Aと共謀の上,

第1〔平成29年1月18日付け起訴状記載の公訴事実第1〕

平成27年6月21日頃,愛知県田原市a町bc番地B駐車場において,同所に駐車中のC所有の普通乗用自動車1台(時価約2万円相当)を「窃取」した。

第2〔平成28年11月2日付け起訴状記載の公訴事実〕

平成27年12月31日頃,愛知県新城市d字ef番g所在の廃屋において,D(当時71歳)の死体を同所トイレ便槽内に運び入れ,同死体に木片等をかぶせて覆い隠し,もって死体を「遺棄」した。

第3〔平成28年12月21日付け起訴状記載の公訴事実〕

別表記載のとおり,平成28年1月5日午後零時2分頃から同年3月8日午前10時31分頃までの間,前後9回にわたり,愛知県豊橋市h町字ij番地kEF店ほか6か所において,各所に設置された現金自動預払機に,不正に入手したG信用金庫H支店発行のD名義のキャッシュカード1枚を挿入して同機を作動させ,株式会社I銀行お客さまサービス部長Jほか5名管理の現金合計17万6000円を引き出して「窃取」した。

第4〔平成29年1月18日付け起訴状記載の公訴事実第2〕

平成28年3月10日頃,愛知県豊川市l町mn番地o株式会社K駐車場において,同所に駐車中のL管理の普通貨物自動車1台(時価約60万円相当)を「窃取」した。

第5〔平成28年9月9日付け起訴状記載の公訴事実第1〕

平成28年7月20日午後5時38分頃,愛知県田原市p町qr番地Mにおいて,同所に設置されたさい銭箱等からN会会長O管理の現金約200円を窃取した。

第6〔平成28年9月30日付け起訴状記載の公訴事実〕

平成28年7月23日頃,愛知県田原市s町tu番地v株式会社Pクラブハウス従業員通用口前付近において,同所に駐車中の同社取締役社長Q管理の普通貨物自動車1台(時価約20万円相当)を「窃取」した。

第7〔平成28年9月9日付け起訴状記載の公訴事実第2〕

平成28年7月30日午後8時59分頃,愛知県田原市p町qr番地Mにおいて,同所に設置されたさい銭箱を手で持ち上げてひっくり返すなどし,同さい銭箱内から前記O管理の現金を「窃取」しようとしたが,現金が入っていなかったため,その目的を遂げなかった。

(法令の適用)

1 罰条

(1) 判示第1,第4ないし第6の各行為

いずれも刑法235条,60条

(2) 判示第2の行為

刑法190条,60条

(3) 判示第3の各行為

いずれも刑法235条,60条

(4) 判示第7の行為

刑法243条,235条,60条

2 刑種の選択

判示第1,第3ないし第7の各行為につき,いずれも懲役刑を選択

3 併合罪

刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の最も重い判示第4の罪の刑に法定の加重)

4 未決勾留日数の算入

刑法21条
5 訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書

(量刑の理由)

1 事案の概要【以下略】



答案例
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# by strafrecht_bt | 2017-04-04 18:10 | 刑法演習
2017年 03月 27日

科目別事前ガイダンス:刑法演習(2)

【問題】以下の事例に基づき、甲の罪責について、具体的な事実を摘示しつつ論じなさい(特別法違反の点を除く。)。
(問題文略ーテキスト参照)
【解答例】第1 ベンチに置かれたAの財布を持ち去った行為
 【結論】甲には、以下のように、占有離脱物横領罪と窃盗未遂罪が成立する(罪数関係は後述)。
 1.客観的構成要件該当性:窃盗罪(235条)と占有離脱物横領罪(254条)との区別-占有の有無
(1)甲は、客観的にはA所有の「財物」である財布を領得しているが、Aになお占有が残っていたがどうかにより窃盗罪(235条)と占有離脱物横領罪(254条)の区別が問題となる。
(2)占有の有無の判断基準  
 ア 窃盗罪に「占有」とは財物に対する事実上の支配をいい、物の支配態様は多様であることから、占有の事実と占有の意思に照らして、社会通念に従って決するほかないが、具体的には、①財物自体の特性、②場所的状況、③時間的場所的間隔等から考えることになり、占有の意思は補充的に考慮する。特に、③については、置き忘れに気付いた時点や、取りに戻った時点ではなく、領得行為時が基準となる
 イ 本件では、②財布という遺失しやすい小物であること、②スーパーマーケット内のベンチという誰でも立ち入れる場所であること、③領得行為時との時間的間隔が2分程度しかなく、極めて近接した時点で領得行為がなされているが、場所的にみると、この時点ではすでにAは6階のベンチから地下1階まで移動しており、置き忘れに気づきさえすれば直ちに取り戻すことが可能な状態にあったとは言えないことから見て、Aの占有は否定される。
(2)占有の移転
置き忘れがあった場合でも、なお当該場所の管理権や場所的状況に照らして占有が他者に認められることがあり、Bの管理者やDに占有の移転があったどうかが問題となる。
ア スーパーマーケットBの現場管理者の占有
この場合、B店内は、誰でも立入れる場所であり、遺失物に対する特別の管理措置が取られていたということをうかがわせる事情もないので、Bへの占有移転は否定される。
イ D子の占有
 Dは、現場で見ていただけで、一度も財布の占有を確保しておらず、排他的支配を及ぼしたとは言えない以上、Dへの占有移転も否定される。
(3)従って、甲の行為は、客観的には窃盗罪ではなく、占有離脱物横領罪の構成要件に該当する。
2.主観的構成要件該当性:抽象的事実の錯誤
(1)窃盗の故意
 甲は本件財布がCのものと誤信しているが、そうであればCの占有が及んでいる物を取得する認識があるため、窃盗罪の故意が認められる
(2)抽象的事実の錯誤
 ア 主観的には窃盗罪の認識で、客観的に占有離脱物横領罪の結果を生ぜしめた場合、客観面に符合する故意を認めることができるのかが問題になる。実質的な符合は、両罪の①行為態様及び②保護法益の類似性を考慮して判断される。
 イ 両罪は、①行為態様では、他者に財物を不法に取得する点で共通し、②保護法益では、占有と所有権で異なるとも思えるが、窃盗罪が占有を保護しているのは、究極的には本権を保護するためであるから、共通性を肯定でき、軽い占有離脱物横領の範囲で実質的な重なり合いを認めることができる。
(3)主観面に対応する犯罪(窃盗未遂罪)の成否-実行の着手
 ア 法益侵害の危険性の有無で判断するが、その判断は行為時に一般人が認識しえた事情+行為者が認識していた客観的事情を基礎に、一般人の観点から行う(具体的危険説)。
 イ 本件のような場合には、D子のようにずっと観察していた場合はともかく、その場に居合わせた一般人からは、Cに占有があるかのごとく見えるので、具体的危険性が肯定され、窃盗未遂罪も成立する。
第2 A名義のクレジットカードを呈示して、売上伝票にAと署名し商品を購入した行為(他人名義のクレジッドカードの不正使用)
【結論】甲には、以下のように、詐欺罪(246条1項)並びに私文書偽造罪(159条1項)及び同行使罪(161条)が成立する(罪数関係は後述)。
1.詐欺罪の成否
 甲は、あたかもAであるかのように偽って(欺罔行為)、クレジットカード取引において名義人以外の者との取引を禁じられている加盟店を錯誤に陥れ、当該錯誤に基づいて財物を交付している点で、個別財産の損失があるほか、規約に反した取引を行えば立替払いを受けられないリスクがあり、この点で、真正名義人と取引を行うという被害者の達成できなかった目的は経済的に評価して実質的損害を肯定することができる。したがって、加盟店に対する、商品を客体とした、1項詐欺罪が成立する。
2.売上伝票への記載・交付
甲は、「行使の目的で」、他人であるAの署名を使用して「権利、義務若しくは事実証明に関する文書」である売上伝票を偽造(作成名義を冒用)し、それを交付し「行使」しているのので、私文書偽造罪及び同行使罪が成立する。
第3 罪数関係
【結論】甲には、以下のように、①窃盗未遂罪、②私文書偽造罪、③同行使罪及び④詐欺罪が成立し、②③④は牽連犯(54条1項後段)となり、それらと①は併合罪(45条)となる。
1 上記第1の行為については、①占有離脱物横領罪と②窃盗未遂罪が成立するが、①はより重い②に吸収される(包括一罪)。
2 上記第2の行為については、①私文書偽造罪と②同行使罪が牽連犯となり、これらが③詐欺罪と牽連犯となる。


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# by strafrecht_bt | 2017-03-27 19:15 | 刑法演習