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2015年 04月 28日

【第5講】不作為犯・故意(1)

コアカリキュラム
第2章 犯罪の積極的成立要件
【授業内容】
第5節 不作為犯(山口44-52)
実行行為の(現象類型的)態様:作為/不作為
1.作為と不作為の区別基準
→(私見)作為/不作為の区別は現象類型的なものにとどまり、限界事例においてはその区別さえ困難である。
【事例】(以下ののいずれの事案のおいても当該不作為者は泳ぐことができ、飛び込んで助ければ、ほぼ確実に救助可能だったということを前提とする。)
① Aは他人の子供Vを池に突き落として溺死させた
*AはVからの攻撃を受け殺されそうになったので、そうした場合は?
② Bは他人の子供Vが池に落ちたのを見たが助けなかった
③ Cは他人の子供Vを過失で突き飛ばして池に落としてしまったが助けなかった
④ Dは他人の子供Vが池に落ちたのを助けようとしたEを説得してやめさせた
⑤ Fは他人の子供Vが池に落ちたのを助けようとしたGを羽交い絞めして阻止した
⑥ Gは自分の子供Vが池に落ちたのを見たが助けなかった
⑦ 通報を受けて現場に到着した救助隊員Hは溺れている子供Vを救助しなかった

2.不作為犯
 (ア)不作為犯の意義と種類
2-5-1 不作為犯の意義と種類について理解し、その概要を説明することができる。
 ・真正不作為犯
 ・不真正不作為犯
 (イ)不真正不作為犯の成立要件
2-5-2 不真正不作為犯の成立要件について理解し、その概要を説明できる。
・判例=形式的三分説
 ・法律
 ・法律行為(契約・事務管理)
 ・条理(先行行為など)
・学説
 ・一元説
  ・先行行為説(日高)
  ・事実上の引き受け説(堀内)
  ・排他的支配説(西田)
 ・機能的二分説(山中)
  ・法益保護型義務類型
  ・危険源管理監督型義務類型
ー>現象類型的区別にすぎないのではないか?
**組織化管轄/制度的管轄
 (ウ)作為義務の根拠
2-5-3◎不真正不作為犯における作為義務の根拠について理解し、具体的事例に即してその有無を判断することができる。
【判例】シャクティパット事件(最決H17・7・14【判例刑法79】)ー>短答問題072.gif
【事案】甲は,手の平で患部をたたいてエネルギーを患者に通すことにより自己治癒力を高めるとの独自の治療を施す特別の能力を有すると称していたが,その能力を信奉していたAから,脳内出血を発症した親族Bの治療を頼まれ,意識障害があり継続的な点滴等の入院治療が必要な状態にあったBを入院中の病院から遠く離れた甲の寄宿先ホテルの部屋に連れてくるようAに指示した 上,実際に連れてこられたBの様子を見て,そのままでは死亡する危険があることを認識しながら,上記独自の治療を施すにとどまり,点滴や痰の除去等Bの生命維持に必要な医療措置を受けさせないままBを約1日間放置した結果,Bを痰による気道閉塞に基づく窒息により死亡させた。
・法律←法律化された制度的保護義務(制度的管轄)
・法律行為←自らの法的活動領域の拡大に基づく義務(組織化管轄)
・条理←先行行為による自らの活動領域の拡大に基づく義務(組織化管轄)
*「条理」というのは抽象的すぎるので先行行為に限定すべき
**すべての先行行為が義務づけるか?→(例)正当防衛行為
 (エ)不作為の因果関係
2-5-4◎不作為犯における因果関係の意義について理解し、具体的事例に即して説明することができる。
・判例:「十中八九」基準?
・危険増加説

【不真正不作為犯問題の解法】
・作為→作為犯として考察
or (○作為と不作為の区別基準)→明らかに不作為の場合は論じなくてもよい
不作為
 ↓
・真正不作為犯
or (区別基準)→条文で確認
不真正不作為犯
  ↓
・作為義務(保障人的地位)(+/-)◎その発生根拠
and
・作為の可能性・容易性(+/-)
and
・結果と不作為間の(仮定的)因果関係(+/-)◎基準→適用
第6節 故意 (山口101-112)
1 故意の概念
【条文】刑法38条(故意)1項「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。」
2-6-1◎故意があるというためにはどのような事実について、どのように認識・予見する必要があるか理解し、具体的事例に即して説明することができる。
【判例】最判昭和24・2・22【185】(メタノールの認識)/最決平成2・2・9【187】(覚せい剤の認識)
*故意の対象
・構成要件に該当する(客観的)事実の認識・予見
・違法性の認識(の可能性)
*責任説
2-6-2◎未必の故意と認識ある過失の区別について理解し、具体的事例に即して説明することができる。
【判例】最判昭和23・3・16【181】(盗品の認識)
*故意
・確定的故意
・未確定的故意
・・概括的故意
・・択一的故意
・・未必の故意
・・・条件付故意(山口112)
判例:最判昭和59・3・6【184】(殺人を一定の事態の発生にかからせていた場合)
ーーーーーーー
 ・認識ある過失
 ・認識なき過失
*過失 
【事例】
①Xは、自分を裏切って資産家のAと結婚した元恋人のBの二人に深い憎悪を抱き、二人を呼び出し、所持していた拳銃で二人の頭部を撃って殺害した。
②Xは、法科大学院の講義に遅刻しそうになっていたので自動車で一般道を制限速度の2倍の80キロで走行していた。その際、前方に自転車で走行するAを認識したが、速度を落とさず走行したため、Aと接触して転倒させ、Aは頭部を強打して死亡した。
(1)Xは、自分の運転技術を過信しておりAと接触することはないと考えていた。
(2)Xは、自分の運転技術からすれば、速度を落とさなければAと接触し、場合によっては死亡させることがあるかもしれないと考えていた
ア)それは望ましくはないがやむを得ないと考えていた。
イ)運を天に任せて、なんとか接触せずに済むだろうと思い走行を続けた。
(3)Xは、授業に遅刻しないことだけを考えていたので、Aが死亡するという付随結果の発生については無関心で、その可能性すら念頭になかった。
③Xは、人通りの多いオフィスビルの出入り口に時限爆弾を仕掛けてその爆発により、15名を死亡させ85名に重軽傷を負わせた。
④Xは、並んで歩いているAとBに対して、そのどちらか一方にだけ弾が当たると考えて発砲した。
(1)弾はA(B)に当たり、A(B)が死亡した。
(2)AとBの両方に当たり、二人とも死亡した。


短答問題
2 錯誤論



参考文献(ヤコブス・刑法上の故意概念)
=松宮孝明編訳『ギュンター・ヤコブス著作集第1巻犯罪論の基礎」237頁以下(「刑法上の故意概念に関する新しいものと古いもの」)
A 認識および意欲としての故意?
Ⅰ なぜ故意(あるいは過失)〔が必要なのか〕?
「脱魔術化」された世界(M.Weber)
行為者自身の「意味表現」(Sinnausdruck)(Welzel)
方向づけ(Orientierung)
Ⅱ 意味内容としての認識
1 現行法上の用語
2 形成としての意欲
形成的な要素しての意欲
意欲なき認識
例:(ヴォーダンに対する)エルダの警告「すべてがどうであったかを私は知っている。どうなるか、どうなってしまうかも、私にはわかる。」(ここには意欲という要素は含まれない。)
刑法における意欲:認識をしながら意欲(wissendes Wollen)
3.得ようとすること(Erstreben)としての意欲?
4.「意欲内容としての認識」に関する結論
B 意欲内容
Ⅰ 形成力
Ⅱ 意欲の形成対象
Ⅲ 現実の認識だけが重要なのか?
Ⅳ あらゆる認識が重要か?
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by strafrecht_bt | 2015-04-28 09:00 | 刑法Ⅰ(総論)


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