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刑法授業補充ブログ

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2013年 06月 06日

演習問題

【問題】以下の事例に基づき、KおよびSの罪責につき、具体的な事実を適示しつつ論じなさい(特別法違反の点を除く。)。

1 時計好きのK大学法学部I教授は同僚で学部長のK教授に自分の時計を見せびらかし、「これはジャガールクルトのデュオメトル・クロノグラフで価格は700万円以上するものだ」と自慢していた。しかし実はその時計はI教授がアジアの某国に旅行した際に偽物と知りつつ1万円で購入したものであった。
2 ある夜K教授が自宅近くの人気のない公園を散歩していると,池の方から助けを求める声がするので行ってみると誤って池に落ちたI教授が助けを求めていた。池のほとりには緊急用のロープのついた救命浮き輪が用意されており、それを投げ入れることでI教授を救助することは容易に可能であった。しかしKは当初見て見ぬふりをして通り過ぎようとしていたが、時計のことを思い出し「手間賃としてその腕時計をはずしてこちらに投げて渡せば助けてやる」といって、Iをして実際にそうさせて、その時計を拾って自分のポケットの中に入れた。しかしKは最初からIを助ける気などなく、そのまま時計を持ってその場を立ち去ったので、Iは溺死した。
3 翌日、Kは後輩の釣りマニアとして知られるが、実は時計マニアでもあるS教授に前日の出来事を話してその時計を見せたところ、Sもその時計が本物であると確信したが、Kに対して「先生、残念ながらこれはよくできているが密輸された偽物で売ることはできませんよ」と告げたところ、Kはがっかりして、「もういらないから君にあげるよ」といって、その時計をSに渡して帰宅した。ところが、Sが業者にその時計を売ろうとしたところ、業者は偽物であることを見破ったため買い入れを拒否された。
(なおこの事例における登場人物は実在の人物ではありません。)



ドイツのPawlik教授の授業で出された問題(4. Besprechungsfall)を、翻案したもの(論点はほぼ同じ)。
論点1:不作為を内容とした害悪の告知:恐喝罪・強盗罪における「脅迫」の概念
(1)脅迫内容の違法性
害悪の告知:「害悪」の内容
①犯罪であることを要するとする説(平野法セミ201号65頁、中・各論90頁、山口・各論*頁)
②犯罪であることは要しないが違法であることは必要であるとする説(山中・各論*頁)
③適法な行為でも害悪となりうるとする説(西田・各論*頁)
*告訴(大判T3・12・1判例刑法各論82)
*村八分の告知(判例刑法各論83)
(2)不作為を内容とする害悪の告知
①保障人的義務必要説
(②一般的義務説:ドイツにおいては一般救助義務違反も処罰されている[ドイツ刑法323c条]のでその義務でも足りるとする説)
③違法性説
(その他の論点については後述)

by strafrecht_bt | 2013-06-06 06:48 | 刑法演習


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