刑法授業補充ブログ

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2015年 05月 10日

【第6講】故意(2):事実の錯誤ー錯誤論(1)

コアカリキュラム
第2章 犯罪の積極的成立要件
【授業内容】
第5節 故意 (2)
1 故意の概念(前回)
短答問題
2 錯誤論
短答問題
 (1)錯誤の分類
事実の錯誤
・具体的事実の錯誤
・抽象的事実の錯誤
法律の錯誤
*違法阻却事由の錯誤ー>違法阻却事由のなかで後述
(2)錯誤の現象類型
・客体の錯誤
・方法(打撃)の錯誤
・因果関係の錯誤
(3)事実の錯誤
 ア 具体的事実の錯誤
 (ア)客体の錯誤および(イ)方法の錯誤
2-5-4◎予見していた客体とは異なる客体に法益侵害が生じた錯誤事例における故意犯の成否について理解し、具体的事例に即して説明することができる。
 (ウ)因果関係の錯誤
2-5-5◎因果経過について錯誤が生じた事例における故意犯の成否について理解し、具体的事例に即して説明することができる。
*早すぎた構成要件の実現
*遅すぎた構成要件の実現(ウェーバーの概括的故意)
 イ 抽象的事実の錯誤
2-5-6◎認識・予見した事実と発生した事実とが異なる構成要件に属する事例における故意犯の成否について理解し、具体的事例に即して説明することができる。
【事例】
①Xは夜道を一人で歩いていたBをAと人違いをして射殺した。
②XはAを殺そうと思いBと二人で並んで歩いていたAに向けて発砲したが、
(i)弾はAに当たらずBに当たり、Bが死亡した。
(ii)AとBの両方に当たり、
 a)Aは傷害を負い、Bは死亡した。
 b)Bは傷害を負い、Aは死亡した。
 c)AもBも死亡した。
③Xは電話でAを脅迫しようとしたが、番号を間違えたためBにかかりAが出たと勘違いしてBを脅迫した。(山中169頁Q11-10)
④Xは、殺し屋のYにAを殺すように教唆したが、Yは人違いでBを殺害した。(山中170頁Q11-11)
⑤Xは、夫Aを殺そうと思い夕食で出すカレーの中に毒をいれておいた。Xの外出中にAが会社を早退して帰宅し、なべのカレーを自分で食べて死亡した。
⑥XはAを溺死させようとして明石海峡大橋の上からつき落としたところAは橋脚に頭をぶつけて死亡した。
⑦Xは、保険金を掛けていたVにクロロホルムを嗅がせて気を失わせた後、車に乗せてその車を海に転落させて事故に見せかけて殺害しようとしたが、Vはクロロホルムの作用によって既に死亡した。(山中182頁Q12-10)
⑧XはAを絞殺するつもり首を絞め、Aが動かなくなったので死んだと思い死体を隠そそうと思って穴を掘ってAを埋めたが、実はAはまだ生きており穴の中で窒息死した。(山中180頁Q12-8)
⑨XはAを殺そうと思いAに向かって発砲したが、弾はAに当たらずAの飼い犬Bに当たりBが死亡した。
⑩Xは、覚せい剤のつもりで麻薬を輸入した。 (参考:山中173頁Q12-2②:麻薬→実は覚せい剤所持)
⑪ Xは、Aに襲われていた自分の兄Yを助けようとしてAに向かって発砲したが、弾がYに当たりYが死亡した。 (参考:山中262頁Q17-9)
⑫Xは、ふざけてバットを振り上げたAを襲いかかってきたと思い、防衛のつもりでとっさにその場にあった別のバットでAを殴り重傷を負わせた。
⑬Xは法律で捕獲を禁止されている「タヌキ」を「ムジナ」だと思い捕獲した(山中312頁Q20-10①)
⑭Xは法律で捕獲を禁止されている「ムササビ」を「モマ」だと思い捕獲した(山中312頁Q20-10②)
⑮Xは、狩猟禁止区域であることを知らずに狩猟した(山中310頁Q20-8②)
⑯Xは、無主犬の殺害を許可した警察規則を誤解して、鑑札をつけていない犬は他人の犬であっても無主犬とみなされると思い、鑑札をつけていなかったAの飼い犬を撲殺した。(山中309頁Q20-8①)

(3)法律の錯誤<ーコア第4章/第3節 違法性の意識
4-3-1◎事実の錯誤と違法性の錯誤を区別することにどのような意義があるかを理解し、具体的事例に即して説明することができる。
4-3-2○違法性の意識とは何か(概要説明)
4-3-3◎違法性の意識を欠く場合における犯罪の成否について理解し、具体的事例に即して説明することができる。
*故意と違法性の意識は、明確に区別することができるか?
**違法性(禁止)に関する過失をすべて故意としてしまってよいか?
***事実に関する無関心を過失犯として扱ってよいか?->「間接故意」(dolus indirectus)論
私見:基本的には厳格故意説が妥当、但し間接故意論による修正が必要(「修正故意説」)
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by strafrecht_bt | 2015-05-10 09:00 | 刑法Ⅰ(総論)


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