2015年 05月 12日
第2章 犯罪の積極的成立要件 【授業内容】 第7節 過失 【条文】「刑法」明治四十年四月二十四日法律第四十五号38条1項但、116条、117条2項、117条の2、122条、129条。209〜211条 刑法211条2項削除(2014年5月20日施行) ー>自動車運転死傷行為処罰法 第5条(過失運転致死傷) 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。 第6条 (無免許運転による加重) … 4 前条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、十年以下の懲役に処する。 短答問題 【参考文献】佐伯仁志「過失犯論」前掲書290-315頁 1 過失犯の意義と処罰 *なぜ故意犯よりも著しく軽く0処罰されるのか? ・危険性が低い?ー>殺人罪による死者数と交通事故死者の数の比較(平成24年中の交通事故の発生状況;平成24年の犯罪情勢)2012年/殺人被害者(死亡):428人/30日以内の交通事故死者数5237人 参考:犯罪白書 ・責任が低い? ・過失犯においては行為者も自分自身の行為から不利益をうける(認容しない結果を生じさせている−一種の錯誤)ー>一種の「天罰(poena naturalis)を既に受けている。認知的補強(kognitive Untermauerung)の必要が低い *罪刑法定主義との関係 2-7-1○38条1項ただし書きの趣旨(概要説明) 正誤問題 1.罰則を定めた特別法の法条に,過失行為を処罰する旨の明文の規定がない場合であっても, 当該特別法の目的から,罰則を定めた法条に過失行為を処罰する趣旨が包含されていると認められるときには,同法条が刑法第38条第1項ただし書に規定される特別の規定となり,過失による行為を処罰することが可能である。 判例:○(判例刑法222,223) 私見:このような解釈は罪刑法定主義に反する。 *関連問題:刑法230条の2もこの特別の規定か? **明確性原則との関係 2.過失の種類 (1)条文上の区別 ア.(単純)過失 イ. 重過失 正誤問題:重過失致死傷罪の「重過失」とは,行為者としてわずかな注意を払えば,結果発生を予見す ることができ,結果の発生を回避できた場合をいう。 ウ. 業務上過失 【文献】島田聡一郎「業務上過失致死傷罪とは何か」 正誤問題:業務上過失致死傷罪の「業務」とは,社会生活上の地位に基づいて反復継続して行われ,ま たは,反復継続して行う意思をもって行われる行為であり,他人の生命・身体等に危害を加え るおそれがあるものをいう。 *自動車運転過失(上述改正参照):業務上過失をさらに加重 *危険運転致死傷罪(結果的加重犯)ー>重い結果に対する過失の要否 (2)認識の有無による区別 ア.認識ある過失<ー>未必の故意(上述) イ.認識なき過失 *認識なき過失の処罰は必要か? (3)管理監督過失 2-7-7◎監督者・管理者がいかなる場合に過失責任を負うかについて理解し、具体的事例に即して説明することができる。 3 過失犯に関する学説: 過失犯理論 短答問題(*2014年追加) (1)旧過失論:過失の本質は,意思を緊張させたならば結果発生を予見することが可能であったにもかかわらず,これを予見しなかったことにある。 (2)新過失論:過失の本質は,社会生活上必要な注意を守らないで,結果回避のための適切な措置を採らなかったことにある。 (3)新・新過失論(危惧感説) 4 過失(結果)犯の成立要件 2-7-2○過失犯の成立要件について理解(概要説明) (1)注意義務違反行為 2-7-3○注意義務の意義と内容(概要説明) *注意義務の基準 ①一般人基準(客観説) ②本人基準(主観説) ③折衷説(分配説) (i)構成要件:通常人基準 (ii)責任:行為者基準 〔批判〕ブラックジャックのような高度な能力を持つ医師の「特権化」? 2-7-4◎予見可能性の内容について理解し、具体的事例に即して説明することができる。 *予見可能性の程度 ①危惧感→②具体的予見可能性→③高度の予見可能性 旧過失論と新過失論における差異? **判例の立場 判例は新過失犯論を採るが、予見可能性の程度については危惧感では足りないとする。 →結果回避義務違反行為の重視 2-7-6◎信頼の原則の内容について理解し、具体的事例に即して説明することができる。 正誤問題;過失行為を行った者を監督すべき地位にある者の過失の有無を判断する際には,信頼の原則は適用されない。 (2)結果 (3)注意義務違反と結果との間の関係 2-7-5◎注意義務違反と結果の間に必要とされる関係について理解し、具体的事例に即して説明することができる。 ー>過失の共同正犯 正誤問題:複数の行為者につき,行為者共同の注意義務が観念でき,行為者がその共同の注意義務に違 反し,共同の注意義務違反と発生した結果との間に因果関係が認められる場合には,過失犯の共同正犯が成立し得る。 刑法事例演習教材14頁以下:4「黄色点滅信号」
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