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2013年 06月 27日

参考判例:共謀の認定

次の控訴審判決と第一審判決を比較し、なぜ異なった結論が導きだされたのかを分析しなさい。
【控訴審】 大阪高判 平成16年2月24日 判例時報1881号140頁
【事件番号】 平成13年(う)第566号
【事件名】 銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
【審級関係】 ①第一審:大阪地判平成13年3月14日判決 /②本件/ ③上告審:最決平成17年11月29日
【裁判結果】 破棄自判
【上訴等】 上告
【裁判官】 白井万久 的場純男 磯貝祐一
【参照法令】 刑法60条/銃砲刀剣類所持等取締法31条の3/銃砲刀剣類所持等取締法3条
【評釈】 上田信太郎「 情況証拠の積み重ねと組織犯罪における共謀の存否の判断」受験新報652号15頁
【引用判例】 ①最高裁判所大法廷 昭和24年(新れ)第22号 昭和25年 9月27日
②最高裁判所第三小法廷 平成2年(あ)第72号 平成7年6月20日
③最高裁判所大法廷 昭和26年(あ)第2357号 昭和27年4月9日
④最高裁判所第一小法廷 平成14年(あ)第164号 平成15年5月1日
【事案の概要】 指定暴力団5代目P3組の若頭補佐である被告人が、定例幹部会に出席するため、前日来宿泊していたホテルを出発するに際し、自己の身辺警護の目的から秘書及び配下組員と各共謀の上、それぞれ拳銃1丁をこれに適合する実包と共に携帯所持したという銃刀法違反被告事件の控訴審おいて、原判決は、被告人において両名が拳銃等を所持して被告人を警護していたことを認識し、これを容認していたとするには、なお合理的な疑いが残るとして被告人を無罪としたが、当審では、被告人と両名との間には各自の拳銃所持につきそれぞれ黙示的な意思の連絡があり、両名との間にそれぞれ共謀共同正犯が成立するとして、原判決を破棄して、被告人を懲役6年の実刑に処した事例。
【要旨】 共謀共同正犯の成否について、暴力団会長が、配下のいわゆる親衛隊の構成員やその指揮者らに対し、けん銃等を携帯所持して警護するように直接指示を下さなくても、同行するに当たり、これらの者の一部が同人を警護するため自発的にけん銃等を携帯所持していることを、少なくとも概括的とはいえ確定的に認識しながら、それを当然のこととして受入れて認容しており、他方、配下の者たちも、このような意思を察していたと認められるから、けん銃等の携帯所持につき黙示的な意思の連絡があったといえ、また、指揮命令の権限を有する同人の地位及び警護を受けるという同人の立場を併せ考えれば、実質的には、正に同人が配下の者たちにけん銃等をそれぞれ所持させていたと評し得るので、けん銃等の各携帯所持につき、共謀共同正犯が成立すると判断した。

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【第一審】 大阪地判平成13年3月14日 判例時報1746号159頁
【事件名】 銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
【裁判結果】 無罪
【上訴等】 控訴
【裁判官】 上垣猛 山田耕司 田辺暁志
【参照法令】 銃砲刀剣類所持等取締法31条の3/銃砲刀剣類所持等取締法3条/刑法60条
【事案の概要】 組員Aらの拳銃所持の事実につき、暴力団会長の被告人とAらとの間には拳銃所持についての共謀があったとして、被告人が銃砲刀剣類所持等取締法違反で起訴された事案で、被告人とAらとが拳銃等の所持について共謀したことについてこれを裏付ける直接的証拠はなく、謀議メモ等の謀議を間接的に裏付けるような証拠も存在しないなどとして、被告人の無罪を言い渡した事例。
【要旨】 暴力団幹部である被告人において、配下の組員らが自分の警護のためにけん銃等を所持していることを明示的又は黙示的に認識し、これを容認(許容)していたと認めることができるならば、親分である被告人が子分らと意思を相通じた上で子分らによるけん銃等の所持の犯行を利用、支配して自己の身の安全を守るという利益を享受した、つまり、被告人において「自己の犯罪として」けん銃等を共謀して所持したと評価することが可能であるから、共謀の事実を認定することができるが、被告人と前記組員らとがけん銃等の所持について共謀していたことを裏付ける直接的証拠はなく、謀議メモ等の謀議を間接的に裏付ける証拠も存在しない等の本件事情の下では、被告人において、前記組員らがけん銃等を所持して被告人を警護していたことを認識し、これを認証(許容)していたとするには、なお合理的な疑いが残り、被告人が前記組員と共謀して拳銃等を所持したとの証明がないといわざるを得ないとして、無罪を言い渡した。

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【上告審】最決平成17年11月29日最高裁判所裁判集刑事288号543頁
【事件名】 銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件事件
【判示事項】 暴力団組長を警護するための配下組員らによるけん銃等の所持につき同組長に共謀共同正犯の成立を認めた控訴審の判断が是認された事例
【裁判結果】 棄却
【裁判官】 島田仁郎 横尾和子 甲斐中辰夫 泉徳治 才口千晴
【参照法令】 刑事訴訟法411条/刑法60条
【引用判例】①最高裁判所大法廷 昭和24年(新れ)第22号 昭和25年9月27日
② 最高裁判所大法廷 昭和24年(れ)第59号 昭和25年11月8日
③ 最高裁判所第二小法廷 昭和45年(あ)第1552号 昭和45年12月18日
④ 最高裁判所第三小法廷 昭和47年(あ)第2639号 昭和48年3月23日
⑤ 最高裁判所第三小法廷 昭和48年(あ)第2922号 昭和49年 6月20日
銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
最高裁判所第一小法廷平成16年(あ)第807号
平成17年11月29日決定
       主   文
本件上告を棄却する。
       理   由
 弁護人浦功ほかの上告趣意のうち,憲法39条違反をいう点は,検察官の上訴が同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問うものでないことは,当審の累次の判例により極めて明らかであるから(最高裁昭和24年新(れ)第22号同25年9月27日大法廷判決・刑集4巻9号1805頁、最高裁昭和24年(れ)第59号同25年11月8日大法廷判決・刑集4巻11号2215頁,最高裁昭和45年(あ)第1552号同年12月18日第二小法廷判決・裁判集刑事178号1063頁,最高裁昭和47年(あ)第2639号同48年3月23日第三小法廷決定・裁判集刑事186号495頁,最高裁昭和48年(あ)第2922号同49年6月20日第三小法廷決定・裁判集刑事192号783頁等参照),所論は前提を欠き,判例違反をいう点は,いずれも事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,再審事由の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 また,所論にかんがみ記録を精査しても,同法411条を適用すべきものとは認められない(被告人は,本件当時,配下の組員らが被告人に同行するに当たり,そのうち一部の者が被告人を警護するためけん銃等を携帯所持していることを,概括的とはいえ確定的に認識し認容していたものであり,実質的にはこれらの者に本件けん銃等を所持させていたと評し得るなどとして,本件けん銃等の携帯所持について被告人に共謀共同正犯が成立するとした原判断は,正当として是認できる。)。 
 よって,同法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
平成17年11月29日
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 島田仁郎 裁判官 横尾和子 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 泉徳治 裁判官 才口千晴

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by strafrecht_bt | 2013-06-27 16:20 | 刑法演習


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