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2013年 06月 27日

演習問題

〔設例〕 以下の事例に基づき、(1)国際旅行連盟(ITA)が実在しない架空の団体であった場合と(2)実際にITAが実在しており、甲がその機関の承諾をえて国際運転免許書を発券していた場合のそれぞれについての甲の罪責につき、具体的な事実を適示しつつ論じなさい(特別法違反の点を除く。)。
1. 甲は、インターネット上の掲示板に「メキシコ政府公認の機関が発行する国際免許書を格安で即時販売します!」という広告を出し、その広告を見てそれが合法的な国際免許書であると信じ、メールで申し込みをしてきたVに販売する目的で、メキシコにある「国際旅行連盟」(インターナショナル・ツーリング・アライアンス。以下ITA。)なる団体が発行する国際運転免許証様の文書1通を作成した。
2.本件国際運転免許証様の物は、大きさが縦約153mm、横約106mmの白色冊子型のもので、その表紙には英語と仏語で「国際自動車交通」、「国際運転免許」、「1949年9月19日の国際道路交通に関する条約」(国際連合)との記載とITAとの文字が記載されたスタンプが印字されている。また、その裏表紙には有効期間等が、2頁目以降には英語、日本語、フランス語等による免許の種別や内容、また、英語による加盟国の一覧表等がそれぞれ記載され、さらに、最終頁にはVの姓名等の記載があり、Vの写真が貼付されていた。
3. なお「1949年9月19日の国際道路交通に関する条約」は通常「ジュネーブ条約」と呼ばれており、同条約の附属書10によれば、同条約に基づく国際運転免許証の様式は、縦148mm、横105mmの大きさで、表紙が灰色、各頁が白色と定められており、表紙には発給国の一又は二以上の国語で「国際自動車交通」、「国際運転免許証」の文字のほか、「国際道路交通に関する条約の締結年月日」、「発給国名」、「発給地名」、「発給年月日」を記載し、さらに当局又は権限を与えられた団体の署名又はシールを押捺し、追補の頁には発給国の法令で定める言語や国際連合の公用語等の言語による免許の種別や内容等を記載し、免許保有者の写真を貼付するものとされている。我が国はジュネーブ条約の締約国であり、同条約に基づいて発給された国際運転免許証は、我が国において効力を有するが、ジュネーブ条約は、締約国若しくはその下部機構の権限ある当局又はその当局が正当に権限を与えた団体でなければ、同条約に基づいて国際運転免許証を発給することができない旨規定している。
4. 甲はメキシコ合衆国に実在する民間団体であるITAから本件文書の作成を委託されていた旨から本件文書の作成を委託されていた旨主張しているが、ITAなる団体がジュネーブ条約に基づきその締約国等から国際運転免許証の発給権限を与えられた事実はなく、甲もこのことを認識していた。
5. 注文者Vは、注文後、この国際運転免許書の効力を疑問を持ち、メキシコ大使館に問い合わせたところ、ITAをメキシコ政府が公認しているというような事実はないという回答があったので、代金の支払いをせず、警察にこの件を通報した。
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by strafrecht_bt | 2013-06-27 14:25 | 刑法演習


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