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2013年 07月 19日

演習問題

【問題】以下の事例に基づき、2、3の行為に関するAおよびBの罪責につき、具体的な事実を適示しつつ論じなさい(特別法違反の点を除く。)。

1 Aは、いわゆるブラック企業の経営者で、最近は福祉業界にも進出して、莫大な資産を築き上げていた。Aには非常に稀なX病という難病に罹った3歳の息子Cがいて、医師からは現在の医療水準では治療法がないと告げられていた。一方、Bは、無免許であるが、天才的外科医として知られ、他では助かる見込みがないとされた難病の患者から高額の治療費を取って手術を行っていた。
2 ある日、週刊誌でAの息子Cの病気に関する記事を読んだBは、Aに電話をかけ、「X病の手術が出来るのは、世界で私しかいない。いま手術を受けないと,息子さんの命は1月ももたないだろう。」と告げ、Cを手術し、成功すれば,10億円を支払うようもちかけた。Aは、別の医師からもCの余命はあと数週間と告知されたこともあり、その申し出に応じ、手術が成功したことを条件に10億を支払うことを約束した。しかしAは内心では、このような違法な手術に10億円の報酬を支払う必要はないと考えていた。BのCへの手術は成功し、BはAに対して10億円を要求したが、Aは、「違法な無免許医療行為を行っていることを警察に告発するぞ。」と告げたので、Bはもう日本国内では無免許医療行為はできなくなると考え、Y国へ出国した。
3 Y国で医師免許を取得したBは、同国での手術実績が国際的に非常に高く評価されたこともあって5年後に日本の国立大学法人O大学医学部に教授として招聘された。Cは、その後X病は完治したが、今度は心臓病に罹患し、緊急に手術が必要な状態になり、O大学病院に入院した。当初執刀は同大学のD准教授が行う予定であったが、AがBによる執刀を希望したので、BはO大学医学部に外部資金として50億円を「寄付」すれば、自分が執刀すると持ちかけた。Aは、同大学に外部資金として50億円を支払い、B教授による手術が行われ、Cは再び一命をとりとめた。 



1 恐喝罪における不作為を内容にする脅迫
本事例において自分が手術しないとCが死亡するという事実の告知は(それは真実であるが)はたして恐喝罪における脅迫といえるであろうか。一般に脅迫とは人を畏怖させるに足りる害悪の告知(判刑各79)でありかつ行為者がその害悪を支配可能である必要があるとされる。この場合の支配可能性に自分なら救助できるのにしないぞと告知することは含まれるのであろうか。その場合、作為義務の有無とは無関係に脅迫となるのであろうか。作為義務があることが前提だとすると無免許医であるBにも作為義務があるといえるかが問題となろう。
2 Aによる2項恐喝の成否
これはいわゆる権利行使と恐喝の問題(判刑各293)と関連しており、Bが無免許で医療行為を行っていることを告発する権利をAが有しているが、それを債務免除しないとその権利を行使するぞということが脅迫にあたるかがもんだいとなる(また本件においてはそもそもBの債権が有効かどうか、それが2項犯罪の成否にどのように関係するかも問題となろう)。
3 第3者供賄罪(197条の2)の成否
法人への賄賂の供与についても本罪の成立を認めるのが判例(判刑各599)請託の有無、外部資金として寄付することと執刀を依頼することとの対価関係などが問題となる。
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by strafrecht_bt | 2013-07-19 07:23 | 刑法演習


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