2011年 07月 08日
短答式試験問題集[刑事系科目] [刑事系科目] 〔第1問〕(配点:2) 次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選びなさい。(解答 欄は,[No.1],[No.2]順不同) 1.甲は,乙から商品を購入する際,偽造通貨を真正な通貨のように装って乙に代金として交付 した。甲には詐欺罪と偽造通貨行使罪が成立し,両罪は観念的競合となる。 2.甲は,自動販売機に投入して飲料水と釣銭を不正に得る目的で,外国硬貨の周囲を削って5 00円硬貨と同じ大きさにした。甲には通貨偽造罪が成立する。 3.甲は,警察官から道路交通法違反(無免許運転)の疑いで取調べを受けた際,交通事件原票 中の供述書欄に,あらかじめ承諾を得ていた実兄乙の名義で署名指印した。甲には有印私文書 偽造罪が成立する。 4.甲は,当選金を得る目的で,外れた宝くじの番号を当選番号に改ざんした。甲には有印私文 書変造罪が成立する。 5.甲は,運転中に警察官に免許証の提示を求められたときに提示するつもりで,偽造された自 動車運転免許証を携帯して自動車の運転を開始した。甲には偽造公文書行使罪は成立しない。 〔第2問〕(配点:3)因果関係 次のアからオまでの各事例を判例の立場に従って検討し,( )内の甲の行為とVの死亡との間 に因果関係が認められる場合には1を,認められない場合には2を選びなさい。(解答欄は,アか らオの順に[No.3]から[No.7]) ア.甲は,深夜,高速道路上で自動車(甲車)を運転中,大型トレーラー(乙車)を運転中の乙 とトラブルになり,乙車の進路を妨害した上,追越車線上に乙車を停止させた。甲は,甲車か ら降り,乙を降車させた上,路上で乙に暴行を加えた後,甲車を運転して立ち去った。乙は, 甲が立ち去った後,甲に奪われないためにズボンのポケットにエンジンキーを入れていたのを 失念し,乙車を追越車線上に停車させたまま,エンジンキーを探していた。甲が立ち去ってか ら約5分後,後方から自動車を運転してきたVは,乙車を発見するのが遅れて自車を追突させ, Vはそれにより死亡した。(甲が乙車を追越車線上に停止させた行為)[No.3] イ.甲は,人通りの多い路上でVとけんかになり,Vの顔面を殴打したところ,Vは路上に転倒 し,脳震とうを起こして一時的に意識を失った。甲がVを放置して逃走した後,日頃からVに 恨みを持っていた乙が通り掛かり,意識を失っているVの腹部を多数回足で蹴ったところ,V は乙のこの暴行で生じた内臓の出血により死亡した。(甲がVの顔面を殴打して転倒させた行 為)[No.4] ウ.甲は,高速道路のパーキングエリアに駐車中の自動車内で,V女と口論になり,感情が高ぶ ってV女の顔面を平手で1回殴打した。V女は,腹を立てて一人で帰宅しようと考え,車外に 出て,高速道路の本線を横断し,反対車線側に設置された高速バスの停留所に行こうとしたと ころ,本線上を走行してきた乙運転の自動車にはねられ,全身打撲により死亡した。(甲が車 内でV女を殴打した行為)[No.5] エ.甲は,Vを不法に逮捕した上,自動車後部のトランク内にVを監禁した状態で同車を発進さ せ,信号待ちのため路上で停車中,居眠り運転をしていた乙が自車を甲の運転する車両に追突 させたため,Vは追突による全身打撲により死亡した。(甲が運転中の自動車のトランク内に Vを監禁していた行為)[No.6] オ.甲は,Vの後頸部に割れたビール瓶を突き刺し,Vに重篤な頸部の血管損傷等の傷害を負わ せたため,Vは病院に搬送された。Vは,病院で手術を受け,容体が一旦は安定したが,医師 からなお予断を許さないから安静を続けるように指示されていたにもかかわらず,医師の指示 に従わずに病室内を動き回ったため,当初の傷害の悪化による脳機能障害により死亡した。(甲 がVの後頸部をビール瓶で突き刺した行為)[No.7] 〔第3問〕(配点:2)詐欺罪 次の1から5までの各事例における甲の罪責について判例の立場に従って検討し,乙に対する詐欺罪(刑法第246条)が甲に成立しないものを2個選びなさい。(解答欄は,[No.8],[No.9] 順不同) 1.甲は,乙とトランプ賭博を行った際,乙の手札の内容が分かるよう不正な細工を施したトラ ンプカードを用いて乙を負けさせ,乙に100万円の支払債務を負担させた。 2.甲は,15歳の乙がふだんから多額の現金を持ち歩いているのを知っていたことから,同人 の知識や思慮が足りないことに乗じて現金を手に入れようと考え,乙に対し,借りた現金を返 す意思もないのに返す意思があるように装って10万円の借金を申し込み,これを誤信した乙 から現金10万円の交付を受けた。 3.甲は,乙宅の金品を手に入れようと考え,乙宅で乙と歓談中,「火事だ。」と嘘を言い,乙が その旨誤信して外に逃げた隙に乙宅から現金を持ち去った。 4.甲は,パチンコ店において,通常の方法によってパチンコ台で遊技しているように装って同 店従業員乙の目を欺き,特殊な器具を使ってパチンコ台を誤作動させてパチンコ玉を排出さ せ,その占有を取得した。 5.甲は,乙に対し,乙の居宅は耐震補強工事をしないと地震の際に危険である旨嘘を言い,そ の旨乙を誤信させて必要のない工事契約を締結させたが,乙には資金がなかったことから,乙 が甲の妻丙が経営する家具店から家具を購入したように仮装して,その購入代金について乙と 信販会社との間で立替払契約を締結させ,これに基づき,同信販会社から丙名義の預金口座に 工事代金相当額の振込みを受けた。 〔第4問〕(配点:2) 学生Aと学生Bは,次の【事例】について,後記【会話】のとおり議論している。【会話】中の ①から⑦の( )内に,後記aからnまでの【語句群】から適切な語句を入れた場合,( )内に 入るものの組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[No.10]) 【事例】 甲は,過去数回,飲酒酩酊の上,正常な運転ができない状態で自動車を運転し,物損事故を起 こして運転免許取消処分を受けていたが,運転免許を再取得しないまま,自動車の運転を続けて いた。 ある日,甲は,自動車を運転して居酒屋に行き,同居酒屋で飲酒し始めたが,仮に酩酊して正 常な運転ができない状態になっても,自動車を運転して帰宅するつもりであった。 甲は,同居酒屋で日本酒1升を飲み,酩酊して是非善悪の識別能力及びその識別に従って行動 を制御する能力を失った状態で,帰宅するために自動車の運転を開始した。しかし,甲は,飲酒 酩酊により正常な運転ができなかったため,自車を歩道上に乗り上げさせて歩行中の乙を跳ね飛 ばし,乙を死亡させた。 【会話】 学生A.この事例は,構成要件としては,(①)罪に当てはまりそうだけど,甲は,運転開始時, 是非善悪の識別能力及びその識別に従って行動を制御する能力を失った状態だね。 学生B.そうすると,運転開始時に甲は(②)がなかったことになるから,甲は不可罰になるの だろうか。 学生A.甲が(②)に影響が出ない程度に飲酒して,正常な運転が困難な状態で自動車を運転し ていたら(①)罪が成立するのに,この事例が不可罰になるなんて納得できないな。 学生B.こういう場合に,甲の可罰性を根拠付ける理論として,(③)があったね。 学生A.確か「直接結果を惹起した行為の際には(②)がなくても,その原因となった行為の際 に完全な(②)があれば,完全な責任が問いうる。」という理論だったよね。 学生B.この理論の根拠は何だろう。 学生A.(④)を維持しつつ,構成要件該当事実を原因行為まで遡及させる立場と,(④)の例外 を認め,責任だけを原因行為時に遡及させる立場があるよね。 学生B.(②)を欠いた自分を道具として利用すると捉え,(⑤)と同様に考える見解は,前者の 立場に分類されるね。 学生A.だけど,甲が乙を自動車ではねた時点で甲自身が道具といえるか問題となる場合とし て,甲が(⑥)だった場合があるね。 学生B.確かに,道具といえるか問題があるね。判例は,(⑥)の場合,(③)の理論を(⑦)よ ね。 【語句群】 a.業務上過失致死b.危険運転致死c.責任能力d.行為能力 e.原因において違法な行為f.原因において自由な行為 g.行為と責任の同時存在の原則h.罪刑法定主義i.共謀共同正犯 j.間接正犯k.心神喪失l.心神耗弱m.適用している n.適用していない 1.①a ②c ③e ④g ⑤j ⑥l ⑦m 2.①a ②d ③f ④g ⑤i ⑥l ⑦n 3.①b ②c ③f ④g ⑤j ⑥l ⑦m 4.①b ②c ③f ④h ⑤i ⑥k ⑦n 5.①b ②d ③e ④g ⑤j ⑥k ⑦m 〔第5問〕(配点:3)危険運転致死傷罪 次の1から5までの各事例における甲の罪責について,判例の立場に従って検討し,甲に危険運 転致傷罪が成立するものを2個選びなさい。(解答欄は,[No.11],[No.12]順不同) 1.甲は,自動車を運転中,前方の交差点に設置された対面信号機が赤色表示に変わったのに気 付かず,時速約50キロメートルで同交差点に進入したところ,歩行者用信号機の青色表示に 従って前方の横断歩道上を歩行していた乙に自車を衝突させ,乙に傷害を負わせた。 2.甲は,乙を助手席に同乗させて雨の降る山道を自動車で走行中,指定最高速度が時速40キ ロメートルであることや,降雨のため路面が滑りやすい状況であることを認識しつつも,対向 車もなかったので事故を起こすことはないだろうと思い,時速約100キロメートルの速度で 急カーブに進入したところ,後輪が滑走したために同カーブを曲がりきれず,自車を道路脇の 樹木に衝突させ,乙に傷害を負わせた。 3.甲は,飲酒の影響で歩行が困難な状態であることを認識しながら自動車の運転を開始し,運 転開始後も自車が激しく蛇行していることを認識しながらも,運転技術に自信があったので, 事故を起こすことはないだろうと思い運転を継続したところ,飲酒の影響により,自車を蛇行 させて,道路の右脇を歩行していた乙に衝突させ,乙に傷害を負わせた。 4.甲は,交通違反を繰り返して自動車運転免許の取消処分を受けていたものの,自動車の運転 経験が長く運転技術に自信があったので,事故を起こすことはないだろうと思って自動車の運 転を始めたが,運転中脇見をしてハンドル操作を誤り,自車を対向車線に進出させて乙運転の 対向車と衝突させ,乙に傷害を負わせた。 5.甲は,片側1車線の道路を自動車を運転して進行中,時速約50キロメートルで走行する乙 運転の先行車を追い越すに当たり,対向車両が接近しており,追越しを完了させるには乙車の 直前に進入する必要があったので,同車の通行を妨害することになるかもしれないと思いつ つ,対向車線に自車を進出させて追越しを開始し,乙車の直前に自車を進入させたところ,乙 が驚いてハンドルを左に切り,乙車をガードレールに衝突させ,乙に傷害を負わせた。 〔第6問〕(配点:2)罪数 罪数に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれ か。(解答欄は,[No.13]) 1.甲は,夜間,車道上にロープを張って,車道を閉塞したところ,自動二輪車を運転して同所 を通り掛かった乙がこれに気付かないまま同ロープに引っ掛かり,転倒して負傷した。この場 合,甲に乙が負傷をすることについて故意があれば,甲には往来妨害罪と傷害罪が成立し,両 罪は牽連犯となる。 2.甲は,乙を殺害する目的で乙方に侵入し,屋内にいた乙を殺害した上,たまたま屋内に居合 わせた丙及び丁も殺害した。この場合,甲には,住居侵入罪並びに乙,丙及び丁に対する殺人 罪が成立し,住居侵入罪と乙に対する殺人罪が牽連犯として一罪となり,丙及び丁に対する殺 人罪と併合罪になる。 3.甲は,眼鏡を掛けた乙の顔面を,眼鏡の上から拳で殴打し,眼鏡を損壊するとともに,乙に 全治1週間を要する顔面打撲の傷害を負わせた。この場合,甲には傷害罪と器物損壊罪が成立 し,両罪は併合罪となる。 4.甲は,真実は,自己の経営する会社の運転資金に使う目的で,質権を設定するつもりもない のに,乙に対して,「2000万円をA銀行の甲名義預金口座に振り込んでほしい。振り込ま れた2000万円については,見せ金として使用するので,口座から引き出さないし,振込み 後,質権も設定する。」などと嘘を言い,これを信じた乙は,A銀行の甲名義預金口座に20 00万円を振り込んだ。その数日後,甲は,同預金に関するA銀行名義の質権設定承諾書1 通を偽造し,乙に交付した。この場合,甲には詐欺罪,有印私文書偽造及び同行使罪が成立 し,これらは牽連犯として一罪となる。 5.甲は,乙を監禁した上で現金を恐喝しようと企て,乙をマンションの一室に監禁し,暴行・ 脅迫を加えて現金を脅し取った。この場合,甲には監禁罪と恐喝罪が成立し,両罪は併合罪と なる。 〔第7問〕(配点:3)強盗殺人罪 強盗殺人罪に関する次の【見解】A説ないしC説に従って後記【事例】ⅠないしⅢにおける甲の 罪責を検討し,後記1から5までの【記述】のうち,正しいものを2個選びなさい。(解答欄は,[No.14],[No.15]順不同) 【見解】 強盗殺人罪が成立するためには, A説:殺人行為が強盗の機会に行われなければならないとする。 B説:殺人行為が強盗の手段でなければならないとする。 C説:殺人行為が強盗の手段である場合に限らず,事後強盗(刑法第238条)類似の状況にお ける殺人行為も含むとする。 【事例】 Ⅰ.甲は,強盗の目的で,乙に対し,持っていたナイフを突き付け,「金を出せ。出さなかった ら殺す。」などと申し向け,反抗を抑圧された乙から現金を奪い取った後,逃走しようとした が,乙に追跡され,犯行現場から約10メートル逃げたところで,捕まらないようにするため, 殺意をもって乙の胸部を刃物で突き刺し,乙を即死させた。 Ⅱ.甲は,乙所有の自動車1台を窃取し,犯行翌日,同車を犯行場所から約10キロメートル離 れた場所で駐車させ,用事を済ませた後,同車に戻ってきたところを乙に発見され,同車を放 置して逃走した。甲は,乙に追跡されたので,捕まらないようにするため,殺意をもって乙の 胸部を刃物で突き刺し,乙を即死させた。 Ⅲ.甲は,乙方において,乙をロープで縛り上げた上,乙所有の現金を奪い取った後,乙方から 逃走しようとしたが,乙方玄関先において,たまたま乙方を訪問した丙と鉢合わせとなり,丙 が悲鳴を上げたことから,犯行の発覚を恐れ,殺意をもって丙の胸部を刃物で突き刺し,丙を 即死させた。 【記述】 1.A説によれば,事例Ⅰでは強盗殺人罪が成立する。 2.A説によれば,事例Ⅲでは強盗殺人罪は成立しない。 3.B説によれば,事例Ⅱでは強盗殺人罪は成立しない。 4.B説によれば,事例Ⅲでは強盗殺人罪が成立する。 5.C説によれば,事例Ⅱでは強盗殺人罪が成立する。 〔第8問〕(配点:2) 次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄 は,[No.16]) 1.甲は,昼間の電車内において,多数の乗客が見ている状態で,恋人の乙が着ていたコートの 前を広げさせてその陰部を露出させた場面を写真撮影した。同写真撮影について乙があらかじ め甲に対して承諾していた場合,公然わいせつ罪の違法性が阻却され,甲には同罪の共同正犯 は成立しない。 2.甲は,重病で苦しんでいる妻乙に同情して,同人の首を絞めて窒息死させた。乙の殺害につ いて乙があらかじめ甲に対して承諾していた場合,甲の行為は,いずれの構成要件にも該当せ ず,犯罪は成立しない。 3.甲は,乙が保険金をだまし取るのに協力する目的で,乙の右手の親指を包丁で切断した。親 指の切断について乙があらかじめ甲に対して承諾していた場合,甲の行為は,傷害罪の構成要 件に該当せず,同罪は成立しない。 4.甲は,11歳の乙の陰部を指で弄ぶなどのわいせつな行為を行った。わいせつな行為をする ことについて乙があらかじめ甲に対して承諾していた場合,甲の行為は,強制わいせつ罪の構 成要件に該当せず,同罪は成立しない。 5.甲は,妊娠している妻乙と話し合った上,薬物を使用して堕胎させた。堕胎について乙があ らかじめ甲に対して承諾していた場合,甲の行為は,不同意堕胎罪の構成要件に該当せず,同 罪は成立しない。 〔第9問〕(配点:3) 次の【事例】における甲の罪責に関する後記1から5までの【記述】を判例の立場に従って検討 し,正しいものを2個選びなさい(ただし,事例において,公共の危険は発生したものとする。)。 (解答欄は,[No.17],[No.18]順不同) 【事例】 甲は,乙が所有し単身で居住している木造家屋の玄関前において,同所に駐車中の乙所有の自 動二輪車の車体にガソリンをまいた上,新聞紙にライターで点火し,これを同車に投げ付け,同 車を炎上させたところ,火が上記家屋に燃え移って全焼した。 【記述】 1.火が家屋に燃え移ることを甲が認識・認容していなかった場合,同家屋に対する延焼罪が成 立する。 2.甲は,火が家屋に燃え移ることを認識・認容していたが,同家屋は居住する者のいない空き 家であって同家屋内には誰もいないものと誤信していた場合,他人所有非現住建造物等放火罪 が成立する。 3.火が家屋に燃え移ること及び同家屋に乙が居住していることを甲が認識・認容していた場合 において,甲と乙が,同家屋に掛けられていた火災保険の保険金をだまし取るため,放火する ことを共謀していたときは,他人所有現住建造物等放火罪が成立する。 4.火が家屋に燃え移ること及び同家屋に乙が居住していることを甲が認識・認容していた場合 において,現実には同家屋内に乙がいたのに,乙は外出中で同家屋内には誰もいないものと甲 が誤信していたときは,現住建造物等放火罪が成立する。 5.甲は,火が家屋に燃え移ることを認識・認容していただけでなく,同家屋内で就寝中の乙が 焼け死ぬことを認識・認容していた場合,現実に乙が焼死したときには,現住建造物等放火罪 と殺人罪が成立し,後者は前者に吸収される。 〔第10問〕(配点:3)実行の着手 次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し,正しい場合には1を,誤っている場合 には2を選びなさい。(解答欄は,アからオの順に[No.19]から[No.23]) ア.甲は,乙を毒殺する目的で毒入り菓子をお歳暮として郵送するため,郵便局の窓口でその菓 子を包んだ小包の郵送を申し込んだが,誤って実際には存在しない住所を宛先として記載した ために同小包はどこにも配達されずに甲宅に送り返された。この場合,甲には殺人未遂罪が成 立する。[No.19] イ.甲は,自己が居住する建物に付した火災保険の保険金を保険会社からだまし取る目的で同建 物に放火したが,保険金を請求するに至らなかった。この場合,甲には詐欺未遂罪は成立しな い。[No.20] ウ.甲は,乙の住居内に侵入し,タンスの引き出しを開けるなどして金目の物を探したが,見付 けることができないうちに乙に発見された。甲は,逮捕を免れるため,乙に対して包丁を示し て脅迫し,屋外に逃走したが,通報により駆けつけた警察官に現場付近で逮捕された。この場 合,甲には事後強盗未遂罪が成立する。[No.21] エ.甲は,勾留状の執行により拘禁されている未決の被告人であったところ,逃走の目的で拘禁 場の換気孔の周辺の壁部分を削り取って損壊したが,いまだ脱出可能な穴を開けるに至らず, 逃走行為自体に及ばないうちに検挙された。この場合,甲には加重逃走未遂罪は成立しない。 [No.22] オ.甲は,他人が居住する建物に放火することを企て,30分後に発火して導火材を経て同建物 に火が燃え移るように設定した時限発火装置を同建物に設置したが,設定した時刻が到来する 前に発覚して同装置の発火に至らなかった。この場合,甲には現住建造物等放火未遂罪は成立 しない。[No.23]
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