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2014年 08月 31日

2013年予備試験短答式問題

短答式試験問題集
[刑法]
〔第1問〕(配点:2)
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄は,[№1])
1.法人事業主は,その従業者が法人の業務に関して行った犯罪行為について,両罰規定が定められている場合には,選任監督上の過失がなくても刑事責任を負う。
2.法人事業主を両罰規定により処罰するためには,現実に犯罪行為を行った従業者も処罰されなければならない。
3.法人事業主が処罰される場合には,その代表者も処罰される。
4.刑法各則に規定された行為の主体には,法人は含まれない。
5.刑法各則に規定された行為の客体には,法人は含まれない。
〔第2問〕(配点:2)
次の【事案及び判旨】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,判旨の理解として誤っているものはどれか。(解答欄は,[№2])
【事案及び判旨】
精神科の医師である甲が,犯行時16歳の少年Aが犯した殺人罪に関する保護事件が係属している家庭裁判所からAの精神鑑定を命ぜられた際,鑑定資料として家庭裁判所から交付されたAの捜査機関に対する供述調書の謄本を新聞記者に閲覧させたため,Aが甲を秘密漏示罪で告訴した事案につき,裁判所は,甲の行為は秘密漏示罪に該当し,訴訟条件にも欠けるところはない旨判示し,甲に有罪判決を言い渡した。
【記述】
1.この判旨は,甲が医師の身分を有していることを前提に秘密漏示罪の成立を認めたものである。
2.この判旨は,裁判手続等において後に公開される可能性のある事項であっても,秘密漏示罪における「人の秘密」として保護の対象になり得ると考えている。
3.この判旨は,甲が医師の業務としてAの精神鑑定を行ったことを前提に秘密漏示罪の成立を認めたものである。
4.この判旨は,秘密漏示罪における「人の秘密」について,Aの秘密ではなく,甲に鑑定を命じた家庭裁判所の秘密であると考えている。
5.この判旨からは,秘密漏示罪の「人の秘密」の主体が,自然人のみならず,法人・団体を含むかどうかは必ずしも明らかではない。
〔第3問〕(配点:3)
正当防衛に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,誤っているものを2個選びなさい。(解答欄は,[№3],[№4]順不同)
1.正当防衛について侵害の急迫性を要件としているのは,予期された侵害を避けるべき義務を課する趣旨ではないが,単に予期された侵害を避けなかったというにとどまらず,その機会を利用し積極的に相手に対して加害行為をする意思で侵害に臨んだときは,侵害の急迫性の要件を欠く結果,そのような侵害に対する反撃行為に正当防衛が認められることはない。
2.憎悪や怒りの念を抱いて侵害者に対する反撃行為に及んだ場合には,防衛の意思を欠く結果,防衛のための行為と認められることはない。
3.相手からの侵害が,それに先立つ自らの攻撃によって触発されたものである場合には,不正の行為により自ら侵害を招いたことになるから,相手からの侵害が急迫性を欠く結果,これに対する反撃行為に正当防衛が認められることはない。
4.刑法第36条にいう「権利」には,生命,身体,自由のみならず名誉や財産といった個人的法益が含まれるので,自己の財産権への侵害に対して相手の身体の安全を侵害する反撃行為に及んでも正当防衛となり得る。
5.正当防衛における「やむを得ずにした」とは,急迫不正の侵害に対する反撃行為が,自己又は他人の権利を防衛する手段として必要最小限度のものであること,すなわち反撃行為が侵害に対する防衛手段として相当性を有するものであることを意味し,反撃行為が防衛手段として相当性を有する以上,その反撃行為により生じた結果がたまたま侵害されようとした法益より大であっても,その反撃行為が正当防衛でなくなるものではない。
〔第4問〕(配点:2)
文書偽造の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄は,[№5])
1.甲は,A公立高校を中途退学した乙から「父親に見せて安心させたい。それ以外には使わないからA公立高校の卒業証書を作ってくれ。」と頼まれ,乙の父親に呈示させる目的で,A公立高校校長丙名義の卒業証書を丙に無断で作成した。甲には公文書偽造罪は成立しない。
2.甲は,自己の所有する土地の登記記録を改ざんしようと考え,法務局の担当登記官である乙にその情を打ち明けて記録の改ざんを依頼し,乙に登記簿の磁気ディスクに内容虚偽の記録をしてもらった。甲には電磁的公正証書原本不実記録罪,同供用罪の共同正犯が成立する。
3.甲は,行使の目的で,高齢のため視力が衰え文字の判読が十分にできない乙に対し,公害反対の署名であると偽り,その旨誤信した乙に,甲を貸主,乙を借主とする100万円の借用証書の借主欄に署名押印させた。甲には私文書偽造罪が成立する。
4.甲と乙は,警察署に提出する目的で,県立病院の医師丙に内容虚偽の診断書を作成させる旨共謀し,甲が丙にこれを依頼したが,丙に断られたため,甲は,乙に相談することなく自ら県立病院医師丙名義で内容虚偽の診断書を作成した。乙には虚偽診断書作成罪の共同正犯が成立する。
5.甲は,行使の目的で,正規の国際運転免許証を発給する権限のない民間団体乙名義で,外観が正規の国際運転免許証に酷似する文書を作成した。甲は,乙からその文書の作成権限を与えられていたが,乙に正規の国際運転免許証を発給する権限がないことは知っていた。甲には私文書偽造罪は成立しない。
〔第5問〕(配点:2)
次の【事例】及び【判旨】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,正しいものはどれか。(解答欄は,[№6])
【事例】
甲は,手の平で患部をたたいてエネルギーを患者に通すことにより自己治癒力を高めるとの独自の治療を施す特別の能力を有すると称していたが,その能力を信奉していたAから,脳内出血を発症した親族Bの治療を頼まれ,意識障害があり継続的な点滴等の入院治療が必要な状態にあったBを入院中の病院から遠く離れた甲の寄宿先ホテルの部屋に連れてくるようAに指示した上,実際に連れてこられたBの様子を見て,そのままでは死亡する危険があることを認識しながら,上記独自の治療を施すにとどまり,点滴や痰の除去等Bの生命維持に必要な医療措置を受けさせないままBを約1日間放置した結果,Bを痰による気道閉塞に基づく窒息により死亡させた。
【判旨】
甲は,自己の責めに帰すべき事由によりBの生命に具体的な危険を生じさせた上,Bが運び込まれたホテルにおいて,甲を信奉するAから,重篤な状態にあったBに対する手当てを全面的に委ねられた立場にあったものと認められる。その際,甲は,Bの重篤な状態を認識し,これを自らが救命できるとする根拠はなかったのであるから,直ちにBの生命を維持するために必要な医療措置を受けさせる義務を負っていたものというべきである。それにもかかわらず,未必的な殺意をもって,上記医療措置を受けさせないまま放置してBを死亡させた甲には,不作為による殺人罪が成立する。
【記述】
1.Aが甲に対してその特別の能力に基づく治療を行うことを真摯に求めていたという事情があれば,甲にはその治療を行うことについてのみ作為義務が認められるから,この判旨の立場からも殺人罪の成立は否定される。
2.判旨の立場によれば,この事例で甲に患者に対する未必的な殺意が認められなければ,重過失致死罪が成立するにとどまる。
3.判旨は,不作為犯が成立するためには,作為義務違反に加え,既発の状態を積極的に利用する意図が必要であると考えている。
4.判旨は,Aが甲の指示を受けてBを病院から搬出した時点で,甲に殺人罪の実行の着手を認めたものと解される。
5.判旨は,先行行為についての甲の帰責性と甲による引受行為の存在を根拠に,甲のBに対する殺人罪の作為義務を認めたものと解される。
〔第6問〕(配点:4)
次のアからオまでの各事例における甲の罪責について判例の立場に従って検討し,甲に公務執行妨害罪が成立する場合には1を,成立しない場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからオの順に[№7]から[№11])
ア.甲は,県議会の議事が紛糾し,議長乙が休憩を宣言して壇上から降りようとした際,乙の顔面をげんこつで殴った。[№7]
イ.甲は,日本国内にある外国の大使館の職員乙がその大使館の業務に従事していた際,乙の腹部を足で蹴った。[№8]
ウ.甲は,警察官乙から捜索差押許可状に基づき自宅の捜索を受け,覚せい剤入りの注射器を差し押さえられた際,乙の眼前で同注射器を足で踏み付けて壊した。[№9]
エ.甲は,無許可のデモ行進に参加していた際,これを解散させようとした警察官乙に向かって石を1回投げ,その石は乙の頭部付近をかすめたが,乙には命中しなかった。[№10]
オ.甲は,執行官から確定判決に基づき居室明渡しの強制執行を受けていた際,執行官の補助者であった民間人乙の頭部を棒で殴った。[№11]
〔第7問〕(配点:3)
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,誤っているものを2個選びなさい。(解答欄は,[№12],[№13]順不同)
1.暴力団組長甲は,配下組員乙に対し,「もし,Aがこちらの要求を聞き入れなかったら,Aを殺してこい。Aがこちらの要求を聞き入れるのであれば,Aを殺す必要はない。」旨指示し,乙にけん銃を手渡した上,乙を対立する暴力団組員Aのところに行かせた。乙は,Aが要求を聞き入れなかったので,Aをけん銃で射殺した。甲には殺人罪の故意が認められる。
2.甲は,駐車場で他人の所有する自動車に放火し,公共の危険を生じさせた。その際,甲は,公共の危険が発生するとは認識していなかった。甲には建造物等以外放火罪の故意は認められない。
3.甲は,乙から,乙が窃取してきた貴金属類を,乙が盗んできたものかもしれないと思いながら,あえて買い取った。甲には盗品等有償譲受け罪の故意が認められる。
4.覚せい剤が含まれている錠剤を所持していた甲は,同錠剤について,身体に有害で違法な薬物類であるとの認識はあったが,覚せい剤や麻薬類ではないと認識していた。甲には覚せい剤取締法違反(覚せい剤所持)の罪の故意が認められる。
5.甲は,Aを殺害しようと考え,Aに向けてけん銃を発射し,弾丸をAに命中させ,Aを死亡させたが,同弾丸は,Aの身体を貫通し,甲が認識していなかったBにも命中し,Bも死亡した。甲にはA及びBに対する殺人罪の故意が認められる。
〔第8問〕(配点:2)
詐欺の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄は,[№14])
1.国や地方公共団体が所有する財物は,刑法第246条第1項の詐欺罪における「財物」には当たらない。
2.家賃を支払う意思も能力もないのに,これがあるように装って大家をだましてアパートの一室を借り受けた場合,刑法第246条第1項の詐欺罪が成立する。
3.商品買受けの注文の際,代金支払の意思も能力もないのに,そのことを告げることなく,単純に商品買受けの注文をした場合,その注文行為が刑法第246条第1項の詐欺罪における作為による欺罔行為となる。
4.相手方を欺罔して錯誤に陥らせ,これにより相手方から財物の交付を受けたとしても,錯誤に陥ったことに相手方の過失が認められるときには,刑法第246条第1項の詐欺罪は成立しない。
5.知慮浅薄な未成年者を欺罔して錯誤に陥らせ,これにより未成年者から財物の交付を受けた場合,刑法第248条の準詐欺罪が成立する。
〔第9問〕(配点:2)
次の【見解】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,正しいものはどれか。(解答欄は,[№15])
【見解】
恐喝の目的で人を監禁し,その監禁中に同人を脅迫して現金を喝取した場合,監禁罪と恐喝罪が成立し,両者は併合罪の関係になる。
【記述】
1.この見解は,監禁行為と恐喝行為とが社会的に見て一個の行為であると考えている。
2.この見解は,監禁が恐喝の手段として用いられることが類型的に予定されることを根拠としている。
3.この見解は,数個の犯罪の牽連性を,行為者の主観によって判断すべきであると考えている。
4.この見解は,監禁罪と恐喝罪の罪数関係を,判例における逮捕罪と監禁罪の罪数関係と同様に考えている。
5.この見解は,監禁罪と恐喝罪の罪数関係を,判例における監禁罪と殺人罪の罪数関係と同様に考えている。
〔第10問〕(配点:2)
横領の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄は,[№16])
1.横領罪の「占有」とは,物に対して事実上の支配力を有する状態をいい,物に対して法律上の支配力を有する状態を含まない。
2.株式会社の代表取締役には,同社の所有物について,横領罪の「占有」は認められない。
3.横領罪の「物」は,窃盗罪における「財物」と同義であり,不動産は横領罪の客体とはならない。
4.法人の金員を管理する者が,同法人の金員を支出した場合,同支出が商法その他関係法令に照らして違法であっても,横領罪の「不法領得の意思」が認められないことがある。
5.業務上横領罪の「業務」には,社会生活上の地位に基づいて反復継続して行われる事務であれば,いかなる事務も含まれる。
〔第11問〕(配点:2)
責任能力に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄は,[№17])
1.心神喪失とは,精神の障害により,行為の是非を弁識する能力及びこの弁識に従って行動する能力が欠けている場合をいう。
2.心神耗弱とは,精神の障害により,行為の是非を弁識する能力が欠けている若しくは著しく減退している場合,又はこの弁識に従って行動する能力が欠けている若しくは著しく減退している場合をいう。
3.13歳であるが,行為の是非を弁識する能力及びこの弁識に従って行動する能力に欠けるところがない場合,責任能力が認められる。
4.精神鑑定により心神喪失と鑑定された場合には,裁判所は,被告人の責任能力を認めることはできない。
5.精神の障害がなければ,心神喪失は認められない。
〔第12問〕(配点:2)
次の【事例】における甲の罪責に関する後記1から5までの各【記述】を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選びなさい。(解答欄は,[№18],[№19]順不同)
【事例】
甲は,深夜,帰宅しようと歩いていたところ,道端に見ず知らずのAが重傷を負って倒れているのを見付けた。甲は,周囲にA以外の誰もおらず,Aには意識があるものの,動ける状態ではなかったことから,これに乗じて,Aの傍らに落ちていたAのかばんの中から金品を持ち去って自分のものにしようと考え,Aに対し,「もらっていくよ。」と言って,同かばんからAの財布を取り出して自分のかばんの中に入れた上,Aを救護することなくそのまま放置してその場を立ち去った。甲は,自宅に戻り,Aの財布の中を見たところ,現金約1万円のほか,①大きさや重さは五百円硬貨と同じであるものの,中央に穴が開けられ,模様もない円形の金属片10枚,②クレジットカードと同じ大きさであるものの,外観上何ら印刷が施されておらず,4桁の数字が手
書きで書かれ,磁気ストライプらしき黒いテープが貼られているプラスチック製の白色カード1枚を見付けた。甲は,①の金属片はAが自動販売機等で商品を購入する際などに使うつもりで持っていたものだろうと考え,同金属片10枚を1本100円の缶ジュースの自動販売機に順次投入して購入ボタンを押し,出てきたジュース10本と釣銭合計4000円を自分のものにした。
また,②の白色カードは,他人のクレジットカードの磁気情報をコピーして不正に作成されたカードであったが,甲は,そのことを認識した上,同カードに書かれた4桁の数字がその暗証番号に違いないと考え,後日同カードを現金自動預払機に挿入して現金を引き出すつもりで,同カードを自宅に保管しておいた。
【記述】
1.甲が上記重傷を負ったAを放置して立ち去った行為には,単純遺棄罪が成立する。
2.甲が上記Aの財布を自分のかばんに入れて持ち去った行為には,窃盗罪が成立する。
3.甲が上記金属片を自動販売機に投入した行為には,偽造通貨行使罪が成立する。
4.甲が上記金属片を自動販売機に投入してジュースと釣銭を得た行為には,電子計算機使用詐欺罪が成立する。
5.甲が上記白色カードを自宅に保管しておいた行為には,不正電磁的記録カード所持罪が成立する。
〔第13問〕(配点:2)
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄は,[№20])
1.甲は,生活費欲しさから強盗を計画し,12歳の長男乙に対し,Vから現金を強取するよう指示した。乙は,甲の指示に従い,Vに刃物を突き付けて現金を強取した。乙が是非善悪の判断能力を有していたか否か,甲の指示により意思を抑圧されていたか否かにかかわらず,甲には強盗罪の間接正犯が成立する。
2.甲は,通常の判断能力がないVの殺害を計画し,Vに対し,首をつっても仮死状態になるだけであり,必ず生き返るとだまして,Vに首をつらせて窒息死させた。甲には自殺関与罪が成立する。
3.甲と乙は,自分たちのことを日頃ばかにするVを懲らしめてやろうと思い,Vに傷害を負わせる旨共謀した。そして,甲と乙は,それぞれ,Vに対し,日頃の恨みを言いながら,その身体を殴り付けた。Vは,これに応答して甲らを罵った。すると,乙は,Vの発言に腹を立て,殺意をもって,隠し持っていたナイフでVを刺し殺した。乙に殺人罪が成立する場合,甲には,Vに対する殺意がなくても殺人罪の共同正犯が成立する。
4.甲は,V宅に石を投げ付け窓ガラスを割り始めた。これをたまたま見た乙は,自分も窓ガラスを割りたいと思い,甲に気が付かれないよう,V宅に石を投げ付け,甲が割った窓ガラスとは別の窓ガラスを割った。甲と乙には器物損壊罪の共同正犯は成立しない。
5.女性である甲は,甲の男友達である乙との間で,乙がVを強姦する旨共謀した。その後,甲がVを誘い出してVの体を押さえ付け,乙がVを強姦した。乙に強姦罪が成立する場合でも,甲には強姦罪の共同正犯は成立しない。

by strafrecht_bt | 2014-08-31 21:41 | 司法試験予備試験


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