刑法授業補充ブログ

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2016年 04月 07日

刑法演習2(1)

今日から刑法演習2の授業が始まった。このクラスは再履修者クラスなので昨年度の授業で扱った事例問題を復習しながら、市販の問題集などから選んだ類題を解いていくというやり方にした。昨年度の第1回のテーマは「傷害の承継的共同正犯と同時傷害の特則」に関係するものだったので、まず①暴行罪と傷害罪の関係かおころら始め、総論の関連問題として②結果的加重犯(少なくも過失必要説が妥当であると教えたが、判例は不要説をとっており、結論的にこの成立を認めても問題がないと思う場合は、不要説で書いてもいいとしたーただ結論が妥当だと思われない場合には過失必要説をとって限定することができれば、その方が得点は上がると指導した)について、次のような【事例】を挙げた。)
【事例1】甲は、Vの頭を軽く殴ったところVの頭蓋骨は通常よりも薄かったので、Vは頭蓋骨陥没の重傷を負い、死亡した。
次に、③傷害罪の罪数について説明したところ、受講生の罪数論の理解が不十分だと思ったので、罪数論の基礎(一罪と数罪、併合罪、科刑上一罪など)を説明したところ、判例がかすがい効果を認めるのが納得できないのでその根拠を説明してほしいという質問があった。この問題は、そもそも科刑上一罪である観念的競合/牽連犯の根拠をどのように考えるのかということを聞いたところ、観念的競合については一人ずつ3つの行為(3回の決意)をするより、1個の行為だと決意が1回で済むから責任が軽いとの応答があったので次のような【事例】を挙げて反論した。
【事例2】①甲は、A,B,Cの3人を路上で順番に刺殺した。/②乙は、町中に時限装置付きの小型核爆弾を設置し、爆発させ10万人以上の市民を死亡させた。乙の方が責任が軽いといえるか。
現場で直接殺す方が心理的抵抗が大きいので、責任も重いという回答もあったが、それなら次のような場合はどうかと聞いた。
【事例2】③丙は、A,B,Cの3人を銃を装着したドローンをジョイスティックで遠隔操作して順に
殺していった。丙は、①の甲よりも責任は責任が軽いか?
その後、牽連犯についても同様の議論をしたが、責任面で牽連犯が軽くなるという理由は見いだせなかった。以上よりもし科刑上一罪にあまり説得的な理由がないならば、あまりその範囲を拡張して解釈するのは問題であり、併合罪加重が妥当ではない場合は実質的な法条競合や包括一罪するほうが良いのではないかという問題提起をした(ただし54条がある以上、例えば明らかに1つの行為なのに併合罪にするという解釈は罪刑法定主義に反するので、妥当ではなく、牽連犯の基準については判例を覚えてくしかないとして、例として199条と190条、222条の監禁と249条の例を挙げた。)
少し話が脱線したので、傷害罪の承継的共同正犯に関する最近の判例を知っているかと聞いたところ、知らなかったので、最決平成24・11・6(他の者が被害者に暴行を加えて傷害を負わせた後に,被告人が共謀加担した上,更に暴行を加えて被害者の傷害を相当程度重篤化させた場合,被告人は,被告人の共謀及びそれに基づく行為と因果関係を有しない共謀加担前に既に生じていた傷害結果については,傷害罪の共同正犯としての責任を負うことはなく,共謀加担後の傷害を引き起こすに足りる暴行によって傷害の発生に寄与したことについてのみ,傷害罪の共同正犯としての責任を負う。)を詳しく説明し、①因果共犯論との関係、②この事例になぜ207条が適用されなかったのかを解説したところで、時間が来たので、本来検討する予定だった「報復と仲間割れ」井田良・佐伯仁志・橋爪隆・安田拓人『刑法事例演習教材』(2版・2015年)『刑法事例演習教材』25問は次回に行うことにした。
【参考問題】島田聡一郎・小林憲太郎『事例から刑法を考える』(3版・2014年)⓪問(小林)
【新判例】最決平成28・3・24(共犯関係にない二人以上の暴行による傷害致死の事案においていずれかの暴行と死亡との間の因果関係が肯定された場合と刑法207条の適用の可否→肯定)



(1) 被告人A及び同Bは,犯行現場となった本件ビルの4階にあるバーの従業員であり,本件当時も,同店内で接客等の仕事をしていた。被告人Cは,かねて同店に客として来店していたことがあり,本件当日(以下,日時は,特に断らない限り,本件当日である。),被告人Bの誘いを受け,同店で客として飲食していた。
被害者は,午前4時30分頃,女性2名とともに同店を訪れ,客として飲食していたが,代金支払の際,クレジットカードでの決済が思うようにできず,午前6時50分頃までに,一部の支払手続をしたが残額の決済ができなかった。被害者は,いらだった様子になり,残額の支払について話がつかないまま,同店の外に出た。
(2) 被告人A及び同Bは,被害者の後を追って店外に出て,本件ビルの4階エレベーターホールで被害者に追い付き,午前6時50分頃から午前7時10分頃までの間,相互に意思を通じた上で,こもごも,次のような暴行(以下「第1暴行」という。)を加えた。すなわち,被告人Aが,4階エレベーターホールで被害者の背部を蹴って,3階へ至る途中にある階段踊り場付近に転落させ,さらに,被害者をエレベーターに乗せた際,その顔面をエレベーターの壁に打ち付け,4階エレベ
ーターホールに引きずり出すなどし,被告人Bが,同ホールにあったスタンド式灰皿に,被害者の頭部を打ち付けるなどした。その上,被告人Aは,床に仰向けに倒れている被害者の顔面を拳や灰皿の蓋で殴り,顔面あるいは頭部をつかんで床に打ち付けるなどし,被告人Bも,被害者を蹴り,馬乗りになって殴るなどした。
(3) 被告人Cは,午前7時4分頃,4階エレベーターホールに現れ,同店の従業員のDが被告人A及び同Bを制止しようとしている様子を見ていたが,Dと被告人Aが被害者のそばを離れた直後,床に倒れている被害者の背部付近を1回踏み付け,被告人Bに制止されて一旦同店内に戻った。その後,被告人Cは,再度4階エレベーターホールに現れ,被告人A及び同Bが被害者を蹴る様子を眺め,午前7時15分頃,倒れている状態の被害者の背中を1回蹴る暴行を加えた。
(4) 被告人Aは,被害者から運転免許証を取り上げて,同店内に被害者を連れ戻し,飲食代金を支払う旨の示談書に氏名を自書させ,運転免許証のコピーを取るなどした。その後,被告人A及び同Bは,同店内で仕事を続け,被告人Cも同店内でそのまま飲食等を続けた。
(5) 被害者は,しばらく同店内の出入口付近の床に座り込んでいたが,午前7時49分頃,突然,走って店外へ出て行った。Dは,直ちに被害者を追いかけ,本件ビルの4階から3階に至る階段の途中で,被害者に追い付き,取り押さえた。 一方,被告人Cは,午前7時50分頃,電話をするために本件ビルの4階エレベーターホールに行った際,Dが被害者の逃走を阻止しようとしているのを知り,Dが被害者を取り押さえている現場に行った。被告人Cは,その後の午前7時54分頃までにかけて,次のような暴行(以下「第2暴行」という。)を加えた。すなわち,被告人Cは,階段の両側にある手すりを持って,自身の身体を持ち上げ,寝ている体勢の被害者の顔面,頭部,胸部付近を踏み付けた上,被害者の両脚を持ち,3階まで被害者を引きずり下ろし,サッカーボールを蹴るように被害者の頭部や腹部等を数回蹴り,いびきをかき始めた被害者の顔面を蹴り上げるなどした。
(6) 午前7時54分頃,通報を受けた警察官が臨場した時には,被害者は,大きないびきをかき,まぶたや瞳孔に動きがなく,呼びかけても返答がない状態で倒れていた。被害者は,午前8時44分頃,病院に救急搬送され,開頭手術を施行されたが,翌日午前3時54分頃,急性硬膜下血腫に基づく急性脳腫脹のため死亡した。
第1暴行と第2暴行は,そのいずれもが被害者の急性硬膜下血腫の傷害を発生させることが可能なものであるが,被害者の急性硬膜下血腫の傷害が第1暴行と第2暴行のいずれによって生じたのかは不明である。
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by strafrecht_bt | 2016-04-07 13:21 | 刑法演習


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