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2016年 04月 13日

刑法1(刑法総論)第2回講義:罪刑法定主義

今日は体調が悪く調子が良くなかったが、何とか前回の刑罰論の復習をふまえて罪刑法定主義の説明を全部終えることができた。まず、ドイツでは、刑法1条が罪刑法定主義の規定で基本法でも明文で規定されているのに対し、日本の場合はどうかということを質問し、憲法上の根拠規定を確認した。では特に解釈論との関係では判例の不利益的変更の問題について議論したが、その背景となる英米法における判例法主義やコモンロー上の犯罪などについても少し説明した。結論的には日本法においては判例の不遡及的変更をみとめることは難しく、問題の解決は違法性の意識の可能性の欠如による免責によるべきという説(山口・刑法13頁)について意見をもとめたが、反応はあまりよくなく、未修者には少し難しい問題だったかもしれない。類推禁止との関連では、通常、類推解釈ではなく、拡張解釈の例とされている「電気窃盗」の大審院判決(山口・刑法11頁以下)も一種の類推ではないか、245条を注意規定と解するのは「みなす」の語義から見て罪刑法定主義からみて問題はないかということを議論を行ったうえ、① 「甲は、携帯の電池が切れたので、近所のコンビニに行き、雑誌を立ち読みしながら店員に無断で、足元にあったコンセントに接続し充電した。」②「乙は、同じコンビニで雑誌のグルメ情報をスマホで撮影した。」という問題を議論した。有体物説の方が妥当で、情報は窃盗罪の客体には含まれないという意見が多く、また情報は管理可能でも、移転せず複製されるだけなので可動性がないから大判の基準でも「物」とは言えないのでないかなどの意見があった。講義後の質問で①でも立ち読みしたことも管理可能性説によれば窃盗になるのか、その場合情報を正確に覚えていなくても成立するのかという質問があった。
【レジュメ】罪刑法定主義(山口8以下)
【文献】松宮孝明「罪刑法定主義と刑法の解釈」増田豊「罪刑法定主義の現在-特にボン基本法体制下における正統化の試みについて-」法律論叢57巻3号115頁以下
1.法律主義の意義(山口9以下):罰則は法律で定めなければならないとの法律主義の意義を理解し、命令への罰則の委任の限界及び条例における罰則制定の可否について、その概要を説明することができる。
【参照条文】憲法31条(「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」芦部235)、39条(「何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。」)、73条6号( 「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
・・・六  この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。」)
【判例】猿払事件(判例刑法2)(芦部272)、徳島公安条例事件(判例刑法4)(芦部198)
過料などの行政処分はともかく、刑罰を科される行為が都道府県等によって異なるのは妥当か?
(外国の例)アメリカ:州ごとに刑法は全く異なる。連邦刑法は特定の分野に限定 
ドイツ:連邦制を採るが,各ラントは罰則制定権を持たない。
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第1章 刑法の基礎理論
第2節 罪刑法定主義(山口8以下)
【授業内容】
2.類推解釈の禁止(山口11以下):刑法で類推解釈が許されないことの趣旨を理解し、類推解釈と拡張解釈の限界について、具体的事例に即して説明することができる。
【判例】①電気窃盗事件(判例刑法10)ガソリンカー事件(判例刑法11)、
②明文なき未遂犯処罰(最判平成8年2月8日刑集50巻2号221頁(鳥獣捕獲))、
③明文なき過失犯処罰(判例刑法222、223、過失の項目でも後述)
(問)類推解釈と拡張解釈の「論理の違い」(山口11)を説明しなさい。
【文献】増田(可能な語義)
【時間外学習項目】
3.遡及処罰の禁止(山口12以下:事後法の禁止)
*公訴時効の廃止(山口13)
4.明確性の原則(山口14以下):罰則が広すぎるため、又は、あいまい不明確であるために違憲無効とされる理由とその要件
(評価)「合憲性に関する判例の具体的な基準はそれほど厳格だとはいえない」(山口16)
*実体的デュープロセスの理論
5.内容の適正さ(山口16以下)
(1)無害な行為を処罰する罰則
(2)過度に広範な処罰規定
6. 罪刑の均衡(山口18)
【判例】尊属殺違憲判決(最判昭和48年4月4日刑集27巻3号265頁
前年度の講義。



類推禁止に関する私見は次の論文を参照。参考論文「刑法における類推禁止の原則」(上)(下)
鳥獣保護法の「捕獲」についてはその後未遂規定が設けられたが、最高裁の解釈によればこの規定は必要か? 
2水産資源保護法25条(「漁業法第八条第三項 に規定する内水面においては、溯河魚類のうちさけを採捕してはならない。・・・」罰則同37条2号)の「採捕」についても「捕獲」と同様の解釈があてはまるか?(参考判例:最判昭和46年11月16日集刑182号121頁
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by strafrecht_bt | 2016-04-13 00:34 | 刑法Ⅰ(総論)


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