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刑法授業補充ブログ

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2016年 12月 05日

今年の最高裁刑事判例

(1)刑法総論
最高裁判例:刑法総論①:ガス抜き配管内で結露水が滞留してメタンガスが漏出したことによって生じた温泉施設の爆発事故について,設計担当者に結露水の水抜き作業に係る情報を確実に説明すべき業務上の注意義務があったとされた事例
平成26(あ)1105  業務上過失致死傷被告事件
最決平成28年5月25日  最高裁判所第一小法廷  決定  棄却  (原審:東京高等裁判所)
最高裁判例:刑法総論②:花火大会が実施された公園と最寄り駅とを結ぶ歩道橋で多数の参集者が折り重なって転倒して死傷者が発生した事故について,警察署副署長に同署地域官との業務上過失致死傷罪の共同正犯は成立しないとされた事例
平成26(あ)747  業務上過失致死傷被告事件
最決平成28年7月12日  最高裁判所第三小法廷  決定  棄却  (原審:大阪高等裁判所)
最高裁判例:刑法総論③:刑法等の一部を改正する法律(平成25年法律第49号)による刑の一部の執行猶予に関する各規定(刑法27条の2ないし27条の7)の新設は,刑訴法411条5号にいう「刑の変更」に当たらない。
平成28(あ)456  覚せい剤取締法違反被告事件
最決平成28年7月27日  最高裁判所第一小法廷  決定  棄却  大阪高等裁判所
(2)刑法各論
最高裁判例:刑法各論(罪数)①:罪数に関する法令適用の誤りがあるが,刑訴法411条を適用すべきものとは認められないとされた事例
平成26(あ)1870  詐欺被告事件
最決平成28年3月23日  最高裁判所第一小法廷  決定  棄却 原審:広島高等裁判所
最高裁判例:刑法各論②: 1 同時傷害の特例を定めた刑法207条の法意/2 共犯関係にない二人以上の暴行による傷害致死の事案においていずれかの暴行と死亡との間の因果関係が肯定された場合と刑法207条の適用の可否
平成27(あ)703  傷害,傷害致死被告事件
最決平成28年3月24日  最高裁判所第三小法廷 決定 棄却 原審:名古屋高等裁判所
最高裁判例:刑法各論③: 他人の刑事事件について捜査官と相談しながら虚偽の供述内容を創作するなどして供述調書を作成した行為が証拠偽造罪に当たるとされた事例
平成26(あ)1857  詐欺,証拠隠滅被告事件
最決平成28年3月31日  最高裁判所第一小法廷  決定  棄却  大阪高等裁判所
最高裁判例:刑法各論④:土地について売買契約を登記原因とする所有権移転登記等の申請をして当該登記等をさせた行為につき電磁的公正証書原本不実記録罪が成立しないとされた事例
平成26(あ)1197  電磁的公正証書原本不実記録,同供用被告事件
最判平成28年12月5日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄自判 (原審:東京高判)
(3)特別刑法
最高裁判例:特別刑法①:1 児童福祉法34条1項6号にいう「淫行」とは,児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為をいい,児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交又はこれに準ずる性交類似行為は,これに含まれる。
2 児童福祉法34条1項6号にいう「させる行為」に当たるか否かは,行為者と児童の関係,助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度,淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯,児童の年齢,その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断すべきである。
平成26(あ)1546  児童福祉法違反被告事件
平成28年6月21日  最高裁判所第一小法廷  決定  棄却  福岡高等裁判所
最高裁判例:特別刑法②:1 情報源を公にしないことを前提とした報道機関に対する重要事実の伝達と金融商品取引法施行令(平成23年政令第181号による改正前のもの)30条1項1号にいう「公開」/2 情報源が公にされることなく会社の意思決定に関する重要事実を内容とする報道がされた場合における金融商品取引法(平成23年法律第49号による改正前のもの)166条1項による規制の効力
平成27(あ)168  金融商品取引法違反被告事件
最決平成28年11月28日  最高裁判所第一小法廷  決定  棄却  (原審:東京高等裁判所)
(4)量刑
最高裁判例:量刑①:死刑の量刑が維持された事例(大阪パチンコ店放火殺人事件)
平成25(あ)1329  現住建造物等放火,殺人,殺人未遂被告事件
最判平成28年2月23日  最高裁判所第三小法廷  判決  棄却 (原審:大阪高等裁判所)
最高裁判例:量刑②: 死刑の量刑が維持された事例(福島夫婦強盗殺人事件)
平成26(あ)959  住居侵入,強盗殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
最判平成28年3月8日  最高裁判所第三小法廷  判決  棄却  仙台高等裁判所
最高裁判例:量刑③:死刑の量刑が維持された事例(長野一家3人強盗殺人事件)
平成26(あ)477  強盗殺人,死体遺棄被告事件
平成28年4月26日  最高裁判所第三小法廷  判決  棄却  原審:東京高等裁判所
最高裁判例:量刑④: 死刑の量刑が維持された事例(山形東京連続放火殺人事件)
平成26(あ)1655  住居侵入,逮捕監禁,殺人,現住建造物等放火,有印私文書偽造・同行使,ストーカー行為等の規制等に関する法律違反被告事件
平成28年6月13日  最高裁判所第二小法廷  判決  棄却  東京高等裁判所
最高裁判例:量刑⑤:死刑の量刑が維持された事例(元少年石巻殺傷事件)
平成26(あ)452  傷害,殺人,殺人未遂,未成年者略取,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
平成28年6月16日  最高裁判所第一小法廷  判決  棄却  仙台高等裁判所
最高裁判例:量刑⑥: 死刑の量刑が維持された事例(長崎ストーカー殺人事件)
平成26(あ)1160  住居侵入,殺人,窃盗,傷害,脅迫被告事件
平成28年7月21日  最高裁判所第一小法廷  判決  棄却  福岡高等裁判所
(5)刑事訴訟法
最高裁判例:刑事訴訟法①: 自動車運転過失致死の公訴事実について防犯カメラの映像と整合しない走行態様を前提に被告人を有罪とした原判決に,審理不尽の違法,事実誤認の疑いがあるとされた事例
平成26(あ)1844  自動車運転過失致死被告事件
平成28年3月18日  最高裁判所第三小法廷  判決  破棄差戻 原審:東京高等裁判所
最高裁判例:刑事訴訟法②:処断刑超過による非常上告(心神耗弱者の行為についての必要的減軽を看過)
平成28(さ)1  福岡県迷惑行為防止条例違反被告事件についてした判決に対する非常上告事件
平成28年7月4日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄自判  福岡地方裁判所  小倉支部
最高裁判例:刑事訴訟法③:米軍属による強姦致死,殺人,死体遺棄事件として管轄区域で大々的に報道され,当該区域の住民の中から裁判員を選任することになるなどの所論が主張する点(判文参照)は,管轄裁判所において公平な裁判が行われることを期待し難い事情とはいえず,刑訴法17条1項2号にいう「裁判の公平を維持することができない虞があるとき」に当たらない。
(補足意見がある。)
平成28(す)398  管轄移転の請求事件
平成28年8月1日  最高裁判所第二小法廷  決定  棄却  那覇地方裁判所
最高裁判例:刑事訴訟法④:公訴提起後第1回公判期日前に弁護人が申請した保釈請求に対する検察官の意見書の謄写を許可しなかった裁判官の処分が是認できないとされた事例
平成28(し)607  保釈請求却下の裁判に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告事件
平成28年10月25日  最高裁判所第一小法廷  決定  棄却  静岡地方裁判所

by strafrecht_bt | 2016-12-05 18:14 | 司法試験


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