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2017年 04月 11日

刑法1(1)刑法の意義・刑罰論

刑法1【日程】①2017.04.11(火)1時限:刑法の意義・刑罰論
刑法1(1)刑法の意義・刑罰論
【教科書】山口厚『刑法』(第3版・2015年)
【参考文献】(最新のもの)松宮孝明『刑法総論講義』(第5版・2017年);松原芳博『刑法総論』(第2版・2017年)
第199条 (殺人) 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
① 刑法の意義
・実質的意義の刑法:「いかなる行為が犯罪であり、それに対していかなる刑罰が科されるかを規定した法」(山口3頁)
・形式的意義の刑法(刑法典):刑法(明治40年4月24日法律第45号)
 ・刑法総則(総論):第1篇「総則」
 ・刑法各則(各論):第2編「罪」
 特別法上の刑罰法規:「特別刑法」(広義)とは
*「特別法違反の点を除く。」の意味
* 刑法8条:総則の規定は、特別刑法にも適用される
② 刑罰論
・応報刑論(松原3-5頁:被害応報・秩序応報・責任応報)
*予防刑論(目的刑論)
・一般予防論
 ・消極的一般予防論(抑止刑論)
 ・積極的一般予防論(規範的予防論)(松原6-8頁:国民の規範意識・規範への信頼確保・規範妥当性確証)
・特別予防論(再犯防止)(松原8-9頁:消極的特別予防[隔離・排除・特別抑止]・積極的特別予防[改善・教育])
③ 刑法理論との関係
・応報刑論  (後期)旧派 意思自由論
・一般予防論 (前期)旧派 意思自由論(合理的判断能力)
・特別予防論 新派(近代学派) 決定論
*短答出題例:2014〔第1問〕(配点:2)刑罰論に関する次の1から5までの各記述のうち、正しいものはどれか。(解答欄は、[№1])
1.応報刑論は、産業革命に伴う工業化・都市化によって累犯が増加したことを契機として、支持者が増えた。
2.応報刑論に対しては、重大な犯罪を犯した者であっても、再犯可能性がなければ刑罰を科すことができなくなるとの批判がある。
3.応報刑論に対しては、論者が前提としている人間の意思の自由が科学的に証明されていないとの批判がある。
4.応報刑論に対しては、犯罪を防止するために罪刑の均衡を失した重罰化を招くおそれがあるとの批判がある。
5.応報刑論に対しては、刑罰と保安処分の区別がなくなるとの批判がある。
④ 刑罰の種類(刑法9条以下、山口196-9頁)
・生命刑:死刑
・自由刑:懲役・禁錮・拘留
*懲役・禁錮の一本化(改正案)→問題点(松宮・ⅱ頁[はしがき]):「自由刑純化論」(松宮344頁)ではなく「拡大された懲役刑一本化」
・財産刑:罰金・科料:没収
*主刑と付加刑
*代替(換刑)処分:労役場留置/追徴→刑罰でないことに注意(松宮346頁参照)
*執行猶予(25条以下)/一部執行猶予(27条の2以下)/仮釈放(28条)/仮出場(30条)
*一部執行猶予の問題点(松宮352−3頁):「全部実刑と全部執行猶予の中間的制度」か?
出題例:2013〔第9問〕(配点:4) :刑罰に関する次のアからオまでの各記述を検討し、正しい場合には1を、誤っている場合には2 を選びなさい。(解答欄は、アからオの順に[No14]から[No18])
ア.自由刑には、懲役、禁錮及び労役場留置が含まれる。[No14]
イ.財産刑には、罰金、没収及び追徴が含まれる。[No15]
ウ.有期の懲役又は禁錮は、1月以上15年以下であり、これを加重する場合においては30年にまで上げることができる。[No16]
エ.有期の懲役又は禁錮を減軽する場合においては1月未満に下げることができる。[No17]
オ.懲役は、受刑者を刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる刑罰であり、禁錮は、受刑者を刑事施設に拘置する刑罰である。[No18]
【次回】②2017.04.18(火)1時限:罪刑法定主義・犯罪の意義




刑法1・内容確認テスト(1)

【問1】刑罰論に関する次の1から5までの各記述のうち、誤っているものはどれか。

1.特別予防論は、産業革命に伴う工業化・都市化によって累犯が増加したことを契機として、支持者が増えた。

2.特別予防論に対しては、重大な犯罪を犯した者であっても、再犯可能性がなければ刑罰を科すことができなくなるとの批判がある。

3.特別予防論に対しては、高い再犯率から見ても刑罰による教育・改善効果が十分に実証されていないという批判がある。

4.特別予防論に対しては、それは犯罪をまだ犯していない者を威嚇して犯罪を犯さないようにしようとする一種の見せしめ刑であって、処罰される個人を犯罪予防という社会的利益のための単なる手段として利用する点で人間の尊厳に反するという批判がある。

5.特別予防論に対しては、刑罰と保安処分の区別がなくなるとの批判がある。

【解答欄】(  )

【問2】学生AないしCは、刑罰の執行について会話している。各発言中の()から()までに語句群から適切な語句を入れなさい。

【発言】学生A:執行猶予は、情状によって刑の執行を猶予し、一定期間を無事経過したときは、(①【解答欄】 )は効力を失うという制度である。短期の(②【解答欄】 )については、受刑者の改善には短すぎるし、他の被収容者から悪影響を受けるなどの弊害が指摘されているが、執行猶予は、このような弊害を避けるための制度であると思う。

学生B:A君の意見には賛成できない。典型的な短期の(②)である(③【解答欄】 )が、執行猶予の対象になっていない一方で、財産刑である(④【解答欄】 )が執行猶予の対象になっていることを考えると、現行刑法の執行猶予は、短期の(②)の弊害を避けることだけを目的としているとは思えない。むしろ、執行猶予は、施設に収容せず、刑が執行されるという心理的強制を背景として、自力で改善更生させるという(⑤【解答欄】 )の目的があると思う。執行猶予には(⑥【解答欄】 )を付すことができるとされているのも、その目的に沿うものだと思う。

学生C:執行猶予の目的が短期の(②)の弊害の回避だけではないという点で、B君の意見に賛成だ。しかし、(⑤)の目的に沿うという(⑥)も、(⑦【解答欄】 )の執行猶予の場合は、裁量的に付することとされているにとどまっている。その上、現行刑法の執行猶予制度は、自由を拘束するよりも執行猶予に付する方が改善更正を期待できる場合に広く刑の執行を猶予するという制度になっておらず、一定の前科のないことを要件として、また、対象となる(②)の上限を3年としている。これらの点を考えると、執行猶予が(⑤)の目的だけにあると考えるのも妥当ではないと思う。

【語句群】a.公訴の提起 b.刑の言渡し c.自由刑 d.懲役刑 e.拘留 f.労役場留置 g.科料 h.罰金 i.一般予防 j.特別予防 k.保護観察 l.試験観察  m.再度  n.初度

【問3】「平成29215日、東京都調布市の都営アパート内のV(当時89)居住の部屋で、Vの孫である甲は、Vから金を借りようとしたが断られたため、かっとなってVの頭や顔を数回にわたりはさみで刺し、さらに殴るなどして死亡させた。甲の罪責について論じなさい(特別法違反の点を除く)。」という問題の結論部分を書きなさい。

→論文式試験の書き方(1)

【問題1】「平成29年2月15日、東京都調布市の都営アパート内のV(当時89歳)居住の部屋で、Vの孫である甲(23歳)は、Vから金を借りようとしたが断られたため、かっとなってVの頭や顔を数回にわたりはさみで刺し、さらに殴るなどして死亡させた。甲の罪責について論じなさい(特別法違反の点を除く)。」

①問題提起型 問題提起(「甲がVの頭や顔をはさみで突き刺すなどして死亡させた行為につき、殺人罪(刑法199条)が成立が成立しないか。」)→要件→当てはめ→結論

②結論先行型 結論→理由(要件→当てはめ)

【結論】甲がVの頭や顔をはさみで突き刺すなどして死亡させた行為につき、殺人罪(刑法199条)が成立する。

【要件】①「人」(=自然人:客体)の生命を②「罪を犯す意思」(38条1項)(故意[=死亡結果の認識・認容]=殺意)をもって侵害した(「殺した」)(=③実行行為[死亡させる危険のある行為]+④[死亡]結果+⑤[③④間の]因果関係)こと

*殺意の認定:①被害者の年齢・健康状態、②凶器を使用の有無、③使用した凶器の種類・大きさ(例えば刃物の場合、刃渡り)など、④攻撃した部位(特に、四肢以外の人体の枢要部を狙っているかどうか)、⑤攻撃の回数、⑥傷の深さなどを総合的に考えて、殺意を認定する。

①刃渡り20センチのナイフで、心臓付近を5回深く刺していた場合

②刃渡り5センチのナイフで、右腕付近を2~3回浅く切りつけていた場合

*条文問題と判例問題

【問題2】平成29年2月15日、東京都調布市の都営アパート内のV(当時89)居住の部屋で、Vの孫である甲は、Vから金を借りようとしたが断られたため、かっとなってVの頭や顔を数回にわたりはさみで刺し、さらに殴るなどして死亡させた。その後、甲は、Vが預金通帳などをたんすの引き出しに入れていたことを思い出し、たんすの引き出しを開け、現金2万円と預金通帳と印鑑を持ち去った。甲の罪責について論じなさい(特別法違反の点を除く)。

【ヒント】この問題には、単なる条文問題だけではなく、判例(学説)問題が含まれている。授業で示した新聞記事(http://www.asahi.com/articles/ASK3M5S9TK3MUTIL01L.html)は、最初は強盗殺人罪(刑法240条後段)の疑いで逮捕されたが、罪名が殺人罪に変更されたのはなぜか考えてみよう(山口284頁の「死者の占有」の項目を読んで、判例では何罪が成立するか、その罪には刑法244条1項が適用されるかどうかも検討すること)。



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by strafrecht_bt | 2017-04-11 09:00 | 刑法Ⅰ(総論)


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