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2017年 07月 18日

予備試験短答・論文問題(2017・平29)

[刑法]
〔第1問〕(配点:3) 因果関係に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選
びなさい。(解答欄は,[No1],[No2]順不同) 1.甲が,Vの胸部,腹部及び腰部を殴打したり足蹴りしたりする暴行を加えたところ,それに耐えかねたVは,その場から逃走した際,逃げることに必死の余り,過って路上に転倒し,縁 石に頭部を打ち付けたことによって,くも膜下出血により死亡した。この場合,甲の暴行とV の死亡との間には,因果関係がある。
2.甲が,Vを突き倒し,その胸部を踏み付ける暴行を加え,Vに血胸の傷害を負わせたところ, Vは,Vの胸腔内に貯留した血液を消滅させるため医師が投与した薬剤の影響により,かねて Vが罹患していた結核性の病巣が変化して炎症を起こし,同炎症に基づく心機能不全により死 亡した。この場合,甲の暴行とVの死亡との間には,因果関係がない。
3.甲は,自動車を運転中,過って同車をVに衝突させてVを同車の屋根に跳ね上げ,その意識 を喪失させたが,Vに気付かないまま同車の運転を続けるうち,同車の助手席に同乗していた 乙がVに気付き,走行中の同車の屋根からVを引きずり降ろして路上に転落させた。Vは,頭 部打撲傷に基づくくも膜下出血により死亡したところ,同傷害は,自動車と衝突した際に生じ たものか,路上に転落した際に生じたものかは不明であった。この場合,甲の衝突行為とVの 死亡との間には,因果関係がある。
4.甲は,狩猟仲間のVを熊と誤認して猟銃弾を1発発射し,Vの大腿部に命中させて大量出血 を伴う重傷を負わせた直後,自らの誤射に気付き,苦悶するVを殺害して逃走しようと決意し, 更に至近距離からVを目掛けて猟銃弾を1発発射し,Vの胸部に命中させてVを失血により即 死させた。Vの大腿部の銃創は放置すると十数分で死亡する程度のものである一方,胸部の銃 創はそれ単独で放置すると半日から1日で死亡する程度のものであった。この場合,甲の2発 目の発射行為とVの死亡との間には,因果関係がない。
5.甲は,Vの頭部を多数回殴打する暴行を加えた結果,Vに脳出血を発生させて意識喪失状態 に陥らせた上,Vを放置して立ち去った。その後,Vは,甲とは無関係な乙から角材で頭頂部 を殴打される暴行を加えられ,死亡するに至った。Vの死因は甲の暴行により形成された脳出 血であり,乙の暴行は,既に発生していた脳出血を拡大させ,幾分か死期を早める影響を与え るものであった。この場合,甲の暴行とVの死亡との間には,因果関係がある。
〔第2問〕(配点:2) 略取,誘拐及び人身売買の罪に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した
場合,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[No3])
ア.営利の目的で未成年者を買い受けた場合,未成年者買受け罪のみが成立する。
イ.身の代金目的誘拐罪は,近親者その他誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じてその財物を交付させる目的を主観的要素とする目的犯である。
ウ.身の代金目的で成年者を略取し,公訴が提起される前に同成年者を安全な場所に解放すれば,身の代金目的略取罪の刑が必要的に減軽される。
エ.未成年者誘拐罪は親告罪である。
オ.親権者は,未成年者誘拐罪の主体とはならない。
1.ア ウ
2.ア オ
3.イ ウ
4.イ エ
5.エ オ
〔第3問〕(配点:2)
次の【記述】中の1から4までの( )内から適切な語句を選んだ場合,その組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[No4])
【記 述】被害者の同意が問題となる場合としては,一般に以下のような分類がなされている。第1は, 被害者の意思に反することが構成要件要素になっている場合であり,この類型においては,被害 者の同意は構成要件該当性を阻却する。窃盗罪は,この類型に1(a.入る・b.入らない)。 第2は,被害者の同意の有無が犯罪の成立に影響を及ぼさない場合である。13歳未満の者に対 するわいせつ行為は,この類型に2(c.入る・d.入らない)。第3は,被害者の同意がある 場合とない場合が分けて規定され,被害者の同意があると軽い方の罪が成立する場合である。業 務上堕胎罪は,この類型に3(e.入る・f.入らない)。第4は,被害者の同意が行為の違法 性を阻却する場合である。住居侵入罪の「侵入」を住居権者・管理権者の意思に反する立入りと 解した場合,同罪は,この類型に4(g.入る・h.入らない)。
1.1a 2c 3e 4h
2.1a 2c 3f 4h
3.1a 2d 3f 4g
4.1b 2c 3e 4h
5.1b 2d 3f 4g
〔第4問〕(配点:2) わいせつ物頒布等の罪に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し,甲に
( )内の罪が成立しないものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[No 5])
ア.インターネットを介した書籍販売業を営む甲は,日本語で書かれたわいせつな文書である 小説を,その購入を申し込んできた日本国内在住の多数の外国人に販売したところ,いずれ の外国人も日本語の読解能力に乏しく,同小説の内容を理解できなかった。(わいせつ物頒布 罪)
イ.甲は,インターネットを介して多数の希望者を募った上,その希望者らに無料で交付する 目的で,わいせつな映像を記録したDVDを所持した。(わいせつ物有償頒布目的所持罪)
ウ.甲は,わいせつな映像を記録したDVDの販売業者に対してそのDVDの購入を申し込み,これを購入した。(わいせつ物頒布罪の教唆犯)
エ.DVDのレンタル業を営む甲は,わいせつな映像を記録したDVDを,多数の顧客へ有償で貸し出した。(わいせつ物頒布罪)
オ.甲がインターネットを介したわいせつな映像の販売業を営み始めたところ,その購入を申し込んできた顧客は1名だけであったが,甲は,その者に対して,電子メールに同映像のデ ータを添付して送信した。(わいせつ物頒布罪)
1.ア エ 2.ア オ 3.イ ウ
4.イ エ 5.ウ オ
〔第5問〕(配点:2) 次の【事例】に関する後記アからエまでの各【記述】を判例の立場に従って検討し,誤っている
ものを全て選んだ場合の組合せは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[No6])
【事 例】土木作業員甲及び乙は,現場監督者丙の監督の下で,X川に架かる鉄橋の橋脚を特殊なA鋼材 を用いて補強する工事に従事していたが,作業に手間取り,工期が迫ってきたことから,甲及び 乙の2人で相談した上で,より短期間で作業を終えることができる強度の弱いB鋼材を用いた補 強工事を共同して行った。その結果,工期内に工事を終えることはできたものの,その後発生し た豪雨の際,A鋼材ではなくB鋼材を用いたことによる強度不足のために前記橋脚が崩落し,た またま前記鉄橋上を走行していたV1運転のトラックがX川に転落し,V1が死亡した。なお, 甲及び乙は同等の立場にあり,甲及び乙のいずれについても,B鋼材を工事に用いた場合に強度 不足のために前記橋脚が崩落することを予見していなかったものの,その予見可能性があったも のとする。
【記 述】 ア.甲及び乙には,強度の弱いB鋼材で補強工事を行うことの意思連絡はあるが,不注意の共同
はあり得ないから,甲及び乙に業務上過失致死罪の共同正犯が成立する余地はない。 イ.丙は,甲及び乙が強度の弱いB鋼材で補強工事を行っていることを認識していたが,工期が 迫っていたことから,これを黙認したという場合,直接行為者である甲及び乙に過失が認められたとしても,更に丙に過失が認められる余地がある。 ウ.仮に,甲及び乙において,V1が死亡するに至る実際の因果経過を具体的に予見することが不可能であった場合,甲及び乙には業務上過失致死罪は成立しない。 エ.仮に,V1運転のトラックの荷台に,V1に無断でV2が乗り込んでおり,同トラックがX
川に転落したことによって,V1及びV2の両名が死亡した場合,甲及び乙にはV2に対する業務上過失致死罪は成立しない。
1.ア イ ウ 2.ア ウ エ 3.ア エ 4.イ ウ 5.ウ エ
〔第6問〕(配点:2) 次の各【見解】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,誤っているものはどれか。(解
答欄は,[No7])
【見 解】
A説:遺棄罪は,生命・身体に対する危険犯である。
B説:遺棄罪は,生命に対する危険犯である。
【記 述】
1.「自説のように解さないと処罰範囲が広くなり過ぎる」ことは,B説の根拠となり得る。
2.「刑法第219条(遺棄等致死傷罪)が致傷罪という加重処罰規定を置いている」ことは,A説の根拠となり得る。
3.「刑法第218条(保護責任者遺棄罪)が生存に必要な保護をしなかったことを遺棄とともに処罰の対象としている」ことは,B説の根拠となり得る。
4.「遺棄罪の懲役刑の上限が傷害罪の懲役刑の上限よりも軽い」ことは,B説の根拠となり得
る。
5.「刑法典は,殺人,傷害,過失傷害,堕胎の各罪の章の後に遺棄の罪の章を置いている」ことは,A説の根拠となり得る。
〔第7問〕(配点:2) 次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄
は,[No8])
1.甲が乙に対し,深夜の公園で待ち伏せしてAから金品を喝取するように教唆したところ,乙は,その旨決意し,深夜の公園でAを待ち伏せしたが,偶然通り掛かったBをAと誤認してB から金品を喝取した。乙は,人違いに気付き,引き続きAを待ち伏せして,通り掛かったAか ら金品を喝取しようとしてAを脅迫したが,Aに逃げられてしまい金品を喝取することができ なかった。甲にはAに対する恐喝未遂罪の教唆犯のみが成立する。
2.甲が乙に対し,Aをナイフで脅してAから金品を強取するように教唆したところ,乙は,そ の旨決意し,Aをナイフで脅したが,その最中に殺意を抱き,Aの腹部をナイフで刺してAに 傷害を負わせ,Aから金品を強取したものの,Aを殺害するには至らなかった。甲には強盗罪 の教唆犯が成立するにとどまる。
3.甲が乙に対し,留守宅であるA方に侵入して金品を窃取するように教唆したところ,乙は, その旨決意したが,B方をA方と誤認してB方に侵入し,その場にいたBから金品を強取した。 甲にはB方への住居侵入罪及びBに対する窃盗罪の教唆犯が成立する。
4.甲が乙に対し,現住建造物であるA家屋に放火するように教唆したところ,乙は,その旨決 意し,A家屋に延焼させる目的で,A家屋に隣接した現住建造物であるB家屋に放火したが, B家屋のみを焼損し,A家屋には燃え移らなかった。甲にはA家屋に対する現住建造物等放火 未遂罪の教唆犯のみが成立する。
5.甲は,土建業者AがB市発注予定の土木工事を請け負うためB市役所土木係員乙に現金を供 与しようと考えていることを知り,乙に対し,Aに工事予定価格を教える見返りとしてAから 現金を受け取り,Aに工事予定価格を教えるように教唆したところ,乙は,その旨決意し,A との間で,Aに工事予定価格を教える旨約束して,Aから現金100万円を受け取ったが,そ の後,工事予定価格を教えなかった。甲には加重収賄罪の教唆犯が成立する。
〔第8問〕(配点:2) 放火の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものは
どれか。(解答欄は,[No9])
1.甲は,住宅街の駐車場に駐車中の乙所有の自動車を燃やそうと考え,自己の自動車に灯油を積みライターを持って同自動車を運転して同駐車場に向かったところ,その途中,交通事故を 起こし,乙所有の自動車に放火することができなかった。この場合,甲には,建造物等以外放 火罪の予備罪が成立する。
2.甲は,乙が居住する乙所有の家屋を燃やそうと考え,同家屋に放火し全焼させたところ,同 家屋内で就寝中の乙が焼死した。甲が乙を殺そうと考えて同家屋に放火した場合でも,甲には, 法定刑に死刑を含む現住建造物等放火罪のみが成立する。
3.甲は,山奥で乙を殺害した後,乙の失踪を装うため,乙が一人で居住していた丙所有の家屋 を燃やそうと考え,同家屋に放火し全焼させた。同家屋に人がいなかった場合でも,甲には, 現住建造物等放火罪が成立する。
4.甲は,不要となった甲所有の自動車を燃やそうと考え,同自動車に放火し全焼させ,公共の 危険を生じさせた。甲に公共の危険が生じることについての認識がなかった場合でも,甲には, 建造物等以外放火罪が成立する。
5.甲は,乙が居住する乙所有の家屋を燃やそうと考え,同家屋の壁際に駐車されていた乙所有 の自動車に放火して焼損し,同家屋への延焼の危険を生じさせたが,その火は通行人により消 し止められ,同家屋に燃え移らなかった。この場合,甲には,建造物等以外放火罪のみが成立する。
〔第9問〕(配点:4) 次のアからオまでの各事例における甲の罪責について,判例の立場に従って検討し,( )内の
犯罪が既遂になる場合には1を,未遂にとどまる場合には2を,既遂にも未遂にもならない場合に は3を選びなさい。(解答欄は,アからオの順に[No10]から[No14])
ア.甲は,会社事務所内において現金を窃取して,戸外に出たところを警備員乙に発見されて取 り押さえられそうになったため,逮捕を免れようと考え,乙に対し,刃体の長さ20センチメ ートルの出刃包丁をその腹部に突き付け,「ぶっ殺すぞ。」と怒鳴り付けたが,偶然その場を通 り掛かった警察官に取り押さえられ,逮捕を免れることができなかった。(事後強盗罪)[No10]
イ.甲は,行使の目的で,カラープリンターを用いて,複写用紙に真正な千円札の表面及び裏面 を複写して千円札を偽造しようとしたが,カラープリンターの操作を誤ったため,完成したも のは,一般人がこれを一見した場合に真正な千円札と誤認する程度の外観を備えたものではな かった。(通貨偽造罪)[No11]
ウ.甲は,通行中の乙に因縁を付けて乙から現金を脅し取ろうと考え,乙に対し,「俺をにらん できただろ。金を払えば許してやる。金を出せ。」などと大声で怒鳴り付けて反抗を抑圧する に至らない程度の脅迫を加え,同脅迫により畏怖した乙は,甲に現金を直接手渡さなかったも のの,甲が乙のズボンのポケットから乙が所有する現金在中の財布を抜き取って持ち去るのを 黙認した。(恐喝罪)[No12]
エ.甲は,知り合いの女性乙を自己が運転する自動車に乗せて同車内において強いて姦淫しよう と考え,乙に対し,「自宅まで送ってあげる。」とうそを言ったところ,乙は,これを信じて同 車に乗り込んだが,甲の態度を不審に思い即座に同車から降りた。(強姦罪)[No13]
オ.甲は,会社事務所にある現金を窃取する目的で,門塀に囲まれ,警備員が配置されて出入り が制限されている同事務所の敷地内に塀を乗り越えて立ち入ったが,同事務所の建物に立ち入 る前に警備員に発見され敷地外に逃走した。(建造物侵入罪)[No14]
〔第10問〕(配点:2) 名誉毀損罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいもの
はどれか。(解答欄は,[No15]) 1.摘示される「事実」は,非公知のものでなければならないから,公知の事実を摘示した場合には,名誉毀損罪は成立しない。 2.事実の摘示が「公然」といえるためには,摘示内容を不特定かつ多数人が認識し得る状態にあったことが必要であるから,不特定ではあるが,少数人しか認識し得ない状態にとどまる場
合には,名誉毀損罪は成立しない。 3.名誉の主体である「人」は,自然人に限られるから,法人の名誉を毀損した場合には,名誉毀損罪は成立しない。 4.死者の名誉を毀損したとしても,虚偽の事実を摘示した場合でなければ処罰されないから,摘示した事実が真実である場合には,名誉毀損罪として処罰されない。 5.人の名誉を侵害するに足りる事実を公然と摘示したとしても,現実に人の名誉が侵害されていない場合には,名誉毀損罪は成立しない。
〔第11問〕(配点:2) 学生A,B及びCは,次の【事例】における甲の罪責について,後記【会話】のとおり検討して
いる。【会話】中の1から5までの( )内から適切な語句を選んだ場合,正しいものの組合せは, 後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[No16])
【事 例】甲は,乙がVに対して暴行を加えていたところに通り掛かり,乙との間で共謀を遂げた上,乙 と一緒にVに対して暴行を加えた。Vは,甲の共謀加担前後にわたる一連の暴行を加えられた際 に1個の傷害を負ったが,Vの傷害が,甲の共謀加担前の乙の暴行により生じたのか,甲の共謀 加担後の甲又は乙の暴行により生じたのかは,証拠上不明であった。
【会 話】 学生A.私は,共犯は自己の行為と因果関係を有する結果についてのみ責任を負うという見解に立ち,後行者は,共謀加担前の先行者の暴行により生じた傷害結果には因果性を及ぼし得 ないと考えます。事例の場合,甲には1(a.暴行罪・b.傷害罪)の共同正犯が成立す ると考えます。事例とは異なり,Vの傷害が甲の共謀加担後の甲又は乙の暴行により生じ たことが証拠上明らかな場合,甲には傷害罪の共同正犯が2(c.成立する・d.成立し ない)と考えます。
学生B.A君の見解に対しては,甲に対する傷害罪の成立範囲が3(e.狭く・f.広く)なり 過ぎるとの批判が可能ですね。
学生C.私は,事例の場合には,同時傷害の特例としての刑法第207条が適用され,甲は,V の傷害結果について責任を負うと考えます。その理由の一つとして,仮に甲が乙と意思の 連絡なく,Vに暴行を加えた場合に比べ,事例における甲が4(g.不利・h.有利)に 扱われることになるのは不均衡であると考えられることが挙げられます。
学生B.乙には,甲の共謀加担前後にわたる一連の暴行の際にVに生じた傷害結果についての傷 害罪が成立するのであり,傷害結果について責任を負う者が誰もいなくなるわけではない ということは,C君の5(i.見解に対する批判・j.見解の根拠)となり得ますね。
1.1a 2c 3e 4h 5i 2.1b 2d 3f 4g 5j 3.1a 2c 3f 4g 5j 4.1b 2c 3e 4h 5i 5.1a 2c 3e 4g 5j
〔第12問〕(配点:2) 犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場
合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[No17])
ア.犯人の親族が当該犯人の利益のために犯人蔵匿罪を犯したときは,当該親族に対する刑は減軽しなければならない。
イ.犯人隠避罪の「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」には,犯人として既に逮捕・勾留されている者は含まれない。
ウ.証拠隠滅罪の「他人の刑事事件」は,犯人蔵匿罪と異なり,罰金以上の刑に当たる罪に限られない。 エ.証人等威迫罪の「威迫」は,相手と面会して直接なされる場合に限られ,文書を送付して相手にその内容を了知させる方法によりなされる場合を含まない。
オ.犯人が自己の刑事事件の裁判に必要な知識を有する証人を威迫した場合,証人等威迫罪が成立する。
1.ア ウ 2.ア エ 3.イ エ
4.イ オ 5.ウ オ
〔第13問〕(配点:3) 次の【事例】に関する後記1から5までの各【記述】を判例の立場に従って検討し,正しいもの
を2個選びなさい。(解答欄は,[No18],[No19]順不同)
【事 例】甲は,覚せい剤の密売人である乙から,偽造した1万円札と引換えに覚せい剤をだまし取ろう と考え,1万円札の偽造に使用する目的で,作業部屋を自己名義で賃借した上,印刷機及び印刷 用紙を購入して同部屋に運び込み,それらを使用して1万円札100枚を偽造した。(1)その後,甲は,ホテルの部屋で乙と会い,乙に対し,100万円相当の覚せい剤(以下「本件 覚せい剤」という。)の代金として,偽造した1万円札100枚を渡した。乙は,甲から渡され た1万円札が偽札であることに気付かずに,甲に対し,本件覚せい剤を渡し,甲は,これを持っ て同部屋を出た。(2)
甲は,本件覚せい剤をホテルの駐車場に駐車中の自己の自動車内に置いたところ,甲が乙に渡 した1万円札が偽札であることに気付いて追い掛けてきた乙から,本件覚せい剤を返還するよう に求められた。甲は,本件覚せい剤の返還を免れるため,殺意をもって乙の首を両手で絞めて乙 を殺害した。(3)その数日後,甲は,本件覚せい剤を所持しているのを警察官に現認され,覚せい剤取締法違反 の現行犯人として逮捕され,A警察署に連行された。警察官丙は,A警察署の取調室において, 甲の弁解録取手続を行い,甲の供述内容を弁解録取書に記載した上,同弁解録取書を甲に手渡し て内容の確認を求めたところ,甲は,署名押印する前に同弁解録取書を両手で破った。(4)甲は,同取調室から逃げ出し,A警察署の敷地外に出た。(5)
【記 述】
1.1について,甲が作業部屋を自己名義で賃借した行為は,通貨偽造罪の予備行為に該当する ことから,その段階で甲には通貨偽造等準備罪が成立する。
2.2について,甲には詐欺罪が成立し,偽造通貨行使罪は詐欺罪に吸収される。 3.3について,覚せい剤は,法定の除外事由なく所持することが禁じられた物であるが,甲は, 本件覚せい剤の返還を免れるために乙を殺害していることから,甲には強盗殺人罪が成立する。
4.4について,丙が作成した弁解録取書には,甲の署名押印がないが,甲の供述内容が記載さ れていることから,甲には公用文書等毀棄罪が成立する。
5.5について,甲は,逮捕中に逃走し,A警察署の敷地外に出ていることから,甲には単純逃 走罪が成立する。
[刑 法]
以下の事例に基づき,甲及び乙の罪責について論じなさい(特別法違反の点を除く。)。
1 甲(40歳,男性)は,公務員ではない医師であり,A私立大学附属病院(以下「A病院」と いう。)の内科部長を務めていたところ,V(35歳,女性)と交際していた。Vの心臓には特 異な疾患があり,そのことについて,甲とVは知っていたが,通常の診察では判明し得ないもの であった。
2 甲は,Vの浪費癖に嫌気がさし,某年8月上旬頃から,Vに別れ話を持ち掛けていたが,Vか ら頑なに拒否されたため,Vを殺害するしかないと考えた。甲は,Vがワイン好きで,気に入っ たワインであれば,2時間から3時間でワイン1本(750ミリリットルの瓶入り)を一人で飲 み切ることを知っていたことから,劇薬を混入したワインをVに飲ませてVを殺害しようと考え た。
甲は,同月22日,Vが飲みたがっていた高級ワイン1本(750ミリリットルの瓶入り)を 購入し,同月23日,甲の自宅において,同ワインの入った瓶に劇薬Xを注入し,同瓶を梱包し た上,自宅近くのコンビニエンスストアからVが一人で住むV宅宛てに宅配便で送った。劇薬X の致死量(以下「致死量」とは,それ以上の量を体内に摂取すると,人の生命に危険を及ぼす量 をいう。)は10ミリリットルであるが,甲は,劇薬Xの致死量を4ミリリットルと勘違いして いたところ,Vを確実に殺害するため,8ミリリットルの劇薬Xを用意して同瓶に注入した。そ のため,甲がV宅宛てに送ったワインに含まれていた劇薬Xの量は致死量に達していなかったが, 心臓に特異な疾患があるVが,その全量を数時間以内で摂取した場合,死亡する危険があった。 なお,劇薬Xは,体内に摂取してから半日後に効果が現れ,ワインに混入してもワインの味や臭 いに変化を生じさせないものであった。
同月25日,宅配業者が同瓶を持ってV宅前まで行ったが,V宅が留守であったため,V宅の 郵便受けに不在連絡票を残して同瓶を持ち帰ったところ,Vは,同連絡票に気付かず,同瓶を受 け取ることはなかった。
3 同月26日午後1時,Vが熱中症の症状を訴えてA病院を訪れた。公務員ではない医師であり, A病院の内科に勤務する乙(30歳,男性)は,Vを診察し,熱中症と診断した。乙からVの治 療方針について相談を受けた甲は,Vが生きていることを知り,Vに劇薬Yを注射してVを殺害 しようと考えた。甲は,劇薬Yの致死量が6ミリリットルであること,Vの心臓には特異な疾患 があるため,Vに致死量の半分に相当する3ミリリットルの劇薬Yを注射すれば,Vが死亡する 危険があることを知っていたが,Vを確実に殺害するため,6ミリリットルの劇薬YをVに注射 しようと考えた。そして,甲は,乙のA病院への就職を世話したことがあり,乙が甲に恩義を感 じていることを知っていたことから,乙であれば,甲の指示に忠実に従うと思い,乙に対し,劇 薬Yを熱中症の治療に効果のあるB薬と偽って渡し,Vに注射させようと考えた。
甲は,同日午後1時30分,乙に対し,「VにB薬を6ミリリットル注射してください。私は これから出掛けるので,後は任せます。」と指示し,6ミリリットルの劇薬Yを入れた容器を渡 した。乙は,甲に「分かりました。」と答えた。乙は,甲が出掛けた後,甲から渡された容器を 見て,同容器に薬剤名の記載がないことに気付いたが,甲の指示に従い,同容器の中身を確認せ ずにVに注射することにした。
乙は,同日午後1時40分,A病院において,甲から渡された容器内の劇薬YをVの左腕に注 射したが,Vが痛がったため,3ミリリットルを注射したところで注射をやめた。乙がVに注射 した劇薬Yの量は,それだけでは致死量に達していなかったが,Vは,心臓に特異な疾患があっ たため,劇薬Yの影響により心臓発作を起こし,同日午後1時45分,急性心不全により死亡し
-2-
た。乙は,Vの心臓に特異な疾患があることを知らず,内科部長である甲の指示に従って熱中症 の治療に効果のあるB薬と信じて注射したものの,甲から渡された容器に薬剤名の記載がないこ とに気付いたにもかかわらず,その中身を確認しないままVに劇薬Yを注射した点において,V の死の結果について刑事上の過失があった。
4 乙は,A病院において,Vの死亡を確認し,その後の検査の結果,Vに劇薬Yを注射したこと が原因でVが心臓発作を起こして急性心不全により死亡したことが分かったことから,Vの死亡 について,Vに対する劇薬Yの注射を乙に指示した甲にまで刑事責任の追及がなされると考えた。 乙は,A病院への就職の際,甲の世話になっていたことから,Vに注射した自分はともかく,甲 には刑事責任が及ばないようにしたいと思い,専ら甲のために,Vの親族らがVの死亡届に添付 してC市役所に提出する必要があるVの死亡診断書に虚偽の死因を記載しようと考えた。
乙は,同月27日午後1時,A病院において,死亡診断書用紙に,Vが熱中症に基づく多臓器 不全により死亡した旨の虚偽の死因を記載し,乙の署名押印をしてVの死亡診断書を作成し,同 日,同死亡診断書をVの母親Dに渡した。Dは,同月28日,同死亡診断書記載の死因が虚偽で あることを知らずに,同死亡診断書をVの死亡届に添付してC市役所に提出した。




第1 甲の罪責
1 医師(非公務員 A病院勤務勤務)→V女(35歳・特殊心臓疾患)に対する罪責:殺人予備(201、199)+殺人既遂(199、間接正犯)
2 8月23日:ワインの中に8mlの劇薬X(致死量は10ml):宅配したが不在(不在票も受け取らず)結局配達されず:Vには危険:不能犯か?:具体的危険説:特に認識していた事情:客観的危険説でも死亡していた可能性:判例(相対的不能/絶対的不能説?)でも不能犯ではない。
実行の着手(43本文):離隔犯:発送時説か到達時説(判例)か?:実行の着手なし(殺人予備)
3 26日:V熱中症でA病院へ 乙が診断後甲に治療方針相談:甲劇薬Y致死量6ml(実際には3mlを注射した時点で死亡)を乙(故意なし、過失あり)にVに注射させ死亡させる(間接正犯):殺人罪の間接正犯
4 罪数関係:併合罪?
第2 乙の罪責
1 Vに対する業務上過失致死(これは問題中成立するとされている)
2 虚偽診断書作成、同行使(牽連犯)それと1とは併合罪
3 なお犯人隠避・証拠偽造罪?:自己隠避・自己証拠にも当たる場合:否定説:自己隠避・自己偽造の不可罰の理由:期待可能性なし、ならばそれが他人の犯罪と関連している場合でも期待可能性ないのでは?
肯定説→証拠偽造行為と犯人隠避の両方に当たるときは104条が優先する(法条競合:特別関係:山中・各論806頁):さらに2との罪数関係も問題となる(観念的競合?)


by strafrecht_bt | 2017-07-18 23:30 | 司法試験予備試験


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