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カテゴリ:環境刑法( 22 )


2017年 01月 23日

ドイツ環境法における予防原則

松村弓彦「ドイツ環境法における予防原則」-その1(序論)-
法律論叢 86(1), 177-224, 2013-07-24
ドイツ環境法における予防原則(その2)
法律論叢 86(6), 245-296, 2014-03-12
ドイツ環境法における予防原則(その3)
法律論叢 87(1), 207-246, 2014-08
ドイツ環境法における予防原則(その4)
法律論叢 87(6), 173-210, 2015-03
ドイツ環境法における予防原則(その5・完)
法律論叢 88(6), 163-198, 2016-03
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by strafrecht_bt | 2017-01-23 21:35 | 環境刑法
2017年 01月 16日

法と環境15:環境刑法と罪刑法定主義(2)

廃棄物処理の仕組み
(参考動画)→知っとく地図帳:清掃工場:小学生向けだが、清掃工場(大阪)の現状を紹介し、廃掃法の歴史にも触れている。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年十二月二十五日法律第百三十七号)
最終改正:平成二七年七月一七日法律第五八号
(定義)
第2条①  この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。

(投棄禁止)
第十六条  何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。
第五章 罰則
第二十五条  次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 (中略)  
十四  第十六条の規定に違反して、廃棄物を捨てた者
(中略)
2  前項第十二号、第十四号及び第十五号の罪の未遂は、罰する。

第三十二条  法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一  第二十五条第一項第一号から第四号まで、第十二号、第十四号若しくは第十五号又は第二項 三億円以下の罰金刑
二  第二十五条第一項(前号の場合を除く。)、第二十六条、第二十七条、第二十八条第二号、第二十九条又は第三十条 各本条の罰金刑
2  前項の規定により第二十五条の違反行為につき法人又は人に罰金刑を科する場合における時効の期間は、同条の罪についての時効の期間による。

両罰規定の解釈問題
廃棄物の意義
おから事件:最決平成11・3・10【百選46】
「不要物」の解釈
客観説
主観説
総合判断説
罪刑法定主義との関係:明確性原則
「みだりに…捨てる」の意義
野積不法投棄事件:最決平成16・2・20【百選58】
「捨てる」:管理の放棄→自己の支配領域内にある場合でも?
「みだりに」:生活環境・公衆衛生の悪化させる危険性(辰井)

小テスト
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by strafrecht_bt | 2017-01-16 14:42 | 環境刑法
2017年 01月 07日

残余のリスクの意味

残余のリスク(残留リスク、残存リスク)(residual risk, Restrisiko)
残余(残留)リスクとは、あるリスクに対して組織が何らかの対応をした結果、残るリスクの大きさのことである。ちなみに、2009年に国際標準規格として発行された「ISO Guide 73」(リスクマネジメント-用語)では、「リスク対応後に残るリスク」と定義されている。
2006 年に約30 年ぶりに改定された発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針が原子力安全委員 会により発表された。その解説 I,(2)残余のリスクの 存在についてにおいて、リスク低減後の残留リスク である residual risk が示されている。これによると、地震学的見地から、策定された地 震動を上回る強さの地震動が生起する可能性は否定 できず、これは「残余のリスク」(策定された地震動を上回る地震動の影響が施設に及ぶことにより、施設に重大な損傷事象が発生すること、施設から大量の放射性物質が方散される事象が発生すること、あ るいはそれらの結果として周辺公衆に対して放射線 被ばくによる災害を及ぼす事のリスク)が存在する ことを意味する。したがって、施設の設計にあたっ てはこれらを十分配慮し、この「残余のリスク」の 存在を十分認識しつつ、それを合理的に実行可能な限り小さくするための努力が払われるべきである、 としている。一定のリスク対応が取られた後でも、このような残余のリスクの存在を認め、さらにその軽減を図る策が取られるべきである。
ただしこの残余のリスクがコスト面から受忍すべきリスクという意味合いで使われることもあり、どのような意味合いでこの概念が用いられれているかに注意すべきである。
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by strafrecht_bt | 2017-01-07 20:39 | 環境刑法
2017年 01月 07日

法と環境14:環境刑法の行政従属性/環境刑法と罪刑法定主義

2017年の最初の授業は環境刑法に関するもの(月曜日の振替授業):受講生5名
・環境刑法行政従属性:行政従属性排除論(伊東)の検討
・環境刑法と罪刑法定主義
類推解釈の禁止
特別刑法(行政刑法)における過失犯処罰と明文の規定:鳥獣保護管理法における禁止区域・期間の不知・錯誤
鳥獣保護管理法における「捕獲」概念と関連問題
明確性の原則
廃棄物概念(次回)

補足:鳥獣保護管理法の罰則規定
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by strafrecht_bt | 2017-01-07 15:57 | 環境刑法
2016年 12月 27日

トランプの主張を科学的に見ると…

ドイツZDFの11月23日放送の番組Terra X- Donald Trump wissenschaftlich geprüftでトランプが選挙戦などで示した「科学的」主張が科学的根拠を全く欠いていることをミュンヒェン大学 Harald Lesch教授(物理学者)が解説 ZDFのホームページから視聴可能。
1 地球温暖化は中国人の捏造(Die globale Erwärmung ist eine Erfindung der Chinesen)
2 アメリカにはクリーン・コールがあと1000年分以上ある。(Kohle kann auch ganz sauber sein)
*clean coal technology
石炭を燃やしたときに発生する二酸化炭素・硫黄酸化物・窒素酸化物などの有害物質を減少させる技術。高品質石炭の選別、石炭の液化・ガス化、脱硫・脱硝装置、集塵装置などの技術をいう。CCT。→そもそもクリーンコールというものがあるのではなく、排出を減少させる技術(例えば、carbon capture and storage)があるだけで、しかも技術的には非常に困難。
3 自閉症はワクチン接種が原因(Impfungen verursachen Autismus)
*この説の元になった論文Volume 351, No. 9103, p637–641, 28 February 1998: Ileal-lymphoid-nodular hyperplasia, non-specific colitis, and pervasive developmental disorder in children(Dr AJ Wakefield, FRCScorrespondencePress enter key for correspondence information, SH Murch, MB, A Anthony, MB, J Linnell, PhD, DM Casson, MRCP, M Malik, MRCP, M Berelowitz, FRCPsych, AP Dhillon, MRCPath, MA Thomson, FRCP, P Harvey, FRCP, A Valentine, FRCR, SE Davies, MRCPath, JA Walker-Smith, FRCP)はデータ捏造が発覚して撤回されている(RETRACTED)。
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by strafrecht_bt | 2016-12-27 16:39 | 環境刑法
2016年 12月 19日

法と環境13:環境刑法と刑罰論

刑罰論と環境刑法
刑罰論の概観
応報刑論
・規範妥当の保護
予防刑論
・ 一般予防
→消極的一般予防:法益保護?
→積極的一般予防:規範妥当の保護
・ 特別予防:危険性の除去:法益保護?
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by strafrecht_bt | 2016-12-19 16:22 | 環境刑法
2016年 12月 12日

法と環境12:環境刑法の意義

環境刑法
環境刑法総論
環境刑法各論
公害刑法類型
公害による人の生命身体への侵害犯
故意犯:殺人罪・傷害罪・傷害致死罪など
過失犯:業務上過失致死傷罪
特殊事例:胎児性水俣病事例
公害による人の生命身体への危険犯:公害罪法上の犯罪
環境刑法類型
廃棄物処理法
軽犯罪法(1条14号、27号)
鳥獣保護管理法
動物愛護法
海洋汚染・海上災害防止法
水質汚濁防止法
その他

軽犯罪法
第1条  左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
一  (中略)
十四  公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者
二十七  公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獣の死体その他の汚物又は廃物を棄てた者
環境刑法の歴史
公害刑法から環境刑法へ
公害刑法
命令前置制から直罰制へ
水濁法などにおける直罰方式の採用
行政法と独立の公害罪法の制定
公害罪法の制定
最高裁による「排出」概念の限定解釈
環境刑法
環境基本法
廃棄物処理法

直罰制

行政法規に規定される義務に違反した場合に、当該違反行為に対して直接に刑事責任を問う(刑罰の対象とする)制度を指す。水質汚濁防止法や大気汚染防止法の排出基準の遵守義務(=基準超過の排出禁止義務)の違反に例があるように、環境法においても多く用いられている。立入検査の拒否や虚偽報告についても、直罰制となっている。無許可行為に対する罰則も、許可取得義務違反に対する直罰制といえる。環境法においては命令前置制が基本であるが、最近ではそれに加えて直罰化の傾向も顕著である。
(北村147頁、182頁、341頁、360頁、375頁、394頁、499頁)
(1)歴史的にみれば、法律による直接的義務づけの違反に対しては、是正などのための命令を発出しておいてその違反を刑罰の対象とする命令前置制が一般的であった。最近では、それが直罰制に移行する傾向がある。なぜだろうか。
(2)廃棄物処理法16条の2の違反に対しては、かつては命令前置制のみによって対応されていた。それに直罰制が加えられたのはなぜだろうか。
(3)直罰制の適用にあたっては、行政と警察がどのような活動をすることになるのだろうか。

*G8バーミンガム・サミット・コミュニケ(1998年5月15-17日)
はじめに
1.我々8ヵ国の主要な民主主義工業国の元首及び首相並びに欧州委員会委員長は、バーミンガムで会合し、我々自身及び他の諸国において人々に影響を与えている問題について議論した。グローバリゼーションがますます高まる世界において、我々は、より一層相互依存的になっている。我々の課題は、グローバリゼーションのプロセスを進めかつ持続させ、あらゆる地域において人々の生活の質が向上するように、より広範にその恩恵が行き渡ることを確保することである。我々はまた、我々の制度及び構造が世界で進行しつつある急速な技術的及び経済的変化に対応するものであることを確保しなければならない。
2.21世紀の始まりを控えた世界が直面する主要な課題の中で、このサミットは、以下の3点に焦点を当てた。
•環境を保護し良い統治を促進しつつ、開発途上国がより急速に成長し貧困を削減することを可能にし、新興アジア経済の成長を回復させ、安定した国際経済において物とサービスの貿易及び投資の自由化を維持するような持続可能な経済成長及び開発の世界的な達成、(中略)
22.我々は、リヨングループに対し、現在進行中の作業を強化するよう求めると共に、ハイテク犯罪に関する行動計画、資金洗浄に対してとられる措置及び人の密輸に関する共同行動についての進捗を次回サミットに報告するよう我々の閣僚に求める。我々はまた、我々の環境大臣の間で4月5日に意見の一致をみた環境犯罪と闘うための措置を歓迎する。
*環境犯罪対策推進計画
 地球環境を守る取組は、人類存続の基盤として人類共通の課題であり、世界各国の政府、国民が各種の分野において不断の取組を進めていかなければならないことは論を待たない。その様々な取組の中でも、近時、環境を破壊する悪質な行為を環境犯罪ととらえ、犯罪対策の強化を推進する動きが国際的に顕著になっているところであり、平成10年5月に開催されたG8バーミンガムサミットにおいても、「環境犯罪と闘うための措置を歓迎する。」旨のコミュニケが合意されているところである。 我が国においては、ダイオキシンを始めとするいわゆる「環境ホルモン」問題等への国民の関心の急速な高まりが顕著になっていることからも明らかなように環境を守るための取組の強化を求める国民の声がますます高まっているにもかかわらず、産業廃棄物の不法投棄が広域にわたって横行するなど、悪質な環境破壊行為が後を絶たず、大きな社会問題になっている。 そこで、警察としては、産業廃棄物不法投棄事犯や野生動植物の不法取引等の環境犯罪に対する取組を強化し、特に我が国で深刻な問題となっている産業廃棄物不法投棄事犯に対する取締りを当面重点的に行うことにより、環境保全を求める国民の要望に応えることが必要である。そこで、以下のとおり、警察において取り組むべき環境犯罪対策を強力に推進することとする。
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by strafrecht_bt | 2016-12-12 16:07 | 環境刑法
2016年 12月 05日

法と環境11:環境倫理学(6)

【補充】生命中心主義(Biocentrism)
生態学的、地球中心主義的な世界観を強調する哲学のこと。生命中心主義は、人間と自然を人間中心主義に見られるような「支配-被支配」という関係ではなく、有機的なつながりを持つ生態系の一員であるにすぎないとみなす。人間以外の構成員は、自然の法則に忠実にしたがっているが、人間のみが自己利益のために自然の法則を無視していると考える。このため、人間は他の構成員に対して、道徳的義務を一方的に負わねばならず、生態系はその倫理的対象となる。つまり、生命中心主義の立場における環境保護は、人間の利益のため行うものではなく、生態系それ自身がもつ価値を守るために行うこととなる。このような生命中心主義は、その後、自然の権利思想へと発展することとなった。

主唱者:
*アルベルト・シュヴァイツァー(Albert Schweitzer, 1875 - 1965:写真)は、ドイツ出身のアルザス人で、ドイツ系の神学者・哲学者・医者・オルガニスト・音楽学者→「生命への畏敬」
*P.W.テイラー(1923-2015)
P. W. Tayler; The Ethics of Respect for Nature. 1981
➀ 人間はこの地球に存立する生命共同体のメンバーである。人間がこのメンバーであるための諸条件は、人間以外のあらゆるメンバーの諸条件と同一である。
② 地球の自然的エコシステムは、もろもろの要素が互いにからみあった一つの全体とみることができる。この全体のなかでおのおのの存在の生物学的な健康(健全な働き)は他の存在の健康(健全な働き)に依存している。
③ 個々の有機体(生きもの)は一個の生きた目的論的な中心であり、自分自身にとっての善いことをそれ独自の仕方で追求している。
④ 人間はその本性にもとづき他の種よりもまさるという要求は、根拠のない非合理的な偏見である。

日本の法学者の見解
北村宣喜:人間中心主義
伊東研祐:人間非中心主義(生態系中心主義)
高橋広次:総合説(人間中心主義+人間非中心主義+環境正義論)
北村喜宣(1960-)の見解
総論:「法学を議論する以上…人間を中心に考えざるをえない」ので→人間中心主義を採用するが、但し「『人間が環境を支配する』という不遜なしせいであってなら」ず、「『環境に行かされている』『自然に感謝する』『環境容量に配慮しながら活動する」という認識が絶えず踏まれるべきである」(北村・環境法10頁)とする。
環境基本法(特に3条)の解釈:「…環境基本法は、人間中心主義の立場に立つことを明らかにしている。法は人類のためにあることから、基本的立場としては適切である」が、「そのうえで、過度の『現在世代中心主義」に陥ることなく、将来世代、生態系、将来の地球を考えた背作を立案・実施しなければならない」(北村・274頁)とする。

環境基本法3条
(環境の恵沢の享受と継承等)
第3条  環境の保全は、環境を健全で恵み豊かなものとして維持することが人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものであること及び生態系が微妙な均衡を保つことによって成り立っており人類の存続の基盤である限りある環境が、人間の活動による環境への負荷によって損なわれるおそれが生じてきていることにかんがみ、現在及び将来の世代の人間が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受するとともに人類の存続の基盤である環境が将来にわたって維持されるように適切に行われなければならない。

伊東研祐(1953-)の見解
生態系中心主義からのアプローチ
環境犯罪を処罰する目的は,環境保全に係る行政規制違反の回復(当該規制の妥当性の確認)だけに止まるものではなく,環境保全に向けた人々の倫理感を覚醒させ,維持すること(刑罰権行使による倫理形成機能)にもあるとされ,環境刑法の保護法益は生態系自体であり,環境犯罪は,この意味での法益に対する抽象的(一具体的)危険犯であると主張された。
環境刑法の保護法益の理解は,環境犯罪の罪質と構成要件の在り方にも関連していることが,改めて認識されるに至った。即ち,保護法益を広く環境の機能それ自体と捉えれば捉えるほど,環境犯罪は,(そうした保護法益に対する)(具体的,更には抽象的)危険犯となる。
更に,環境犯罪は,環境を規制する行政法規に従属するべきものではなく環境倫理の形成を目指して,刑法学の観点から,独自に構成されるべきだ,との理解に至り易いということである。
高橋広次(1948-)の見解
人間非中心主義/人間中心主義の問題点(高橋・環境倫理学入門146頁以下)
人間非中心主義:生物個体に固有のインタレスト(利害関心)、主体性
「権利」はあるか?:「倫理の主体」/「生命の主体」の区別
人間=道徳的行為の「主体」/人間以外の生物=道徳的配慮の「客体」
人間の内なる「種」の尊重
ヨーナス:世代間倫理の典型としての親子関係:
乳飲み子を助ける親の一方的行為⇒倫理的?:自然主義的誤謬?
「乳飲み子倫理」:「倫理学と生物学の先例のない融合」/「どの世代にも科せられる人間的種の維持の問題」(高橋149頁)
「人格の目的」/「自然の目的」
環境正義論の問題点
あくまで近代的な精神(文化)の枠内の議論⇔「持続可能なな社会を生きるためには、近代とは異なった精神になじまなければ、住み難いものとなろう。」(高橋152頁)
「里山」の思想など
*鬼頭 秀一(1951年 - )
*丸山徳次(1948-)
丸山徳次・宮浦富保編『 里山学のすすめ ― <文化としての自然>再生にむけて』(2007)
かつての主流の環境倫理は、人間以外の生き物や生態系の内在的価値(それ自身としての価値)を強調し、そうした生き物を人間のために利用する立場を、環境破壊を助長する人間中心主義と非難してきた。この見解によれば、人間は自然あるいは生態系に介入してはならないことになる。しかし、自然の絶対的な「保存」が常に自然保護に役立つわけでもなければ、人間による自然の利用が必ずしも環境破壊に結びつくわけでもない。ある種の自然環境では、人の手が入ることで多様な種と生物が存続してきた。本書で提起されている「里山学」は、「里山」という人間と自然とが関わる場を体系的に分析および評価する試みと言える。

里山とは
 「里山」とは、広い意味では里山林・田んぼ・ため池・用水路・畦などがセットになった農業環境・農業景観のことを指し、狭い意味では稲作農業に必要な肥料や木材、薪炭をとるための農用林(里山林)のことを指します。 「里山」は、人間が長期にわたって手を入れ利用してきた「文化としての自然」であり、日本人にとっての原風景とも呼べる景観です。
 しかし、エネルギー革命(薪炭から石油・ガス・電気への変化)と農業革命(圃場整備・機械化・化学肥料の大量投入)によって、樹木の伐採や落葉かきなどの伝統的な里山管理が行われなくなり、里山は放置されていきました。 利用価値を失った都市近郊の里山林は、開発のターゲットにもされてきました。
 このような戦後のエネルギー革命や農業革命に伴い、経済活動の広域化がいっそう加速し、伝統的な地域経済を支えてきた里山をめぐる日本文化が次々と失われてきました。 たとえば、里山の持続的利用を可能にしてきた伝統的な森林管理技術、里山の植物利用の知恵、水田稲作に関連した民俗儀礼なども失われつつあります。
 手入れされた里山は、結果的に生物多様性を維持する仕掛けともなり、里山環境に適応した多くの生きものたちの住みかでもありました。 里山の管理放棄・開発・農業様式の変化などによって、いま里山の生物多様性が大きく失われようとしています。


小テスト
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by strafrecht_bt | 2016-12-05 16:03 | 環境刑法
2016年 12月 04日

コペンハーゲン・コンセンサスへの批判

法と環境の授業で取り上げた参考文献に挙げた岡本裕一郎教授の著書で(おそらく】支持されているロンベルクのコペンハーゲン・コンセンサスに対しては東北大学の明日香教授らの反論があり、私見ではこの反論の方が説得的であるように思える。
明日香壽川, 河宮未知生, 高橋潔, 吉村純, 江守正多, 伊勢武史, 増田耕一, 野沢徹, 川村賢二, 山本政一郎『地球温暖化懐疑論批判』東京大学IR3S/TIGS叢書 No.1, 2009年、第4章62頁以下:議論30「議論 30 様々な世界的な問題の中で、気候変動の優先順位は必ずしも高くはない。 コペンハーゲン・コンセンサスでは、気候変動が最低の優先順位であった 」への反論
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by strafrecht_bt | 2016-12-04 11:18 | 環境刑法
2016年 11月 28日

法と環境10:環境倫理学(4)

J. Baird Callicott
ベアード・キャリコット(1941年5月19日 – )
アメリカ合衆国の環境倫理学者。テネシー州メンフィスで生まれた。1971年にシラキューズ大学から哲学博士号を取得(専攻はプラトン哲学)。現在は、ノーステキサス大学の哲学教授。1971年にウィスコンシン州立大学スティーブンズポイント校において、世界初の環境倫理学の講座を開き、1979年にこの分野の専門誌を発行した。環境倫理学という分野の創設者と位置づけられる。
環境ファシズム:人間中心主義批判
ポスト・モダンの環境倫理←ポストモダンの科学(リオタール)
環境ファシズム(Environmental Fascism)
種や生態系の保全を最優先させる、地球全体主義の偏った思想を批判する際に用いられる概念。
批判者によれば、地球全体主義は、個人の権利・生命を犠牲にする危険性があるとされる。例えば、人口増加を防ぐために、人工妊娠中絶を強制することが肯定化されるなど。
環境倫理学の議論の中で、「環境ファシズム」という言葉を最初に使ったのはトム・リーガン(アメリカ)で、すべての個(動物や人間)の固有の価値を重視する考え方を展開していた。したがって、生態系や種の保護を重視する地球全体主義を、個々の生命の犠牲を容認するファシズムであるとして批判した。
地球全体主義
地球こそが、すべての価値判断を優先して尊重されるべき「絶対的なもの」であるという思想。
地球全体主義は、地球全体のためには、個人、あるいはもっと大きな社会的構成体の欲望や自由をある程度制限することを要求する。
地球全体主義の代表的な主張として、土地倫理やガイア仮説などがある。地球全体主義は、近代的な自由主義・個人主義への抵触、環境ファシズムの危険性など様々な問題点が指摘されている。
エコ・テロリズム(ecoterrorism)
「エコ・テロリズム」とは、放火や爆弾、器物損壊といった暴力行為を伴う過激な環境保護・動物愛護(解放)運動を指す概念
浜野喬士『エコ・テロリズム―過激化する環境運動とアメリカの内なるテロ』(2009)
環境を、動物を守るための暴力とは何なのか? 過激な反捕鯨運動でも知られるグリーンピースやシー・シェパードなど、ラディカル環境・動物解放運動の歴史と思想的背景を解き明かし、その内在論理を丹念に読み解くことで、“自由”と“民主主義”の国「アメリカ」の問題を鮮やかに照らし出す!
第一章 エコ・テロリズムとは何か
第二章 ラディカル環境運動と動物解放運動
第三章 思想史的背景
第四章 アメリカにおける反エコ・テロリズム
シーシェパード

世代間倫理
Inter-Generation Ethics
現代世代が、未来世代の生存可能性に対して責任を持つべきであるとする倫理。
環境を破壊し、資源を枯渇させる行為は、現代世代が加害者になって未来世代が被害者になるという構造を持っている。従って、世代間倫理が存在しないならば、環境問題は解決されない。
加藤尚武:現在の意志決定システムである民主主義は、「現在の同意」という共時的な意志決定システムであり、異なる世代間にまたがるエゴイズムをチェックする機能を持っていないとしている。一方で、封建主義は未来に対して責任を負う「通時的な」意志決定システムであったと指摘している。
ハンス・ヨーナス :エコロジー的定言命法「汝の行いの結果が、真の人間の生命の地上における永続と調和するように行為せよ」:人類の存続義務?

Hans Jonas (1903-1993)
責任の原理
『責任という原理:科学技術文明のための倫理学の試み』(1979, 加藤尚武監訳、東信堂、2000年)
ヨナスの著作は、技術社会において生み出された社会的・倫理的問題を主題としている。彼は、人類の存続は、我々の世界である地球とその未来への配慮に対する努力に依存していると主張
ヨナスは道徳性に関する、新しく明瞭な至上原理を定式化:
「汝の行いの結果が、真の人間の生命の地上における永続と調和するように行為せよ」(„Handle so, daß die Wirkungen deiner Handlungen verträglich sind mit der Permanenz echten menschlichen Lebens auf Erden.“ – Das Prinzip Verantwortung, S. 36)

自然の生存権/自然の権利
Rights of Natur
アルド・レオポルドの土地倫理(land ethic)や、アルネ・ネスらのディープ・エコロジー(deep ecology)運動などに影響を受けた自然や生物を尊重する考え方。法学や哲学の「人間の自然権」(生まれながらの権利)と区別して、「自然の自然権」あるいは「自然の権利」ということも多い。
自然保護は人類だけのためではなく、人類の生存や要求から独立して独自に、自然あるいは生物にとっても繁栄する価値と権利を有するとする考え方で、各地の開発に伴う自然保護運動の戦術としても「自然の権利訴訟」が相次いでいる。米国のダム建設に対するシマフクロウを原告とした訴訟が有名で、日本でもアマミノクロウサギ(奄美ゴルフ場)、オオヒシクイ(茨城県圏央道)、ナキウサギ(大雪山士幌高原道路)などを原告とした例がある。
ペット、家畜や実験動物の「動物の権利」(アニマルライト animal right)とは通常区別している。

Christopher D. Stone (1937-)
Stone, Christopher D. (1972). "Should Trees Have Standing--Toward Legal Rights for Natural Objects". Southern California Law Review 45: 450–87
クリストファー・ストーン「樹木の当事者適格-自然物の法的権利について」現代思想 1990年10月号
樹木の当事者適格
「権利の主体は、富裕層のみ・男性のみ・白人のみ、といった限定を次々にはずされ、拡張されてきた。この流れは、人類以外の存在にも向けられるべきだ」とするものである。そして、訴訟上は、後見人や信託人としての人間が、「被害者」である自然物に代わって賠償請求をして環境修復の費用に充てたり、開発の差し止めを行うことを認めていけばよい
「シエラクラブ対モートン事件(Sierra Club v. Morton)」は、アメリカ合衆国で1965年に提訴された自然保護裁判。自然保護団体のシエラクラブが、ウォルト・ディズニー社によるミネラルキング渓谷の開発計画について、開発許可の無効確認を求めて、ロジャース・モートン内務長官を訴えたもの。二審判決までは、原告シエラクラブには何の法的権利侵害も生じることがないとして、訴訟要件である原告適格が欠けることを理由に却下判決が下された。
日本への影響:「アマミノクロウサギ」訴訟【百選81】
Sierra Club v. Morton
アマミノクロウサギ
自然の権利訴訟
自然保護を目的とする行政訴訟においては、開発に反対する周辺住民や環境保護団体の原告適格が認められなかったため、紛争の木質をあえて正面に出す意味で、動物(例:アマミノクロウサギ、ミヤコタナゴ)や自然物(例:高尾山、落合川)を原告とすることがある。また、原告適格認定において支障が少ない住民訴訟においても人間以外が原告とされることがある。このように、人間以外の生物や自然物を原告とする訴訟を「自然の権利訴訟」とよぶ。訴訟を提起する人間の主張を社会的にアピールする意味が強い。(北村240頁)
(1)自然の権利訴訟が語られるとき、米国の研究者の論文が参照されることが多い(Christopher D. Stone "Should Trees Have a Standmg?” 45 Southem California Law Review 450 (1972))・どのような主張だったのだろうか。邦訳としては、クリストファー・ストーン(岡嵜修十山田敏雄(訳))「樹木の当事者適格:自然物の法的権利について」現代思想18巻11~12号(1990年)がある。
(2)自然を代理して行政訴訟を提起する資格を立法的に人間に認めるとした場合、その適格性はどのように説明できるのだろうか。
(3)自然の権利訴訟の趣旨を、訴訟ではなく法政策的に制度化するとすれば、どのような行政法的制度が考えられるだろうか。

アニマルライツ(動物の権利)Animal Rights
「動物の権利」と訳され、それを擁護する思想あるいは運動を指すことが多い。本来は動物にどのような道徳的配慮をすべきかという思想的・哲学的な倫理問題。1980年代から活発に論議されるようになった。
さまざまな立場があり、トム・リーガンに代表される「感覚を持った哺乳類」を権利を持つ主体と考えるもの、一般的な人道主義に近い立場や、感覚を持つすべての動物を権利の保持者と見なし「倫理的世界を拡大するための遠大な倫理革命の一部」と捉えるピーター・シンガーの「動物解放論」などの立場がある。これらの議論を、人間の利益のために動物の権利を支持する「人間中心主義」と、人間の利益とは無関係に動物に本来備わっている価値を重視する「生命中心主義」とに分類して整理する見方もある。
「自然の権利」と同一視されることがあるが、「自然の権利」が野生生物種や自然物、生態系を対象とし、それを人間が代弁できるとするのに対して、「動物の権利」は飼育動物を中心とした個体の福祉を念頭に置き、個体の権利を主張する点で違いがある。ただし、「動物の権利」は社会的にさまざまな意味と意図で使われており、共通認識はまだできていない。

Tom Regan (1938-) トム・リーガン
菜食主義
「全体論的自然主義者」批判→「環境ファシズム」
【町野・22頁】
Peter Singer (1946-)ピーター・シンガー『動物の解放』
「苦痛を感じる能力のある動物」
「種差別主義者(speciesism)」批判【町野・22頁】

環境経済学/環境プラグマティズム
経済と環境の統合(セン)
生態系サービス(コンスタンザ):各種サービスの貨幣評価
CVM:仮想評価法
環境プラグマティズムからの評価(ブラアン・ノートン)
環境経済学:環境評価→「一元的」⇔「包括的」
多元論
【文献】寺本 剛 「環境価値の二極化とブライアン・ノートンの環境プラグマティズム」応用倫理(北海道大学大学院文学研究科応用倫理研究教育センター)2巻(2009年11月)13-23頁
寺本論文の要旨
自然環境の価値とはどのようなものか。この問題に関して二つの極端な考え方が従来の環境思 想を支配してきた。一つは自然環境の価値を「経済価値」あるいは「市場価値」としてのみ捉え ようとする考え方(経済主義)であり、これは主に厚生経済学や環境経済学において支持されて きた。もう一つは環境の価値を「内在的価値」としてのみ捉えようとする考え方(内在的価値論) であり、これは環境倫理学において一つの有力な主張として定着している。この二つの立場は自 然環境の価値を一種類の価値に還元しようとする強い傾向を持つため、互いの見方を許容できず、 環境思想の価値論は二極化の様相を呈していた。一方、環境プラグマティズムの主唱者の一人で あるブライアン・ノートンはこのような二極化を不毛なイデオロギー対立として批判し、環境思想をより実行力のあるものへと変換しようとする。そのためにノートンは、これらの価値論が共有する暗黙の前提を暴き出し、これらの価値論に代わってプラグマティックな価値論を提案する。 本稿では、ノートンの議論を手がかりに、環境思想における価値の二極化の実情と、この二極化の根底に存在する先入見とを明らかにし、さらにノートンがこの二極化をいかに克服しようとし ているかを見る。そして最後にノートンの主張が環境思想の動向と環境倫理の在り方にとっていかなる意義を持つのか確認したい。

Ernst Friedrich Schumacher
エルンスト・フリードリヒ・シューマッハー(Ernst Friedrich "Fritz" Schumacher, 1911年8月16日 - 1977年9月4日)は、ドイツ生まれのイギリスの経済学者。ジョン・メイナード・ケインズに師事した。イギリス石炭公社の経済顧問。
長年の石炭公社の勤務経験と経済学者としての分析から、石炭及び、その代替燃料としての石油の枯渇を予測し、原子力の利用についても警鐘を鳴らした。
1973年に刊行された『スモール イズ ビューティフル』は、その中でエネルギー危機を予言し、第一次石油危機として的中したことで世間の注目を浴び各国語に翻訳された。同書は The Times Literary Supplement により、第二次世界大戦後に出版された書籍の中で、世界に影響を与えた100冊に選出された。
地球の自然環境と調和した節度のあるサイズの生活
アマルティア・セン
(ベンガル語:অমর্ত্য সেন 英語:Amartya Sen、1933年11月3日 - )は、インドの経済学者。哲学、政治学、倫理学、社会学にも影響を与えている。アジア初のノーベル経済学賞受賞者。1994年アメリカ経済学会会長。
Robert Costanza(1950‐)
Professor and Chair in Public Policy at the Crawford School of Public Policy.
Prior to this, he was Distinguished University Professor of Sustainability in the Institute for Sustainable Solutions at Portland State University, Gund Professor of Ecological Economics and founding director of the Gund Institute for Ecological Economics at the University of Vermont, Professor at the University of Maryland and at Louisiana State University and a visiting scientist at the Beijer Institute for Ecological Economics in Stockholm, Sweden, and at the University of Illinois Natural History Survey.
CVM=Contingent Valuation Method
CVM(仮想評価法):アンケートを用いて環境の値段を評価する手法
例:CVMの質問例
ゴルフ場開発によって森林が伐採される予定があるとします。そこで、この開発を中止して、生態系を守るためにあなたはいくら支払っても構わないと思いますか?
年間______円
このように、CVMは、環境を守るためにいくら支払うかをたずねることで、環境の価値を評価する。この質問方式は自由回答方式と呼ばれており、回答者は自由に金額を記入する。この方式は、CVMの中でも最もシンプルなものである。今日では、より洗練された質問形式が開発されている。例えば、エクソン社バルディーズ号の原油流出事故による生態系破壊の評価では「二段階住民投票方式」と呼ばれる質問方式が使われた。 ここで得られる金額は「支払意志額」と呼ばれる。この金額は1世帯あたりの金額なので、対象となる地域の世帯数をかけることで、生態系の価値が評価される。また、支払意志額は年間あたりの金額なので、これに対象期間をかける。
生態系価値の算出方法
生態系価値=支払意志額×対象世帯数×対象期間
レクリェーションの対象者は訪問者のみに限定され、水源保全は下流住民のみに限定される。しかし、生態系の場合はすべての国民に及ぶため、生態系の価値はしばしば数億円~数百億円にのぼる。
文献:栗山浩一・柘植隆宏・庄子康『初心者のための環境評価入門』勁草書房,2013年2月
Bryan G . Norton(1944‐)
Practical philosophy is philosophy that is undertaken in the context of real-world problems. Philosophical thinking can often clarify problem contexts and bring to bear careful analysis of concepts and principles of how to act. In my research, I have addressed the problems of species loss, degradation and "illness" of ecological systems, the problems of watershed management, and most recently, the problem of placing boundaries around environmental problems so that they can be modeled for study and management. In addressing these problems, I have sought unity among my views of these multiple problems by creating a theory of sustainable development that captures the key role of human values in the search for better policies to protect nature and humans of the future.
まとめ
環境倫理学
基本思想の対立
人間中心主義⇔非人間中心主義(動物→生物→エコ→自然・中心主義)
フロンティア倫理vs.宇宙船倫理vs.救命ボート倫理
3つの柱(加藤尚武)
地球全体主義
世代間倫理
自然の生存権(自然の権利)
環境倫理にご用心!(ルーマン)
原理的問題点
「環境ファシズム」「エコ・テロリズム」の危険
環境倫理学の見取り図
時間軸・空間軸
権利主体
ウーリッヒ・ベックのリスク社会論
ウルリッヒ・ベック(Ulrich Beck、1944年5月15日 - 2015年1月1日)は、ドイツの社会学者。ポンメルンのシュトルプ(現在のポーランド領スウプスク)生まれ。
ミュンヘン大学卒業。ヴェストファーレン・ヴィルヘルム大学、オットー・フリードリヒ大学バンベルクを経て、1992年からルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン(ミュンヘン大学)およびロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの社会学教授を務めた。
ルーマンの環境倫理批判
『エコロジーのコミュニケーション』(1986年)
第21章「環境倫理」
道徳/倫理の区別:倫理=道徳の反省理論(259頁)
道徳のパラドックス:「一切は道徳的だが、道徳そのものは道徳的ではない」(Musil『特性のない男』より)
「パラドックスに対する瘤胃(Pansen)」(262頁):問題を「事前にソートし議論を概念的に準備する任務」(Grundmann, in: Luhmann Handbuch, S. 172)を持つ環境倫理
「いずれにせよそのような倫理が存在しない限り、エコロジーのコミュニケーションは自ら道徳に対して距離をとるように努めなければならないだろう。エコロジーのコミュニケーションは現在、環境倫理という方向指示によって誤って誘導されている。」(262頁)
小菅雅行「ニクラス・ルーマンのシステム論を用いた対話型コミュニケーション活動の考察」待兼山論叢・哲学篇46号33-48頁(2012)
ルーマンはその著書『エコロジーのコミュニケーション』において、全体社会が近代において機能的に分化した社会システム、すなわち機能システムへと分化したことが、エコロジーの諸問題の背景にあるとしている。 (ÖK7)
近代社会は様々な機能システムに分化していったのだが、このことがエコロジーの諸問題の背後にある構造であるとルーマンは 指摘している。(ÖK7)すなわち、機能システムは分化しても相互依存はしているため、エコロジーの問題によって引き起こされる擾乱は連鎖してしまう(ÖK97)一方で、その制御は各機能システムの内部で行うしかな く、(ÖK100)さらに道徳や倫理の助けを得ることもできない。(ÖK88) このような袋小路に近代社会は追い込まれてしまっているのである。
Niklas Luhmann (1927-1998)
牛の第一胃(Pansen, rumen,瘤胃)
第一胃(こぶ胃:ルーメン、ミノ)、第二胃(蜂の巣胃:レティキュラム、ハチノス)、第三胃(葉胃:オマスム、センマイ)、第四胃(しわ胃:アボマスム、ギアラ)
ルーマンの環境法批判
『エコロジーのコミュニケーション』(1986年)
第11章「法」
環境に関する法的決定に関する恣意的要素の増大(128-9頁)
①限界値/②リスク引き受けの射程/③優先事項の決定
リスク引き受けの事前同意「君がそれを望んだのだよ、ジョルジュ・ダンダン」(モリエールの戯曲:George Dandin ou le Mari confonduより)(135頁)
法システムの古典的構造の歪曲(142頁)
Molièreモリエール(1622年1月15日 - 1673年2月17日)は、17世紀フランスの俳優、劇作家。コルネイユ、ラシーヌとともに古典主義の3大作家の1人。本名ジャン=バティスト・ポクラン(Jean-Baptiste Poquelin)。悲劇には才能がなかったが、鋭い風刺を効かせた数多くの優れた喜劇を制作し、フランス古典喜劇を完成させた
ジョルジュ・ダンダン:裕福な農夫のジョルジュ・ダンダンは“社会的地位”を手に入れるために、破産した貴族ソトンヴィルの娘アンジェリックと結婚。ソトンヴィル家の借金返済と引き換えに「ジョルジュ・ドゥ・ラ・ダンディニエール」という貴族の名前を名乗る権利を得たのだが、彼女とその両親は、事あるごとに身分の違いを強要してきます。ある日、ジョルジュ・ダンダンは、妻のアンジェリックが、クリタンドル子爵との逢瀬を続けているのを知ってしまい、彼女の両親に事の次第を告げるが、確固とした証拠が見つからず、反対にジョルジュ・ダンダンが謝罪することになってしまう。
同意制
許可申請など法定手続に先立って、事業者に対して、一定範囲の関係者の同意(通常は自署・押印によって示される)を取得することを求める行政運用をいう。自治体の行政現場でみられ、要綱に根拠を置くことが通例である。環境法のなかでは、産業廃棄物処理施設の立地にあたって、廃棄物処理法の許可申請前に要綱手続を設けて、そのなかで同意取得が求められる例がよく知られている。行政指導であるかぎりで可能であり、条例にもとづいて法的に強制することはできない。(北村・470頁、508頁)
(1) 要綱により求められた同意が取得されていないことを理由に法律にもとづく許可申請を受け付けないという行政運用には、行政手続法に照らしてどのような問題があるだろうか。
(2) 法律とはリンクしない独立条例のなかで許可制を規定し、許可基準のひとつとして「施設の設置に係る土地の隣接土地所有者及び地元町内会の同意を得ていること」という規定を設けることは適法だろうか。
(3) 行政が同意を求める理由が、施設に対する地元住民の不安にあるとすれば、どのような制度を設けることが適切だろうか。
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by strafrecht_bt | 2016-11-28 16:23 | 環境刑法