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カテゴリ:刑法Ⅰ(総論)( 35 )


2015年 07月 02日

【第12講】未遂犯の処罰根拠・実行の着手・中止犯

コアカリキュラム
第5章 未遂犯
第1節 総説

【条文】刑法典・未遂罪(第8章)
第43条(未遂減免)「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。」
第44条(未遂罪)「未遂を罰する場合は、各本条で定める。」 ー>罪刑法定主義
【参考文献】佐伯仁志「未遂犯論」前掲書337-369頁
井田良「フランク」法学教室144号(1992年)74頁以下
1. 処罰の早期化
(1)早期化の根拠(またはその制限根拠)
 ア.法益保護論からの説明
 イ.規範妥当保護論からの説明
*法益保護論の論者は、早期化に反対するものが多いが、理論的にはむしろ早く介入した方が、効果的に抑止できるのではないだろうか。これに対して犯罪の意味に着目する規範妥当保護論からは、処罰のためには犯罪としての外部的な意味表出が必要であり、原則的に予備段階の行為はすべきではない。予備規定があるものについても、特に中立的行為による予備の可罰性については限定する必要があるのではなかろうか。→予備の共同正犯
【時間外学習項目】
(2)早期化の類型
 ア.独立の早期化犯罪類型(特に抽象的危険犯)
 イ.結果犯の早期化類型
 (ア)予備と陰謀
【条文】国家的法益に対する罪:78条(内乱予備/陰謀)、88条(外患誘致・援助予備/陰謀)93条(私戦予備/陰謀*未遂/既遂なし!)/社会的法益に対する罪:113条(放火予備)、153条(通貨偽造予備)、個人的法益に対する罪:201条(殺人予備)、228条の3(身代金誘拐予備)、237条(強盗予備)
(事例)Aはトリカブトを使用した殺人事件の記事を読んで、夫Bの殺害に使用するためにトリカブトの栽培を始めた。
 (イ)未遂
【条文】刑法典上の未遂処罰規定:77条3項(内乱未遂)、87条(外患誘致・援助未遂)、102条(逃走の罪の未遂)、112条(放火未遂)、128条(往来妨害未遂)、132条(住居侵入未遂)、141条(あへん煙に関する罪の未遂)、151条(通貨偽造未遂)、157条3項、158条2項、161条2項、161条の2・2項、163条2項、163条の5、168条、168条の2・3項、179条、203条(殺人・自殺関与未遂)、215条2項(不同意堕胎未遂)、223条3項、228条、234条の2・2項、243条(窃盗・強盗未遂)、250条(詐欺・背任・恐喝未遂)

2.未遂犯の処罰根拠
5-1-1○未遂犯はなぜ処罰されるかに関する主要な見解を理解し、その概要を説明することができる。
(1) 主観的未遂論
(2) 客観的未遂論
 ア.行為無価値論
 イ.結果無価値論
 (ア)故意を判断要素とする見解(平野310頁)
 (イ)純粋客観説(中山・総論430頁)
*純粋客観説からはむしろ未遂処罰をすべて否定すべきではないだろうか?→不能犯
3.不能犯 (コア第3節)
(1)不能犯の意義
【条文】規定なし(参考:改正刑法草案25条「行為が、その性質上、結果を発生させることのおよそ不能なものであったときは、未遂犯としてはこれを罰しない。」)
*「不能犯」と「幻覚犯」
(事例)夫のあるAは、日本でもまだ姦通罪(1947年に削除された刑法183条「第183条(1)有夫ノ婦姦通シタルトキハ二年以下ノ懲役ニ處ス其相姦シタル者亦同シ/(2)前項ノ罪ハ本夫ノ告訴ヲ待テ之ヲ論ス但本夫姦通ヲ縱容シタルトキハ告訴ノ效ナシ)が処罰されていると思っていたが、Bと姦通した。
・事実の錯誤<ー>不能犯
・法律の錯誤<ー>幻覚犯
*不能犯の類型
①主体の不能
②客体の不能
③方法の不能
(2)不能犯に関する学説
5-3-1○不能犯に関する主要な見解を理解し、その概要を説明することができる。
 ア.主観的未遂論
 (ア)純粋主観説
 (イ)抽象的危険説
 イ.客観的危険説
 (ア)具体的危険説
 (イ)客観的危険説
〔批判〕(純粋)客観的危険説によれば、すべての未遂は不能犯ではないだろうか。また主観的に犯罪を犯しているつもりであっても、当該犯罪としての意味を持ちえないものについては処罰すべきではないのではなかろうか。例えば1万メートル上空の飛行機をピストルで撃ち落とそうとする者を未遂で処罰する必要はないと思われる。
*修正された客観的危険説(山口・総論)
(3)不能犯に関する判例:絶対的不能/相対的不能区別説

絶対的不能/相対的不能区別説
① 硫黄事件(大判大正6・9・10[282])→不能犯
② 空気注射事件(最判昭和37・3・23[285])→未遂犯
③ 死体殺人事件(広島高判昭和36・7・10[290])→未遂犯
[批判]客観的危険説の方が実務的にも優れているが、「事実の抽象化の程度が大きく、結果の発生が絶対にないとはいえない、という程度のきわめて低い危険で未遂犯の成立を認める」点が問題→「ある程度高度の危険を要求すべき」(佐伯・353頁)
*過失の予見可能性の基準と矛盾してはいないか?→過失犯
5-3-2◎未遂犯と不能犯との区別を具体的事例に即して説明することができる。
4.未遂犯の成立要件
5-1-2○未遂犯の成立要件について理解し、その概要を説明することができる。
(1)実行の着手
(2)結果の不発生
第2節 実行の着手
【条文】第43条本「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。」
1.学説
5-2-1○実行の着手に関する主要な見解を理解し、その概要を説明することができる。
(1)主観説(「犯意の飛躍的表動」宮本・大綱179頁など)
(2)客観説
 ア.形式的客観説(平野313頁)
 イ.実質的客観説
2. 主要犯罪類型における実行の着手
5-2-1◎主要な犯罪類型(たとえば、殺人罪、強姦罪、窃盗罪、放火罪など)における実行の着手時期を具体的事例に即して説明することができる。→刑法各論
(1)殺人罪(199・203条)
(2)強姦罪(177・179条)
(3)窃盗罪(235・243条)
(4)放火罪(108-109①・112条)
(5)その他の類型
3. 間接正犯・離隔犯における実行の着手
5-2-3◎間接正犯・離隔犯における実行の着手時期を具体的事例に即して説明することができる。←実行行為
*原因において自由な行為の実行の着手
*不作為犯の実行の着手
(事例)①母親Aは、自分の子供Bが池で溺れているのをみて、当初はこのまま死んでくれればよいと思って救助しなかったが、子供が水を飲んで沈みそうになる直前に「苦しいよ、お母さん助けて!」というのを聞いて翻意し子供を救助した。/①で母親ではなく通りかかった第三者のCが同じ時点で救助した。
ー>救助の可能性が残っている間は着手に至らないとする説(中山・総論415頁)は妥当か?
短答問題
第3節 中止犯(コア第4節)
【条文】第43条但「ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。」
1.中止犯の性格
5-4-1○中止犯における刑の必要的減免の根拠に関する主要な見解を理解し、その概要を説明することができる。
(1) 刑事政策説
(2) 法律説
 ア. 違法減少説
 イ.責任減少説
 ウ.二元説
*行為の意味変更
(事例)Aは赤ん坊Bをあやしているように見せかけ投げ上げたうえで、キャッチするのに失敗したようにみせてわざと落として殺害しようとしたが、いったん上に投げ上げたが翻意してキャッチした。
2. 中止犯の成立要件
5-4-2○中止犯の成立要件について理解し、その概要を説明することができる。
(1)中止行為
5-4-3◎「犯罪を中止した」の意義について理解し、具体的事例に即して説明することができる。
ア.着手未遂(未終了未遂)ー>不作為
イ.実行未遂(終了未遂)ー>作為
*着手未遂/実行未遂の区別
*実行行為の中止/失敗の区別
(事例)①ルパン三世は世界最大のダイヤ「女神の涙」を博物館から盗む計画を立てた。その計画を察知した博物館では10万円相当の精巧な偽ダイヤを作成し、展示していた。ルパンは深夜、博物館の侵入に成功し、展示ケースを開けてダイヤを取ろうとしたが偽物であることに気づき、何も取らずに逃走した。
②ゴルゴ13は、Xの頭を一発で打ち抜き射殺する計画で発砲したが弾はXの頭をわずかに外れた。弾はまだ残っていたが、2発も撃って殺すのはプライドが許さなかったので狙撃を中止した。
->これらの行為において行為の意味変更があったといえるか?
私見:目的不達成の場合(フランクの公式参照)は、行為が失敗した(fehlschlagen)場合であって、中止とはいえないのでは?->任意性よりも中止行為で限定する方がベターではないか
*中止行為の真摯性
判例:①東京地判昭和37・3・17〔295〕/②大阪高判昭和44・10・17〔296〕
(2)結果の不発生
*中止行為と結果阻止との間の因果関係
(3)任意性→罪刑法定主義(明確性原則)との関係
5-4-4◎「自己の意思により」の意義について理解し、具体的事例に即して説明することができる。
短答問題
ア.学説ー任意性の基準
(ア)客観説:一般人基準?
(イ)主観説
*「やろうと思えばできた」という基準:客観的可能性か目的達成か?
→「フランクの公式」(井田・前掲75頁):目的達成を基準としていた
①行為者が「たとえ目的に到着できるとしてもこれを欲しない」場合→任意の中止
②「たとえ欲したとしてもできない場合」→障害未遂
私見:これは任意性の問題よりも中止行為の問題ではないか
(ウ)限定主観説:(広義の)悔悟
イ.判例
*一般に限定主観説といわれているが、客観的基準を採っているようにみえるものもあり、不明確:「実体法上の要件の問題と立証の問題が混在」(佐伯366頁)
(ア)肯定例:広義の後悔のある事例
(イ)否定例
 ①大判昭和12・9・21[298]犯行の発覚を恐れた消火:客観説?
 ②最決昭和32・9・10[299]驚愕・恐怖による中止:客観説?

演習問題
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by strafrecht_bt | 2015-07-02 09:00 | 刑法Ⅰ(総論)
2015年 06月 25日

【第11講】責任能力と原因において自由な行為

コアカリキュラム
第4章 責任阻却事由
第1節 総 説
4-1-1 責任とは何か(概要説明)
4-1-2 責任阻却事由にどのようなものがあるか(概要説明)
【条文】
・阻却事由 刑法39条1項、41条
・必要的減免事由 43条但書
・任意的減免事由 36条2項、37条1項但書
・必要的減軽事由 39条2項
*責任能力規定は阻却事由か?
4-1-3 適法行為の期待可能性(概要説明)
【条文】
・(責任阻却説、二元説における害の均衡の場合[生命対生命など] )37条
・105条
・257条
*244条→通説:処罰阻却事由
*超法規的期待不可能性?
学説
・行為者標準説
・平均人標準説
・国家標準説
判例(最判S33・7・10判例刑法265)
失業保険の保険料不納付

第2節 責任能力
【条文】刑法39条
短答問題
*責任無能力は責任阻却事由か?
1.責任能力制度の必要性
4-2-1 責任能力が必要とされる理由(概要説明)
*39条廃止論
2.心神喪失・心神耗弱の意義
4-2-2 心神喪失、心神耗弱の意義及び判断方法(概要説明)
(1)意義
ア.心神喪失(責任無能力)
イ.心神耗弱(限定責任能力)
(2)判断方法
3.原因において自由な行為
4-2-3 行為者自らが精神障害を招き、実行行為を開始する時点で責任能力が失われ、又は、著しく低下していた場合における刑法39条の適用の可否について理解し、具体的事例に即して説明することができる。
(1)意義:actio libera in causa (ラテン語)
事例(山中284Q19-1)
(2)類型
・意思連続型
・不連続型
(3)問題点
・間接正犯類似構成説(構成要件モデル)
・実行の着手時期
 ・原因行為時説
 ・結果行為時説
・行為と責任の同時存在原則の例外?
 ・例外モデル
*罪刑法定主義に反さないか?
⇒意図的挑発防衛と類似の構造
(4)限定責任能力の場合
限定責任能力/責任無能力の区別
参考論文
(5)実行行為途中からの心神喪失・心神耗弱
・実行行為の途中で陥った責任無能力状態(山中293Q19-9):血の酩酊事件(BGHSt7,325)
【判例】長崎地判H4・1・14判例刑法263

参考文献
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by strafrecht_bt | 2015-06-25 09:00 | 刑法Ⅰ(総論)
2015年 06月 15日

【第10講】正当防衛と緊急避難(2)、責任阻却事由

コアカリキュラム
第3章 違法性阻却事由
第4節 正当防衛
【条文】刑法36条「(正当防衛)第三十六条  急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
2  防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。」
1.正当防衛の違法性阻却根拠
3-4-1○正当防衛が違法性阻却事由となる根拠について理解し、その概要を説明することができる。
・個人主義的見解「自己保全」
・超個人主義的見解「法秩序の確証」
・二元説(山中など)
2.正当防衛の要件
(1)侵害の急迫性
3-4-2◎侵害の急迫性の要件を理解し、具体的事例に即して説明することができる。
*侵害の予期と積極的加害意思
3-4-6◎行為者が侵害を予期していた場合における正当防衛の成否について理解し、具体的事例に即して説明することができる。
*予防的防衛
(2)侵害の不正性
3-4-3◎侵害の不正性の要件を理解し、具体的事例に即して説明することができる。
*対物防衛
(3)防衛の意思
3-4-4◎防衛の意思の要否及び内容について理解し、具体的事例に即して説明することができる。
*偶然防衛
*防衛の意思と積極的加害意思
(4)防衛の必要性および相当性
3-4-5◎「やむを得ずにした行為」の要件を理解し、具体的事例に即して説明することができる。
3.正当防衛の制限
*自招防衛
3-4-7◎行為者自らが不正の侵害を招致した場合における正当防衛の成否について理解し、具体的事例に即して説明することができる。
4.過剰防衛と関連問題ー>責任
(1)任意的減免根拠
3-4-8◎過剰防衛が刑の任意的減免事由とされる根拠を理解し、その成否について具体的事例に即して説明することができる。
・違法減少説
・責任減少説
・二元説
(2)過剰防衛の類型
・量的過剰防衛
・質的過剰防衛
(3)誤想過剰防衛
3-4-9◎誤想防衛、誤想過剰防衛の諸類型及びその法的処理について理解し、具体的事例に即して説明することができる
*違法阻却事由の錯誤
第5節 緊急避難
【条文】刑法37条 「(緊急避難)第三十七条  自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
2  前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。」
1.緊急避難の意義と法的性格
3-5-1○緊急避難の法的性格をめぐる基本的な考え方について理解し、その概要を説明することができる。
・違法阻却説(通説)
・責任阻却説
・二元説(有力説)
2. 緊急避難の要件
(1)現在の危難
3-5-2◎「現在の危難」の要件を理解し、具体的事例に即して説明することができる。
(2)補充性
3-5-3◎「やむを得ずにした行為」の要件を理解し、具体的事例に即して説明することができる。
(3)害の均衡
3-5-4◎害の均衡の要件を理解し、具体的事例に即して説明することができる。
3.緊急避難の制限
(1)業務上の特別義務者(37条2項)
*特別義務者には常に否定されるのか?
(2)自招危難
3-5-5◎行為者自らが現在の危難を招致した場合における緊急避難の成否について理解し、具体的事例に即して説明することができる。
短答問題
【追加項目】
*防御的緊急避難と攻撃的緊急避難
参考条文:民法720条「(正当防衛及び緊急避難)第七百二十条  他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。ただし、被害者から不法行為をした者に対する損害賠償の請求を妨げない。/2  前項の規定は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合について準用する。」
工作物・動物の所有者の無過失責任(民法717条:Wiki;民法718条参照)

第4章 責任阻却事由
第1節 総 説
4-1-1 責任とは何か(概要説明)
4-1-2 責任阻却事由にどのようなものがあるか(概要説明)
【条文】
・阻却事由 刑法39条1項、41条
・必要的減免事由 43条但書
・任意的減免事由 36条2項、37条1項但書
・必要的減軽事由 39条2項
*責任能力規定は阻却事由か?
短答問題*2014年追加
4-1-3 適法行為の期待可能性(概要説明)
【条文】
・(責任阻却説、二元説における害の均衡の場合[生命対生命など] )37条
・105条
・257条
*244条→通説:処罰阻却事由
*超法規的期待不可能性?
第2節 責任能力
*責任無能力は責任阻却事由か?
4-2-1 責任能力が必要とされる理由(概要説明)
4-2-2 心神喪失、心神耗弱の意義及び判断方法(概要説明)
【条文】刑法39条
短答問題
4-2-3 行為者自らが精神障害を招き、実行行為を開始する時点で責任能力が失われ、又は、著しく低下していた場合における刑法39条の適用の可否について理解し、具体的事例に即して説明することができる。→「原因において自由な行為」
参考論文

ミニョネット号事件
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by strafrecht_bt | 2015-06-15 14:35 | 刑法Ⅰ(総論)
2015年 05月 19日

【第9講】違法阻却事由の概観、正当防衛と緊急避難(1)

コアカリキュラム
第3章 違法性阻却事由
第1節 違法性と違法性阻却
1. 違法性の意義
3-1-1○違法性とは何か(概要説明)
2.違法阻却の一般原理
3-1-2○構成要件に該当した行為の違法性が阻却される根拠をめぐる基本的な考え方(概要説明)
3. 違法阻却事由の概観
3-1-3○明文にない違法性阻却事由を認めることができるか(概要説明)
(1)法律に規定のあるもの
・35条「正当行為」
・36条「正当防衛」
・37条「緊急避難」
*罪刑法定主義との関係ー>参考論文
(2)法律に規定のない違法阻却事由
・被害者の同意
・推定的同意
・その他の違法阻却事由?(可罰的違法性など)

第2節 被害者の同意(コア第3節
1 被害者の同意の意義と種類
(1)意義(犯罪不成立根拠)

3-3-1○被害者の同意があるときに犯罪の成立が否定される根拠(概要説明)
短答問題
(2)種類
*構成要件阻却的同意(合意)/違法阻却的同意
 ・構成要件阻却的同意:例「窃取」(235条)「侵入」(130条)への同意
 ・違法阻却的同意:例「傷害」(204条)への同意
*区別の実益
(事例)公序良俗に反した同意
(1)Aは自宅でマリファナパーティーを開いていた。招待されていなかったBは、その家に忍び込みそのパーティに紛れ込もうとしてその家の周りで侵入できることころを探していたときにAに見つかったが,AはBが家に入りパーティに参加することに同意した。
(2)そのマリファナパーティーの終了後、Bは残りのマリファナを密かに持ち帰ろうとしたときAに見つかったが,Aは、そのマリファナをBが持ち帰ることに同意した。
(3)仙台地石巻支判昭和62・2・18(判例118)の事案
2.同意の(有効)要件
3-3-2◎被害者の有効な同意が認められる要件を理解し、具体的事例に即して説明することができる。
*錯誤に基づく同意
→各論
3.推定的同意
3-3-3◎推定的同意が違法性阻却事由となる根拠及び要件を理解し、具体的事例に即して説明することができる。
(事案)(1)Aの家の前を通りかかったBはAの飼い犬のチワワの首にロープが絡まって窒息しそうになっていうのを見かけ、Aに連絡する手段がなかったので、やむをえず、Aの家に侵入してチワワを救助した。
(2)医師Aが患者Bの同意を得て盲腸の手術をしてBを開腹したところ、手術が必要な大腸がんがあることを発見した。AはBの負担を考え、この機会に盲腸だけではなくがんに罹患した大腸の部位をも(Bの同意なしに)切除した。

第3節 法令行為・正当業務行為 (コア第2節
【条文】刑法35条(正当行為)「法令又は正当な業務による行為は、罰しない。」
1. 法令行為
3-2-1○法令行為が違法性阻却事由とされる趣旨(概要説明)
【関連条文】刑事訴訟法213条
2.正当業務行為
3-2-2◎正当業務行為の諸類型について理解し、具体的事例に即して説明することができる。

*正当防衛と緊急避難
*コアカリキュラムでは別々の項目(これについては次回の講義で復習する際に説明する)となっているが授業では両者を対比させながら検討した方が理解に資すると考えて、各要件を対比させながら検討し、あわせて両者の中間的類型である防御的緊急避難についてもあわせて説明した。
【条文】刑法36条1項(正当防衛)「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。」、37条1項本文(緊急避難)「自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。」
短答問題(1)072.gif(2)
*両者の比較
正対不正/正対正
急迫不正の侵害/現在の危難
*害の均衡
必要性・相当性/補充性
防衛の意思/危難の意思
*防御的緊急避難/攻撃的緊急避難の区別
・正当防衛
・防御的緊急避難
・攻撃的緊急避難
*管轄の段階
*区別の実益
(事例)
(1)大判昭和12・11・6(判例136=173)の事案
(2)(1)と犬の価格が逆の場合
(3)Aは自分の飼い犬のチワワ(価格10万円)が大蛇のアナコンダに食べられそうになっているのを助けるため、咄嗟にそばにいたB所有のヨークシャーテリア(価格30万円)をアナコンダのまえに投げ出し,アナコンダが気をとられた隙にチワワを救助した。その後、アナコンダはそのヨークシャーテリア犬を食べてしまった。 
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by strafrecht_bt | 2015-05-19 09:00 | 刑法Ⅰ(総論)
2015年 05月 12日

【第8講】過失

第2章 犯罪の積極的成立要件
【授業内容】
第7節 過失
【条文】「刑法」明治四十年四月二十四日法律第四十五号38条1項但、116条、117条2項、117条の2、122条、129条。209〜211条
刑法211条2項削除(2014年5月20日施行)
ー>自動車運転死傷行為処罰法
第5条(過失運転致死傷)
 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
第6条  (無免許運転による加重)

4  前条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、十年以下の懲役に処する。

短答問題072.gif
【参考文献】佐伯仁志「過失犯論」前掲書290-315頁
1 過失犯の意義と処罰
*なぜ故意犯よりも著しく軽く0処罰されるのか?
・危険性が低い?ー>殺人罪による死者数と交通事故死者の数の比較(平成24年中の交通事故の発生状況平成24年の犯罪情勢072.gif)2012年/殺人被害者(死亡):428人/30日以内の交通事故死者数5237人 参考:犯罪白書
・責任が低い?
・過失犯においては行為者も自分自身の行為から不利益をうける(認容しない結果を生じさせている−一種の錯誤)ー>一種の「天罰(poena naturalis)を既に受けている。認知的補強(kognitive Untermauerung)の必要が低い
*罪刑法定主義との関係
2-7-1○38条1項ただし書きの趣旨(概要説明)
正誤問題 1.罰則を定めた特別法の法条に,過失行為を処罰する旨の明文の規定がない場合であっても, 当該特別法の目的から,罰則を定めた法条に過失行為を処罰する趣旨が包含されていると認められるときには,同法条が刑法第38条第1項ただし書に規定される特別の規定となり,過失による行為を処罰することが可能である。
判例:○(判例刑法222,223)
私見:このような解釈は罪刑法定主義に反する。
*関連問題:刑法230条の2もこの特別の規定か?
**明確性原則との関係
2.過失の種類
(1)条文上の区別
 ア.(単純)過失
 イ. 重過失
正誤問題:重過失致死傷罪の「重過失」とは,行為者としてわずかな注意を払えば,結果発生を予見す
ることができ,結果の発生を回避できた場合をいう。
 ウ. 業務上過失
【文献】島田聡一郎「業務上過失致死傷罪とは何か」
正誤問題:業務上過失致死傷罪の「業務」とは,社会生活上の地位に基づいて反復継続して行われ,ま
たは,反復継続して行う意思をもって行われる行為であり,他人の生命・身体等に危害を加え
るおそれがあるものをいう。
*自動車運転過失(上述改正参照):業務上過失をさらに加重
*危険運転致死傷罪(結果的加重犯)ー>重い結果に対する過失の要否

(2)認識の有無による区別
 ア.認識ある過失<ー>未必の故意(上述)
 イ.認識なき過失
*認識なき過失の処罰は必要か?
(3)管理監督過失
2-7-7◎監督者・管理者がいかなる場合に過失責任を負うかについて理解し、具体的事例に即して説明することができる。
3 過失犯に関する学説: 過失犯理論
短答問題072.gif(*2014年追加)
(1)旧過失論:過失の本質は,意思を緊張させたならば結果発生を予見することが可能であったにもかかわらず,これを予見しなかったことにある。
(2)新過失論:過失の本質は,社会生活上必要な注意を守らないで,結果回避のための適切な措置を採らなかったことにある。
(3)新・新過失論(危惧感説)

4 過失(結果)犯の成立要件
2-7-2○過失犯の成立要件について理解(概要説明)
(1)注意義務違反行為
2-7-3○注意義務の意義と内容(概要説明)
*注意義務の基準
①一般人基準(客観説)
②本人基準(主観説)
③折衷説(分配説)
 (i)構成要件:通常人基準
 (ii)責任:行為者基準
〔批判〕ブラックジャックのような高度な能力を持つ医師の「特権化」?
2-7-4◎予見可能性の内容について理解し、具体的事例に即して説明することができる。
*予見可能性の程度
①危惧感→②具体的予見可能性→③高度の予見可能性
旧過失論と新過失論における差異?
**判例の立場
判例は新過失犯論を採るが、予見可能性の程度については危惧感では足りないとする。
→結果回避義務違反行為の重視
2-7-6◎信頼の原則の内容について理解し、具体的事例に即して説明することができる。
正誤問題;過失行為を行った者を監督すべき地位にある者の過失の有無を判断する際には,信頼の原則は適用されない。
(2)結果
(3)注意義務違反と結果との間の関係
2-7-5◎注意義務違反と結果の間に必要とされる関係について理解し、具体的事例に即して説明することができる。
ー>過失の共同正犯
正誤問題:複数の行為者につき,行為者共同の注意義務が観念でき,行為者がその共同の注意義務に違
反し,共同の注意義務違反と発生した結果との間に因果関係が認められる場合には,過失犯の共同正犯が成立し得る。

過失犯演習問題
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by strafrecht_bt | 2015-05-12 09:01 | 刑法Ⅰ(総論)
2015年 05月 11日

【第7講】錯誤(2) :法律の錯誤

コアカリキュラム
第2章 犯罪の積極的成立要件
【授業内容】
第5節 故意
2 錯誤(続)
(3)事実の錯誤
 ア 具体的事実の錯誤
 (ア)客体の錯誤および(イ)方法の錯誤
2-5-4◎予見していた客体とは異なる客体に法益侵害が生じた錯誤事例における故意犯の成否(具体的事例)
 (ウ)因果関係の錯誤
2-5-5◎因果経過について錯誤が生じた事例における故意犯の成否(具体的事例)
*早すぎた構成要件の実現
*遅すぎた構成要件の実現(ウェーバーの概括的故意)
 イ 抽象的事実の錯誤
2-5-6◎認識・予見した事実と発生した事実とが異なる構成要件に属する事例における故意犯の成否について理解し、具体的事例に即して説明することができる。
(4)法律の錯誤<ーコアカリキュラム第4章/第3節 違法性の意識
4-3-1◎事実の錯誤と違法性の錯誤を区別することにどのような意義があるかを理解し、具体的事例に即して説明することができる。
*違法阻却事由の錯誤は事実の錯誤か法律の錯誤か?
「誤想防衛」の処理
①事実の錯誤説
②二分説
(i)事実的前提の錯誤
(ii)評価自体の錯誤
③法律(違法性)の錯誤説
4-3-2○違法性の意識とは何か(概要説明)
4-3-3◎違法性の意識を欠く場合における犯罪の成否(具体的事例)
①違法性の意識不要説(判例)
②故意説
(i)厳格故意説
(ii)制限故意説
③責任説
*制限責任説/厳格責任説
******
錯誤論(全体のまとめ)
・事実の錯誤:判例の立場(法定的符合説):法定的(実質的)符合の範囲外ー>故意阻却
 ・違法阻却事由の錯誤:判例の立場:前提事実の錯誤ー>故意阻却
・法律の錯誤:判例の立場(「違法性の意識不要説を変更する一歩手前」(山口131)⇒制限故意説?):違法性の意識の可能性(!)なしー>故意阻却
*判例の問題点
(1)法定的な符合を基準としながら、法定的には別の客体(例:覚せい剤と麻薬)についても実質的符合をみとめるのは、基準として一貫していないのではないか?
(2)故意行為を行う際、客体や方法の特定なしにそもそも行為を遂行するのは不可能なので、(何らかの形で)特定していた客体以外に結果が発生した場合(方法の錯誤の場合)には結局、認識・予見のない客体への故意を擬制ないし転用していることにならないか?
(3)違法阻却事由の前提事実の錯誤(特に誤想防衛)の場合、常に故意の阻却をみとめるが、その場合の理論的根拠(特に故意の体系的位置づけ)が示されていないのではないか?ー>いわゆる故意のブーメラン現象
(4)違法性の意識を故意の要素としながら、事実の認識の場合と異なり、現実の違法性の意識ではなく違法性の意識の可能性でありるとしていることの理論的根拠が示されていないのではないか?
**間接故意の理論

関連論文
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by strafrecht_bt | 2015-05-11 09:00 | 刑法Ⅰ(総論)
2015年 05月 10日

【第6講】故意(2):事実の錯誤ー錯誤論(1)

コアカリキュラム
第2章 犯罪の積極的成立要件
【授業内容】
第5節 故意 (2)
1 故意の概念(前回)
短答問題
2 錯誤論
短答問題
 (1)錯誤の分類
事実の錯誤
・具体的事実の錯誤
・抽象的事実の錯誤
法律の錯誤
*違法阻却事由の錯誤ー>違法阻却事由のなかで後述
(2)錯誤の現象類型
・客体の錯誤
・方法(打撃)の錯誤
・因果関係の錯誤
(3)事実の錯誤
 ア 具体的事実の錯誤
 (ア)客体の錯誤および(イ)方法の錯誤
2-5-4◎予見していた客体とは異なる客体に法益侵害が生じた錯誤事例における故意犯の成否について理解し、具体的事例に即して説明することができる。
 (ウ)因果関係の錯誤
2-5-5◎因果経過について錯誤が生じた事例における故意犯の成否について理解し、具体的事例に即して説明することができる。
*早すぎた構成要件の実現
*遅すぎた構成要件の実現(ウェーバーの概括的故意)
 イ 抽象的事実の錯誤
2-5-6◎認識・予見した事実と発生した事実とが異なる構成要件に属する事例における故意犯の成否について理解し、具体的事例に即して説明することができる。
【事例】
①Xは夜道を一人で歩いていたBをAと人違いをして射殺した。
②XはAを殺そうと思いBと二人で並んで歩いていたAに向けて発砲したが、
(i)弾はAに当たらずBに当たり、Bが死亡した。
(ii)AとBの両方に当たり、
 a)Aは傷害を負い、Bは死亡した。
 b)Bは傷害を負い、Aは死亡した。
 c)AもBも死亡した。
③Xは電話でAを脅迫しようとしたが、番号を間違えたためBにかかりAが出たと勘違いしてBを脅迫した。(山中169頁Q11-10)
④Xは、殺し屋のYにAを殺すように教唆したが、Yは人違いでBを殺害した。(山中170頁Q11-11)
⑤Xは、夫Aを殺そうと思い夕食で出すカレーの中に毒をいれておいた。Xの外出中にAが会社を早退して帰宅し、なべのカレーを自分で食べて死亡した。
⑥XはAを溺死させようとして明石海峡大橋の上からつき落としたところAは橋脚に頭をぶつけて死亡した。
⑦Xは、保険金を掛けていたVにクロロホルムを嗅がせて気を失わせた後、車に乗せてその車を海に転落させて事故に見せかけて殺害しようとしたが、Vはクロロホルムの作用によって既に死亡した。(山中182頁Q12-10)
⑧XはAを絞殺するつもり首を絞め、Aが動かなくなったので死んだと思い死体を隠そそうと思って穴を掘ってAを埋めたが、実はAはまだ生きており穴の中で窒息死した。(山中180頁Q12-8)
⑨XはAを殺そうと思いAに向かって発砲したが、弾はAに当たらずAの飼い犬Bに当たりBが死亡した。
⑩Xは、覚せい剤のつもりで麻薬を輸入した。 (参考:山中173頁Q12-2②:麻薬→実は覚せい剤所持)
⑪ Xは、Aに襲われていた自分の兄Yを助けようとしてAに向かって発砲したが、弾がYに当たりYが死亡した。 (参考:山中262頁Q17-9)
⑫Xは、ふざけてバットを振り上げたAを襲いかかってきたと思い、防衛のつもりでとっさにその場にあった別のバットでAを殴り重傷を負わせた。
⑬Xは法律で捕獲を禁止されている「タヌキ」を「ムジナ」だと思い捕獲した(山中312頁Q20-10①)
⑭Xは法律で捕獲を禁止されている「ムササビ」を「モマ」だと思い捕獲した(山中312頁Q20-10②)
⑮Xは、狩猟禁止区域であることを知らずに狩猟した(山中310頁Q20-8②)
⑯Xは、無主犬の殺害を許可した警察規則を誤解して、鑑札をつけていない犬は他人の犬であっても無主犬とみなされると思い、鑑札をつけていなかったAの飼い犬を撲殺した。(山中309頁Q20-8①)

(3)法律の錯誤<ーコア第4章/第3節 違法性の意識
4-3-1◎事実の錯誤と違法性の錯誤を区別することにどのような意義があるかを理解し、具体的事例に即して説明することができる。
4-3-2○違法性の意識とは何か(概要説明)
4-3-3◎違法性の意識を欠く場合における犯罪の成否について理解し、具体的事例に即して説明することができる。
*故意と違法性の意識は、明確に区別することができるか?
**違法性(禁止)に関する過失をすべて故意としてしまってよいか?
***事実に関する無関心を過失犯として扱ってよいか?->「間接故意」(dolus indirectus)論
私見:基本的には厳格故意説が妥当、但し間接故意論による修正が必要(「修正故意説」)
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by strafrecht_bt | 2015-05-10 09:00 | 刑法Ⅰ(総論)
2015年 04月 28日

【第5講】不作為犯・故意(1)

コアカリキュラム
第2章 犯罪の積極的成立要件
【授業内容】
第5節 不作為犯(山口44-52)
実行行為の(現象類型的)態様:作為/不作為
1.作為と不作為の区別基準
→(私見)作為/不作為の区別は現象類型的なものにとどまり、限界事例においてはその区別さえ困難である。
【事例】(以下ののいずれの事案のおいても当該不作為者は泳ぐことができ、飛び込んで助ければ、ほぼ確実に救助可能だったということを前提とする。)
① Aは他人の子供Vを池に突き落として溺死させた
*AはVからの攻撃を受け殺されそうになったので、そうした場合は?
② Bは他人の子供Vが池に落ちたのを見たが助けなかった
③ Cは他人の子供Vを過失で突き飛ばして池に落としてしまったが助けなかった
④ Dは他人の子供Vが池に落ちたのを助けようとしたEを説得してやめさせた
⑤ Fは他人の子供Vが池に落ちたのを助けようとしたGを羽交い絞めして阻止した
⑥ Gは自分の子供Vが池に落ちたのを見たが助けなかった
⑦ 通報を受けて現場に到着した救助隊員Hは溺れている子供Vを救助しなかった

2.不作為犯
 (ア)不作為犯の意義と種類
2-5-1 不作為犯の意義と種類について理解し、その概要を説明することができる。
 ・真正不作為犯
 ・不真正不作為犯
 (イ)不真正不作為犯の成立要件
2-5-2 不真正不作為犯の成立要件について理解し、その概要を説明できる。
・判例=形式的三分説
 ・法律
 ・法律行為(契約・事務管理)
 ・条理(先行行為など)
・学説
 ・一元説
  ・先行行為説(日高)
  ・事実上の引き受け説(堀内)
  ・排他的支配説(西田)
 ・機能的二分説(山中)
  ・法益保護型義務類型
  ・危険源管理監督型義務類型
ー>現象類型的区別にすぎないのではないか?
**組織化管轄/制度的管轄
 (ウ)作為義務の根拠
2-5-3◎不真正不作為犯における作為義務の根拠について理解し、具体的事例に即してその有無を判断することができる。
【判例】シャクティパット事件(最決H17・7・14【判例刑法79】)ー>短答問題072.gif
【事案】甲は,手の平で患部をたたいてエネルギーを患者に通すことにより自己治癒力を高めるとの独自の治療を施す特別の能力を有すると称していたが,その能力を信奉していたAから,脳内出血を発症した親族Bの治療を頼まれ,意識障害があり継続的な点滴等の入院治療が必要な状態にあったBを入院中の病院から遠く離れた甲の寄宿先ホテルの部屋に連れてくるようAに指示した 上,実際に連れてこられたBの様子を見て,そのままでは死亡する危険があることを認識しながら,上記独自の治療を施すにとどまり,点滴や痰の除去等Bの生命維持に必要な医療措置を受けさせないままBを約1日間放置した結果,Bを痰による気道閉塞に基づく窒息により死亡させた。
・法律←法律化された制度的保護義務(制度的管轄)
・法律行為←自らの法的活動領域の拡大に基づく義務(組織化管轄)
・条理←先行行為による自らの活動領域の拡大に基づく義務(組織化管轄)
*「条理」というのは抽象的すぎるので先行行為に限定すべき
**すべての先行行為が義務づけるか?→(例)正当防衛行為
 (エ)不作為の因果関係
2-5-4◎不作為犯における因果関係の意義について理解し、具体的事例に即して説明することができる。
・判例:「十中八九」基準?
・危険増加説

【不真正不作為犯問題の解法】
・作為→作為犯として考察
or (○作為と不作為の区別基準)→明らかに不作為の場合は論じなくてもよい
不作為
 ↓
・真正不作為犯
or (区別基準)→条文で確認
不真正不作為犯
  ↓
・作為義務(保障人的地位)(+/-)◎その発生根拠
and
・作為の可能性・容易性(+/-)
and
・結果と不作為間の(仮定的)因果関係(+/-)◎基準→適用
第6節 故意 (山口101-112)
1 故意の概念
【条文】刑法38条(故意)1項「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。」
2-6-1◎故意があるというためにはどのような事実について、どのように認識・予見する必要があるか理解し、具体的事例に即して説明することができる。
【判例】最判昭和24・2・22【185】(メタノールの認識)/最決平成2・2・9【187】(覚せい剤の認識)
*故意の対象
・構成要件に該当する(客観的)事実の認識・予見
・違法性の認識(の可能性)
*責任説
2-6-2◎未必の故意と認識ある過失の区別について理解し、具体的事例に即して説明することができる。
【判例】最判昭和23・3・16【181】(盗品の認識)
*故意
・確定的故意
・未確定的故意
・・概括的故意
・・択一的故意
・・未必の故意
・・・条件付故意(山口112)
判例:最判昭和59・3・6【184】(殺人を一定の事態の発生にかからせていた場合)
ーーーーーーー
 ・認識ある過失
 ・認識なき過失
*過失 
【事例】
①Xは、自分を裏切って資産家のAと結婚した元恋人のBの二人に深い憎悪を抱き、二人を呼び出し、所持していた拳銃で二人の頭部を撃って殺害した。
②Xは、法科大学院の講義に遅刻しそうになっていたので自動車で一般道を制限速度の2倍の80キロで走行していた。その際、前方に自転車で走行するAを認識したが、速度を落とさず走行したため、Aと接触して転倒させ、Aは頭部を強打して死亡した。
(1)Xは、自分の運転技術を過信しておりAと接触することはないと考えていた。
(2)Xは、自分の運転技術からすれば、速度を落とさなければAと接触し、場合によっては死亡させることがあるかもしれないと考えていた
ア)それは望ましくはないがやむを得ないと考えていた。
イ)運を天に任せて、なんとか接触せずに済むだろうと思い走行を続けた。
(3)Xは、授業に遅刻しないことだけを考えていたので、Aが死亡するという付随結果の発生については無関心で、その可能性すら念頭になかった。
③Xは、人通りの多いオフィスビルの出入り口に時限爆弾を仕掛けてその爆発により、15名を死亡させ85名に重軽傷を負わせた。
④Xは、並んで歩いているAとBに対して、そのどちらか一方にだけ弾が当たると考えて発砲した。
(1)弾はA(B)に当たり、A(B)が死亡した。
(2)AとBの両方に当たり、二人とも死亡した。


短答問題
2 錯誤論

参考文献
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by strafrecht_bt | 2015-04-28 09:00 | 刑法Ⅰ(総論)
2015年 04月 21日

【第4講】結果・因果関係

コアカリキュラム
第2章 犯罪の積極的成立要件
【授業内容】
第3節 結果
2-3-1◎行為の客体と保護法益の違いについて理解し、具体的事例に即して説明することができる。
・行為客体
・法益
*法益概念
**法益保護が刑法の目的か?
・法益保護説
・規範保護説
・・道徳規範保護説
・・規範意識強化説
・・規範妥当保護説
私見:刑法における法益(「刑法益(Strafrechtsgut)」)は、刑法的規範の妥当であり、刑法はそれを保護するための法的制度である。
*結果無価値の意義
【文献】増田
******
【時間外学習項目】
2-3-2◎侵害犯と危険犯の概念について理解し、具体的犯罪に即して説明することができる。
・侵害犯
・危険犯
・・具体的危険犯
・・抽象的危険犯
2-3-3◎継続犯と状態犯の違いを理解し、犯罪の終了時期について、具体的犯罪に即して説明することができる。
・継続犯
・状態犯
*即成犯概念の必要性?
*公訴時効期間/告訴期間の起算点との関係
2-3-4◎結果的加重犯の意義について理解し、具体的犯罪に即して説明することができる。
*重い結果発生に対する過失の要否
判例:不要説<ー責任主義と調和するか?

********
第4節  因果関係
1.因果関係の意義 
2-4-1 実行行為と結果との間に必要となる因果関係の意義について理解し、その概要を説明することができる。
 ・条件関係=実行行為がなければ結果が発生しなかったであろうという関係
 ・相当因果関係=その行為からその結果が発生するのが相当であるという関係
 ・客観的帰属(帰責)論
2.条件関係
2-4-2◎因果関係を認めるために必要となる実行行為と結果との間の事実的な関係について、その内容を理解し、具体的事例に即してその存否を判断することができる。
 ・条件関係=事実的因果関係
 ・「あれなければこれなし」の公式
 ・事実的な公式か?
*結果的加重犯(2-3-4)と因果関係
【事例】
①AはVの飲み物の中に致死量の毒薬を入れた、Bも(Aと意思の連絡なく)同じ飲み物の中に同種同量の毒薬を入れた、Vは致死量の2倍の毒薬の入ったその飲み物を飲んで死亡した。
②Cは、Vを殺害するために射撃手DにVが自宅から出た瞬間に射殺するように命じた。Cは万一Dが裏切った場合に備えて別の狙撃手EにDを尾行させ、DがV宅に向かわなかったり、狙撃しなかった場合にはEが代わりにVを狙撃するように命じた。DはCの命令どおりVを自宅前で射殺した。
③電車の運転手Eは、前方不注意で、踏切内に立ち入った幼児Vに気づかずブレーキをかけずに轢死させた。しかしEがVが踏切内に立ち入った時点でそれに気づき、ブレーキをかけていても、結局間に合わず、同じ結果が生じていたであろうということが判明した。

*いわゆる「合法則的条件の理論」(山中など)について
【文献】増田(一般的因果性木材防腐剤証明
コアカリキュラム
第2章 犯罪の積極的成立要件
【授業内容】
第4節 因果関係(2)
2-4-4◎実行行為から結果発生までの間に介在する諸事情(被害者の素因、被害者の行為、第三者の行為、犯人の行為など)の因果関係判断における意義を評価し、具体的事例に即して因果関係の存否を判断することができる。
 ・法的因果関係
 ・相当因果関係説の危機?
 ・客観的帰属論(山中)
  ・危険の創出/危険の実現
  ・規範的判断(規範の保護目的の理論)
 ・(法的に許されない)危険を創出する行為(実行行為)
  *行為時に存在した特殊事情:主観面の考慮?
  【判例】脳梅毒事件(判例刑法43)
   ・相当因果関係説
    ・主観説
    ・折衷説
    ・客観説ー>故意・過失で限定
    *結果的加重犯の場合
   【判例】結果的加重犯(判例刑法178)
 ・介在事例(故意・過失・無過失の行為)
  ・行為者自身の行為
  【判例】熊うち事件(判例刑法54)、遅すぎた構成要件の実現(判例刑法53)
  ・第三者の行為
  【判例】米兵轢き逃げ事件(判例刑法58)、大阪南港事件(判例刑法59)、
      夜間潜水事件(判例刑法62)、日航機ニアミス事件(判例刑法65)
  ・被害者の行為
  【判例】火傷を負った被害者の水中への飛び込み(判例刑法57)、
      柔道整復師事件(判例刑法49)、高速道路侵入事件(判例刑法51)
      被害者の不適切な行動(判例刑法52)
【事例】
①Aは、Vに軽微な傷害を加えたが、Vは血友病患者であったため、出血が止まらなくなり死亡した。
②Bは第一現場においてVに暴行を加え、脳出血を発生させ意識喪失状態にし、第二現場に運び放置したところ、その現場に通りかかったCがさらにVに暴行を加え、それによってVの死期が若干早まった。
③Dが自動車で走行中、過失により自転車に乗ったVをはね飛ばし、VはDの運転する車の屋根の上に乗った状態になったが、Dはそれに気づかず、自己現場から立ち去る意思で走行を続けた。その後同乗者EがVが屋根の上に乗っているに気づき、引きずりおろして路上に転落させ、Vは死亡した。Vの致命傷となった頭部の傷が、はねられたときに形成されたのか、引きずりおろし行為によるものかは判明しなかった。
④FはVにやけどを負わせたところ、Vは苦痛のために水中に飛び込み心臓麻痺で死亡した。
⑤Gから長期間にわたる激しい暴行を受けたVは、すきをみて逃走し、高速道路に侵入して自動車に衝突し轢死した。
⑥Hは、Vに暴行を加え重傷を負わせ、Vは病院に運ばれ緊急手術をうけたが、そのVが医師の指示に反して安静にしていなかった。Vはその後病状が急変して死亡した。
⑦IはVを強姦した。ショックを受けたVは翌日自殺した。
⑧JはVをクマと見間違えて猟銃を発射し瀕死の重傷を負わせた。苦悶するVを楽にして逃走する目的で、PはVを射殺した。
⑨KはVを絞殺するつもりで首をしめたところ、Vが動かなくなったので死亡したと思い、死体遺棄の故意で穴を掘ってVを埋めた。しかしVは実はまだ生きており、埋められたことにより窒息死した。

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by strafrecht_bt | 2015-04-21 09:00 | 刑法Ⅰ(総論)
2015年 04月 14日

【第3講】犯罪論の体系・犯罪の主体・実行行為・間接正犯

第3節 犯罪論の体系 (山口21以下)
1-3-1 構成要件該当性・違法性・責任という犯罪論の体系、それに従って犯罪の成否を判断することの意義について理解し、その概要を説明することができる。
「犯罪であるというためには、問題となる行為に、①構成要件該当性、②違法性、③責任が肯定されることが必要となる」(山口22)
・構成要件(山口23以下)
・違法性
・責任
*行為の意義
**代替的犯罪体系:統一的不法概念:管轄と帰属(Pawlik)
私見:三分体系は学習・教育上の便宜的・慣習的なものに過ぎず、それを絶対化することはかえって不当な結論に導くことがある(例:正当防衛の対象・共犯の従属性など)。違法性と責任の区別は相対的
【文献】松宮(日本)松宮(中国)増田
第2章 犯罪の積極的成立要件
第1節 主体
1 自然人(山口24以下)
・「万人」犯(Jedermannsdelikte)
・身分犯(≒Sonderdelikete)
*疑似身分犯(山口25)
2 法人(山口26以下)
2-1-1 業務主(自然人・法人)処罰規定の適用要件について理解し、その概要を説明することができる。
*法人の刑事責任
【条文】両罰規定の例/鳥獣保護法88条「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第八十三条から第八十六条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。」
【判例】法人の犯罪能力(判例刑法16)、過失推定説(判例刑法19)
短答問題072.gif
*フォード・ピント事件
「犯罪者が合理的な判断の結果,犯罪を実行するという合理的選択理論の主張の具体例として,アメリカ合衆国で発生した「フォード・ピント事件」をあげることができる。この事件は,1978年8月10日インディアナ北部の国道33号線で,3人の女性が乗るフォード社の小型乗用車ピントが後部からトラックに軽く追突されたところ,炎上したため車内の3人が焼死したというものであった。その後の調査で,フォード社は事故発生の以前からピント車が後部からの軽い追突でオイルがもれて炎上する危険性があることを認識していたことが明らかとなった。しかしフォード社は,炎上事故による被害者への損害賠償額を試算し(180人の死者と180人の負傷者が発生した場合で495万ドル),その損害賠償額を欠陥箇所である燃料タンクの設計変更と修理に要する費用(1台あたり11ドル×販売した車の台数約1,250万台=1億36700万ドル)と比較していたのである(欠陥車の修理を実施することによる損益1億3,700万ドル>実施しないことによる損益495万ドル)。つまりフォード社は,コストとベネフィットをはかりにかけ,死傷者の出る可能性を知りながらも利益追及のためピント車の設計変更や修理を実施しない道を選択していたのである。フォード社は,インディアナ州において故殺罪で起訴されたが,証拠不十分のため陪審によって不起訴とされた。しかしフォード・ピント事件は.企業犯罪への社会の関心を高める契機になった。」(瀬川晃『犯罪学』(2000年)122頁)

コアカリキュラム
第2章 犯罪の積極的成立要件
【授業内容】
第2節 実行行為
1. 実行行為の意義
2-2-1 実行行為の意義を理解し、具体的事例に即して説明することができる。
*実行行為の意義
・構成要件に該当する行為
・行為規範に違反する行為(ー>行為無価値)
・結果発生の危険性のある行為(ー>結果無価値)
2. 実行行為の(現象類型的)態様
(1)直接的/間接的
ア. 直接的実行行為(直接正犯)
イ. 間接的実行行為(間接正犯)
2-2-2 間接正犯の意義について理解し、強制され、又は欺かれた被害者の行為を利用する事例や第三者の行為を利用する事例等について具体的に当てはめ、判断することができる。(ー>共犯)
【判例】殺人の実行行為(判例刑法26)
短答問題
【事例1】甲は,常日頃暴行を加えて自己の意のままに従わせていた実子の乙(13歳)に対し,Vが管理するさい銭箱から現金を盗んでくるように命じ,乙は,是非善悪の識別能力及び識別に従って行動を制御する能力を有していたが,甲の命令に従わなければまた暴力を振るわれると畏怖し,意思を抑圧された状態で,前記さい銭箱から現金を盗んだ。甲の罪責を論じなさい
―>共犯論との関係:教唆(共謀共同正犯)との区別
【事例2】甲は、自分の夫乙に多額の生命保険を掛けていたが、乙が失業し再就職の見込みもたたないので自殺させようとおもい、「もう生きているのが嫌になったので、一家心中をしましょう。あなたが先に死んでくれれば、『お父さんのところへ一緒に行こう』と息子を説得して後を追うわ」といって、乙に首つり自殺をさせたが、自分たちは死ななかった。


(2)単独/複数
ア.単独正犯
イ.共同正犯
ー>共犯

(3)作為/不作為⇒【第4講】
・作為犯
・不作為犯(―>コア2章5節)
*作為と不作為の現象類型的区別は決定的か?

応用問題
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by strafrecht_bt | 2015-04-14 09:00 | 刑法Ⅰ(総論)