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カテゴリ:司法試験予備試験( 17 )


2017年 07月 18日

予備試験論文問題(2017・平29)

[刑 法]
以下の事例に基づき,甲及び乙の罪責について論じなさい(特別法違反の点を除く。)。
1 甲(40歳,男性)は,公務員ではない医師であり,A私立大学附属病院(以下「A病院」と いう。)の内科部長を務めていたところ,V(35歳,女性)と交際していた。Vの心臓には特 異な疾患があり,そのことについて,甲とVは知っていたが,通常の診察では判明し得ないもの であった。
2 甲は,Vの浪費癖に嫌気がさし,某年8月上旬頃から,Vに別れ話を持ち掛けていたが,Vか ら頑なに拒否されたため,Vを殺害するしかないと考えた。甲は,Vがワイン好きで,気に入っ たワインであれば,2時間から3時間でワイン1本(750ミリリットルの瓶入り)を一人で飲 み切ることを知っていたことから,劇薬を混入したワインをVに飲ませてVを殺害しようと考え た。
甲は,同月22日,Vが飲みたがっていた高級ワイン1本(750ミリリットルの瓶入り)を 購入し,同月23日,甲の自宅において,同ワインの入った瓶に劇薬Xを注入し,同瓶を梱包し た上,自宅近くのコンビニエンスストアからVが一人で住むV宅宛てに宅配便で送った。劇薬X の致死量(以下「致死量」とは,それ以上の量を体内に摂取すると,人の生命に危険を及ぼす量 をいう。)は10ミリリットルであるが,甲は,劇薬Xの致死量を4ミリリットルと勘違いして いたところ,Vを確実に殺害するため,8ミリリットルの劇薬Xを用意して同瓶に注入した。そ のため,甲がV宅宛てに送ったワインに含まれていた劇薬Xの量は致死量に達していなかったが, 心臓に特異な疾患があるVが,その全量を数時間以内で摂取した場合,死亡する危険があった。 なお,劇薬Xは,体内に摂取してから半日後に効果が現れ,ワインに混入してもワインの味や臭 いに変化を生じさせないものであった。
同月25日,宅配業者が同瓶を持ってV宅前まで行ったが,V宅が留守であったため,V宅の 郵便受けに不在連絡票を残して同瓶を持ち帰ったところ,Vは,同連絡票に気付かず,同瓶を受 け取ることはなかった。
3 同月26日午後1時,Vが熱中症の症状を訴えてA病院を訪れた。公務員ではない医師であり, A病院の内科に勤務する乙(30歳,男性)は,Vを診察し,熱中症と診断した。乙からVの治 療方針について相談を受けた甲は,Vが生きていることを知り,Vに劇薬Yを注射してVを殺害 しようと考えた。甲は,劇薬Yの致死量が6ミリリットルであること,Vの心臓には特異な疾患 があるため,Vに致死量の半分に相当する3ミリリットルの劇薬Yを注射すれば,Vが死亡する 危険があることを知っていたが,Vを確実に殺害するため,6ミリリットルの劇薬YをVに注射 しようと考えた。そして,甲は,乙のA病院への就職を世話したことがあり,乙が甲に恩義を感 じていることを知っていたことから,乙であれば,甲の指示に忠実に従うと思い,乙に対し,劇 薬Yを熱中症の治療に効果のあるB薬と偽って渡し,Vに注射させようと考えた。
甲は,同日午後1時30分,乙に対し,「VにB薬を6ミリリットル注射してください。私は これから出掛けるので,後は任せます。」と指示し,6ミリリットルの劇薬Yを入れた容器を渡 した。乙は,甲に「分かりました。」と答えた。乙は,甲が出掛けた後,甲から渡された容器を 見て,同容器に薬剤名の記載がないことに気付いたが,甲の指示に従い,同容器の中身を確認せ ずにVに注射することにした。
乙は,同日午後1時40分,A病院において,甲から渡された容器内の劇薬YをVの左腕に注 射したが,Vが痛がったため,3ミリリットルを注射したところで注射をやめた。乙がVに注射 した劇薬Yの量は,それだけでは致死量に達していなかったが,Vは,心臓に特異な疾患があっ たため,劇薬Yの影響により心臓発作を起こし,同日午後1時45分,急性心不全により死亡し
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た。乙は,Vの心臓に特異な疾患があることを知らず,内科部長である甲の指示に従って熱中症 の治療に効果のあるB薬と信じて注射したものの,甲から渡された容器に薬剤名の記載がないこ とに気付いたにもかかわらず,その中身を確認しないままVに劇薬Yを注射した点において,V の死の結果について刑事上の過失があった。
4 乙は,A病院において,Vの死亡を確認し,その後の検査の結果,Vに劇薬Yを注射したこと が原因でVが心臓発作を起こして急性心不全により死亡したことが分かったことから,Vの死亡 について,Vに対する劇薬Yの注射を乙に指示した甲にまで刑事責任の追及がなされると考えた。 乙は,A病院への就職の際,甲の世話になっていたことから,Vに注射した自分はともかく,甲 には刑事責任が及ばないようにしたいと思い,専ら甲のために,Vの親族らがVの死亡届に添付 してC市役所に提出する必要があるVの死亡診断書に虚偽の死因を記載しようと考えた。
乙は,同月27日午後1時,A病院において,死亡診断書用紙に,Vが熱中症に基づく多臓器 不全により死亡した旨の虚偽の死因を記載し,乙の署名押印をしてVの死亡診断書を作成し,同 日,同死亡診断書をVの母親Dに渡した。Dは,同月28日,同死亡診断書記載の死因が虚偽で あることを知らずに,同死亡診断書をVの死亡届に添付してC市役所に提出した。


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by strafrecht_bt | 2017-07-18 23:30 | 司法試験予備試験
2016年 05月 20日

2016(平成28)年予備試験短答式問題

[刑法]
〔第1問〕(配点:2) 正当防衛及び緊急避難に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合, 正しいものはどれか。(解答欄は,[№1]) 1.国家的法益を防衛するための正当防衛が成立する余地はない。 2.相手方から急迫不正の侵害を受け,第三者の所有物を用いて相手方に反撃し,同所有物を損 壊した場合において,その行為が器物損壊罪の構成要件に該当するとき,その行為につき緊急 避難が成立する余地はない。 3.相手方から急迫不正の侵害を受け,これに逆上して相手方に反撃を加えた場合,正当防衛が 成立する余地はない。 4.相手方から急迫不正の侵害を受け,相手方に反撃を加えた場合,その侵害が相手方の過失に 基づくものであれば,正当防衛が成立する余地はない。 5.正当防衛が成立する行為に対しては,正当防衛が成立する余地はない。
〔第2問〕(配点:3) 放火の罪等に関する次の1から5までの各記述のうち,正しいものを2個選びなさい。(解答欄は, [№2],[№3]順不同) 1.建造物等以外放火罪は,抽象的危険犯である。 2.建造物等以外放火罪には,未遂処罰規定がない。 3.人がいない他人所有の空き家に放火し,予期せずその火が現に人が居住する隣家に燃え移っ てこれを焼損した場合は,延焼罪が成立する。 4.客を乗せて航行中の他人所有のフェリーに放火した場合は,建造物等以外放火罪が成立する。 5.失火により,自己所有の自動二輪車を焼損し,それによって公共の危険を生じさせた場合は, 失火罪が成立する。
〔第3問〕(配点:2) 学生A,B及びCは,不真正不作為犯の作為義務違反に関して次の【会話】のとおり検討してい る。【会話】中の①から⑤までの( )内から適切な語句を選んだ場合,正しいものの組合せは, 後記1から5までのうちどれか。ただし,【会話】中の「法律上の防止義務」とは,法令,法律行 為,条理等に基づき法益侵害を防止する法的義務をいい,また,いずれの事例も結果回避は容易で あったとする。(解答欄は,[№4]) 【会 話】 学生A.「甲は,人通りの多い市街地で自動車を運転していた際,誤って乙を跳ねて重傷を負わ せたが,怖くなったことから,乙を放置したまま逃走したところ,乙が死亡した。」とい う事例において,殺人罪の成否に関し,不真正不作為犯の作為義務を検討してみよう。私 は,不真正不作為犯の作為義務違反は,法律上の防止義務を負う者が,法益侵害への因果 関係を具体的・現実的に支配している状況下で防止措置を採らなかった場合に認められる と考えるので,甲には作為義務違反が①(a.認められる・b.認められない)ことにな る。 学生B.私は,不真正不作為犯の作為義務違反は,法律上の防止義務を負う者が,既に発生して いる法益侵害の危険を利用する意思で防止措置を採らなかった場合に認められると考える ので,この事例では,甲には作為義務違反が②(a.認められる・b.認められない)こ とになる。 学生C.私は,不真正不作為犯の作為義務違反は,法益侵害に向かう因果の流れを自ら設定した
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者が,その法益侵害の防止措置を採らなかった場合に認められると考えるので,この事例 では,甲には作為義務違反が③(a.認められる・b.認められない)ことになる。 学生A.次に,「一人暮らしをしている丙は,自宅に遊びに来ていた丁が帰った後,丁のたばこ の火の不始末でカーテンが燃えているのに気付いたが,家に掛けてある火災保険の保険金 を手に入れようと考え,そのまま放置して外出したところ,カーテンの火が燃え移って家 が全焼した。」という事例において,非現住建造物等放火罪の成否に関し,不真正不作為 犯の作為義務を検討してみよう。C君の立場からだと,丙には作為義務違反が④(a.認 められる・b.認められない)ことになるよね。 学生B.先ほど話した私の立場からは,今の事例では,丙には作為義務違反が⑤(a.認められ る・b.認められない)ことになる。 1.①a ②b ③a ④a ⑤b 2.①a ②a ③b ④a ⑤b 3.①b ②a ③a ④b ⑤b 4.①b ②b ③a ④b ⑤a 5.①b ②b ③b ④a ⑤a
〔第4問〕(配点:4) 住居を侵す罪に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し,正しい場合には1 を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからオの順に[№5]から[№9]) ア.強盗の意図を隠してA方の玄関前で「こんばんは。」と言ったところ,来客と勘違いしたA から「どうぞお入りください。」と言われてA方住居に立ち入った場合,住居侵入罪が成立す る。[№5] イ.建造物への立入りが平穏な態様で行われた場合には,管理権者があらかじめ立入り拒否の意 思を積極的に明示していない限り,建造物侵入罪が成立することはない。[№6] ウ.平穏を害する態様での住居への立入りであっても,住居権者の同意に基づくものである場合 には,住居侵入罪の構成要件には該当するが,違法性が阻却される。[№7] エ.現金自動預払機が設置されている銀行支店出張所は,一般の利用客の立入りが許容されてい る場所であるので,同機を利用する客のキャッシュカードの暗証番号等を盗撮する目的で立ち 入っても,平穏な態様での立入りであれば,建造物侵入罪が成立することはない。[№8] オ.住居権者の意思に反して住居に立ち入った上,その後,退去を求められたにもかかわらず数 日間にわたってその住居に滞留した場合には,住居侵入罪だけでなく,不退去罪も成立する。 [№9]
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〔第5問〕(配点:2) 学生A,B及びCは,次の【事例】における甲の罪責について,後記【会話】のとおり検討してい る。【会話】中の①から⑤までの( )内から適切な語句を選んだ場合,正しいものの組合せは, 後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№10]) 【事 例】 甲は,乙が甲に向けて拳銃を発射してきたので,防衛のため,殺意をもって,携帯していた拳 銃を乙に向けて発射した。その弾丸は,乙に当たり乙を死亡させるとともに,乙を貫通して,た またま乙のそばを通り掛かった丙にも当たって丙を死亡させた。 【会 話】 学生A.私は,甲の行為は,乙に対する殺人既遂罪と丙に対する殺人既遂罪の構成要件に該当す ると考えます。そして,乙に対する行為については,正当防衛が成立すると考えます。こ れを前提として丙に対する行為について検討しましょう。私は,①(a.正当防衛・b. 緊急避難)が成立すると考えます。 学生B.私は,Aさんの見解に反対です。この事例のように,防衛行為によって攻撃者以外の第 三者の法益を侵害した場合,第三者との関係は,「正対不正」の関係とはいえないと考え るからです。私は,丙に対する行為については,②(c.正当防衛・d.緊急避難)が成 立すると考えます。 学生A.私は,②(c.正当防衛・d.緊急避難)が成立するためには,当該第三者の法益を侵 害したことによって初めて現在の危難を避けることができたという関係が必要だと考える ので,Bさんの見解には反対です。Cさんは,どう考えますか。 学生C.甲は,主観的には③(e.正当防衛・f.緊急避難)と認識して拳銃を発射し,丙に死 亡の結果が発生しているので,丙に対する行為については,④(g.誤想防衛・h.誤想 避難)であると考えます。そして,④(g.誤想防衛・h.誤想避難)についての判例の 立場によれば,⑤(i.違法性・j.故意)が阻却されると考えます。 1.①a ②d ③e ④g ⑤j 2.①b ②c ③f ④h ⑤i 3.①a ②d ③f ④h ⑤j 4.①b ②c ③e ④h ⑤j 5.①a ②d ③e ④g ⑤i
〔第6問〕(配点:2) 文書偽造の罪に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合,Xに ( )内の罪が成立しないものの組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。(解 答欄は,[№11]) ア.医師Xは,Yに依頼され,Yが保険会社に提出するために虚偽の病名を記載した診断書を作 成した。(虚偽診断書作成罪) イ.Xは,自動車運転免許の効力停止中に自動車を運転し,速度違反の取締りを受けた際,警察 官に対し,あらかじめYから名義使用の承諾を受けていたことから,Yの氏名を名乗り,交通 事件原票の供述者欄にY名義で署名押印した。(有印私文書偽造罪) ウ.Yの代理人でないXは,Yに無断で,行使の目的をもって,金銭消費貸借契約書用紙に「Y 代理人X」と記載し,その横に「X」と刻した印鑑を押すなどして,Yを債務者とする金銭消 費貸借契約書を作成した。(有印私文書偽造罪) エ.Xは,身分証明書として使おうと考え,A県公安委員会が発行したYの自動車運転免許証の 写真をXの写真に貼り替えた。(有印公文書偽造罪) オ.Xは,Yの所有する不動産を勝手に売却しようと考え,Yに無断で,行使の目的をもって,
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不動産の売買契約書用紙に売主として「Y」と記載するなどして,同不動産の売買契約書を作 成したが,「Y」と刻した印鑑は押さなかった。(無印私文書偽造罪) 1.ア ウ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.エ オ
〔第7問〕(配点:3) 因果関係に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選 びなさい。(解答欄は,[№12],[№13]順不同) 1.甲が,殺害目的でVの首を両手で絞め,失神してぐったりとしたVを死んだものと誤解し, 死体を隠すつもりでVを雪山に運んで放置したところ,Vは意識を回復しないまま凍死した。 甲がVの首を両手で絞めた行為とVの死亡との間には,因果関係がない。 2.甲が,心臓発作を起こしやすい持病を持ったVを突き飛ばして尻餅をつくように路上に転倒 させたところ,Vはその転倒のショックで心臓発作を起こして死亡した。Vにその持病がある ことを甲が知り得なかった場合でも,甲がVを突き飛ばして路上に転倒させた行為とVの死亡 との間には,因果関係がある。 3.甲は,Vの頸部を包丁で刺し,Vは,同刺創に基づく血液循環障害による脳機能障害により 死亡した。その死亡するまでの経過は,Vは,受傷後,病院で緊急手術を受けて一命をとりと め,引き続き安静な状態で治療を継続すれば数週間で退院することが可能であったものの,安 静にすることなく病室内を歩き回ったため治療の効果が上がらず,同脳機能障害により死亡し たというものであった。この場合でも,甲がVの頸部を包丁で刺した行為とVの死亡との間に は,因果関係がある。 4.甲は,深夜,市街地にある道幅の狭い車道上に無灯火のまま駐車していた普通乗用自動車の 後部トランクにVを閉じ込めて監禁したが,数分後,たまたま普通乗用自動車で通り掛かった 乙が居眠り運転をして同車を甲の普通乗用自動車の後部トランクに衝突させ,Vは全身打撲の 傷害を負い死亡した。甲がVをトランクに監禁した行為とVの死亡との間には,因果関係がな い。 5.甲は,ホテルの一室で未成年者Vに求められてその腕に覚せい剤を注射したところ,その場 でVが錯乱状態に陥った。甲は,覚せい剤を注射した事実の発覚を恐れ,そのままVを放置し て逃走し,Vは覚せい剤中毒により死亡した。Vが錯乱状態に陥った時点で甲がVに適切な治 療を受けさせることによりVを救命できた可能性が僅かでもあれば,甲がVを放置した行為と Vの死亡との間には,因果関係がある。
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〔第8問〕(配点:2) わいせつの罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤ってい るものはどれか。(解答欄は,[№14]) 1.甲は,人通りの多い駅構内において,自己の性器を露出させたが,実際には,それに気付い た人はいなかった。この場合,甲には公然わいせつ罪は成立しない。 2.甲は,日本国外で販売する目的で,日本国内において,わいせつな映像が録画されたDVD を所持した。この場合,甲にはわいせつ物有償頒布目的所持罪は成立しない。 3.甲は,友人乙からの土産に対するお礼として,わいせつな映像が録画されたDVD1枚を乙 にプレゼントした。この場合,甲にはわいせつ物頒布罪は成立しない。 4.甲は,不特定多数の通行人を勧誘して5名の客を集めた上,自宅であるマンションの一室に おいて,外部との出入りを完全に遮断した状態で,わいせつな映像が録画されたDVDを再生 し,その5名の客に有料で見せた。この場合,甲にはわいせつ物公然陳列罪が成立する。 5.甲は,海水浴場において,不特定多数の者の面前で,乙女の衣服を全てはぎ取るなどして強 いてわいせつな行為をした。この場合,甲には,強制わいせつ罪が成立するのみならず,公然 わいせつ罪も成立する。
〔第9問〕(配点:2) 次の【事例】に関する後記1から5までの各記述のうち,甲に窃盗罪の従犯の成立を肯定する論 拠となり得ないものはどれか。(解答欄は,[№15]) 【事 例】 甲は,乙又は乙の友人が窃盗罪を犯そうとしていることを知り,その手助けのため,乙に対し, 同罪の遂行に必要な道具を貸したところ,さらに,乙はその道具を友人丙に貸し,丙がこれを用 いて同罪を犯した。 なお,丙には同罪の正犯が成立し,乙にはその従犯が成立するものとする。 1.従犯には独立した犯罪性が認められる。 2.従犯の幇助には,教唆者を教唆した者については正犯の刑を科すとする刑法第61条第2項 のような規定がない。 3.共犯は修正された構成要件に該当する行為であるところ,従犯もその構成要件においては 「正犯」となる。 4.幇助は正犯を容易にすることであるという定義からすると,幇助行為が直接的になされた か,間接的になされたかは必ずしも問われない。 5.教唆犯に対する幇助行為は従犯として処罰される。
〔第10問〕(配点:2) 次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄は, [№16]) 1.甲は,警察官から職務質問をされそうになったのでその場から急いで立ち去ろうと考え,た またま路上に駐車されていた他人所有の自動車に乗り込み,適当な場所で乗り捨てるつもりで, 同自動車を運転してその場から走り去った。この場合,甲には,不法領得の意思が認められ, 窃盗罪が成立する。 2.甲は,タクシーの売上金を奪おうと考えて,乗客を装ってタクシーに乗り込み,行き先を指 定して人気のない場所に誘導した上,同所で,乗車料金を請求してきた運転手の首元に鋭利な ガラス片を突き付けて売上金を渡すよう要求したが,同運転手から抵抗されて売上金を手に入 れることができず,そのままその場から立ち去った。この場合,甲には強盗未遂罪のみが成立 する。
3.甲は,視力回復の効果が全くない飲料について,その効果が絶大で入手困難なものと偽って, 信じた客にこれを販売し,その代金として現金の交付を受けたが,その販売価格は適正,妥当 なものであった。この場合,甲には詐欺罪は成立しない。 4.甲は,乙がその同居の親族から盗んできたカメラを,盗品であると知りながら乙から購入し た。この場合,乙は,窃盗罪についての刑が免除されることから,甲には盗品等有償譲受け罪 は成立しない。 5.甲は,乙所有の土地について,価格が暴落すると偽って,これを信じた乙との間で,時価の 半額で同土地を買い受ける旨の売買契約を締結した。この場合,その売買契約が成立したこと のみをもって,甲には詐欺既遂罪が成立する。
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by strafrecht_bt | 2016-05-20 09:33 | 司法試験予備試験
2015年 08月 01日

2015年予備試験論文式問題

平成27年[刑 法]
以下の事例に基づき,甲,乙,丙及び丁の罪責について論じなさい(特別法違反の点を除く 。)。
1 甲は,建設業等を営むA株式会社(以下「A社」という。)の社員であり,同社の総務部長として同部を統括していた。また,甲は,総務部長として用度品購入に充てるための現金 , (以下「用度品購入用現金」という)を手提げ金庫に入れて管理しており,甲は,用度品を購入する場合に限って,その権限において,用度品購入用現金を支出することが認められていた。
乙は,A社の社員であり,同社の営業部長として同部を統括していた。また,乙は,甲の職場の先輩であり,以前営業部の部員であった頃,同じく同部員であった甲の営業成績を向上させるため,甲に客を紹介するなどして甲を助けたことがあった。甲はそのことに恩義を感じていたし,乙においても,甲が自己に恩義を感じていることを認識していた。
丙は,B市職員であり,公共工事に関して業者を選定し,B市として契約を締結する職務に従事していた。なお,甲と丙は同じ高校の同級生であり,それ以来の付き合いをしていた。
丁は,丙の妻であった。
2 乙は,1年前に営業部長に就任したが,その就任頃からA社の売上げが下降していった。乙 は,某年5月28日,A社の社長室に呼び出され,社長から,「6月の営業成績が向上しなかった場合,君を降格する。」と言い渡された。
3 乙は,甲に対して,社長から言われた内容を話した上,「お前はB市職員の丙と同級生なんだろう。丙に,お礼を渡すからA社と公共工事の契約をしてほしいと頼んでくれ。お礼として渡す金は,お前が総務部長として用度品を買うために管理している現金から,用度品を購入したことにして流用してくれないか。昔は,お前を随分助けたじゃないか。」などと言った。甲は,乙に対して恩義を感じていたことから,専ら乙を助けることを目的として,自己が管理する用度品購入用現金の中から50万円を謝礼として丙に渡すことで,A社との間で公共工事の契約をしてもらえるよう丙に頼もうと決心し,乙にその旨を告げた。
4 甲は,同年6月3日,丙と会って,「今度発注予定の公共工事についてA社と契約してほしい。 もし,契約を取ることができたら,そのお礼として50万円を渡したい。」などと言った。丙は,甲の頼みを受け入れ,甲に対し,「分かった。何とかしてあげよう。」などと言った。丙は,公共工事の受注業者としてA社を選定し,同月21日,B市としてA社との間で契約を締結した。なお,その契約の内容や締結手続については,法令上も内規上も何ら問題がなかった。
5 乙は,B市と契約することができたことによって降格を免れた。
甲は,丙に対して謝礼として50万円を渡すため,同月27日,手提げ金庫の用度品購入用 現金の中から50万円を取り出して封筒に入れ,これを持って丙方を訪問した。しかし,丙は外出しており不在であったため,甲は,応対に出た丁に対し,これまでの経緯を話した上,「御主人と約束していたお礼のお金を持参しましたので,御主人にお渡しください。」と頼んだ。丁は,外出中の丙に電話で連絡を取り,丙に対して,甲が来訪したことや契約締結の謝礼を渡そうとしていることを伝えたところ,丙は,丁に対して,「私の代わりにもらっておいてくれ。」と言った。
そこで,丁は,甲から封筒に入った50万円を受領し,これを帰宅した丙に封筒のまま渡した。

チェックポイント
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by strafrecht_bt | 2015-08-01 12:24 | 司法試験予備試験
2015年 03月 04日

司法試験予備試験の刑法の出題について

司法試験予備試験の刑法の出題について
平 成 2 7 年 3 月 4 日
司 法 試 験 委 員 会
先般,自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下
「自動車運転死傷処罰法」という。)が施行され,自動車の運転上必要な注意
を怠り,人を死傷させる行為については,刑法ではなく,自動車運転死傷処罰
法が適用される状況が生じたが,司法試験の刑事系科目(刑法に関する分野)
における出題に関し,別添のとおりとすることを踏まえ,司法試験予備試験の
刑法の出題においても,出題についての考え方が同様であることを確認するも
のとする。

(別添)
司法試験の刑法の出題について
平 成 2 7 年 3 月 4 日
司 法 試 験 委 員 会
司法試験の刑事系科目における刑法に関する分野の出題については,これま
で,刑法を中心とし,大学や法科大学院における講義あるいは教科書等で通常
触れられる刑事実体法に係る関連法分野も出題範囲とするとの方針がとられて
きたものであるが,先般,自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に
関する法律(以下「自動車運転死傷処罰法」という。)が施行され,自動車の
運転上必要な注意を怠り,人を死傷させる行為については,刑法ではなく,自
動車運転死傷処罰法が適用される状況が生じた。自動車の運転に伴い人を死傷
させた事案については,その前後の経過等も含め,作為義務,因果関係,過失
等の刑法総則上の重要な概念に関わる問題を生じることがしばしばあるとこ
ろ,このような基本概念の理解が法科大学院における刑法の学修に際して重要
であることに変わりはないため,今後においても,自動車の運転に伴い人を死
傷させた事案が,自動車運転死傷処罰法第5条の罪の成否等も含め,出題の対
象となり得ることを改めて確認するものとする
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by strafrecht_bt | 2015-03-04 22:41 | 司法試験予備試験
2014年 08月 31日

2014年予備試験論文式問題

論文式試験問題集
[刑法]
以下の事例に基づき,甲及び乙の罪責について論じなさい(特別法違反の点を除く。)。
1 甲(28歳,男性,身長178センチメートル,体重82キログラム)は,V(68歳,男
性,身長160センチメートル,体重53キログラム)が密輸入された仏像を密かに所有して
いることを知り,Vから,売買を装いつつ,代金を支払わずにこれを入手しようと考えた。具
体的には,甲は,代金を支払う前に鑑定が必要であると言ってVから仏像の引渡しを受け,こ
れを別の者に託して持ち去らせ,その後,自身は隙を見て逃走して代金の支払を免れようと計
画した。
甲は,偽名を使って自分の身元が明らかにならないようにして,Vとの間で代金や仏像の受
渡しの日時・場所を決めるための交渉をし,その結果,仏像の代金は2000万円と決まり,
某日,ホテルの一室で受渡しを行うこととなった。甲は,仏像の持ち去り役として後輩の乙を
誘ったが,乙には,「ホテルで人から仏像を預かることになっているが,自分にはほかに用事
があるから,仏像をホテルから持ち帰ってしばらく自宅に保管しておいてくれ。」とのみ伝え
て上記計画は伝えず,乙も,上記計画を知らないまま,甲の依頼に応じることとした。
2 受渡し当日,Vは,一人で受渡し場所であるホテルの一室に行き,一方,甲も,乙を連れて
同ホテルに向かい,乙を室外に待たせ,甲一人でVの待つ室内に入った。甲は,Vに対し,「金
は持ってきたが,近くの喫茶店で鑑定人が待っているので,まず仏像を鑑定させてくれ。本物
と確認できたら鑑定人から連絡が入るので,ここにある金を渡す。」と言い,2000万円が
入っているように見せ掛けたアタッシュケースを示して仏像の引渡しを求めた。Vは,代金が
準備されているのであれば,先に仏像を引き渡しても代金を受け取り損ねることはないだろう
と考え,仏像を甲に引き渡した。甲は,待機していた乙を室内に招き入れ,「これを頼む。」と
言って,仏像を手渡したところ,乙は,準備していた風呂敷で仏像を包み,甲からの指示どお
り,これを持ってそのままホテルを出て,タクシーに乗って自宅に帰った。乙がタクシーで立
ち去った後,甲は,代金を支払わないまま同室から逃走しようとしたが,Vは,その意図を見
破り,同室出入口ドア前に立ちはだかって,甲の逃走を阻んだ。
3 Vは,甲が逃げないように,護身用に持ち歩いていたナイフ(刃体の長さ約15センチメー
トル)の刃先を甲の首元に突き付け,さらに,甲に命じてアタッシュケースを開けさせたが,
中に現金はほとんど入っていなかった。Vは,甲から仏像を取り返し,又は代金を支払わせよ
うとして,その首元にナイフを突き付けたまま,「仏像を返すか,すぐに金を準備して払え。
言うことを聞かないと痛い目に合うぞ。」と言った。また,Vは,甲の身元を確認しようと考
え,「お前の免許証か何かを見せろ。」と言った。
4 甲は,このままではナイフで刺される危険があり,また,Vに自動車運転免許証を見られる
と,身元が知られて仏像の返還や代金の支払を免れることができなくなると考えた。そこで,
甲は,Vからナイフを奪い取ってVを殺害して,自分の身を守るとともに,仏像の返還や代金
の支払を免れることを意図し,隙を狙ってVからナイフを奪い取り,ナイフを取り返そうとし
て甲につかみ掛かってきたVの腹部を,殺意をもって,ナイフで1回突き刺し,Vに重傷を負
わせた。甲は,すぐに逃走したが,部屋から逃げていく甲の姿を見て不審に思ったホテルの従
業員が,Vが血を流して倒れているのに気付いて119番通報をした。Vは,直ちに病院に搬
送され,一命を取り留めた。
5 甲は,身を隠すため,その日のうちに国外に逃亡した。乙は,持ち帰った仏像を自宅に保管
したまま,甲からの指示を待った。その後,乙は,甲から電話で,上記一連の事情を全て打ち
明けられ,引き続き仏像の保管を依頼された。乙は,先輩である甲からの依頼であるのでやむ
を得ないと思い,そのまま仏像の保管を続けた。しかし,乙は,その電話から2週間後,金に
困っていたことから,甲に無断で仏像を500万円で第三者に売却し,その代金を自己の用途
に費消した。
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by strafrecht_bt | 2014-08-31 22:47 | 司法試験予備試験
2014年 08月 31日

2013年予備試験短答式問題

短答式試験問題集
[刑法]
〔第1問〕(配点:2)
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄は,[№1])
1.法人事業主は,その従業者が法人の業務に関して行った犯罪行為について,両罰規定が定められている場合には,選任監督上の過失がなくても刑事責任を負う。
2.法人事業主を両罰規定により処罰するためには,現実に犯罪行為を行った従業者も処罰されなければならない。
3.法人事業主が処罰される場合には,その代表者も処罰される。
4.刑法各則に規定された行為の主体には,法人は含まれない。
5.刑法各則に規定された行為の客体には,法人は含まれない。
〔第2問〕(配点:2)
次の【事案及び判旨】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,判旨の理解として誤っているものはどれか。(解答欄は,[№2])
【事案及び判旨】
精神科の医師である甲が,犯行時16歳の少年Aが犯した殺人罪に関する保護事件が係属している家庭裁判所からAの精神鑑定を命ぜられた際,鑑定資料として家庭裁判所から交付されたAの捜査機関に対する供述調書の謄本を新聞記者に閲覧させたため,Aが甲を秘密漏示罪で告訴した事案につき,裁判所は,甲の行為は秘密漏示罪に該当し,訴訟条件にも欠けるところはない旨判示し,甲に有罪判決を言い渡した。
【記述】
1.この判旨は,甲が医師の身分を有していることを前提に秘密漏示罪の成立を認めたものである。
2.この判旨は,裁判手続等において後に公開される可能性のある事項であっても,秘密漏示罪における「人の秘密」として保護の対象になり得ると考えている。
3.この判旨は,甲が医師の業務としてAの精神鑑定を行ったことを前提に秘密漏示罪の成立を認めたものである。
4.この判旨は,秘密漏示罪における「人の秘密」について,Aの秘密ではなく,甲に鑑定を命じた家庭裁判所の秘密であると考えている。
5.この判旨からは,秘密漏示罪の「人の秘密」の主体が,自然人のみならず,法人・団体を含むかどうかは必ずしも明らかではない。
〔第3問〕(配点:3)
正当防衛に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,誤っているものを2個選びなさい。(解答欄は,[№3],[№4]順不同)
1.正当防衛について侵害の急迫性を要件としているのは,予期された侵害を避けるべき義務を課する趣旨ではないが,単に予期された侵害を避けなかったというにとどまらず,その機会を利用し積極的に相手に対して加害行為をする意思で侵害に臨んだときは,侵害の急迫性の要件を欠く結果,そのような侵害に対する反撃行為に正当防衛が認められることはない。
2.憎悪や怒りの念を抱いて侵害者に対する反撃行為に及んだ場合には,防衛の意思を欠く結果,防衛のための行為と認められることはない。
3.相手からの侵害が,それに先立つ自らの攻撃によって触発されたものである場合には,不正の行為により自ら侵害を招いたことになるから,相手からの侵害が急迫性を欠く結果,これに対する反撃行為に正当防衛が認められることはない。
4.刑法第36条にいう「権利」には,生命,身体,自由のみならず名誉や財産といった個人的法益が含まれるので,自己の財産権への侵害に対して相手の身体の安全を侵害する反撃行為に及んでも正当防衛となり得る。
5.正当防衛における「やむを得ずにした」とは,急迫不正の侵害に対する反撃行為が,自己又は他人の権利を防衛する手段として必要最小限度のものであること,すなわち反撃行為が侵害に対する防衛手段として相当性を有するものであることを意味し,反撃行為が防衛手段として相当性を有する以上,その反撃行為により生じた結果がたまたま侵害されようとした法益より大であっても,その反撃行為が正当防衛でなくなるものではない。
〔第4問〕(配点:2)
文書偽造の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄は,[№5])
1.甲は,A公立高校を中途退学した乙から「父親に見せて安心させたい。それ以外には使わないからA公立高校の卒業証書を作ってくれ。」と頼まれ,乙の父親に呈示させる目的で,A公立高校校長丙名義の卒業証書を丙に無断で作成した。甲には公文書偽造罪は成立しない。
2.甲は,自己の所有する土地の登記記録を改ざんしようと考え,法務局の担当登記官である乙にその情を打ち明けて記録の改ざんを依頼し,乙に登記簿の磁気ディスクに内容虚偽の記録をしてもらった。甲には電磁的公正証書原本不実記録罪,同供用罪の共同正犯が成立する。
3.甲は,行使の目的で,高齢のため視力が衰え文字の判読が十分にできない乙に対し,公害反対の署名であると偽り,その旨誤信した乙に,甲を貸主,乙を借主とする100万円の借用証書の借主欄に署名押印させた。甲には私文書偽造罪が成立する。
4.甲と乙は,警察署に提出する目的で,県立病院の医師丙に内容虚偽の診断書を作成させる旨共謀し,甲が丙にこれを依頼したが,丙に断られたため,甲は,乙に相談することなく自ら県立病院医師丙名義で内容虚偽の診断書を作成した。乙には虚偽診断書作成罪の共同正犯が成立する。
5.甲は,行使の目的で,正規の国際運転免許証を発給する権限のない民間団体乙名義で,外観が正規の国際運転免許証に酷似する文書を作成した。甲は,乙からその文書の作成権限を与えられていたが,乙に正規の国際運転免許証を発給する権限がないことは知っていた。甲には私文書偽造罪は成立しない。
〔第5問〕(配点:2)
次の【事例】及び【判旨】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,正しいものはどれか。(解答欄は,[№6])
【事例】
甲は,手の平で患部をたたいてエネルギーを患者に通すことにより自己治癒力を高めるとの独自の治療を施す特別の能力を有すると称していたが,その能力を信奉していたAから,脳内出血を発症した親族Bの治療を頼まれ,意識障害があり継続的な点滴等の入院治療が必要な状態にあったBを入院中の病院から遠く離れた甲の寄宿先ホテルの部屋に連れてくるようAに指示した上,実際に連れてこられたBの様子を見て,そのままでは死亡する危険があることを認識しながら,上記独自の治療を施すにとどまり,点滴や痰の除去等Bの生命維持に必要な医療措置を受けさせないままBを約1日間放置した結果,Bを痰による気道閉塞に基づく窒息により死亡させた。
【判旨】
甲は,自己の責めに帰すべき事由によりBの生命に具体的な危険を生じさせた上,Bが運び込まれたホテルにおいて,甲を信奉するAから,重篤な状態にあったBに対する手当てを全面的に委ねられた立場にあったものと認められる。その際,甲は,Bの重篤な状態を認識し,これを自らが救命できるとする根拠はなかったのであるから,直ちにBの生命を維持するために必要な医療措置を受けさせる義務を負っていたものというべきである。それにもかかわらず,未必的な殺意をもって,上記医療措置を受けさせないまま放置してBを死亡させた甲には,不作為による殺人罪が成立する。
【記述】
1.Aが甲に対してその特別の能力に基づく治療を行うことを真摯に求めていたという事情があれば,甲にはその治療を行うことについてのみ作為義務が認められるから,この判旨の立場からも殺人罪の成立は否定される。
2.判旨の立場によれば,この事例で甲に患者に対する未必的な殺意が認められなければ,重過失致死罪が成立するにとどまる。
3.判旨は,不作為犯が成立するためには,作為義務違反に加え,既発の状態を積極的に利用する意図が必要であると考えている。
4.判旨は,Aが甲の指示を受けてBを病院から搬出した時点で,甲に殺人罪の実行の着手を認めたものと解される。
5.判旨は,先行行為についての甲の帰責性と甲による引受行為の存在を根拠に,甲のBに対する殺人罪の作為義務を認めたものと解される。
〔第6問〕(配点:4)
次のアからオまでの各事例における甲の罪責について判例の立場に従って検討し,甲に公務執行妨害罪が成立する場合には1を,成立しない場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからオの順に[№7]から[№11])
ア.甲は,県議会の議事が紛糾し,議長乙が休憩を宣言して壇上から降りようとした際,乙の顔面をげんこつで殴った。[№7]
イ.甲は,日本国内にある外国の大使館の職員乙がその大使館の業務に従事していた際,乙の腹部を足で蹴った。[№8]
ウ.甲は,警察官乙から捜索差押許可状に基づき自宅の捜索を受け,覚せい剤入りの注射器を差し押さえられた際,乙の眼前で同注射器を足で踏み付けて壊した。[№9]
エ.甲は,無許可のデモ行進に参加していた際,これを解散させようとした警察官乙に向かって石を1回投げ,その石は乙の頭部付近をかすめたが,乙には命中しなかった。[№10]
オ.甲は,執行官から確定判決に基づき居室明渡しの強制執行を受けていた際,執行官の補助者であった民間人乙の頭部を棒で殴った。[№11]
〔第7問〕(配点:3)
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,誤っているものを2個選びなさい。(解答欄は,[№12],[№13]順不同)
1.暴力団組長甲は,配下組員乙に対し,「もし,Aがこちらの要求を聞き入れなかったら,Aを殺してこい。Aがこちらの要求を聞き入れるのであれば,Aを殺す必要はない。」旨指示し,乙にけん銃を手渡した上,乙を対立する暴力団組員Aのところに行かせた。乙は,Aが要求を聞き入れなかったので,Aをけん銃で射殺した。甲には殺人罪の故意が認められる。
2.甲は,駐車場で他人の所有する自動車に放火し,公共の危険を生じさせた。その際,甲は,公共の危険が発生するとは認識していなかった。甲には建造物等以外放火罪の故意は認められない。
3.甲は,乙から,乙が窃取してきた貴金属類を,乙が盗んできたものかもしれないと思いながら,あえて買い取った。甲には盗品等有償譲受け罪の故意が認められる。
4.覚せい剤が含まれている錠剤を所持していた甲は,同錠剤について,身体に有害で違法な薬物類であるとの認識はあったが,覚せい剤や麻薬類ではないと認識していた。甲には覚せい剤取締法違反(覚せい剤所持)の罪の故意が認められる。
5.甲は,Aを殺害しようと考え,Aに向けてけん銃を発射し,弾丸をAに命中させ,Aを死亡させたが,同弾丸は,Aの身体を貫通し,甲が認識していなかったBにも命中し,Bも死亡した。甲にはA及びBに対する殺人罪の故意が認められる。
〔第8問〕(配点:2)
詐欺の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄は,[№14])
1.国や地方公共団体が所有する財物は,刑法第246条第1項の詐欺罪における「財物」には当たらない。
2.家賃を支払う意思も能力もないのに,これがあるように装って大家をだましてアパートの一室を借り受けた場合,刑法第246条第1項の詐欺罪が成立する。
3.商品買受けの注文の際,代金支払の意思も能力もないのに,そのことを告げることなく,単純に商品買受けの注文をした場合,その注文行為が刑法第246条第1項の詐欺罪における作為による欺罔行為となる。
4.相手方を欺罔して錯誤に陥らせ,これにより相手方から財物の交付を受けたとしても,錯誤に陥ったことに相手方の過失が認められるときには,刑法第246条第1項の詐欺罪は成立しない。
5.知慮浅薄な未成年者を欺罔して錯誤に陥らせ,これにより未成年者から財物の交付を受けた場合,刑法第248条の準詐欺罪が成立する。
〔第9問〕(配点:2)
次の【見解】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,正しいものはどれか。(解答欄は,[№15])
【見解】
恐喝の目的で人を監禁し,その監禁中に同人を脅迫して現金を喝取した場合,監禁罪と恐喝罪が成立し,両者は併合罪の関係になる。
【記述】
1.この見解は,監禁行為と恐喝行為とが社会的に見て一個の行為であると考えている。
2.この見解は,監禁が恐喝の手段として用いられることが類型的に予定されることを根拠としている。
3.この見解は,数個の犯罪の牽連性を,行為者の主観によって判断すべきであると考えている。
4.この見解は,監禁罪と恐喝罪の罪数関係を,判例における逮捕罪と監禁罪の罪数関係と同様に考えている。
5.この見解は,監禁罪と恐喝罪の罪数関係を,判例における監禁罪と殺人罪の罪数関係と同様に考えている。
〔第10問〕(配点:2)
横領の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄は,[№16])
1.横領罪の「占有」とは,物に対して事実上の支配力を有する状態をいい,物に対して法律上の支配力を有する状態を含まない。
2.株式会社の代表取締役には,同社の所有物について,横領罪の「占有」は認められない。
3.横領罪の「物」は,窃盗罪における「財物」と同義であり,不動産は横領罪の客体とはならない。
4.法人の金員を管理する者が,同法人の金員を支出した場合,同支出が商法その他関係法令に照らして違法であっても,横領罪の「不法領得の意思」が認められないことがある。
5.業務上横領罪の「業務」には,社会生活上の地位に基づいて反復継続して行われる事務であれば,いかなる事務も含まれる。
〔第11問〕(配点:2)
責任能力に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄は,[№17])
1.心神喪失とは,精神の障害により,行為の是非を弁識する能力及びこの弁識に従って行動する能力が欠けている場合をいう。
2.心神耗弱とは,精神の障害により,行為の是非を弁識する能力が欠けている若しくは著しく減退している場合,又はこの弁識に従って行動する能力が欠けている若しくは著しく減退している場合をいう。
3.13歳であるが,行為の是非を弁識する能力及びこの弁識に従って行動する能力に欠けるところがない場合,責任能力が認められる。
4.精神鑑定により心神喪失と鑑定された場合には,裁判所は,被告人の責任能力を認めることはできない。
5.精神の障害がなければ,心神喪失は認められない。
〔第12問〕(配点:2)
次の【事例】における甲の罪責に関する後記1から5までの各【記述】を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選びなさい。(解答欄は,[№18],[№19]順不同)
【事例】
甲は,深夜,帰宅しようと歩いていたところ,道端に見ず知らずのAが重傷を負って倒れているのを見付けた。甲は,周囲にA以外の誰もおらず,Aには意識があるものの,動ける状態ではなかったことから,これに乗じて,Aの傍らに落ちていたAのかばんの中から金品を持ち去って自分のものにしようと考え,Aに対し,「もらっていくよ。」と言って,同かばんからAの財布を取り出して自分のかばんの中に入れた上,Aを救護することなくそのまま放置してその場を立ち去った。甲は,自宅に戻り,Aの財布の中を見たところ,現金約1万円のほか,①大きさや重さは五百円硬貨と同じであるものの,中央に穴が開けられ,模様もない円形の金属片10枚,②クレジットカードと同じ大きさであるものの,外観上何ら印刷が施されておらず,4桁の数字が手
書きで書かれ,磁気ストライプらしき黒いテープが貼られているプラスチック製の白色カード1枚を見付けた。甲は,①の金属片はAが自動販売機等で商品を購入する際などに使うつもりで持っていたものだろうと考え,同金属片10枚を1本100円の缶ジュースの自動販売機に順次投入して購入ボタンを押し,出てきたジュース10本と釣銭合計4000円を自分のものにした。
また,②の白色カードは,他人のクレジットカードの磁気情報をコピーして不正に作成されたカードであったが,甲は,そのことを認識した上,同カードに書かれた4桁の数字がその暗証番号に違いないと考え,後日同カードを現金自動預払機に挿入して現金を引き出すつもりで,同カードを自宅に保管しておいた。
【記述】
1.甲が上記重傷を負ったAを放置して立ち去った行為には,単純遺棄罪が成立する。
2.甲が上記Aの財布を自分のかばんに入れて持ち去った行為には,窃盗罪が成立する。
3.甲が上記金属片を自動販売機に投入した行為には,偽造通貨行使罪が成立する。
4.甲が上記金属片を自動販売機に投入してジュースと釣銭を得た行為には,電子計算機使用詐欺罪が成立する。
5.甲が上記白色カードを自宅に保管しておいた行為には,不正電磁的記録カード所持罪が成立する。
〔第13問〕(配点:2)
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄は,[№20])
1.甲は,生活費欲しさから強盗を計画し,12歳の長男乙に対し,Vから現金を強取するよう指示した。乙は,甲の指示に従い,Vに刃物を突き付けて現金を強取した。乙が是非善悪の判断能力を有していたか否か,甲の指示により意思を抑圧されていたか否かにかかわらず,甲には強盗罪の間接正犯が成立する。
2.甲は,通常の判断能力がないVの殺害を計画し,Vに対し,首をつっても仮死状態になるだけであり,必ず生き返るとだまして,Vに首をつらせて窒息死させた。甲には自殺関与罪が成立する。
3.甲と乙は,自分たちのことを日頃ばかにするVを懲らしめてやろうと思い,Vに傷害を負わせる旨共謀した。そして,甲と乙は,それぞれ,Vに対し,日頃の恨みを言いながら,その身体を殴り付けた。Vは,これに応答して甲らを罵った。すると,乙は,Vの発言に腹を立て,殺意をもって,隠し持っていたナイフでVを刺し殺した。乙に殺人罪が成立する場合,甲には,Vに対する殺意がなくても殺人罪の共同正犯が成立する。
4.甲は,V宅に石を投げ付け窓ガラスを割り始めた。これをたまたま見た乙は,自分も窓ガラスを割りたいと思い,甲に気が付かれないよう,V宅に石を投げ付け,甲が割った窓ガラスとは別の窓ガラスを割った。甲と乙には器物損壊罪の共同正犯は成立しない。
5.女性である甲は,甲の男友達である乙との間で,乙がVを強姦する旨共謀した。その後,甲がVを誘い出してVの体を押さえ付け,乙がVを強姦した。乙に強姦罪が成立する場合でも,甲には強姦罪の共同正犯は成立しない。
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by strafrecht_bt | 2014-08-31 21:41 | 司法試験予備試験
2014年 08月 31日

2012年予備試験短答式問題

2012年短答式試験問題集
[刑法]
★〔第1問〕(配点:2)
次の1から5までの各事例における甲の罪責について判例の立場に従って検討した場合,甲に窃盗罪が成立しないものはどれか。(解答欄は,[№1])
1.甲は,コンビニエンスストアでレジ係のアルバイトをしていたが,店長の乙が短時間外出していた間に,商品棚からたばこ1カートンを取り出して自分のバッグに入れ,アルバイト終了後店外へ持ち出し,これを自分のものにした。
2.甲は,旅館に宿泊した際,旅館内にある共同浴場の脱衣場で,他の宿泊客が置き忘れた時計を見付けたので,脱衣場から持ち出し,これを自分のものにした。
3.甲は,深夜,路上を歩いていたところ,見知らぬ乙と丙が殴り合いのけんかをしていたので,これを見ていると,乙がナイフを取り出して丙を刺し殺した。甲は,乙が走り去った直後,死亡した丙の上着のポケット内に入っていた現金入りの財布を持ち去り,これを自分のものにした。
4.甲は,乙から封かんされた現金10万円入りの封筒を渡されて丙に届けるように依頼され,丙方に向かって歩き始めたが,途中で封筒内の現金が欲しくなり,封を開いて封筒に入っていた現金のうち2万円を取り出してこれを自分のものにした後,残りの現金が入った封筒を丙に交付した。
5.甲は,乙が他の者から盗んできた宝石を乙所有の自動車の中に置いているのを知っていたところ,ある日,同車が無施錠で駐車されているのに気付き,同車内から同宝石を持ち去り,これを自分のものにした。
〔第2問〕(配点:2)
正当防衛に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものはどれか。(解答欄は,[№2])
1.刑法第36条にいう「急迫」とは,法益が侵害される危険が切迫していることをいい,被害の現在性を意味するものではない。
2.刑法第36条にいう「不正」とは,違法であることを意味し,侵害が全体としての法秩序に反することをいう。
3.刑法第36条にいう「権利」は個人的法益を指し,国家的法益や社会的法益は含まれない。
4.侵害者に対する攻撃的な意思を有していたとしても,防衛の意思が認められる場合がある。
5.けんか闘争において正当防衛が成立するかどうかを判断するに当たっては,闘争行為中の瞬間的な部分の攻防の態様のみに着眼するのではなく,けんか闘争を全般的に観察することが必要である。
〔第3問〕(配点:3)
放火罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選びなさい。(解答欄は,[№3],[№4]順不同)
1.甲は,日頃恨みを持っていたVの所有する自動車が止めてある駐車場に出向き,同車にガソリンをかけて火をつけ,同車を焼損させたところ,同駐車場に駐車されていた第三者が所有する自動車10台に延焼する危険が生じたものの,駐車場が住宅地から離れていたため,住宅その他の建物に延焼する危険は生じなかった。甲には建造物等以外放火既遂罪は成立しない。
2.甲は,周囲に他の住宅のない場所に空家を所有する乙から,同家屋に付された火災保険金をだまし取る計画を持ちかけられ,これに応じることとし,同家屋に立て掛けてあった薪に灯油をかけて火をつけたところ,火は同家屋の取り外し可能な雨戸に燃え移ったが,たまたま降り出した激しい雨によって鎮火した。甲には他人所有非現住建造物等放火未遂罪が成立するにとどまる。
3.甲は,深夜,本殿・祭具庫・社務所・守衛詰所が木造の回廊で接続され,一部に火を放てば他の部分に延焼する可能性がある構造の神社の祭具庫壁付近にガソリンをまいてこれに火をつけた。その結果,無人の祭具庫は全焼したものの,Vらが現在する社務所・守衛詰所には,火は燃え移らなかった。甲には現住建造物等放火既遂罪が成立する。
4.甲は,日頃恨みを持っていたVが居住するマンション内部に設置されたエレベーターのかご内に,ガソリンを染み込ませて点火した新聞紙を投げ入れて放火し,エレベーターのかごの内部を焼損させた。甲には現住建造物等放火未遂罪が成立するにとどまる。
5.甲は,妻所有の一戸建て木造家屋に妻と二人で暮らしていたところ,ある日,同家屋内において,口論の末に激高して妻を殺害し,その直後に犯跡を隠すため,同家屋に火をつけて全焼させたが,周囲の住宅には燃え移らなかった。甲には現住建造物等放火既遂罪が成立する。
〔第4問〕(配点:3)
次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し,甲に( )内の犯罪の共同正犯が成立する場合には1を,教唆犯又は幇助犯が成立する場合には2を,間接正犯が成立する場合には3を選びなさい。(解答欄は,アからオまでの順に[№5]から[№9])
ア.甲は,甲の所属する暴力団事務所にVを連行し,同事務所において3日間,Vを逃走できないように見張って監禁し,その後,同じ暴力団に所属する乙に対して「お前が俺に代わって見張れ。」と言った。乙は,これを了承し,4日目から前記事務所においてVを逃走できないように見張って監禁した。5日目に乙が居眠りをした隙に,Vは,前記事務所の窓から外に飛び降りて逃げ出したが,飛び降りた際,右足首を骨折した。(監禁致傷罪)[№5]
イ.甲は,乙が自宅で賭博場を開張して利益を得ていることを知り,乙の役に立とうと考え,乙に連絡することなく,乙の開張する賭博場にA及びBを誘引し,賭博をさせた。(賭博場開張図利罪)[№6]
★ウ.甲は,常日頃暴行を加えて自己の意のままに従わせていた実子の乙(13歳)に対し,Vが管理するさい銭箱から現金を盗んでくるように命じ,乙は,是非善悪の識別能力及び識別に従って行動を制御する能力を有していたが,甲の命令に従わなければまた暴力を振るわれると畏怖し,意思を抑圧された状態で,前記さい銭箱から現金を盗んだ。(窃盗罪)[№7]
エ.甲は,知人乙から,交際相手であるVを殺害したいので青酸カリを入手してほしいと依頼され,自らもVに恨みを抱いていたことから,青酸カリを準備して乙に交付した。乙は,甲から青酸カリを受領した後,実行行為に出る前にV殺害を思いとどまり,警察署に出頭した。(殺人予備罪)[№8]
★オ.甲は,乙から,乙がV方に強盗に入る際に外で見張りをしてほしいと頼まれ,利益を折半する約束でこれを承諾し,乙と共にV方に赴いた。甲がV方の外で見張りをしている間に,乙はV方に侵入した。その後,甲は,不安になり,携帯電話で乙に「やっぱり嫌だ。俺は逃げる。」と告げた上,その場から逃走した。乙は,甲の逃走を認識した後,V方内にいたVを発見し,同人に包丁を突き付けてその反抗を抑圧した上,現金を強取した。(強盗罪)[№9]
〔第5問〕(配点:2)
次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合,甲に乙又は乙社に対する脅迫罪が成立するものの組合せは,後記1から7までのうちどれか。(解答欄は,[№10])
ア.甲は,乙に対し,乙の妻の実兄である丙を殺害する旨告知し,乙は丙が殺されるかもしれない旨畏怖した。
イ.甲は,乙株式会社総務課長丙に対して,乙社の商品不買運動を行って乙社の営業活動を妨害する旨告知し,丙は,乙社の営業活動が妨害されるかもしれない旨畏怖した。
ウ.甲は,インターネット上の掲示板に乙が匿名で行った書き込みに対し,同掲示板に「そんな投稿をするやつには天罰が下る。」旨の書き込みを行い,これを閲読した乙は,小心者だったことから,何か悪いことが起こるかもしれない旨畏怖した。
エ.甲は,口論の末,乙に対し,「ぶっ殺すぞ。」と怒号した。この様子を見ていた周囲の人たちは,甲が本当に乙を殺害するのではないかと恐れたが,乙は剛胆であったため畏怖しなかった。
オ.甲は,単身生活の乙に対し,「乙宅を爆破する。」旨記載した手紙を投函し,同手紙は乙方に配達されたが,同手紙には差出人が記載されていなかったことから,不審に思った乙は同手紙を開封しないまま廃棄した。
1.アイ2.アウ3.アエ4.イエ5.イオ
6.ウエ7.ウオ
〔第6問〕(配点:3)
次の【事例及び裁判所の判断】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,誤っているものはどれか。(解答欄は,[№11])
【事例及び裁判所の判断】
被告人ら複数名が,被害者に対し,マンションの居室内において,長時間にわたって激しい暴行を加えたところ,被害者が,隙を見て同居室から逃走した上,被告人らに極度の恐怖感を抱き,その追跡から逃れるため,逃走を開始してから約10分後,上記マンションから約800メートル離れた高速道路内に進入し,疾走してきた自動車に衝突されて死亡したという傷害致死被告事件において,裁判所は,「被害者が逃走しようとして高速道路に進入したことは,危険な行為ではあるが,被害者は,被告人らの激しい暴行を受けて極度の恐怖感を抱き,必死に逃走を図る過程で,とっさにそのような行動を選択したものと認められ,その行動が,被告人らの暴行から逃れる方法として,著しく不自然,不相当であったとはいえない。そうすると,被害者が高速道路に進入して死亡したのは,被告人らの暴行に起因するものと評価することができるから,被告人らの暴行と被害者の死亡との間の因果関係は肯定することができる。」旨の判断を示した。
【記述】
1.この裁判所の考え方によれば,上記事例において,高速道路内に進入する以外に被害者にとって容易にとり得る他の安全な逃走経路があり,そのことを被害者が認識していたにもかかわらず,あえて被害者が高速道路に進入した場合には,因果関係を否定する判断に結び付きやすいといえる。
2.この裁判所の考え方は,被告人らの行為の危険性が現実化したか否かという観点から,逃走した被害者の行動が,被告人らの暴行による心理的・物理的な影響に基づくか否かを検討することによって,因果関係の存否を判断しているものと評価することも可能である。
3.この裁判所の考え方によれば,上記事例において,被告人らが被害者に加えた暴行が短時間かつ軽微なもので,被害者も強い恐怖感を抱かなかった場合には,因果関係を否定する判断に結び付きやすいといえる。
4.この裁判所の考え方は,被告人らの行為と被害者の死亡の結果との間に事実的なつながり(条件関係)が存在することを前提にした上で,被告人らの行為の後に被害者による危険な逃走行為が介在した場合における因果関係の存否を判断していると評価することも可能である。
5.この裁判所の考え方によれば,上記事例において,被害者が暴行を受けたマンションの居室から逃げ出し,同マンションに面した一般道路に慌てて飛び出したところ,自動車に衝突されて死亡したという場合であれば,因果関係を否定する判断に結び付きやすいといえる。
★〔第7問〕(配点:2)
次の【事例】に関する後記1から5までの各【記述】を判例の立場に従って検討し,誤っているものを2個選びなさい。(解答欄は,[№12],[№13]順不同)
【事例】
甲と乙は,V経営の食料品店で買った弁当を食べたら食中毒になった旨の嘘を言って因縁を付けてVを脅迫するとともに,同人に軽度の暴行を加え,これらの暴行・脅迫により同人を畏怖させて,損害賠償金の名目で50万円を支払わせ,これを分配することを計画した。乙は,計画に従い,同店に行き,Vに対し,「この店の弁当を食べたら食中毒になった。店の営業を続けたければ50万円払え。払わないと,この店の弁当で食中毒になったと書いたビラをばらまくぞ。」と語気鋭く申し向けた上,Vの額を手の平で軽くたたいた。Vは,これをよけようとした際,バランスを崩して転倒し,全治約1週間を要する後頭部打撲の怪我を負った。
Vは,乙が食中毒になったことは嘘であると気付いたが,乙の要求に応じないと,更に暴力を振るわれたり,店を中傷するビラをまかれるかもしれないと畏怖し,手持ちの現金30万円を乙に渡し,残りの20万円は翌日支払うことで乙を納得させた。
乙は,同店を出て,甲と会い,前記経緯を説明した上,Vから受け取った30万円のうち15万円を分け前として甲に渡した。
乙は,翌日,同店を訪れてVから残りの20万円を受け取ろうとしたが,通報を受けた警察官が同店近くにいたので,20万円の受取は断念した。
乙は,甲に事前に相談することなく,腹いせに,「V経営の食料品店で買った弁当を食べた客が食中毒になった。」という虚偽の事実が書かれたビラを多数の者に配った。
なお,甲は,乙がVに怪我を負わせることや前記ビラを配ることを予想していなかった。
【記述】
1.Vに怪我を負わせたことについて,甲には,傷害罪は成立しない。
2.Vに怪我を負わせたことについて,乙には,傷害罪が成立する。
3.Vに30万円を交付させたことについて,甲及び乙には,恐喝既遂罪が成立する。
4.虚偽のビラを配ったことについて,甲には,信用毀損罪も業務妨害罪も成立しない。
5.乙から15万円を受け取ったことについて,甲には,盗品等無償譲受け罪が成立する。

〔第8問〕(配点:2)
次のアからエまでの各事例を判例の立場に従って検討し,成立する犯罪が【】内の罪数関係にある場合には1を,【 】内の罪数関係にない場合には2を選びなさい。(特別法犯は除く。解答欄は,アからエまでの順に[№14]から[№17])
ア.公務員が,電化製品を盗品であると知りながら,賄賂として収受した。【観念的競合】[№14]
★イ.連日,駅前で募金箱を持ち,真実は募金を難病の子供のために使うつもりはなく,自己のために費消するつもりであるのにそれを隠して,「難病の子供を救うため,募金をお願いします。」と連呼し,多数回にわたり,不特定多数の通行人からそれぞれ少額の金員をだまし取った。【包括一罪】[№15]
★ウ.他人のキャッシュカードを盗み,これを使って銀行の現金自動預払機から預金を引き出した。【併合罪】[№16]
★エ.自動車を盗み,これを売却した。【牽連犯】[№17]
〔第9問〕(配点:2)
犯人蔵匿罪又は犯人隠避罪に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものの組合せは,後記1から7までのうちどれか。(解答欄は,[№18])
ア.甲は,窃盗罪を犯して逃走中の友人乙及び丙をその事情を知りながら自宅にかくまった。その時点で,警察は,乙に対する捜査を開始していたが,丙が乙の共犯であることについては把握していなかった。甲には,乙をかくまったことについて犯人蔵匿罪が成立するが,丙をかくまったことについて同罪は成立しない。
イ.甲は,乙が強制執行妨害目的財産損壊罪を犯したことを認識した上で乙をかくまったが,同罪の刑が罰金以上であることを知らなかった。甲には犯人蔵匿罪が成立する。
ウ.甲は,殺人罪を犯して逮捕勾留された乙に依頼され,乙の身代わり犯人として警察署に出頭し,自己が犯人であるという嘘の申告をした。甲には犯人隠避罪が成立する。
エ.甲は,強盗罪を犯した後,友人乙に事情を話して唆し,自己を隠避させた。甲には犯人隠避罪の教唆犯は成立しない。
オ.甲は,乙につき,傷害罪で逮捕状が発付されていることを知りながら,乙をかくまった。その後,乙は犯罪の嫌疑が不十分であるという理由で不起訴処分となった場合,甲には犯人蔵匿罪は成立しない。
1.アイ2.アウ3.イウ4.イエ5.ウエ
6.ウオ7.エオ
〔第10問〕(配点:2)
責任能力に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものの個数を後記1から5までの中から選びなさい。(解答欄は,[№19])
ア.犯行時に14歳未満であっても,公訴を提起する時点で14歳に達していれば,刑事責任能力が認められる。
イ.犯行時に成年に達していても,犯行時の知能程度が12歳程度であった場合には,刑事未成年者に関する刑法第41条が準用される。
ウ.犯行時に心神耗弱の状態にあったと認められれば,刑が任意的に減軽される。
エ.犯行時に事物の是非善悪を弁識する能力が著しく減退していても,行動を制御する能力が十分に保たれていれば,完全責任能力が認められることがある。
オ.飲酒当初から飲酒後に自動車を運転する意思があり,実際に酩酊したまま運転した場合,運転時に飲酒の影響により心神耗弱の状態であっても,完全責任能力が認められることがある。
1.1個2.2個3.3個4.4個5.5個
〔第11問〕(配点:2)
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選びなさい。(解答欄は,[№20],[№21]順不同)
1.甲は,V女を強姦した後,同女から金品を奪う意思を生じ,同女に更なる暴行・脅迫を加え,その反抗を抑圧して同女の財布を奪った。甲には強盗強姦既遂罪は成立しない。
2.甲は,V女に暴行を加えてその反抗を著しく困難にさせた上で姦淫しようと思い,同女の顔面を1回殴ったところ,同女に逃げられ,姦淫することはできなかったが,前記殴打行為により同女に全治約1か月間を要する鼻骨骨折の傷害を負わせた。甲には強姦未遂罪と傷害罪が成立し,両罪は観念的競合となる。
3.甲は,強姦するために反抗を著しく困難にする程度の暴行をV女に加えたところ,その暴行により同女が脳震とうを起こして失神した。甲は失神した同女を姦淫した。甲には準強姦既遂罪が成立する。
4.甲は,13歳のV女を12歳であると誤信したまま,暴行・脅迫を加えることなく同女を姦淫した。甲には強姦既遂罪は成立しない。
5.甲は,強姦するため,殺意をもってV女に強度の暴行を加え,同女の反抗を抑圧した上で同女を姦淫し,同暴行により,同女を死亡させた。甲には強姦致死罪のみが成立する。
〔第12問〕(配点:3)
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,誤っているものを2個選びなさい。(解答欄は,[№22],[№23]順不同)
1.甲は,Aを川の中に突き落として溺死させようと思い,橋の側端に立っていたAを突き飛ばしたところ,Aは落下する途中で橋脚に頭部を強打して即死した。甲には殺人既遂罪が成立する。
2.甲は,乙に対し,Aを殺害するよう唆したところ,乙は,その旨決意し,夜道で待ち伏せした上,歩いてきた男をAだと思って包丁で刺し殺したが,実際には,その男はBであった。甲には殺人既遂罪の教唆犯が成立する。
3.甲は,隣人Aの居宅の玄関前に置いてあった自転車を,Aの所有物と認識して持ち去ったが,実際には,同自転車は無主物だった。甲には遺失物等横領罪が成立する。
4.甲は,駐車場に駐車中のA所有の自動車を見て,Aに対する腹いせに傷つけてやろうと思って石を投げたが,狙いがそれて,その隣に駐車中のB所有の自動車に石が当たってフロントガラスが割れた。甲には器物損壊罪が成立する。
5.甲は,乙との間で,Aに暴行を加えることを共謀したところ,乙は,Aに対して暴行を加えている最中に興奮のあまり殺意を生じ,Aを殺害してしまった。甲には傷害罪の共同正犯が成立するにとどまる。
★〔第13問〕(配点:2)
詐欺罪又は恐喝罪に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し,誤っているものを全て選んだ場合の組合せは,後記1から7までのうちどれか。(解答欄は,[№24])
ア.甲は,交通事故を装い保険会社から保険金をだまし取ろうと企て,自己の運転する自動車を道路脇の電柱に衝突させて自ら怪我をした。この場合,甲には,自動車を電柱に衝突させた時点で,詐欺未遂罪が成立する。
イ.甲は,警察官でないのに警察官を装い,窃盗犯人である乙に対し,「警察の者だが,取り調べる必要があるから差し出せ。」などと虚偽の事実を申し向けて盗品の提出を求め,これに応じなければ直ちに警察署に連行するかもしれないような態度を示したところ,乙は,逮捕されるかもしれないと畏怖した結果,甲に盗品を交付した。この場合,甲には,恐喝既遂罪が成立する。
ウ.甲は,無銭宿泊を企て,宿泊代金を支払う意思も能力もないのに,これらがあるように装い,民宿を営む乙に対し,宿泊を申し込んだところ,乙は,他の民宿から甲が無銭宿泊の常習者であることを聞いていたため,甲に宿泊代金支払の意思も能力もないことが分かったが,甲に憐憫の情を抱き,甲を宿泊させた。この場合,甲には,詐欺未遂罪が成立するにとどまる。
エ.甲は,通行中の乙から現金を喝取することを企て,乙に対し,反抗を抑圧するに至らない程度の脅迫を加えたところ,乙は,甲の脅迫により畏怖し,甲が乙の上着の内ポケットに手を入れて財布を抜き取ることを黙認した。この場合,甲には,恐喝未遂罪が成立するにとどまる。
オ.甲は,偽札を作る意思がないのに,乙に対し,一緒に偽札を作ることを持ちかけた上,偽札を作る機材の購入資金にすると嘘を言って資金の提供を求め,その旨誤信した乙から同資金として現金の交付を受けた。この場合,甲には,詐欺未遂罪も,詐欺既遂罪も成立しない。
1.アイウ2.アエオ3.アオ4.イウ5.イオ6.エ7.エオ
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by strafrecht_bt | 2014-08-31 18:12 | 司法試験予備試験
2014年 08月 31日

2011年予備試験短答式問題

短答式試験問題集
[刑法]
〔第1問〕(配点:2)
正当防衛に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものは
どれか。(解答欄は,[No.1])
1.甲は,乙が甲所有の自動車を盗むのを目撃し,これを追跡したものの見失い,その翌日,窃
取された場所から約2キロメートル離れた路上で,乙がその自動車から降りて立ち去ったのを
認めた。甲は,乙がすぐに戻って来る様子であったので,直ちにその自動車を運転し,自宅に
戻った。この場合,甲には正当防衛が成立する。
2.甲は,散歩中,仲の悪かった乙から大型犬をけしかけられたので,犬から逃げようとして,
偶然その場を通り掛かった丙を突き飛ばして走り去った。甲の行為により,丙は転倒して全治
約1週間を要する足首捻挫の傷害を負った。この場合,甲には正当防衛が成立する。
3.甲は,乙ら数名の男によって監禁されたが,監禁されて2週間後,たまたま見張りが乙一人
になったので,監禁場所から脱出するため,乙の顔面を1回殴打して乙がひるんだ隙にそこか
ら逃げた。この場合,甲には正当防衛が成立する。
4.甲は,深夜,路上で,見知らぬ乙から,ナイフを胸元に突き付けられ現金を要求されたので,
ナイフを避けるために乙の胸付近を手で押し,走って逃げ出した。甲の行為により,乙は転倒
して後頭部を路面に打ち付け,全治約1か月間を要する頭部打撲の傷害を負った。この場合,
甲には正当防衛は成立しない。
5.甲は,同居していた乙と言い争いをし,乙から「ぶっ殺すぞ。」と怒鳴られたため,身の危
険を感じて一旦家を出たが,乙と仲直りをしようと考え直し,乙から暴力を振るわれることが
あるかもしれないと思いつつ,家に戻って乙に謝罪した。しかし,甲は,乙に数回顔面を殴ら
れた上,更に殴り続けられそうになったことから憤激し,とっさに乙の脇腹付近を1回蹴り,
乙に全治約1か月間を要する肋骨骨折の傷害を負わせた。この場合,甲には正当防衛は成立し
ない。
〔第2問〕(配点:2)
偽証罪に関する次の【見解】に従って後記1から5までの【記述】を検討し,誤っているものを
2個選びなさい。(解答欄は,[No.2],[No.3]順不同)
【見解】
A説:偽証罪は,宣誓した証人が客観的事実に反する陳述をした場合に成立する。
B説:偽証罪は,宣誓した証人が自己の記憶に反して陳述をした場合に成立する。
【記述】
1.証人が自己の記憶に反する事実を客観的事実に反すると思いながら陳述したが,それが客観
的事実に合致していた場合,A説によれば,偽証罪は成立しない。
2.上記1の場合,B説によれば,偽証罪は成立しない。
3.証人が客観的事実に反しないと思いながら自己の記憶どおりに陳述したが,それが客観的事
実に合致していない場合,A説によれば,偽証罪が成立する。
4.証人が自己の記憶に反する事実を客観的事実に反すると思いながら陳述し,それが客観的事
実に合致していない場合,A説によっても,B説によっても,偽証罪が成立する。
5.証人が自己の記憶に反する事実を客観的事実に反しないと信じて陳述したが,それが客観的
事実に合致していない場合,A説によれば,偽証罪は成立しない。
〔第3問〕(配点:2)
学生Aと学生Bは,次の【事例】について,後記【会話】のとおり議論している。【会話】中の
①から⑦の( )内に,後記aからnまでの【語句群】から適切な語句を入れた場合,( )内に
入るものの組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[No.4])
【事例】
甲は,過去数回,飲酒酩酊の上,正常な運転ができない状態で自動車を運転し,物損事故を起
こして運転免許取消処分を受けていたが,運転免許を再取得しないまま,自動車の運転を続けて
いた。
ある日,甲は,自動車を運転して居酒屋に行き,同居酒屋で飲酒し始めたが,仮に酩酊して正
常な運転ができない状態になっても,自動車を運転して帰宅するつもりであった。
甲は,同居酒屋で日本酒1升を飲み,酩酊して是非善悪の識別能力及びその識別に従って行動
を制御する能力を失った状態で,帰宅するために自動車の運転を開始した。しかし,甲は,飲酒
酩酊により正常な運転ができなかったため,自車を歩道上に乗り上げさせて歩行中の乙を跳ね飛
ばし,乙を死亡させた。
【会話】
学生A.この事例は,構成要件としては,(①)罪に当てはまりそうだけど,甲は,運転開始時,
是非善悪の識別能力及びその識別に従って行動を制御する能力を失った状態だね。
学生B.そうすると,運転開始時に甲は(②)がなかったことになるから,甲は不可罰になるの
だろうか。
学生A.甲が(②)に影響が出ない程度に飲酒して,正常な運転が困難な状態で自動車を運転し
ていたら(①)罪が成立するのに,この事例が不可罰になるなんて納得できないな。
学生B.こういう場合に,甲の可罰性を根拠付ける理論として,(③)があったね。
学生A.確か「直接結果を惹起した行為の際には(②)がなくても,その原因となった行為の際
に完全な(②)があれば,完全な責任が問いうる。」という理論だったよね。
学生B.この理論の根拠は何だろう。
学生A.(④)を維持しつつ,構成要件該当事実を原因行為まで遡及させる立場と,(④)の例外
を認め,責任だけを原因行為時に遡及させる立場があるよね。
学生B.(②)を欠いた自分を道具として利用すると捉え,(⑤)と同様に考える見解は,前者の
立場に分類されるね。
学生A.だけど,甲が乙を自動車ではねた時点で甲自身が道具といえるか問題となる場合とし
て,甲が(⑥)だった場合があるね。
学生B.確かに,道具といえるか問題があるね。判例は,(⑥)の場合,(③)の理論を(⑦)よ
ね。
【語句群】
a.業務上過失致死b.危険運転致死c.責任能力d.行為能力
e.原因において違法な行為f.原因において自由な行為
g.行為と責任の同時存在の原則h.罪刑法定主義i.共謀共同正犯
j.間接正犯k.心神喪失l.心神耗弱m.適用している
n.適用していない
1.①a ②c ③e ④g ⑤j ⑥l ⑦m
2.①a ②d ③f ④g ⑤i ⑥l ⑦n
3.①b ②c ③f ④g ⑤j ⑥l ⑦m
4.①b ②c ③f ④h ⑤i ⑥k ⑦n
5.①b ②d ③e ④g ⑤j ⑥k ⑦m
〔第4問〕(配点:2)
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選びなさい。(解答
欄は,[No.5],[No.6]順不同)
1.甲は,乙から商品を購入する際,偽造通貨を真正な通貨のように装って乙に代金として交付
した。甲には詐欺罪と偽造通貨行使罪が成立し,両罪は観念的競合となる。
2.甲は,自動販売機に投入して飲料水と釣銭を不正に得る目的で,外国硬貨の周囲を削って5
00円硬貨と同じ大きさにした。甲には通貨偽造罪が成立する。
3.甲は,警察官から道路交通法違反(無免許運転)の疑いで取調べを受けた際,交通事件原票
中の供述書欄に,あらかじめ承諾を得ていた実兄乙の名義で署名指印した。甲には有印私文書
偽造罪が成立する。
4.甲は,当選金を得る目的で,外れた宝くじの番号を当選番号に改ざんした。甲には有印私文
書変造罪が成立する。
5.甲は,運転中に警察官に免許証の提示を求められたときに提示するつもりで,偽造された自
動車運転免許証を携帯して自動車の運転を開始した。甲には偽造公文書行使罪は成立しない。

★〔第5問〕(配点:3)
業務上の占有者による横領行為に非占有者が加功した場合の罪責について,教授及び学生が次の
【会話】のとおり議論している。【会話】中の①から⑤までの( )内に後記アからキまでの【発
言】から適切な語句を入れた場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちのどれか。(解
答欄は,[No.7])
【会話】
教授.保険会社の保険料集金担当従業員である甲が,同社の従業員ではない知人乙と共謀の上,
集金した保険料を横領した事例のように,業務上の占有者に非占有者が加功した場合のそれ
ぞれの罪責について,共犯と身分の観点から,どのようなことが問題になりますか。
学生.業務上横領罪の成否に関して,同罪は,単純横領罪との関係では(①)であり,他方,非
占有者との関係では(②)となりますから,特に乙に対して,何罪が成立するのかが問題に
なります。
教授.判例ではこの事例はどのような結論になりますか。
学生.判例は,(③)としています。
教授.判例の立場に対しては,どのような批判がなされていますか。
学生.非身分者について罪名と科刑の分離を認めるのは妥当でないという批判がなされています。
教授.この点を克服するための考え方としては,どのようなものがありますか。
学生.刑法第65条第1項は違法身分について規定し,同条第2項は責任身分について規定して
いると考え,業務上横領罪については,(④)と捉えた上で,この事例では(⑤)とする見
解などがあります。
【発言】
ア.占有の受託者という身分があることによって犯罪行為になる構成的身分犯
イ.業務者という身分があることによって刑が加重・減軽される加減的身分犯
ウ.占有の受託者たる身分は責任身分,業務者たる身分は違法身分
エ.占有の受託者たる身分は違法身分,業務者たる身分は責任身分
オ.刑法第65条第1項により甲には業務上横領罪が,同条第2項により乙には単純横領罪がそ
れぞれ成立し,甲及び乙は単純横領罪の範囲で共犯となる
カ.刑法第65条第1項により甲及び乙は業務上横領罪の共犯となり,同条第2項により乙に対
しては単純横領罪の刑を科す
キ.刑法第65条第1項により甲及び乙は単純横領罪の共犯となり,更に同条第2項により甲に
ついては業務上横領罪が成立する
1.①ア②イ③カ④ウ⑤オ
2.①ア②イ③キ④ウ⑤オ
3.①イ②ア③オ④エ⑤カ
4.①イ②ア③カ④エ⑤キ
5.①イ②ア③キ④ウ⑤カ

〔第6問〕(配点:2)
次の1から5までの各事例における甲の罪責について判例の立場に従って検討し,乙に対する詐
欺罪(刑法第246条)が甲に成立しないものを2個選びなさい。(解答欄は,[No.8],[No.9]
順不同)
1.甲は,乙とトランプ賭博を行った際,乙の手札の内容が分かるよう不正な細工を施したトラ
ンプカードを用いて乙を負けさせ,乙に100万円の支払債務を負担させた。
2.甲は,15歳の乙がふだんから多額の現金を持ち歩いているのを知っていたことから,同人
の知識や思慮が足りないことに乗じて現金を手に入れようと考え,乙に対し,借りた現金を返
す意思もないのに返す意思があるように装って10万円の借金を申し込み,これを誤信した乙
から現金10万円の交付を受けた。
3.甲は,乙宅の金品を手に入れようと考え,乙宅で乙と歓談中,「火事だ。」と嘘を言い,乙が
その旨誤信して外に逃げた隙に乙宅から現金を持ち去った。
4.甲は,パチンコ店において,通常の方法によってパチンコ台で遊技しているように装って同
店従業員乙の目を欺き,特殊な器具を使ってパチンコ台を誤作動させてパチンコ玉を排出させ,
その占有を取得した。
5.甲は,乙に対し,乙の居宅は耐震補強工事をしないと地震の際に危険である旨嘘を言い,そ
の旨乙を誤信させて必要のない工事契約を締結させたが,乙には資金がなかったことから,乙
が甲の妻丙が経営する家具店から家具を購入したように仮装して,その購入代金について乙と
信販会社との間で立替払契約を締結させ,これに基づき,同信販会社から丙名義の預金口座に
工事代金相当額の振込みを受けた。

〔第7問〕(配点:3)
両罰規定に関する次の【見解】A説ないしC説に従って,後記【罰則】の適用に関する後記1か
ら5までの【記述】を検討し,誤っているものを2個選びなさい。(解答欄は,[No.10],[No.11]
順不同)
【見解】
A説:両罰規定は,法人が無過失であっても代表者や従業者の責任が法人に転嫁されることを政
策的に認めたものである。
B説:法人の代表者の違反行為は法人の違反行為であり,法人の従業者の違反行為については,
法人の代表者の当該従業者に対する選任監督上の過失が推定され,過失責任に基づき法人が
処罰される。
C説:法人の代表者の違反行為は法人の違反行為であり,法人の従業者の違反行為については,
法人の代表者の当該従業者に対する選任監督上の過失が擬制され,過失責任に基づき法人が
処罰される。
【罰則】
出入国管理及び難民認定法第73条の2第1項
次の各号のいずれかに該当する者は,3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し,
又はこれを併科する。
一事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせた者
二(以下略)
同法第76条の2
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人,使用人その他の従業者が,その法人又は人の業
務に関して第73条の2(中略)の罪(中略)を犯したときは,行為者を罰するほか,その法
人又は人に対しても,各本条の罰金刑を科する。
【記述】
1.A説によれば,甲社代表取締役乙が,自社の事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせ
た場合,甲社に出入国管理及び難民認定法違反の罪(同法第73条の2第1項,第76条の2,
以下「不法就労助長罪」という。)が成立する。
2.A説によれば,甲社従業者丙が,自社の事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせた場
合,甲社に不法就労助長罪が成立する。
3.B説によれば,甲社代表取締役乙が,自社の事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせ
た場合,甲社の乙に対する選任監督上の過失がないことが立証されない限り,甲社に不法就労
助長罪が成立する。
4.B説によれば,甲社従業者丙が,自社の事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせた場
合,甲社代表取締役乙の丙に対する選任監督上の過失がないことが立証されない限り,甲社に
不法就労助長罪が成立する。
5.C説によれば,甲社従業者丙が,自社の事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせた場
合,甲社代表取締役乙の丙に対する選任監督上の過失がないことが立証されない限り,甲社に
不法就労助長罪が成立する。

〔第8問〕(配点:2)
公務執行妨害罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを
2個選びなさい。(解答欄は,[No.12],[No.13]順不同)
1.甲は,警察官乙から職務質問を受けた際,乙に対して暴行を加えて傷害を負わせた。甲に乙
に対する公務執行妨害罪が成立する場合,同罪と傷害罪は観念的競合となる。
2.甲は,飲食店Aで無銭飲食した後,A店店員の通報を受けて同店に臨場した制服の警察官乙
の姿を認めるや,乙から事情聴取を受ける前に,その場から逃走する目的で乙を1回殴り,乙
がひるんだ隙に同店から逃げた。甲には公務執行妨害罪は成立しない。
3.甲は,パトロールカーに乗って警ら中の警察官乙を認めるや,以前乙によって逮捕されたこ
とを恨んでいたので,乙の乗っていたパトロールカーに石を投げ付けて同車のフロントガラス
に命中させ,同ガラスにひび割れを生じさせた。甲には,器物損壊罪が成立するが,公務執行
妨害罪は成立しない。
4.甲は,窃盗を行って制服の警察官乙に追跡されている途中で,乙に暴行を加えて傷害を負わ
せた。甲に乙に対する事後強盗致傷罪が成立する場合,公務執行妨害罪は,事後強盗致傷罪に
吸収される。
5.甲は,警察官乙により,逮捕状を示されて逮捕されそうになった際,逮捕を免れるため,乙
に暴行を加えて抵抗したものの,結局,その場で,前記逮捕状により逮捕された。甲には公務
執行妨害罪が成立する。

〔第9問〕(配点:2)
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄
は,[No.14])
1.甲は,昼間の電車内において,多数の乗客が見ている状態で,恋人の乙が着ていたコートの
前を広げさせてその陰部を露出させた場面を写真撮影した。同写真撮影について乙があらかじ
め甲に対して承諾していた場合,公然わいせつ罪の違法性が阻却され,甲には同罪の共同正犯
は成立しない。
2.甲は,重病で苦しんでいる妻乙に同情して,同人の首を絞めて窒息死させた。乙の殺害につ
いて乙があらかじめ甲に対して承諾していた場合,甲の行為は,いずれの構成要件にも該当せ
ず,犯罪は成立しない。
3.甲は,乙が保険金をだまし取るのに協力する目的で,乙の右手の親指を包丁で切断した。親
指の切断について乙があらかじめ甲に対して承諾していた場合,甲の行為は,傷害罪の構成要
件に該当せず,同罪は成立しない。
4.甲は,11歳の乙の陰部を指で弄ぶなどのわいせつな行為を行った。わいせつな行為をする
ことについて乙があらかじめ甲に対して承諾していた場合,甲の行為は,強制わいせつ罪の構
成要件に該当せず,同罪は成立しない。
5.甲は,妊娠している妻乙と話し合った上,薬物を使用して堕胎させた。堕胎について乙があ
らかじめ甲に対して承諾していた場合,甲の行為は,不同意堕胎罪の構成要件に該当せず,同
罪は成立しない。

★〔第10問〕(配点:2)
毀棄罪及び損壊罪の「毀棄」,「損壊」に関する次の【見解】に従って後記アからオまでの【記述】
を検討した場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[No.15])
【見解】
A説:「毀棄」,「損壊」とは,対象物の全部又は一部を物理的に破壊,毀損することである。
B説:「毀棄」,「損壊」とは,対象物を物理的に破壊,毀損することに限らず,対象物の効用を
害する一切の行為を含む。
【記述】
ア.A説は,例えば飲食店の食器に放尿する行為は,食器を破壊することと同視されるというこ
とを論拠の一つとする。
イ.A説によると,建物の美観・外観を汚損するにとどまるビラ貼り行為は,「損壊」に当たら
ないことになる。
ウ.B説によれば,毀棄罪又は損壊罪の成否に,原状回復の難易も考慮されることになる。
エ.A説からは,B説に対して,B説に立ちつつ窃盗罪に不法領得の意思が必要とすると,隠匿
目的で他人の物の占有を取得する行為を処罰できなくなるという批判が可能である。
オ.B説からは,信書隠匿罪について,隠匿は「毀棄」,「損壊」の一形態ではないが,信書の隠
匿により,名宛人がその情報に接することが阻害されるために特に設けられたものであるとい
うことが可能である。
1.アイ
2.アオ
3.イウ
4.ウエ
5.エオ

〔第11問〕(配点:2)
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,誤っているものを2個選びなさい。(解
答欄は,[No.16],[No.17]順不同)
1.甲は,乙が第三者から盗んできた物を,盗品かもしれないと認識していたが,値段が安いの
でそれでも構わないと思って有償で譲り受けた。この場合,甲には盗品等有償譲受け罪は成立
しない。
★2.甲は,殺意をもって乙の首を絞め,乙が気絶したのを見て既に窒息死したものと誤信し,乙
を海に投げ込んだところ,乙は海中で溺死した。この場合,甲には殺人罪が成立する。
3.甲は,自己が経営する店において,わいせつな映像を録画したDVDを販売したが,あらか
じめ同DVDの映像を再生してその内容を認識していたものの,この程度ではわいせつ図画に
当たらないと考えていた。この場合,甲にはわいせつ図画販売罪が成立しない。
★4.甲は,パチンコ店の従業員乙が運搬していた同店の売上金の入ったかばんを強取するため,
乙の後方から,乙の頭部を狙い,殺意をもってけん銃の弾丸を発射したところ,同弾丸は乙の
肩を貫通した上,甲が認識していなかった通行人丙の腹部に命中し,乙と丙にそれぞれ傷害を
負わせた。この場合,甲には,乙に対する強盗殺人未遂罪,丙に対する強盗殺人未遂罪がそれ
ぞれ成立し,両罪は観念的競合となる。
5.甲は,乙に対して丙に暴行するよう教唆したところ,乙が丙の頭部を1回殴り,その結果,
丙が転倒して地面に頭部を打ち付け,脳挫傷により死亡した。この場合,甲には傷害致死罪の
教唆犯が成立する。

★〔第12問〕(配点:3)
強盗殺人罪に関する次の【見解】A説ないしC説に従って後記【事例】ⅠないしⅢにおける甲の
罪責を検討し,後記1から5までの【記述】のうち,正しいものを2個選びなさい。(解答欄は,[No.
18],[No.19]順不同)
【見解】
強盗殺人罪が成立するためには,
A説:殺人行為が強盗の機会に行われなければならないとする。
B説:殺人行為が強盗の手段でなければならないとする。
C説:殺人行為が強盗の手段である場合に限らず,事後強盗(刑法第238条)類似の状況にお
ける殺人行為も含むとする。
【事例】
Ⅰ.甲は,強盗の目的で,乙に対し,持っていたナイフを突き付け,「金を出せ。出さなかった
ら殺す。」などと申し向け,反抗を抑圧された乙から現金を奪い取った後,逃走しようとした
が,乙に追跡され,犯行現場から約10メートル逃げたところで,捕まらないようにするため,
殺意をもって乙の胸部を刃物で突き刺し,乙を即死させた。
Ⅱ.甲は,乙所有の自動車1台を窃取し,犯行翌日,同車を犯行場所から約10キロメートル離
れた場所で駐車させ,用事を済ませた後,同車に戻ってきたところを乙に発見され,同車を放
置して逃走した。甲は,乙に追跡されたので,捕まらないようにするため,殺意をもって乙の
胸部を刃物で突き刺し,乙を即死させた。
Ⅲ.甲は,乙方において,乙をロープで縛り上げた上,乙所有の現金を奪い取った後,乙方から
逃走しようとしたが,乙方玄関先において,たまたま乙方を訪問した丙と鉢合わせとなり,丙
が悲鳴を上げたことから,犯行の発覚を恐れ,殺意をもって丙の胸部を刃物で突き刺し,丙を
即死させた。
【記述】
1.A説によれば,事例Ⅰでは強盗殺人罪が成立する。
2.A説によれば,事例Ⅲでは強盗殺人罪は成立しない。
3.B説によれば,事例Ⅱでは強盗殺人罪は成立しない。
4.B説によれば,事例Ⅲでは強盗殺人罪が成立する。
5.C説によれば,事例Ⅱでは強盗殺人罪が成立する。

〔第13問〕(配点:3)
次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し,正しい場合には1を,誤っている場合
には2を選びなさい。(解答欄は,アからオの順に[No.20]から[No.24])
ア.甲は,乙を毒殺する目的で毒入り菓子をお歳暮として郵送するため,郵便局の窓口でその菓
子を包んだ小包の郵送を申し込んだが,誤って実際には存在しない住所を宛先として記載した
ために同小包はどこにも配達されずに甲宅に送り返された。この場合,甲には殺人未遂罪が成
立する。[No.20]
★イ.甲は,自己が居住する建物に付した火災保険の保険金を保険会社からだまし取る目的で同建
物に放火したが,保険金を請求するに至らなかった。この場合,甲には詐欺未遂罪は成立しな
い。[No.21]
★ウ.甲は,乙の住居内に侵入し,タンスの引き出しを開けるなどして金目の物を探したが,見付
けることができないうちに乙に発見された。甲は,逮捕を免れるため,乙に対して包丁を示し
て脅迫し,屋外に逃走したが,通報により駆けつけた警察官に現場付近で逮捕された。この場
合,甲には事後強盗未遂罪が成立する。[No.22]
エ.甲は,勾留状の執行により拘禁されている未決の被告人であったところ,逃走の目的で拘禁
場の換気孔の周辺の壁部分を削り取って損壊したが,いまだ脱出可能な穴を開けるに至らず,
逃走行為自体に及ばないうちに検挙された。この場合,甲には加重逃走未遂罪は成立しない。
[No.23]
オ.甲は,他人が居住する建物に放火することを企て,30分後に発火して導火材を経て同建物
に火が燃え移るように設定した時限発火装置を同建物に設置したが,設定した時刻が到来する
前に発覚して同装置の発火に至らなかった。この場合,甲には現住建造物等放火未遂罪は成立
しない。[No.24]
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by strafrecht_bt | 2014-08-31 10:13 | 司法試験予備試験
2014年 06月 14日

2014年〔第5問〕「過失」

短答式問題
予備2014〔第5問〕(配点:2)過失に関する次の各【見解】についての後記1から5までの各【記述】のうち,誤っているものはどれか。
【見解】
A説:過失の本質は,意思を緊張させたならば結果発生を予見することが可能であったにもかかわらず,これを予見しなかったことにある。
B説:過失の本質は,社会生活上必要な注意を守らないで,結果回避のための適切な措置を採らなかったことにある。
【記述】
1.A説の立場からは,いわゆる信頼の原則は,予見可能性が否定される場合の一部を類型化したものと理解することができる。
2.B説は,過失犯は,行為の責任だけでなく,構成要件該当性と違法性においても故意犯と異なるものであるとの考え方と矛盾しない。
3.A説に対しては,予見可能性のみで過失を認めると,過失犯の処罰範囲が広がりすぎるとの批判がある。
4.B説に対しては,「結果回避のための適切な措置」につき,行政取締法規が定める義務に帰着せざるを得ず,刑法上の過失犯が行政取締法規の結果的加重犯となってしまうとの批判がある。
5.A説からは,結果の回避可能性の存在は過失犯の成立において必要ではないことになる。

正解
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by strafrecht_bt | 2014-06-14 20:46 | 司法試験予備試験
2013年 06月 22日

2013年予備試験論文式問題

[刑法]
以下の事例に基づき,Vに現金50万円を振り込ませた行為及びD銀行E支店ATMコーナーにおいて,現金自動預払機から現金50万円を引き出そうとした行為について,甲,乙及び丙の罪責を論じなさい(特別法違反の点を除く。)。
1 甲は,友人である乙に誘われ,以下のような犯行を繰り返していた。
①乙は,犯行を行うための部屋,携帯電話並びに他人名義の預金口座の預金通帳,キャッシュカード及びその暗証番号情報を準備する。②乙は,犯行当日,甲に,その日の犯行に用いる他人名義の預金口座の口座番号や名義人名を連絡し,乙が雇った預金引出し役に,同口座のキャッシュカードを交付して暗証番号を教える。③甲は,乙の準備した部屋から,乙の準備した携帯電話を用いて電話会社発行の電話帳から抽出した相手に電話をかけ,その息子を装い,交通事故を起こして示談金を要求されているなどと嘘を言い,これを信じた相手に,その日乙が指定した預金口座に現金を振り込ませた後,振り込ませた金額を乙に連絡する。④乙は,振り込ませた金額を預金引出し役に連絡し,預金引出し役は,上記キャッシュカードを使って上記預金口座に振り込まれた現金を引き出し,これを乙に手渡す。⑤引き出した現金の7割を乙が,3割を甲がそれぞれ取得し,預金引出し役は,1万円の日当を乙から受け取る。
2 甲は,分け前が少ないことに不満を抱き,乙に無断で,自分で準備した他人名義の預金口座に上記同様の手段で現金を振り込ませて,その全額を自分のものにしようと計画した。そこで,甲は,インターネットを通じて,他人であるAが既に開設していたA名義の預金口座の預金通帳,キャッシュカード及びその暗証番号情報を購入した。
3 某日,甲は,上記1の犯行を繰り返す合間に,上記2の計画に基づき,乙の準備した部屋から,乙の準備した携帯電話を用いて,上記電話帳から新たに抽出したV方に電話をかけ,Vに対し,その息子を装い,「母さん。俺だよ。どうしよう。俺,お酒を飲んで車を運転して,交通事故を起こしちゃった。相手のAが,『示談金50万円をすぐに払わなければ事故のことを警察に言う。』って言うんだよ。警察に言われたら逮捕されてしまう。示談金を払えば逮捕されずに済む。母さん,頼む,助けてほしい。」などと嘘を言った。Vは,電話の相手が息子であり,50万円をAに払わなければ,息子が逮捕されてしまうと信じ,50万円をすぐに準備する旨答えた。甲は,Vに対し,上記A名義の預金口座の口座番号を教え,50万円をすぐに振り込んで上記携帯電話に連絡するように言った。Vは,自宅近くのB銀行C支店において,自己の所有する現金50万円を上記A名義の預金口座に振り込み,上記携帯電話に電話をかけ,甲に振込みを済ませた旨連絡した。
4 上記振込みの1時間後,たまたまVに息子から電話があり,Vは,甲の言ったことが嘘であると気付き,警察に被害を申告した。警察の依頼により,上記振込みの3時間後,上記A名義の預金口座の取引の停止措置が講じられた。その時点で,Vが振り込んだ50万円は,同口座から引き出されていなかった。
1 甲は,上記振込みの2時間後,友人である丙に,上記2及び3の事情を明かした上,上記A名義の預金口座から現金50万円を引き出してくれれば報酬として5万円を払う旨持ちかけ,丙は,金欲しさからこれを引き受けた。甲は,丙に,上記A名義の預金口座のキャッシュカードを交付して暗証番号を教え,丙は,上記振込みの3時間10分後,現金50万円を引き出すため,D銀行E支店(支店長F)のATMコーナーにおいて,現金自動預払機に上記キャッシュカードを挿入して暗証番号を入力したが,既に同口座の取引の停止措置が講じられていたため,現金を引き出すことができなかった。なお,金融機関は,いずれも,預金取引に関する約
款等において,預金口座の譲渡を禁止し,これを預金口座の取引停止事由としており,譲渡された預金口座を利用した取引に応じることはなく,甲,乙及び丙も,これを知っていた。

出題趣旨
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by strafrecht_bt | 2013-06-22 11:57 | 司法試験予備試験