刑法授業補充ブログ

strafrecht.exblog.jp
ブログトップ

<   2014年 09月 ( 2 )   > この月の画像一覧


2014年 09月 28日

刑法2(各論):第2回 身体に対する罪(講義日:9/30)

コアカリキュラム
「刑法」明治四十年四月二十四日法律第四十五号
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」平成二十五年十一月二十七日法律第八十六号
第2章 身体に対する罪
第1節 総説->【注釈(204条前注)】 
第2節 暴行罪
【チェックポイント】
①暴行の意義(具体的事例)->後述傷害罪の②③も参照
【事例1】Xは、狭い4畳半の部屋にいたVを威嚇するために日本刀を振り回したが、Vには接触しなかった。
【判例】最決昭和39・1・28〔42〕
第3節 傷害罪
【チェックポイント】
②傷害の意義(具体的事例)
③暴行罪と傷害罪の関係(概要説明)
④同意傷害の可罰性の有無(具体的事例)
⑤同時傷害の特例の趣旨(適用要件及び適用範囲)
【事例2】Xは、普段から反感を持っていた同僚のVの言動に我慢できなくなり、おもわず一発殴ってしまった。この段階ではまだ傷害の結果は発生してなかったが、Xは日頃の恨みを思い出してさらにVを殴り続けた(第1暴行)。その後現場の部屋に入ってきたYは初めはXを止めようとしたが、Xから事情を聴いた後「実は俺もVのことは前から気に入らなかったんだ」といって、そのXと共にVに殴る蹴るの暴行を加えた(第2暴行)。Vは、その際頭部に受けた負傷により死亡したが、それが第1暴行によるものか、第2暴行によるものかは判明しなかった。
1. 傷害の意義
【判例】
2. 暴行によらない傷害
【事例3】XはVの飲み物に病原菌を入れ、発病して抵抗できなくったVの財物を奪取した。
【判例】①②
3. 軽微な傷害
【判例】最決平成6・3・4
4. 暴行と傷害の関係:暴行の結果的加重犯を含むか?

【時間外学習項目】
第4節 危険運転致死傷罪
【参考文献】中山研一・松宮孝明補訂『新版・口述刑法各論』補訂3版・2014年42-50頁
【チェックポイント】
①危険運転致死傷罪の罪質(概要説明)
②危険運転致死傷罪の成立要件(概要説明)
1.自動車運転致死傷行為処罰法(以下「新法」と略す)の成立・施行
2.危険運転致死傷罪
(1)立法の特色
(2)行為類型
①酩酊運転致死傷(新法2条1号=刑法旧208条の2・1項前段)
②高速度運転致死傷(新法2条2号=同上1項後段)
③未熟運転致死傷(新法2条3号=同上1項後段)
④妨害運転致死傷(新法2条4号=同上2項前段)
⑤信号無視運転致死傷(新法2条5号=同上2項後段)
(3)故意と認識
(4)共犯と罪数
3.準危険運転致死傷罪(新法3条―新設)
①アルコール・薬物影響下運転致死傷(同1項)
②「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気」影響下運転致死傷(同2項)
4.過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪(新法4条―新設)
5.過失運転致死傷罪(新法4条=旧刑法211条2項)
 


第5節 凶器準備集合罪
①凶器準備集合罪・結集罪の罪質(概要説明)
②凶器準備集合罪・結集罪の成立要件(概要説明)
第6節 過失致死傷罪
①業務上過失の意義(概要説明)
②重過失の意義(概要説明)
③自動車運転過失の意義(概要説明)

【時間外学習項目】について
[PR]

by strafrecht_bt | 2014-09-28 06:52 | 刑法Ⅱ(各論)
2014年 09月 27日

刑法2(各論):第1回 生命に対する罪(講義日:9/27)

コアカリキュラム
「刑法」明治四十年四月二十四日法律第四十五号
第1章 生命に対する罪
【参考文献】
松原芳博「生命に対する罪(その1)」(その2)」法学セミナー 56巻(2011年)11号71-77頁,12号109-115頁
佐伯仁志「生命に対する罪(1)(2)(3)」法学教室355号75-83, 356号108-113頁, 357号113-119頁(2010年)
同「遺棄罪」法学教室359号94-102頁(2010年)
【レジュメ】
第1節 生命の保護(山口204-5頁)->【199条前注(1)】 
1 刑法における人間の生命の保護
【条文】261条(【261条注釈】)、210条(【210条注釈】)、190条((【261条注釈】)等(堕胎・殺人等については後掲)
受精卵->胎児->人---------->死体
    着床   出生     死亡
261?  212ff 199/210等  190
【事例1】Aの元恋人だったXは、Aの妻Bに恨みを持ち、
①AB間の体外受精によって試験管内で培養されていた受精卵を薬物を入れて破壊した。しかしその他にもう一つ受精卵があったことにXは気が付かなった。
②その受精卵がBの子宮内に移植され着床した胎児(V)を、Bの飲み物の中に密かに堕胎薬を入れて堕胎しようとしたが、また失敗した。(②a:堕胎後、まだ生存していたVをXが殺害した場合はどうか?)
③出産時、看護師に変装し一部露出後全部露出前にメスで刺殺しようとしたが産婦人科医に阻止され、またまた失敗した。
④それから20年後、成人したVの頭部をXはピストルで撃ち、Vは病院に運ばれ人工呼吸器に繋がれたが、脳死状態に陥り、医師YはABの同意を得て人工呼吸器を外し、Vは息を引き取った。(④a:Xが自ら人工呼吸器のスイッチを切った場合はどうか?)

*体外受精卵の破壊(【事例】1①/①a):器物損壊罪(261条)の成否
①否定説(山口204頁注1:財物性否定)/②肯定説(佐伯)

2 「人」の意義(山口205-6頁)
(1)人の始期(「出生」概念)
【事例1】③一部露出後全部露出前の殺害
①分娩(出産行為)開始説/②一部露出説(通説・判例:大判大正8・12・13[1])/③全部露出説(民法)
*私見:③が妥当(民法との統一、②は中途半端、出産過程での殺害は堕胎概念の拡張によって対応できるのでは?)
(2)人の終期(「死(亡)」の概念)
①三徴候説/②脳死説
【事例2】医師YはV及びその両親ABの承諾なしに、臓器移植のため脳死後心停止前の心臓を摘出した。
*臓器移植法(「臓器の移植に関する法律」)、の規定(特に第6条)の意義
【条文】臓器移植法第6条(臓器の摘出)  医師は、次の各号のいずれかに該当する場合には、移植術に使用されるための臓器を、死体(脳死した者の身体を含む。以下同じ。)から摘出することができる。
一  死亡した者が生存中に当該臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けた遺族が当該臓器の摘出を拒まないとき又は遺族がないとき。
二  死亡した者が生存中に当該臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合及び当該意思がないことを表示している場合以外の場合であって、遺族が当該臓器の摘出について書面により承諾しているとき。
2  前項に規定する「脳死した者の身体」とは、脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定された者の身体をいう。
3  臓器の摘出に係る前項の判定は、次の各号のいずれかに該当する場合に限り、行うことができる。
一  当該者が第一項第一号に規定する意思を書面により表示している場合であり、かつ、当該者が前項の判定に従う意思がないことを表示している場合以外の場合であって、その旨の告知を受けたその者の家族が当該判定を拒まないとき又は家族がないとき。
二  当該者が第一項第一号に規定する意思を書面により表示している場合及び当該意思がないことを表示している場合以外の場合であり、かつ、当該者が前項の判定に従う意思がないことを表示している場合以外の場合であって、その者の家族が当該判定を行うことを書面により承諾しているとき。
4  臓器の摘出に係る第二項の判定は、これを的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師(当該判定がなされた場合に当該脳死した者の身体から臓器を摘出し、又は当該臓器を使用した移植術を行うこととなる医師を除く。)の一般に認められている医学的知見に基づき厚生労働省令で定めるところにより行う判断の一致によって、行われるものとする。
5  前項の規定により第二項の判定を行った医師は、厚生労働省令で定めるところにより、直ちに、当該判定が的確に行われたことを証する書面を作成しなければならない。
6  臓器の摘出に係る第二項の判定に基づいて脳死した者の身体から臓器を摘出しようとする医師は、あらかじめ、当該脳死した者の身体に係る前項の書面の交付を受けなければならない。
**私見:(全)脳死説には原理的な疑問がある(脳死説をとるなら大脳死説をとるべきでは?)、臓器移植法適用の場合以外は従来の三徴候説で判定すべき
第2節 堕胎罪
【条文】第29章 堕胎の罪
(堕胎) 第212条  妊娠中の女子が薬物を用い、又はその他の方法により、堕胎したときは、一年以下の懲役に処する。
(同意堕胎及び同致死傷)第213条  女子の嘱託を受け、又はその承諾を得て堕胎させた者は、二年以下の懲役に処する。よって女子を死傷させた者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
(業務上堕胎及び同致死傷)
第214条  医師、助産師、薬剤師又は医薬品販売業者が女子の嘱託を受け、又はその承諾を得て堕胎させたときは、三月以上五年以下の懲役に処する。よって女子を死傷させたときは、六月以上七年以下の懲役に処する。
(不同意堕胎)第215条  女子の嘱託を受けないで、又はその承諾を得ないで堕胎させた者は、六月以上七年以下の懲役に処する。
2  前項の罪の未遂は、罰する。
(不同意堕胎致死傷)第216条  前条の罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
母体保護法(昭和二十三年七月十三日法律第百五十六号)
(定義)第2条
2 この法律で人工妊娠中絶とは、胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に、胎児及びその附属物を母体外に排出することをいう。
(医師の認定による人工妊娠中絶)第14条
 都道府県の区域を単位として設立された公益社団法人たる医師会の指定する医師(以下「指定医師」という。)は、次の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。
一 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
二 暴行若しくは脅迫によつて又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの
2 前項の同意は、配偶者が知れないとき若しくはその意思を表示することができないとき又は妊娠後に配偶者がなくなつたときには本人の同意だけで足りる。
【他分野との関係】
(1)憲法:胎児の生命権と妊婦の(広義のプライバシー権を構成する)自己決定権(芦部125-6頁)の関係
(2)民法:胎児の法的地位(佐久間毅17-22頁)
【条文】民法721条、886条、965条(出生の擬制)
1 堕胎と人工妊娠中絶
(1)堕胎の意義(大判明治42・10・19〔13〕):「自然の分娩期に先立つ胎児の人工的排出」=危険犯
*胎児殺説(平野・概説159頁;山口209頁参照)=侵害犯
**母体内での胎児の殺害
(2)人工妊娠中絶の概念:「胎児が、母体外において、生命を保持することのできない時期に、人工的に胎児及びその付属物を母体外に排出すること」(母体保護法2条②)
*平成3年以降、優生保護法による人工妊娠中絶を実施することのできる時期の基準を、従来の「通常妊娠満23週以前」から「通常妊娠満22週未満」に改められ(平成2年3月20日付け厚生労働省発健医第55号厚生事務次官通知)、実務上はこの基準で運用されている。ー>この通知に法的効力はあるか?
(3)違法阻却事由ー>刑法35条/母体保護法14条
2 類型
(1)自己堕胎(212)
(2)同意堕胎(213①②*)
(3)業務上堕胎(214①②*)
(4)不同意堕胎罪(215/216*)
 ア 不同意堕胎罪(215①)
 イ 不同意堕胎未遂罪(215②)(事例②)
*:致死傷罪あり

3 胎児性致死傷罪
【補充事例1】Xは、臨月の妊婦Aの腹部を思いっきり蹴って胎児Bを殺害しようとした(Aに対する殺意はなかった)が、Bはその際には死亡せず、出生1週間後に、蹴られたときに受けた傷害が原因で死亡した。
4 排出された胎児の法的地位
【補充事例2】医師Yは、妊娠22週を超えた妊婦に違法な堕胎手術を施したが、嬰児がまだ生きていたのでそのまま放置して死亡させた。
時期:①母体外で生命保持できない場合/②生命保持可能な場合
行為態様:①作為/②不作為
ー>保護責任者遺棄致死罪

第3節 殺人罪
【条文】199条(【注釈】)、201条(【注釈】)、202条(【注釈】)、203条(未遂規定)
第26章 殺人の罪
(殺人) 第199条  人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
第200条  削除
(予備)第201条  第百九十九条の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。
(自殺関与及び同意殺人)第202条  人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。
(未遂罪) 第203条  第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する。

1 殺人罪
【事例1】④:治療中止の要件/作為か不作為か?/因果関係における第三者の行為の介入など、総論で扱った問題
2 殺人予備・未遂罪
(1)殺人予備罪ー>予備の共犯(共同正犯)など
(2)殺人未遂罪ー>実行の着手時点/不能犯など

3 自殺関与罪・同意殺人罪
(1)減刑処罰の根拠
(2)類型
 ア 自殺関与
 (ア)自殺教唆
 (イ)自殺幇助
 イ 同意殺人
 (ア)嘱託殺人
 (イ)承諾殺人
*両類型の区別基準(山口207頁:実益に乏しいとする)->未遂
(3)未遂(203条):実行の着手時点(山口207)
 ア 同意殺人罪:殺害行為の着手時点
 イ 自殺関与罪
①教唆・幇助時点/②自殺行為の着手時点
*狭義の共犯類型/独立の犯罪類型か?
【補充事例3】XはVに自殺を教唆したが、Vは自殺を決意しなかった。
(4)殺人罪との区別ー>間接正犯
【事例2】
Xは、
① 幼児V1をだまして自殺させた。
② V2に崖から飛び降りないと(もっと残酷な方法で)殺すぞと脅して飛び降りさせた。
③ V3に心中をもちかけ追死すると偽って被害者を自殺させた。


 ア 死の意味の理解能力の有無
【事例2】①
【判例】最決昭和27・2・21〔7〕
 イ 強制
【事例2】②(下記判例の事案参照)
 【判例】最決平成16・1・20〔10〕
 ウ 欺罔
【事例2】③=下記判例の事案
【判例】最判昭和33・11・21〔4〕ー>同意
【学説】
①重大な錯誤説(通説)
②法益関係的錯誤説
(5)同意殺人と殺人の錯誤
 【補充事例4】XはVを殺害したが、Vは実は殺害に同意していた(Xはそのことを知らなかった)。
 【判例】大阪高判平成10・7・16〔3〕

第4節 遺棄罪
【条文】第三十章 遺棄の罪
(遺棄)
第二百十七条  老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者を遺棄した者は、一年以下の懲役に処する。
(保護責任者遺棄等)
第二百十八条  老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。
(遺棄等致死傷)
第二百十九条  前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

1 遺棄罪の罪質(保護法益)
(1)保護法益
①生命及び身体に対する危険犯(通説・判例)/②生命に対する危険犯(生命限定説:平野・概説163頁;山口213頁参照)
(2)危険犯の性格
①具体的危険犯説(団藤452頁)/②抽象的危険犯説(平野・概説165頁)/③準抽象的危険犯説(山口・危険犯の研究252頁)
2 類型
 ア.単純遺棄罪
 イ.保護責任者遺棄罪
  (ア)遺棄
  (イ)不保護
 ウ.遺棄等致死傷罪 
 *殺人罪との区別ー>【事例8】
3 客体
(1)「扶助を必要とする」の意義
【判例】
(2)「疾病」(=「身体的・精神的に健康状態が害されている状態にあること」山口213頁)の範囲
【判例】
4 行為
 ア.遺棄:場所的離隔(山口214頁)
 (ア)作為(移置)
 (イ)不作為(置去りなど)
*「認知症患者が家から離れるのを止めない」行為なども不作為の遺棄となるか?
 イ.不保護=真正不作為犯
【図】遺棄と不保護の関係
遺棄     不保護
作為/不作為   不作為
217 〇/×       ×
218 〇/〇       〇
*通説・判例は217条の遺棄は作為に限定されるが、218条の遺棄は不作為も含むとする。(【図】参照)
私見:217条の遺棄概念から遺棄概念から不作為犯が除かれているわけではないが、通説はこの場合の作為義務者(不真正不作為犯)を保護責任者と同様に解しているので、結論として217条では不作為は処罰されなくなっているだけ(遺棄概念の問題ではない)
 5 主体:保護責任者
(1) 保護責任者の意義
①=殺人の不真正不作為犯の作為義務者(保障人)/②限定説(山口・各論)
【判例】
(2) 共犯と身分(65条)との関係
①保護責任者の作為の遺棄(自分の子供を山に捨てに行く)を非保護責任者が教唆
②保護責任者の不保護(自分の子供に授乳しない)を非保護責任者が教唆
不均衡⇒違法身分/責任身分説(佐伯・前掲書415頁参照)→罪刑法定主義
【補充事例5】
Xは、
①YにYの子供V1を山に捨てに行くように教唆し、Yはそれを実行した。
②ZにZの子供V2を家に置き去りにして家出するように教唆し、Zはそれを実行した。
[PR]

by strafrecht_bt | 2014-09-27 22:01 | 刑法Ⅱ(各論)