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2015年 04月 28日

【第5講】不作為犯・故意(1)

コアカリキュラム
第2章 犯罪の積極的成立要件
【授業内容】
第5節 不作為犯(山口44-52)
実行行為の(現象類型的)態様:作為/不作為
1.作為と不作為の区別基準
→(私見)作為/不作為の区別は現象類型的なものにとどまり、限界事例においてはその区別さえ困難である。
【事例】(以下ののいずれの事案のおいても当該不作為者は泳ぐことができ、飛び込んで助ければ、ほぼ確実に救助可能だったということを前提とする。)
① Aは他人の子供Vを池に突き落として溺死させた
*AはVからの攻撃を受け殺されそうになったので、そうした場合は?
② Bは他人の子供Vが池に落ちたのを見たが助けなかった
③ Cは他人の子供Vを過失で突き飛ばして池に落としてしまったが助けなかった
④ Dは他人の子供Vが池に落ちたのを助けようとしたEを説得してやめさせた
⑤ Fは他人の子供Vが池に落ちたのを助けようとしたGを羽交い絞めして阻止した
⑥ Gは自分の子供Vが池に落ちたのを見たが助けなかった
⑦ 通報を受けて現場に到着した救助隊員Hは溺れている子供Vを救助しなかった

2.不作為犯
 (ア)不作為犯の意義と種類
2-5-1 不作為犯の意義と種類について理解し、その概要を説明することができる。
 ・真正不作為犯
 ・不真正不作為犯
 (イ)不真正不作為犯の成立要件
2-5-2 不真正不作為犯の成立要件について理解し、その概要を説明できる。
・判例=形式的三分説
 ・法律
 ・法律行為(契約・事務管理)
 ・条理(先行行為など)
・学説
 ・一元説
  ・先行行為説(日高)
  ・事実上の引き受け説(堀内)
  ・排他的支配説(西田)
 ・機能的二分説(山中)
  ・法益保護型義務類型
  ・危険源管理監督型義務類型
ー>現象類型的区別にすぎないのではないか?
**組織化管轄/制度的管轄
 (ウ)作為義務の根拠
2-5-3◎不真正不作為犯における作為義務の根拠について理解し、具体的事例に即してその有無を判断することができる。
【判例】シャクティパット事件(最決H17・7・14【判例刑法79】)ー>短答問題072.gif
【事案】甲は,手の平で患部をたたいてエネルギーを患者に通すことにより自己治癒力を高めるとの独自の治療を施す特別の能力を有すると称していたが,その能力を信奉していたAから,脳内出血を発症した親族Bの治療を頼まれ,意識障害があり継続的な点滴等の入院治療が必要な状態にあったBを入院中の病院から遠く離れた甲の寄宿先ホテルの部屋に連れてくるようAに指示した 上,実際に連れてこられたBの様子を見て,そのままでは死亡する危険があることを認識しながら,上記独自の治療を施すにとどまり,点滴や痰の除去等Bの生命維持に必要な医療措置を受けさせないままBを約1日間放置した結果,Bを痰による気道閉塞に基づく窒息により死亡させた。
・法律←法律化された制度的保護義務(制度的管轄)
・法律行為←自らの法的活動領域の拡大に基づく義務(組織化管轄)
・条理←先行行為による自らの活動領域の拡大に基づく義務(組織化管轄)
*「条理」というのは抽象的すぎるので先行行為に限定すべき
**すべての先行行為が義務づけるか?→(例)正当防衛行為
 (エ)不作為の因果関係
2-5-4◎不作為犯における因果関係の意義について理解し、具体的事例に即して説明することができる。
・判例:「十中八九」基準?
・危険増加説

【不真正不作為犯問題の解法】
・作為→作為犯として考察
or (○作為と不作為の区別基準)→明らかに不作為の場合は論じなくてもよい
不作為
 ↓
・真正不作為犯
or (区別基準)→条文で確認
不真正不作為犯
  ↓
・作為義務(保障人的地位)(+/-)◎その発生根拠
and
・作為の可能性・容易性(+/-)
and
・結果と不作為間の(仮定的)因果関係(+/-)◎基準→適用
第6節 故意 (山口101-112)
1 故意の概念
【条文】刑法38条(故意)1項「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。」
2-6-1◎故意があるというためにはどのような事実について、どのように認識・予見する必要があるか理解し、具体的事例に即して説明することができる。
【判例】最判昭和24・2・22【185】(メタノールの認識)/最決平成2・2・9【187】(覚せい剤の認識)
*故意の対象
・構成要件に該当する(客観的)事実の認識・予見
・違法性の認識(の可能性)
*責任説
2-6-2◎未必の故意と認識ある過失の区別について理解し、具体的事例に即して説明することができる。
【判例】最判昭和23・3・16【181】(盗品の認識)
*故意
・確定的故意
・未確定的故意
・・概括的故意
・・択一的故意
・・未必の故意
・・・条件付故意(山口112)
判例:最判昭和59・3・6【184】(殺人を一定の事態の発生にかからせていた場合)
ーーーーーーー
 ・認識ある過失
 ・認識なき過失
*過失 
【事例】
①Xは、自分を裏切って資産家のAと結婚した元恋人のBの二人に深い憎悪を抱き、二人を呼び出し、所持していた拳銃で二人の頭部を撃って殺害した。
②Xは、法科大学院の講義に遅刻しそうになっていたので自動車で一般道を制限速度の2倍の80キロで走行していた。その際、前方に自転車で走行するAを認識したが、速度を落とさず走行したため、Aと接触して転倒させ、Aは頭部を強打して死亡した。
(1)Xは、自分の運転技術を過信しておりAと接触することはないと考えていた。
(2)Xは、自分の運転技術からすれば、速度を落とさなければAと接触し、場合によっては死亡させることがあるかもしれないと考えていた
ア)それは望ましくはないがやむを得ないと考えていた。
イ)運を天に任せて、なんとか接触せずに済むだろうと思い走行を続けた。
(3)Xは、授業に遅刻しないことだけを考えていたので、Aが死亡するという付随結果の発生については無関心で、その可能性すら念頭になかった。
③Xは、人通りの多いオフィスビルの出入り口に時限爆弾を仕掛けてその爆発により、15名を死亡させ85名に重軽傷を負わせた。
④Xは、並んで歩いているAとBに対して、そのどちらか一方にだけ弾が当たると考えて発砲した。
(1)弾はA(B)に当たり、A(B)が死亡した。
(2)AとBの両方に当たり、二人とも死亡した。


短答問題
2 錯誤論

参考文献
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by strafrecht_bt | 2015-04-28 09:00 | 刑法Ⅰ(総論)
2015年 04月 21日

【第4講】結果・因果関係

コアカリキュラム
第2章 犯罪の積極的成立要件
【授業内容】
第3節 結果
2-3-1◎行為の客体と保護法益の違いについて理解し、具体的事例に即して説明することができる。
・行為客体
・法益
*法益概念
**法益保護が刑法の目的か?
・法益保護説
・規範保護説
・・道徳規範保護説
・・規範意識強化説
・・規範妥当保護説
私見:刑法における法益(「刑法益(Strafrechtsgut)」)は、刑法的規範の妥当であり、刑法はそれを保護するための法的制度である。
*結果無価値の意義
【文献】増田
******
【時間外学習項目】
2-3-2◎侵害犯と危険犯の概念について理解し、具体的犯罪に即して説明することができる。
・侵害犯
・危険犯
・・具体的危険犯
・・抽象的危険犯
2-3-3◎継続犯と状態犯の違いを理解し、犯罪の終了時期について、具体的犯罪に即して説明することができる。
・継続犯
・状態犯
*即成犯概念の必要性?
*公訴時効期間/告訴期間の起算点との関係
2-3-4◎結果的加重犯の意義について理解し、具体的犯罪に即して説明することができる。
*重い結果発生に対する過失の要否
判例:不要説<ー責任主義と調和するか?

********
第4節  因果関係
1.因果関係の意義 
2-4-1 実行行為と結果との間に必要となる因果関係の意義について理解し、その概要を説明することができる。
 ・条件関係=実行行為がなければ結果が発生しなかったであろうという関係
 ・相当因果関係=その行為からその結果が発生するのが相当であるという関係
 ・客観的帰属(帰責)論
2.条件関係
2-4-2◎因果関係を認めるために必要となる実行行為と結果との間の事実的な関係について、その内容を理解し、具体的事例に即してその存否を判断することができる。
 ・条件関係=事実的因果関係
 ・「あれなければこれなし」の公式
 ・事実的な公式か?
*結果的加重犯(2-3-4)と因果関係
【事例】
①AはVの飲み物の中に致死量の毒薬を入れた、Bも(Aと意思の連絡なく)同じ飲み物の中に同種同量の毒薬を入れた、Vは致死量の2倍の毒薬の入ったその飲み物を飲んで死亡した。
②Cは、Vを殺害するために射撃手DにVが自宅から出た瞬間に射殺するように命じた。Cは万一Dが裏切った場合に備えて別の狙撃手EにDを尾行させ、DがV宅に向かわなかったり、狙撃しなかった場合にはEが代わりにVを狙撃するように命じた。DはCの命令どおりVを自宅前で射殺した。
③電車の運転手Eは、前方不注意で、踏切内に立ち入った幼児Vに気づかずブレーキをかけずに轢死させた。しかしEがVが踏切内に立ち入った時点でそれに気づき、ブレーキをかけていても、結局間に合わず、同じ結果が生じていたであろうということが判明した。

*いわゆる「合法則的条件の理論」(山中など)について
【文献】増田(一般的因果性木材防腐剤証明
コアカリキュラム
第2章 犯罪の積極的成立要件
【授業内容】
第4節 因果関係(2)
2-4-4◎実行行為から結果発生までの間に介在する諸事情(被害者の素因、被害者の行為、第三者の行為、犯人の行為など)の因果関係判断における意義を評価し、具体的事例に即して因果関係の存否を判断することができる。
 ・法的因果関係
 ・相当因果関係説の危機?
 ・客観的帰属論(山中)
  ・危険の創出/危険の実現
  ・規範的判断(規範の保護目的の理論)
 ・(法的に許されない)危険を創出する行為(実行行為)
  *行為時に存在した特殊事情:主観面の考慮?
  【判例】脳梅毒事件(判例刑法43)
   ・相当因果関係説
    ・主観説
    ・折衷説
    ・客観説ー>故意・過失で限定
    *結果的加重犯の場合
   【判例】結果的加重犯(判例刑法178)
 ・介在事例(故意・過失・無過失の行為)
  ・行為者自身の行為
  【判例】熊うち事件(判例刑法54)、遅すぎた構成要件の実現(判例刑法53)
  ・第三者の行為
  【判例】米兵轢き逃げ事件(判例刑法58)、大阪南港事件(判例刑法59)、
      夜間潜水事件(判例刑法62)、日航機ニアミス事件(判例刑法65)
  ・被害者の行為
  【判例】火傷を負った被害者の水中への飛び込み(判例刑法57)、
      柔道整復師事件(判例刑法49)、高速道路侵入事件(判例刑法51)
      被害者の不適切な行動(判例刑法52)
【事例】
①Aは、Vに軽微な傷害を加えたが、Vは血友病患者であったため、出血が止まらなくなり死亡した。
②Bは第一現場においてVに暴行を加え、脳出血を発生させ意識喪失状態にし、第二現場に運び放置したところ、その現場に通りかかったCがさらにVに暴行を加え、それによってVの死期が若干早まった。
③Dが自動車で走行中、過失により自転車に乗ったVをはね飛ばし、VはDの運転する車の屋根の上に乗った状態になったが、Dはそれに気づかず、自己現場から立ち去る意思で走行を続けた。その後同乗者EがVが屋根の上に乗っているに気づき、引きずりおろして路上に転落させ、Vは死亡した。Vの致命傷となった頭部の傷が、はねられたときに形成されたのか、引きずりおろし行為によるものかは判明しなかった。
④FはVにやけどを負わせたところ、Vは苦痛のために水中に飛び込み心臓麻痺で死亡した。
⑤Gから長期間にわたる激しい暴行を受けたVは、すきをみて逃走し、高速道路に侵入して自動車に衝突し轢死した。
⑥Hは、Vに暴行を加え重傷を負わせ、Vは病院に運ばれ緊急手術をうけたが、そのVが医師の指示に反して安静にしていなかった。Vはその後病状が急変して死亡した。
⑦IはVを強姦した。ショックを受けたVは翌日自殺した。
⑧JはVをクマと見間違えて猟銃を発射し瀕死の重傷を負わせた。苦悶するVを楽にして逃走する目的で、PはVを射殺した。
⑨KはVを絞殺するつもりで首をしめたところ、Vが動かなくなったので死亡したと思い、死体遺棄の故意で穴を掘ってVを埋めた。しかしVは実はまだ生きており、埋められたことにより窒息死した。

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by strafrecht_bt | 2015-04-21 09:00 | 刑法Ⅰ(総論)
2015年 04月 14日

【第3講】犯罪論の体系・犯罪の主体・実行行為・間接正犯

第3節 犯罪論の体系 (山口21以下)
1-3-1 構成要件該当性・違法性・責任という犯罪論の体系、それに従って犯罪の成否を判断することの意義について理解し、その概要を説明することができる。
「犯罪であるというためには、問題となる行為に、①構成要件該当性、②違法性、③責任が肯定されることが必要となる」(山口22)
・構成要件(山口23以下)
・違法性
・責任
*行為の意義
**代替的犯罪体系:統一的不法概念:管轄と帰属(Pawlik)
私見:三分体系は学習・教育上の便宜的・慣習的なものに過ぎず、それを絶対化することはかえって不当な結論に導くことがある(例:正当防衛の対象・共犯の従属性など)。違法性と責任の区別は相対的
【文献】松宮(日本)松宮(中国)増田
第2章 犯罪の積極的成立要件
第1節 主体
1 自然人(山口24以下)
・「万人」犯(Jedermannsdelikte)
・身分犯(≒Sonderdelikete)
*疑似身分犯(山口25)
2 法人(山口26以下)
2-1-1 業務主(自然人・法人)処罰規定の適用要件について理解し、その概要を説明することができる。
*法人の刑事責任
【条文】両罰規定の例/鳥獣保護法88条「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第八十三条から第八十六条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。」
【判例】法人の犯罪能力(判例刑法16)、過失推定説(判例刑法19)
短答問題072.gif
*フォード・ピント事件
「犯罪者が合理的な判断の結果,犯罪を実行するという合理的選択理論の主張の具体例として,アメリカ合衆国で発生した「フォード・ピント事件」をあげることができる。この事件は,1978年8月10日インディアナ北部の国道33号線で,3人の女性が乗るフォード社の小型乗用車ピントが後部からトラックに軽く追突されたところ,炎上したため車内の3人が焼死したというものであった。その後の調査で,フォード社は事故発生の以前からピント車が後部からの軽い追突でオイルがもれて炎上する危険性があることを認識していたことが明らかとなった。しかしフォード社は,炎上事故による被害者への損害賠償額を試算し(180人の死者と180人の負傷者が発生した場合で495万ドル),その損害賠償額を欠陥箇所である燃料タンクの設計変更と修理に要する費用(1台あたり11ドル×販売した車の台数約1,250万台=1億36700万ドル)と比較していたのである(欠陥車の修理を実施することによる損益1億3,700万ドル>実施しないことによる損益495万ドル)。つまりフォード社は,コストとベネフィットをはかりにかけ,死傷者の出る可能性を知りながらも利益追及のためピント車の設計変更や修理を実施しない道を選択していたのである。フォード社は,インディアナ州において故殺罪で起訴されたが,証拠不十分のため陪審によって不起訴とされた。しかしフォード・ピント事件は.企業犯罪への社会の関心を高める契機になった。」(瀬川晃『犯罪学』(2000年)122頁)

コアカリキュラム
第2章 犯罪の積極的成立要件
【授業内容】
第2節 実行行為
1. 実行行為の意義
2-2-1 実行行為の意義を理解し、具体的事例に即して説明することができる。
*実行行為の意義
・構成要件に該当する行為
・行為規範に違反する行為(ー>行為無価値)
・結果発生の危険性のある行為(ー>結果無価値)
2. 実行行為の(現象類型的)態様
(1)直接的/間接的
ア. 直接的実行行為(直接正犯)
イ. 間接的実行行為(間接正犯)
2-2-2 間接正犯の意義について理解し、強制され、又は欺かれた被害者の行為を利用する事例や第三者の行為を利用する事例等について具体的に当てはめ、判断することができる。(ー>共犯)
【判例】殺人の実行行為(判例刑法26)
短答問題
【事例1】甲は,常日頃暴行を加えて自己の意のままに従わせていた実子の乙(13歳)に対し,Vが管理するさい銭箱から現金を盗んでくるように命じ,乙は,是非善悪の識別能力及び識別に従って行動を制御する能力を有していたが,甲の命令に従わなければまた暴力を振るわれると畏怖し,意思を抑圧された状態で,前記さい銭箱から現金を盗んだ。甲の罪責を論じなさい
―>共犯論との関係:教唆(共謀共同正犯)との区別
【事例2】甲は、自分の夫乙に多額の生命保険を掛けていたが、乙が失業し再就職の見込みもたたないので自殺させようとおもい、「もう生きているのが嫌になったので、一家心中をしましょう。あなたが先に死んでくれれば、『お父さんのところへ一緒に行こう』と息子を説得して後を追うわ」といって、乙に首つり自殺をさせたが、自分たちは死ななかった。


(2)単独/複数
ア.単独正犯
イ.共同正犯
ー>共犯

(3)作為/不作為⇒【第4講】
・作為犯
・不作為犯(―>コア2章5節)
*作為と不作為の現象類型的区別は決定的か?

応用問題
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by strafrecht_bt | 2015-04-14 09:00 | 刑法Ⅰ(総論)
2015年 04月 08日

【第2講】罪刑法定主義

第2節 罪刑法定主義 (山口8以下)
【文献】松宮増田豊「罪刑法定主義の現在-特にボン基本法体制下における正統化の試みについて-」法律論叢57巻3号115頁以下
1.法律主義の意義(山口9以下)
1-2-1 罰則は法律で定めなければならないとの法律主義の意義を理解し、命令への罰則の委任の限界及び条例における罰則制定の可否について、その概要を説明することができる。
【参照条文】憲法31条(「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」芦部235)、39条(「何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。」)、73条6号( 「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
・・・六  この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。」)
【判例】猿払事件(判例刑法2)Wiki(芦部272)、徳島公安条例事件(判例刑法4)Wiki
(芦部198)
過料などの行政処分はともかく、刑罰を科される行為が都道府県等によって異なるのは妥当か?
(外国の例)アメリカ:州ごとに刑法は全く異なる。連邦刑法は特定の分野に限定 
ドイツ:連邦制を採るが,各ラントは罰則制定権を持たない。
********
教科書は指定せず、レジュメ(パーワーポイントスライド)を使用して授業を行った(その後学生から「全国的に通用している」(!)標準的な教科書を指定して欲しいという要望があったので山口厚『刑法(第3版)』のページ数を示した)。判例については、新版がでた『判例刑法総論(第6版)』の判例番号で引用する(新判例など、同書に掲載されていないものについては授業時に配布する)。その他の(司法試験受験という観点からみた)文献の解説としては基本書まとめWiki(刑法)

コアカリキュラム
第1章 刑法の基礎理論
第2節 罪刑法定主義(山口8以下)
【授業内容】
2.類推解釈の禁止(山口11以下)
1-2-2◎刑法で類推解釈が許されないことの趣旨を理解し、類推解釈と拡張解釈の限界について、具体的事例に即して説明することができる。
【判例】電気窃盗事件(判例刑法10)ガソリンカー事件(判例刑法11)、明文なき未遂犯処罰(最判平成8年2月8日刑集50巻2号221頁(鳥獣捕獲))、明文なき過失犯処罰(判例刑法222、223、過失の項目でも後述)
(問)類推解釈と拡張解釈の「論理の違い」(山口11)を説明しなさい。
【文献】増田(可能な語義)
*****

【時間外学習項目】
3.遡及処罰の禁止(山口12以下:事後法の禁止)
1-2-3 遡及処罰(事後法)の禁止の意義について理解し、その概要を説明することができる。
*公訴時効の廃止(山口13)
4.明確性の原則(山口14以下)
1-2-4 罰則が広すぎるため、又は、あいまい不明確であるために違憲無効とされる理由とその要件について理解し、その概要を説明することができる。
(評価)「合憲性に関する判例の具体的な基準はそれほど厳格だとはいえない」(山口16)
*実体的デュープロセスの理論
5.内容の適正さ(山口16以下)
(1)無害な行為を処罰する罰則
(2)過度に広範な処罰規定
6. 罪刑の均衡(山口18)
1-2-5 罪刑均衡の要請について理解し、その概要を説明することができる。
【判例】尊属殺違憲判決(最判昭和48年4月4日刑集27巻3号265頁)Wiki解説

*****
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by strafrecht_bt | 2015-04-08 09:58 | 刑法Ⅰ(総論)
2015年 04月 07日

【第1講】刑法の意義・刑罰論

【授業内容】(基本的にコアカリキュラムに沿って授業を行うが,一部順番を入れ替え,追加項目もあり、いくつかの項目は時間外学習にまわした。
第1章 刑法の基礎理論
第1節 総説
【教科書】山口厚『刑法』(第3版・2011年)
【参考文献】佐伯仁志「刑法の基礎理論」同・刑法総論の考え方・楽しみ方(2013年)1-15頁
西田典之・山口厚・佐伯仁志『判例刑法総論』(第6版・2013年)
【レジュメ】
1.刑法の意義(追加項目) (山口3以下)
◎刑法の意義を理解し、その概要を説明することができる。
(1)形式的意味/実質的意味の刑法
・形式的意味の刑法(「刑法」明治四十年四月二十四日法律第四十五号
・実質的意味の刑法
「犯罪と刑罰の法」=「いかなる行為が犯罪であり、それに対するいかなる刑罰が科されるかを規定した法(山口3)
(2)特別刑法
・刑法
・特別刑法
 ・狭義の特別刑法
 ・広義の特別刑法
【条文】刑法8条(他の法令の罪に対する適用:「この編の規定は、他の法令の罪についても、適用する。ただし、その法令に特別の規定があるときは、この限りでない。」)
(3)刑法と他の法との関係
*民法/行政法との違い
*刑事訴訟法との関係
・実体法ー>(実体)刑法
・手続法ー>刑事訴訟法(刑事手続法)

2. 刑罰論
(1)刑罰の目的(山口4)
1-1-1 刑罰の目的に関する主要な見解を理解し、その概要を説明することができる。
 ・応報刑論
 ・予防刑論
  ・一般予防論
   *消極的一般予防論
   *積極的一般予防論
  ・特別予防論

*目的刑論の意義
**積極的一般予防論の意義(高橋則夫・刑法総論2版12-3頁参照)
***被害者保護論
被害者保護論は上記刑罰論とどのような関係に立つのか?
被害者(の遺族)の応報感情の沈静化は(国家)刑罰目的として相応しいものか?
復讐と応報は同じものか?
なぜ現在では刑罰権は国家に独占されているのか?
*国家制度としての刑罰制度の正当化(一般予防論)/個人処罰の正当化(応報刑論)の区別説(H.L.A.Hart/佐伯5-6頁)は妥当か?
(2)刑罰の種類と内容(山口196以下)
1-1-2 刑の種類・内容を理解し、その概要を説明することができる。
【条文】刑法9条(刑の種類:「死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。」)、10条(刑の軽重:「①主刑の軽重は、前条に規定する順序による。ただし、無期の禁錮と有期の懲役とでは禁錮を重い刑とし、有期の禁錮の長期が有期の懲役の長期の二倍を超えるときも、禁錮を重い刑とする。/②同種の刑は、長期の長いもの又は多額の多いものを重い刑とし、長期又は多額が同じであるときは、短期の長いもの又は寡額の多いものを重い刑とする。/③二個以上の死刑又は長期若しくは多額及び短期若しくは寡額が同じである同種の刑は、犯情によってその軽重を定める。」)、憲法36条(「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」)
ア.生命刑 「死刑」
*死刑の合憲性
絞首刑(刑法11条1項)は刑罰の残虐な執行方法ではないのか?
【判例】死刑合憲判決(最判昭和23年3月12日刑集第2巻3号191頁Wiki
(芦部247)
イ.身体刑(鞭打ちの刑など)→違憲 (通説)
ウ.自由刑 「懲役、禁錮、拘留」
エ.財産刑「罰金、科料、没収」
*没収は刑罰か,保安処分か?
*刑罰と換刑処分(参考判例:判例刑法6)
短答問題(1)(2)072.gif
*****
【時間外学習項目】
(3) 法定刑・処断刑・宣告刑(山口198)
1-1-3 法定刑、処断刑、宣告刑の意義を理解し、その概要を説明することができる。 *量刑基準
(4)刑の執行猶予(山口198)
1-1-4 刑の執行猶予の趣旨及び要件を理解し、その概要を説明することができる。
072.gif刑の一部の執行猶予改正(新旧対照表)が成立
参考論文
懲役・禁固刑に「一部執行猶予」 改正刑法が成立 072.gif
日経新聞2013/6/13 11:14 (2013/6/13 13:13更新)
 
懲役や禁錮刑の一部を執行した後に残りの刑期を猶予する「一部執行猶予制度」の創設を盛り込んだ改正刑法などが13日午後の衆院本会議で全会一致で可決、成立した。一部執行猶予は実刑と執行猶予の中間的な刑罰で、薬物使用などの罪を対象とする。猶予期間に円滑な社会復帰につながる準備をさせ、再犯防止を目指す。
 新制度は、3年以下の懲役・禁錮の判決の中で、裁判所が判断し、刑の一部の執行を1年から5年の範囲で猶予する。「懲役2年、うち6カ月を2年間の執行猶予」とする場合、刑務所を1年半で出所した後、2年間再び罪を犯さなければ刑務所に収容されることはない。
 比較的罪の軽い初犯者や、薬物犯罪などが対象で、猶予期間は保護観察を受ける仕組み。保護観察中は、保護観察所が対象者に「特別順守事項」として公共施設の清掃や福祉施設での介護補助などの社会貢献活動をするよう義務付ける。再び罪を犯したり、順守事項を守らなかったりした場合は執行猶予が取り消される。
 再犯率の高い薬物依存者をいち早く社会に出して立ち直りを支援するのが狙いだが、医療機関などの「受け皿」が少ないなど課題も多い。効果的な施策になるかどうかは、政府の態勢整備にかかっている。
 刑法改正案は2011年に国会に提出され、継続審議となっていたが、昨年の衆院解散に伴い、廃案となった。政府は今国会に法案を再提出し、参院で先に審議して5日の参院本会議で可決していた。

(5)仮釈放・仮出場(山口197)
1-1-5 仮釈放の趣旨及び要件を理解し、その概要を説明することができる

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応報刑の理論
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by strafrecht_bt | 2015-04-07 09:00 | 刑法Ⅰ(総論)