刑法授業補充ブログ

strafrecht.exblog.jp
ブログトップ

<   2017年 04月 ( 6 )   > この月の画像一覧


2017年 04月 26日

侵害を予期した上で対抗行為に及んだ場合における刑法36条の急迫性の判断方法

事件番号  平成28(あ)307
事件名  殺人,器物損壊被告事件
裁判年月日  平成29年4月26日
法廷名  最高裁判所第二小法廷
裁判種別  決定
結果  棄却
判例集等巻・号・頁  
原審裁判所名  大阪高等裁判所
原審事件番号  平成27(う)1120
原審裁判年月日  平成28年2月10日
判示事項  侵害を予期した上で対抗行為に及んだ場合における刑法36条の急迫性の判断方法
裁判要旨  行為者が侵害を予期した上で対抗行為に及んだ場合,侵害の急迫性の要件については,対抗行為に先行する事情を含めた行為全般の状況に照らして検討すべきであり,事案に応じ,行為者と相手方との従前の関係,予期された侵害の内容,侵害の予期の程度,侵害回避の容易性,侵害場所に出向く必要性,侵害場所にとどまる相当性,対抗行為の準備の状況(特に,凶器の準備の有無や準備した凶器の性状等),実際の侵害行為の内容と予期された侵害との異同,行為者が侵害に臨んだ状況及びその際の意思内容等を考慮し,緊急状況の下で公的機関による法的保護を求めることが期待できないときに私人による対抗行為を許容した刑法36条の趣旨に照らし許容されるものとはいえない場合には,侵害の急迫性の要件を充たさないものというべきである。
参照法条  刑法36条


More
[PR]

by strafrecht_bt | 2017-04-26 08:26 | 刑法Ⅰ(総論)
2017年 04月 18日

刑法1(2)罪刑法定主義

罪刑法定主義

第1章 刑法の基礎理論
第2節 罪刑法定主義(山口8以下)
【授業内容】
2.類推解釈の禁止(山口11以下):刑法で類推解釈が許されないことの趣旨を理解し、類推解釈と拡張解釈の限界について、具体的事例に即して説明することができる。
【判例】①電気窃盗事件(判例刑法10)ガソリンカー事件(判例刑法11)、
②明文なき未遂犯処罰(最判平成8年2月8日刑集50巻2号221頁(鳥獣捕獲))、
③明文なき過失犯処罰(判例刑法222、223、過失の項目でも後述)
(問)類推解釈と拡張解釈の「論理の違い」(山口11)を説明しなさい。
【文献】増田(可能な語義)
3.遡及処罰の禁止(山口12以下:事後法の禁止)
*公訴時効の廃止(山口13)
4.明確性の原則(山口14以下):罰則が広すぎるため、又は、あいまい不明確であるために違憲無効とされる理由とその要件
(評価)「合憲性に関する判例の具体的な基準はそれほど厳格だとはいえない」(山口16)
*実体的デュープロセスの理論
5.内容の適正さ(山口16以下)
(1)無害な行為を処罰する罰則
(2)過度に広範な処罰規定
6. 罪刑の均衡(山口18)
【判例】尊属殺違憲判決(最判昭和48年4月4日刑集27巻3号265頁
→2016年度/2015年度の講義。




More
[PR]

by strafrecht_bt | 2017-04-18 09:00 | 刑法Ⅰ(総論)
2017年 04月 11日

刑法1(1)刑法の意義・刑罰論

刑法1【日程】①2017.04.11(火)1時限:刑法の意義・刑罰論
刑法1(1)刑法の意義・刑罰論
【教科書】山口厚『刑法』(第3版・2015年)
【参考文献】(最新のもの)松宮孝明『刑法総論講義』(第5版・2017年);松原芳博『刑法総論』(第2版・2017年)
第199条 (殺人) 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
① 刑法の意義
・実質的意義の刑法:「いかなる行為が犯罪であり、それに対していかなる刑罰が科されるかを規定した法」(山口3頁)
・形式的意義の刑法(刑法典):刑法(明治40年4月24日法律第45号)
 ・刑法総則(総論):第1篇「総則」
 ・刑法各則(各論):第2編「罪」
 特別法上の刑罰法規:「特別刑法」(広義)とは
*「特別法違反の点を除く。」の意味
* 刑法8条:総則の規定は、特別刑法にも適用される
② 刑罰論
・応報刑論(松原3-5頁:被害応報・秩序応報・責任応報)
*予防刑論(目的刑論)
・一般予防論
 ・消極的一般予防論(抑止刑論)
 ・積極的一般予防論(規範的予防論)(松原6-8頁:国民の規範意識・規範への信頼確保・規範妥当性確証)
・特別予防論(再犯防止)(松原8-9頁:消極的特別予防[隔離・排除・特別抑止]・積極的特別予防[改善・教育])
③ 刑法理論との関係
・応報刑論  (後期)旧派 意思自由論
・一般予防論 (前期)旧派 意思自由論(合理的判断能力)
・特別予防論 新派(近代学派) 決定論
*短答出題例:2014〔第1問〕(配点:2)刑罰論に関する次の1から5までの各記述のうち、正しいものはどれか。(解答欄は、[№1])
1.応報刑論は、産業革命に伴う工業化・都市化によって累犯が増加したことを契機として、支持者が増えた。
2.応報刑論に対しては、重大な犯罪を犯した者であっても、再犯可能性がなければ刑罰を科すことができなくなるとの批判がある。
3.応報刑論に対しては、論者が前提としている人間の意思の自由が科学的に証明されていないとの批判がある。
4.応報刑論に対しては、犯罪を防止するために罪刑の均衡を失した重罰化を招くおそれがあるとの批判がある。
5.応報刑論に対しては、刑罰と保安処分の区別がなくなるとの批判がある。
④ 刑罰の種類(刑法9条以下、山口196-9頁)
・生命刑:死刑
・自由刑:懲役・禁錮・拘留
*懲役・禁錮の一本化(改正案)→問題点(松宮・ⅱ頁[はしがき]):「自由刑純化論」(松宮344頁)ではなく「拡大された懲役刑一本化」
・財産刑:罰金・科料:没収
*主刑と付加刑
*代替(換刑)処分:労役場留置/追徴→刑罰でないことに注意(松宮346頁参照)
*執行猶予(25条以下)/一部執行猶予(27条の2以下)/仮釈放(28条)/仮出場(30条)
*一部執行猶予の問題点(松宮352−3頁):「全部実刑と全部執行猶予の中間的制度」か?
出題例:2013〔第9問〕(配点:4) :刑罰に関する次のアからオまでの各記述を検討し、正しい場合には1を、誤っている場合には2 を選びなさい。(解答欄は、アからオの順に[No14]から[No18])
ア.自由刑には、懲役、禁錮及び労役場留置が含まれる。[No14]
イ.財産刑には、罰金、没収及び追徴が含まれる。[No15]
ウ.有期の懲役又は禁錮は、1月以上15年以下であり、これを加重する場合においては30年にまで上げることができる。[No16]
エ.有期の懲役又は禁錮を減軽する場合においては1月未満に下げることができる。[No17]
オ.懲役は、受刑者を刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる刑罰であり、禁錮は、受刑者を刑事施設に拘置する刑罰である。[No18]
【次回】②2017.04.18(火)1時限:罪刑法定主義・犯罪の意義


More
[PR]

by strafrecht_bt | 2017-04-11 09:00 | 刑法Ⅰ(総論)
2017年 04月 09日

最判平成11・10・26民集53巻7号1313頁 

平成11年10月26日
法廷名  最高裁判所第三小法廷
裁判種別  判決
民集53巻7号1313頁
[判示事項]  名誉毀損の行為者が刑事第一審の判決を資料として事実を適示した場合と右事実を真実と信ずるについての相当の理由
[裁判要旨]  名誉毀損の行為者において刑事第一審の判決を資料としてその認定事実と同一性のある事実を真実と信じて摘示した場合には、特段の事情がない限り、摘示した事実を真実と信ずるについて相当の理由がある。
参照法条  民法709条,民法710条,刑法230条の2第1項

[PR]

by strafrecht_bt | 2017-04-09 13:32 | 刑法演習
2017年 04月 08日

最判平成9年9月9日民集51巻8号3804頁

最判平成9年9月9日民集51巻8号3804頁
【判示事項】  
一 特定の事実を基礎とする意見ないし論評の表明による名誉毀損において行為者が右事実を真実と信ずるにつき相当の理由がある場合の不法行為の成否
二 名誉毀損の成否が問題となっている新聞記事における事実の摘示と意見ないし論評の表明との区別
三 特定の者について新聞報道等により犯罪の嫌疑の存在が広く知れ渡っていたこととその者が当該犯罪を行ったと公表した者において右のように信ずるについての相当の理由
【裁判要旨】
 一 特定の事実を基礎とする意見ないし論評の表明による名誉毀損について、その行為が公共の利害に関する事実に係り、その目的が専ら公益を図ることにあって、表明に係る内容が人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない場合に、行為者において右意見等の前提としている事実の重要な部分を真実と信ずるにつき相当の理由があるときは、その故意又は過失は否定される。
二 名誉毀損の成否が問題となっている新聞記事が、意見ないし論評の表明に当たるかのような語を用いている場合にも、一般の読者の普通の注意と読み方とを基準に、前後の文脈や記事の公表当時に読者が有していた知識ないし経験等を考慮すると、証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を主張するものと理解されるときは、右記事は、右事項についての事実の摘示を含むものというべきである。
三 特定の者が犯罪を犯したとの嫌疑が新聞等により繰り返し報道されていたため社会的に広く知れ渡っていたとしても、このことから、直ちに、右嫌疑に係る犯罪の事実が実際に存在したと公表した者において、右事実を真実であると信ずるにつき相当の理由があったということはできない。
【参照法条】  民法709条,民法710条,刑法230条の2第1項


[PR]

by strafrecht_bt | 2017-04-08 14:45 | 刑法演習
2017年 04月 04日

判決文と答案

判決

「主文」  被告人を懲役4年6月に処する。

未決勾留日数のうち120日をその刑に算入する。

「理由」

(罪となるべき事実)

被告人は,Aと共謀の上,

第1〔平成29年1月18日付け起訴状記載の公訴事実第1〕

平成27年6月21日頃,愛知県田原市a町bc番地B駐車場において,同所に駐車中のC所有の普通乗用自動車1台(時価約2万円相当)を「窃取」した。

第2〔平成28年11月2日付け起訴状記載の公訴事実〕

平成27年12月31日頃,愛知県新城市d字ef番g所在の廃屋において,D(当時71歳)の死体を同所トイレ便槽内に運び入れ,同死体に木片等をかぶせて覆い隠し,もって死体を「遺棄」した。

第3〔平成28年12月21日付け起訴状記載の公訴事実〕

別表記載のとおり,平成28年1月5日午後零時2分頃から同年3月8日午前10時31分頃までの間,前後9回にわたり,愛知県豊橋市h町字ij番地kEF店ほか6か所において,各所に設置された現金自動預払機に,不正に入手したG信用金庫H支店発行のD名義のキャッシュカード1枚を挿入して同機を作動させ,株式会社I銀行お客さまサービス部長Jほか5名管理の現金合計17万6000円を引き出して「窃取」した。

第4〔平成29年1月18日付け起訴状記載の公訴事実第2〕

平成28年3月10日頃,愛知県豊川市l町mn番地o株式会社K駐車場において,同所に駐車中のL管理の普通貨物自動車1台(時価約60万円相当)を「窃取」した。

第5〔平成28年9月9日付け起訴状記載の公訴事実第1〕

平成28年7月20日午後5時38分頃,愛知県田原市p町qr番地Mにおいて,同所に設置されたさい銭箱等からN会会長O管理の現金約200円を窃取した。

第6〔平成28年9月30日付け起訴状記載の公訴事実〕

平成28年7月23日頃,愛知県田原市s町tu番地v株式会社Pクラブハウス従業員通用口前付近において,同所に駐車中の同社取締役社長Q管理の普通貨物自動車1台(時価約20万円相当)を「窃取」した。

第7〔平成28年9月9日付け起訴状記載の公訴事実第2〕

平成28年7月30日午後8時59分頃,愛知県田原市p町qr番地Mにおいて,同所に設置されたさい銭箱を手で持ち上げてひっくり返すなどし,同さい銭箱内から前記O管理の現金を「窃取」しようとしたが,現金が入っていなかったため,その目的を遂げなかった。

(法令の適用)

1 罰条

(1) 判示第1,第4ないし第6の各行為

いずれも刑法235条,60条

(2) 判示第2の行為

刑法190条,60条

(3) 判示第3の各行為

いずれも刑法235条,60条

(4) 判示第7の行為

刑法243条,235条,60条

2 刑種の選択

判示第1,第3ないし第7の各行為につき,いずれも懲役刑を選択

3 併合罪

刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の最も重い判示第4の罪の刑に法定の加重)

4 未決勾留日数の算入

刑法21条
5 訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書

(量刑の理由)

1 事案の概要【以下略】



答案例
[PR]

by strafrecht_bt | 2017-04-04 18:10 | 刑法演習