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2012年 05月 20日

論文式2012刑法[刑事系科目第1問〕

[刑事系科目]
〔第1問〕(配点:100)
以下の事例に基づき,甲及び乙の罪責について,具体的な事実を摘示しつつ論じなさい(特別法違反の点を除く。)。
1 A合同会社(以下「A社」という。)は,社員甲,社員B及び社員Cの3名で構成されており,同社の定款において,代表社員は甲と定められていた。
2 甲は,自己の海外での賭博費用で生じた多額の借入金の返済に窮していたため,知人であるDから個人で1億円を借り受けて返済資金に充てようと考え,Dに対し,「借金の返済に充てたいので,私に1億円を融資してくれないか。」と申し入れた。
Dは,相応の担保の提供があれば,損をすることはないだろうと考え,甲に対し,「1億円に見合った担保を提供してくれるのであれば,融資に応じてもいい。」と答えた。
3 甲は,A社が所有し,甲が代表社員として管理を行っている東京都南区川野山○-○-○所在の土地一筆(時価1億円相当。以下「本件土地」という。)に第一順位の抵当権を設定することにより,Dに対する担保の提供を行おうと考えた。
なお,A社では,同社の所有する不動産の処分・管理権は,代表社員が有していた。また,会社法第595条第1項各号に定められた利益相反取引の承認手続については,定款で,全社員が出席する社員総会を開催した上,同総会において,利益相反取引を行おうとする社員を除く全社員がこれを承認することが必要であり,同総会により利益相反取引の承認が行われた場合には,社員の互選により選任された社員総会議事録作成者が,その旨記載した社員総会議事録を作成の上,これに署名押印することが必要である旨定められていた。
4 その後,甲は,A社社員総会を開催せず,社員B及び社員Cの承認を得ないまま,Dに対し,1億円の融資の担保として本件土地に第一順位の抵当権を設定する旨申し入れ,Dもこれを承諾したので,甲とDとの間で,甲がDから金1億円を借り入れることを内容とする消費貸借契約,及び,甲の同債務を担保するためにA社が本件土地に第一順位の抵当権を設定することを内容とする抵当権設定契約が締結された。
その際,甲は,別紙の「社員総会議事録」を,その他の抵当権設定登記手続に必要な書類と共にDに交付した。この「社員総会議事録」は,実際には,平成××年××月××日,A社では社員総会は開催されておらず,社員総会において社員B及び社員Cが本件土地に対する抵当権設定について承認を行っていなかったにもかかわらず,甲が議事録作成者欄に「代表社員甲」と署名し,甲の印を押捺するなどして作成したものであった。
Dは,これらの必要書類を用いて,前記抵当権設定契約に基づき,本件土地に対する第一順位の抵当権設定登記を行うとともに,甲に現金1億円を交付した。
なお,その際,Dは,会社法及びA社の定款で定める利益相反取引の承認手続が適正に行われ,抵当権設定契約が有効に成立していると信じており,そのように信じたことについて過失もなかった。
甲は,Dから借り入れた現金1億円を,全て自己の海外での賭博費用で生じた借入金の返済に充てた。
5 本件土地に対する第一順位の抵当権設定登記及び1億円の融資から1か月後,甲は,A社所有不動産に抵当権が設定されていることが取引先に分かれば,A社の信用が失われるかもしれないと考えるようになり,Dに対し,「会社の土地に抵当権が設定されていることが取引先に分かると恥ずかしいので,抵当権設定登記を抹消してくれないか。登記を抹消しても,土地を他に売却したり他の抵当権を設定したりしないし,抵当権設定登記が今後必要になればいつでも協力するから。」などと申し入れた。Dは,抵当権設定登記を抹消しても抵当権自体が消滅するわけではないし,約束をしている以上,甲が本件土地を他に売却したり他の抵当権を設定したりすることはなく,もし登記が必要になれば再び抵当権設定登記に協力してくれるだろうと考え,甲の求めに応じて本件土地に対する第一順位の抵当権設定登記を抹消する手続をした。
なお,この時点において,甲には,本件土地を他に売却したり他の抵当権を設定したりするつもりは全くなかった。
6 本件土地に対する第一順位の抵当権設定登記の抹消から半年後,甲は,知人である乙から,「本件土地をA社からEに売却するつもりはないか。」との申入れを受けた。
乙は,Eから,「本件土地をA社から購入したい。本件土地を購入できれば乙に仲介手数料を支払うから,A社と話を付けてくれないか。」と依頼されていたため,A社代表社員である甲に本件土地の売却を持ち掛けたものであった。
しかし,甲は,Dとの間で,本件土地を他に売却したり他の抵当権を設定したりしないと約束していたことから,乙の申入れを断った。
7 更に半年後,甲は,再び自己の海外での賭博費用で生じた多額の借入金の返済に窮するようになり,その中でも暴力団関係者からの5000万円の借入れについて,厳しい取立てを受けるようになったことから,その返済資金に充てるため,乙に対し,「暴力団関係者から借金をして厳しい取立てを受けている。その返済に充てたいので5000万円を私に融資してほしい。」などと申し入れた。
乙は,甲の借金の原因が賭博であり,暴力団関係者以外からも多額の負債を抱えていることを知っていたため,甲に融資を行っても返済を受けられなくなる可能性が高いと考え,甲による融資の申入れを断ったが,甲が金に困っている状態を利用して本件土地をEに売却させようと考え,甲に対し,「そんなに金に困っているんだったら,以前話した本件土地をA社からEに売却する件を,前向きに考えてみてくれないか。」と申し入れた。
甲は,乙からの申入れに対し,「実は,既に,金に困ってDから私個人名義で1億円を借り入れて,その担保として会社に無断で本件土地に抵当権を設定したんだ。その後で抵当権設定登記だけはDに頼んで抹消してもらったんだけど,その時に,Dと本件土地を売ったり他の抵当権を設定したりしないと約束しちゃったんだ。だから売るわけにはいかないんだよ。」などと事情を説明した。
乙は,甲の説明を聞き,甲に対し,「会社に無断で抵当権を設定しているんだったら,会社に無断で売却したって一緒だよ。Dの抵当権だって,登記なしで放っておくDが悪いんだ。本件土地をEに売却すれば,1億円にはなるよ。僕への仲介手数料は1000万円でいいから。君の手元には9000万円も残るじゃないか。それだけあれば暴力団関係者に対する返済だってできるだろ。」などと言って甲を説得した。
甲は,乙の説得を受け,本件土地を売却して得た金員で暴力団関係者への返済を行えば,暴力団関係者からの取立てを免れることができると考え,本件土地をEに売却することを決意した。
8 数日後,甲は,A社社員B,同社員C及びDに無断で,本件土地をEに売却するために必要な書類を,乙を介してEに交付するなどして,A社が本件土地をEに代金1億円で売却する旨の売買契約を締結し,Eへの所有権移転登記手続を完了した。甲は,乙を介して,Eから売買代金1億円を受領した。
なお,その際,Eは,甲が本件土地を売却して得た金員を自己の用途に充てる目的であることは知らず,A社との正規の取引であると信じており,そのように信じたことについて過失もなかった。
甲は,Eから受領した1億円から,乙に約束どおり1000万円を支払ったほか,5000万円を暴力団関係者への返済に充て,残余の4000万円については,海外での賭博に費消した。
乙は,甲から1000万円を受領したほか,Eから仲介手数料として300万円を受領した。
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【別紙】
社員総会議事録
1 開催日時
平成××年××月××日
2 開催場所
A合同会社本社特別会議室
3 社員総数
3名
4 出席社員
代表社員甲
社員B
社員C
社員Bは,互選によって議長となり,社員全員の出席を得て,社員総会の開会を宣言するとともに
下記議案の議事に入った。
なお,本社員総会の議事録作成者については,出席社員の互選により,代表社員甲が選任された。

議案当社所有不動産に対する抵当権設定について
議長から,代表社員甲がDに対して負担する1億円の債務について,これを被担保債権とする第一
順位の抵当権を当社所有の東京都南区川野山○-○-○所在の土地一筆に設定したい旨の説明があ
り,これを議場に諮ったところ,全員異議なくこれを承認した。
なお,代表社員甲は,特別利害関係人のため,決議に参加しなかった。
以上をもって議事を終了したので,議長は閉会を宣言した。
以上の決議を証するため,この議事録を作成し,議事録作成者が署名押印する。
平成××年××月××日
議事録作成者代表社員 甲 印
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問題分析
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# by strafrecht_bt | 2012-05-20 23:53 | 司法試験
2011年 07月 08日

2011短答11-20問

〔第11問〕(配点:2)
偽証罪に関する次の【見解】に従って後記1から5までの【記述】を検討し,誤っているものを
2個選びなさい。(解答欄は,[No.24],[No.25]順不同)
【見解】
A説:偽証罪は,宣誓した証人が客観的事実に反する陳述をした場合に成立する。
B説:偽証罪は,宣誓した証人が自己の記憶に反して陳述をした場合に成立する。
【記述】
1.証人が自己の記憶に反する事実を客観的事実に反すると思いながら陳述したが,それが客観
的事実に合致していた場合,A説によれば,偽証罪は成立しない。
2.上記1の場合,B説によれば,偽証罪は成立しない。
3.証人が客観的事実に反しないと思いながら自己の記憶どおりに陳述したが,それが客観的事
実に合致していない場合,A説によれば,偽証罪が成立する。
4.証人が自己の記憶に反する事実を客観的事実に反すると思いながら陳述し,それが客観的事
実に合致していない場合,A説によっても,B説によっても,偽証罪が成立する。
5.証人が自己の記憶に反する事実を客観的事実に反しないと信じて陳述したが,それが客観的
事実に合致していない場合,A説によれば,偽証罪は成立しない。
〔第12問〕(配点:2)
次の1から5までの各記述のうち,誤っているものはどれか。(解答欄は,[No.26])
1.前科のない甲が強盗致傷罪を犯して同罪で起訴された場合,裁判所は,酌量減軽をする事
由があれば,甲に対し,懲役3年,5年間執行猶予(保護観察なし)の判決を宣告すること
ができる。
2.前科のない甲が窃盗罪を犯して同罪で起訴された場合,裁判所は,甲に対し,罰金30万円
の判決を宣告するに当たり,その執行を猶予することができる。
3.甲は,判決により,懲役2年,3年間執行猶予(保護観察なし)に処せられたが,その後犯
した窃盗罪で起訴され,前記執行猶予期間の経過前に判決宣告日を迎えた。この場合,裁判所
は,甲に対し,懲役2年,3年間執行猶予(保護観察付き)の判決を宣告することができる。
4.甲は,判決により,懲役1年,2年間執行猶予(保護観察なし)に処せられたが,その後犯
した窃盗罪で前記執行猶予期間の経過前に起訴され,同執行猶予期間経過後に判決宣告日を
迎えた。この場合,裁判所は,甲に対して,懲役3年,5年間執行猶予(保護観察付き)の
判決を宣告することができる。
5.懲役刑に処せられた甲が,その執行終了の1年後に犯した窃盗罪で起訴され,執行終了後5
年を経過する前に判決の宣告を受ける場合,裁判所は,甲に対して,執行猶予付きの懲役刑を
言い渡すことができない。
(参照条文)刑法
第235条他人の財物を窃取した者は,窃盗の罪とし,10年以下の懲役又は50万円以下の罰
金に処する。
第240条強盗が,人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し,死亡させたときは死
刑又は無期懲役に処する。
- 10 -
〔第13問〕(配点:3)
親族間の犯罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,誤っているもの
を2個選びなさい。(解答欄は,[No.27],[No.28]順不同)
1.甲は,同居している甥の乙が盗んできた宝石を,その事情を知りながら,乙から無償で譲り
受けた。この場合,甲には盗品等無償譲受け罪が成立するが,その刑は免除される。
2.甲は,別居している祖父乙から現金を脅し取った。この場合,甲には恐喝罪が成立するが,
その刑は免除される。
3.甲は,別居している乙(5歳)の祖母であり,家庭裁判所によって乙の未成年後見人に選任
され,後見人の事務として乙の預金口座を管理していたが,その口座から現金を引き出して自
らのために費消した。この場合,甲には業務上横領罪が成立するが,その刑は免除される。
4.甲は,A株式会社の代表取締役である実父乙が管理するA社所有の絵画を窃取した。この場
合,甲には窃盗罪が成立し,その刑は免除されない。
5.甲は,同居している実父乙を被告人とする窃盗事件の公判期日に,証人として出廷し,宣誓
の上,乙の利益のために偽証をした。この場合,甲には偽証罪が成立するが,その刑を免除す
ることができる。
〔第14問〕(配点:3)
両罰規定に関する次の【見解】A説ないしC説に従って,後記【罰則】の適用に関する後記1か
ら5までの【記述】を検討し,誤っているものを2個選びなさい。(解答欄は,[No.29],[No.30]
順不同)
【見解】
A説:両罰規定は,法人が無過失であっても代表者や従業者の責任が法人に転嫁されることを政
策的に認めたものである。
B説:法人の代表者の違反行為は法人の違反行為であり,法人の従業者の違反行為については,
法人の代表者の当該従業者に対する選任監督上の過失が推定され,過失責任に基づき法人が
処罰される。
C説:法人の代表者の違反行為は法人の違反行為であり,法人の従業者の違反行為については,
法人の代表者の当該従業者に対する選任監督上の過失が擬制され,過失責任に基づき法人が
処罰される。
【罰則】
出入国管理及び難民認定法第73条の2第1項
次の各号のいずれかに該当する者は,3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処
し,又はこれを併科する。
一事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせた者
二(以下略)
同法第76条の2
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人,使用人その他の従業者が,その法人又は人の業
務に関して第73条の2(中略)の罪(中略)を犯したときは,行為者を罰するほか,その法
人又は人に対しても,各本条の罰金刑を科する。
【記述】
1.A説によれば,甲社代表取締役乙が,自社の事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせ
た場合,甲社に出入国管理及び難民認定法違反の罪(同法第73条の2第1項,第76条の2,
以下「不法就労助長罪」という。)が成立する。
2.A説によれば,甲社従業者丙が,自社の事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせた場
合,甲社に不法就労助長罪が成立する。
- 11 -
3.B説によれば,甲社代表取締役乙が,自社の事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせ
た場合,甲社の乙に対する選任監督上の過失がないことが立証されない限り,甲社に不法就労
助長罪が成立する。
4.B説によれば,甲社従業者丙が,自社の事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせた場
合,甲社代表取締役乙の丙に対する選任監督上の過失がないことが立証されない限り,甲社に
不法就労助長罪が成立する。
5.C説によれば,甲社従業者丙が,自社の事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせた場
合,甲社代表取締役乙の丙に対する選任監督上の過失がないことが立証されない限り,甲社に
不法就労助長罪が成立する。
〔第15問〕(配点:2)
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選びなさい。(解
答欄は,[No.31],[No.32]順不同)
1.甲は,人通りの多い路上で,不特定多数の通行人を勧誘して客を集めた上,近隣のビルの
1室において,外部との出入りを制限した状態で,自らが雇用した男女に全裸で性行為を行
わせ,それを6名の客に有料で観覧させて利益を得た。この場合,甲に公然わいせつ罪の共
同正犯は成立しない。
2.甲は,自己の所有するパソコンからわいせつな画像データをサーバーに送信して記憶・蔵
置させた上,不特定多数の者が,インターネットを経由して同わいせつ画像データをダウン
ロードして,パソコンの画面上に再生して閲覧することを可能にした。この場合,閲覧する
者において,閲覧の際,画像データのダウンロード等の作業をする必要があったとしても,
甲にわいせつ物公然陳列罪が成立する。
3.甲は,わいせつな映像が録画されたマスターDVDを所持していたが,甲には,同マスタ
ーDVD内に記録されたわいせつな映像を客の注文に応じて他のDVDに複写して販売する
意図はあったものの,同マスターDVD自体を販売する意図はなかった。この場合,甲にわ
いせつ物販売目的所持罪は成立しない。
4.甲は,外国で販売する目的で,日本国内においてわいせつな写真を所持した。この場合,
甲にわいせつ物販売目的所持罪が成立する。
5.甲は,わいせつな映像が録画されたDVDを販売する目的で雑誌に広告を出し,申し込ん
できた複数の客から代金の振込みを受け,宅配便で配送する手続を採ったが,配送するトラ
ックが途中で事故を起こしたため,同DVDは,客に届かなかった。この場合,甲にわいせ
つ物販売罪は成立しない。

【共犯と身分】
〔第16問〕(配点:3)
業務上の占有者による横領行為に非占有者が加功した場合の罪責について,教授及び学生が次の
【会話】のとおり議論している。【会話】中の①から⑤までの( )内に後記アからキまでの【発
言】から適切な語句を入れた場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちのどれか。(解
答欄は,[No.33])
【会話】
教授.保険会社の保険料集金担当従業員である甲が,同社の従業員ではない知人乙と共謀の上,
集金した保険料を横領した事例のように,業務上の占有者に非占有者が加功した場合のそれ
ぞれの罪責について,共犯と身分の観点から,どのようなことが問題になりますか。
学生.業務上横領罪の成否に関して,同罪は,単純横領罪との関係では(①)であり,他方,非
占有者との関係では(②)となりますから,特に乙に対して,何罪が成立するのかが問題に
なります。
教授.判例ではこの事例はどのような結論になりますか。
学生.判例は,(③)としています。
教授.判例の立場に対しては,どのような批判がなされていますか。
学生.非身分者について罪名と科刑の分離を認めるのは妥当でないという批判がなされています。
教授.この点を克服するための考え方としては,どのようなものがありますか。
学生.刑法第65条第1項は違法身分について規定し,同条第2項は責任身分について規定して
いると考え,業務上横領罪については,(④)と捉えた上で,この事例では(⑤)とする見
解などがあります。
【発言】
ア.占有の受託者という身分があることによって犯罪行為になる構成的身分犯
イ.業務者という身分があることによって刑が加重・減軽される加減的身分犯
ウ.占有の受託者たる身分は責任身分,業務者たる身分は違法身分
エ.占有の受託者たる身分は違法身分,業務者たる身分は責任身分
オ.刑法第65条第1項により甲には業務上横領罪が,同条第2項により乙には単純横領罪がそ
れぞれ成立し,甲及び乙は単純横領罪の範囲で共犯となる
カ.刑法第65条第1項により甲及び乙は業務上横領罪の共犯となり,同条第2項により乙に対
しては単純横領罪の刑を科す
キ.刑法第65条第1項により甲及び乙は単純横領罪の共犯となり,更に同条第2項により甲に
ついては業務上横領罪が成立する
1.①ア②イ③カ④ウ⑤オ
2.①ア②イ③キ④ウ⑤オ
3.①イ②ア③オ④エ⑤カ
4.①イ②ア③カ④エ⑤キ
5.①イ②ア③キ④ウ⑤カ

〔第17問〕(配点:3)
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選びなさい(ただ
し,甲は,記述4を除いて,当初から,対象物が財産に対する罪に当たる行為によって領得され
たものであることを認識していたものとする。)。(解答欄は,[No.34],[No.35]順不同)
1.甲は,何者かがA社事務所から窃取した約束手形をA社に買い取らせる交渉を乙に依頼
され,A社と買取りの条件を交渉したところ,同手形はA社に売却された。この場合,甲に
は盗品等処分あっせん罪が成立する。
2.甲は,乙を教唆して丙所有の自動車を窃取させた後,乙に代金を支払って同自動車を買い
受け,その引渡しを受けた。この場合,甲には,窃盗教唆罪が成立し,盗品等有償譲受け
罪は成立しない。
3.甲は,乙が窃取した丙所有の自動車を乙から買って,乙に代金を支払ったが,乙が検挙され
てしまい,乙から同車の引渡しを受けることができなかった。この場合,甲には盗品等有償譲
受け罪が成立する。
4.甲は,乙からパソコンを預かり保管したが,その1か月後,同パソコンは,乙が丙から窃取
したものであることを知ったにもかかわらず,乙のために保管を継続した。この場合,甲には
盗品等保管罪が成立する。
5.甲は,12歳の乙が電器店で窃取した携帯電話機を乙から買い,代金を支払ってその交付を
受けた。この場合,甲には盗品等有償譲受け罪は成立しない。
〔第18問〕(配点:2)
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,誤っているものを2個選びなさい。(解
答欄は,[No.36],[No.37]順不同)
1.甲は,乙が第三者から盗んできた物を,盗品かもしれないと認識していたが,値段が安いの
でそれでも構わないと思って有償で譲り受けた。この場合,甲には盗品等有償譲受け罪は成立
しない。
2.甲は,殺意をもって乙の首を絞め,乙が気絶したのを見て既に窒息死したものと誤信し,乙
を海に投げ込んだところ,乙は海中で溺死した。この場合,甲には殺人罪が成立する。
3.甲は,自己が経営する店において,わいせつな映像を録画したDVDを販売したが,あらか
じめ同DVDの映像を再生してその内容を認識していたものの,この程度ではわいせつ図画に
当たらないと考えていた。この場合,甲にはわいせつ図画販売罪が成立しない。
4.甲は,パチンコ店の従業員乙が運搬していた同店の売上金の入ったかばんを強取するため,
乙の後方から,乙の頭部を狙い,殺意をもってけん銃の弾丸を発射したところ,同弾丸は乙の
肩を貫通した上,甲が認識していなかった通行人丙の腹部に命中し,乙と丙にそれぞれ傷害を
負わせた。この場合,甲には,乙に対する強盗殺人未遂罪,丙に対する強盗殺人未遂罪がそれ
ぞれ成立し,両罪は観念的競合となる。
5.甲は,乙に対して丙に暴行するよう教唆したところ,乙が丙の頭部を1回殴り,その結果,
丙が転倒して地面に頭部を打ち付け,脳挫傷により死亡した。この場合,甲には傷害致死罪の
教唆犯が成立する。
【各論総合】
〔第19問〕(配点:2)
次の【事例】における甲の罪責を判例の立場に従って検討し,後記アからオまでの【罪名】のう
ち,その罪名に係る犯罪(共犯の場合を含む。)が成立するものには1を,成立しないものには2
を選びなさい。(解答欄は,アからオの順に[No.38]から[No.42])
【事例】
甲は,求人広告を見て乙と会い,乙から,銀行で架空人名義の預金口座を開設し,その預金通
帳とキャッシュカードを手に入れて乙に渡すというアルバイトを依頼され,これを引き受けた。
その際,甲は,乙から,預金口座を開設する際に身分証明書として呈示するため,甲の顔写真が
印刷された架空人A名義の運転免許証を作成する必要があると聞かされたので,甲の顔写真を乙
に交付するとともに,甲の知人Bの住所をキャッシュカードの送付先として乙に教えた。乙は,
不正に入手したC名義の真正な運転免許証の顔写真の上から甲の顔写真を貼り付け,氏名をA名
義に,住所をBの住所にそれぞれ書き換えるなどの加工を施し,甲の顔写真が貼付されたA名義
の運転免許証を作成した。同免許証は,一見すると真正なものと見分けがつかないような精巧な
ものであった。数日後,甲は,乙から,前記運転免許証とAの姓を刻した印鑑を受け取った。そ
の後,甲は,銀行に行き,口座開設申込書にAの氏名及びBの住所等を書いてAの印鑑を押した
上,同銀行窓口係丙に対し,Aを装い,同申込書を前記運転免許証と一緒に提出して口座開設を
申し込んだ。丙は,甲がAであることを疑うこともなく,かつ,前記運転免許証及び前記口座開
設申込書の記載内容が虚偽であると知っていれば口座開設をしなかったのに,これらの内容が真
実であるものと誤信し,A名義の口座を開設する手続を行い,即日窓口で預金通帳を甲に交付
し,キャッシュカードについては,Bの住所地宛てに郵送した。甲は,数日後に郵送されたキャ
ッシュカードをBから受け取った後,しばらくの間,自宅に通帳とキャッシュカードを保管し,
その後,報酬と引換えに,預金通帳とキャッシュカードを乙に交付した。
【罪名】
ア.有印公文書変造・同行使罪[No.38]
イ.有印私文書偽造・同行使罪[No.39]
ウ.詐欺罪[No.40]
エ.有価証券偽造罪[No.41]
オ.盗品等保管罪[No.42]

【刑法の適用範囲】
〔第20問〕(配点:3)
次の【事例】の甲に対する刑法の適用に関する後記1から5までの【記述】を判例の立場に従っ
て検討し,正しいものを2個選びなさい。(解答欄は,[No.43],[No.44]順不同)
【事例】
甲は,日本国内に居住するA国民である。
甲は,B国を訪れた際,同国内に居住する日本国民V1並びに日本国内に居住する日本国民V
2及び同V3を殺害しようと考え,B国において,毒入りの酒(以下「毒入酒」という。)をV
1方,V2方及びV3方に向けてそれぞれ発送し,その後日本に帰国した。
V1宛ての毒入酒は,V1方に到達し,これをB国内で飲酒したV1及びその友人であるB国
民V4は,それぞれ,同国内で薬物中毒により死亡した。
V2宛ての毒入酒は,甲が発送手続の際,誤ってV2と同姓の日本国民V5の住所地を記載し
たことから,日本国内のV5方に配達され,V5は,V2宛ての配達物であることに気が付いた
が,しばらく保管して誰からも連絡がなかったら自分で飲酒しようと思い,これを自宅に保管し
ていた。
V3宛ての毒入酒は,V3方に到達したが,配送途中の事故により,瓶が割れ,到達時には毒入酒がすべて無くなっていたことから,V3は,これを飲酒することができなかった。
【記述】
1.V1に対する行為について刑法(殺人罪)が適用される。
2.V2に対する行為について刑法(殺人未遂罪)が適用される。
3.V3に対する行為について刑法(殺人未遂罪)が適用される。
4.V4に対する行為について刑法(殺人罪)が適用される。
5.V5に対する行為について刑法(殺人未遂罪)が適用される。
(参照条文)刑法
第3条の2 この法律は,日本国外において日本国民に対して次に掲げる罪を犯した日本国民以外
の者に適用する。
一(略)
二第199条(殺人)の罪及びその未遂罪
三~六(略)
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# by strafrecht_bt | 2011-07-08 12:32 | 司法試験
2011年 07月 08日

2011短答1-10問

短答式試験問題集[刑事系科目]
[刑事系科目]
〔第1問〕(配点:2)
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選びなさい。(解答
欄は,[No.1],[No.2]順不同)
1.甲は,乙から商品を購入する際,偽造通貨を真正な通貨のように装って乙に代金として交付
した。甲には詐欺罪と偽造通貨行使罪が成立し,両罪は観念的競合となる。
2.甲は,自動販売機に投入して飲料水と釣銭を不正に得る目的で,外国硬貨の周囲を削って5
00円硬貨と同じ大きさにした。甲には通貨偽造罪が成立する。
3.甲は,警察官から道路交通法違反(無免許運転)の疑いで取調べを受けた際,交通事件原票
中の供述書欄に,あらかじめ承諾を得ていた実兄乙の名義で署名指印した。甲には有印私文書
偽造罪が成立する。
4.甲は,当選金を得る目的で,外れた宝くじの番号を当選番号に改ざんした。甲には有印私文
書変造罪が成立する。
5.甲は,運転中に警察官に免許証の提示を求められたときに提示するつもりで,偽造された自
動車運転免許証を携帯して自動車の運転を開始した。甲には偽造公文書行使罪は成立しない。

〔第2問〕(配点:3)因果関係
次のアからオまでの各事例を判例の立場に従って検討し,( )内の甲の行為とVの死亡との間
に因果関係が認められる場合には1を,認められない場合には2を選びなさい。(解答欄は,アか
らオの順に[No.3]から[No.7])
ア.甲は,深夜,高速道路上で自動車(甲車)を運転中,大型トレーラー(乙車)を運転中の乙
とトラブルになり,乙車の進路を妨害した上,追越車線上に乙車を停止させた。甲は,甲車か
ら降り,乙を降車させた上,路上で乙に暴行を加えた後,甲車を運転して立ち去った。乙は,
甲が立ち去った後,甲に奪われないためにズボンのポケットにエンジンキーを入れていたのを
失念し,乙車を追越車線上に停車させたまま,エンジンキーを探していた。甲が立ち去ってか
ら約5分後,後方から自動車を運転してきたVは,乙車を発見するのが遅れて自車を追突させ,
Vはそれにより死亡した。(甲が乙車を追越車線上に停止させた行為)[No.3]
イ.甲は,人通りの多い路上でVとけんかになり,Vの顔面を殴打したところ,Vは路上に転倒
し,脳震とうを起こして一時的に意識を失った。甲がVを放置して逃走した後,日頃からVに
恨みを持っていた乙が通り掛かり,意識を失っているVの腹部を多数回足で蹴ったところ,V
は乙のこの暴行で生じた内臓の出血により死亡した。(甲がVの顔面を殴打して転倒させた行
為)[No.4]
ウ.甲は,高速道路のパーキングエリアに駐車中の自動車内で,V女と口論になり,感情が高ぶ
ってV女の顔面を平手で1回殴打した。V女は,腹を立てて一人で帰宅しようと考え,車外に
出て,高速道路の本線を横断し,反対車線側に設置された高速バスの停留所に行こうとしたと
ころ,本線上を走行してきた乙運転の自動車にはねられ,全身打撲により死亡した。(甲が車
内でV女を殴打した行為)[No.5]
エ.甲は,Vを不法に逮捕した上,自動車後部のトランク内にVを監禁した状態で同車を発進さ
せ,信号待ちのため路上で停車中,居眠り運転をしていた乙が自車を甲の運転する車両に追突
させたため,Vは追突による全身打撲により死亡した。(甲が運転中の自動車のトランク内に
Vを監禁していた行為)[No.6]
オ.甲は,Vの後頸部に割れたビール瓶を突き刺し,Vに重篤な頸部の血管損傷等の傷害を負わ
せたため,Vは病院に搬送された。Vは,病院で手術を受け,容体が一旦は安定したが,医師
からなお予断を許さないから安静を続けるように指示されていたにもかかわらず,医師の指示
に従わずに病室内を動き回ったため,当初の傷害の悪化による脳機能障害により死亡した。(甲
がVの後頸部をビール瓶で突き刺した行為)[No.7]
〔第3問〕(配点:2)詐欺罪
次の1から5までの各事例における甲の罪責について判例の立場に従って検討し,乙に対する詐欺罪(刑法第246条)が甲に成立しないものを2個選びなさい。(解答欄は,[No.8],[No.9]
順不同)
1.甲は,乙とトランプ賭博を行った際,乙の手札の内容が分かるよう不正な細工を施したトラ
ンプカードを用いて乙を負けさせ,乙に100万円の支払債務を負担させた。
2.甲は,15歳の乙がふだんから多額の現金を持ち歩いているのを知っていたことから,同人
の知識や思慮が足りないことに乗じて現金を手に入れようと考え,乙に対し,借りた現金を返
す意思もないのに返す意思があるように装って10万円の借金を申し込み,これを誤信した乙
から現金10万円の交付を受けた。
3.甲は,乙宅の金品を手に入れようと考え,乙宅で乙と歓談中,「火事だ。」と嘘を言い,乙が
その旨誤信して外に逃げた隙に乙宅から現金を持ち去った。
4.甲は,パチンコ店において,通常の方法によってパチンコ台で遊技しているように装って同
店従業員乙の目を欺き,特殊な器具を使ってパチンコ台を誤作動させてパチンコ玉を排出さ
せ,その占有を取得した。
5.甲は,乙に対し,乙の居宅は耐震補強工事をしないと地震の際に危険である旨嘘を言い,そ
の旨乙を誤信させて必要のない工事契約を締結させたが,乙には資金がなかったことから,乙
が甲の妻丙が経営する家具店から家具を購入したように仮装して,その購入代金について乙と
信販会社との間で立替払契約を締結させ,これに基づき,同信販会社から丙名義の預金口座に
工事代金相当額の振込みを受けた。
〔第4問〕(配点:2)
学生Aと学生Bは,次の【事例】について,後記【会話】のとおり議論している。【会話】中の
①から⑦の( )内に,後記aからnまでの【語句群】から適切な語句を入れた場合,( )内に
入るものの組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[No.10])
【事例】
甲は,過去数回,飲酒酩酊の上,正常な運転ができない状態で自動車を運転し,物損事故を起
こして運転免許取消処分を受けていたが,運転免許を再取得しないまま,自動車の運転を続けて
いた。
ある日,甲は,自動車を運転して居酒屋に行き,同居酒屋で飲酒し始めたが,仮に酩酊して正
常な運転ができない状態になっても,自動車を運転して帰宅するつもりであった。
甲は,同居酒屋で日本酒1升を飲み,酩酊して是非善悪の識別能力及びその識別に従って行動
を制御する能力を失った状態で,帰宅するために自動車の運転を開始した。しかし,甲は,飲酒
酩酊により正常な運転ができなかったため,自車を歩道上に乗り上げさせて歩行中の乙を跳ね飛
ばし,乙を死亡させた。
【会話】
学生A.この事例は,構成要件としては,(①)罪に当てはまりそうだけど,甲は,運転開始時,
是非善悪の識別能力及びその識別に従って行動を制御する能力を失った状態だね。
学生B.そうすると,運転開始時に甲は(②)がなかったことになるから,甲は不可罰になるの
だろうか。
学生A.甲が(②)に影響が出ない程度に飲酒して,正常な運転が困難な状態で自動車を運転し
ていたら(①)罪が成立するのに,この事例が不可罰になるなんて納得できないな。
学生B.こういう場合に,甲の可罰性を根拠付ける理論として,(③)があったね。
学生A.確か「直接結果を惹起した行為の際には(②)がなくても,その原因となった行為の際
に完全な(②)があれば,完全な責任が問いうる。」という理論だったよね。
学生B.この理論の根拠は何だろう。
学生A.(④)を維持しつつ,構成要件該当事実を原因行為まで遡及させる立場と,(④)の例外
を認め,責任だけを原因行為時に遡及させる立場があるよね。
学生B.(②)を欠いた自分を道具として利用すると捉え,(⑤)と同様に考える見解は,前者の
立場に分類されるね。
学生A.だけど,甲が乙を自動車ではねた時点で甲自身が道具といえるか問題となる場合とし
て,甲が(⑥)だった場合があるね。
学生B.確かに,道具といえるか問題があるね。判例は,(⑥)の場合,(③)の理論を(⑦)よ
ね。
【語句群】
a.業務上過失致死b.危険運転致死c.責任能力d.行為能力
e.原因において違法な行為f.原因において自由な行為
g.行為と責任の同時存在の原則h.罪刑法定主義i.共謀共同正犯
j.間接正犯k.心神喪失l.心神耗弱m.適用している
n.適用していない
1.①a ②c ③e ④g ⑤j ⑥l ⑦m
2.①a ②d ③f ④g ⑤i ⑥l ⑦n
3.①b ②c ③f ④g ⑤j ⑥l ⑦m
4.①b ②c ③f ④h ⑤i ⑥k ⑦n
5.①b ②d ③e ④g ⑤j ⑥k ⑦m
〔第5問〕(配点:3)危険運転致死傷罪
次の1から5までの各事例における甲の罪責について,判例の立場に従って検討し,甲に危険運
転致傷罪が成立するものを2個選びなさい。(解答欄は,[No.11],[No.12]順不同)
1.甲は,自動車を運転中,前方の交差点に設置された対面信号機が赤色表示に変わったのに気
付かず,時速約50キロメートルで同交差点に進入したところ,歩行者用信号機の青色表示に
従って前方の横断歩道上を歩行していた乙に自車を衝突させ,乙に傷害を負わせた。
2.甲は,乙を助手席に同乗させて雨の降る山道を自動車で走行中,指定最高速度が時速40キ
ロメートルであることや,降雨のため路面が滑りやすい状況であることを認識しつつも,対向
車もなかったので事故を起こすことはないだろうと思い,時速約100キロメートルの速度で
急カーブに進入したところ,後輪が滑走したために同カーブを曲がりきれず,自車を道路脇の
樹木に衝突させ,乙に傷害を負わせた。
3.甲は,飲酒の影響で歩行が困難な状態であることを認識しながら自動車の運転を開始し,運
転開始後も自車が激しく蛇行していることを認識しながらも,運転技術に自信があったので,
事故を起こすことはないだろうと思い運転を継続したところ,飲酒の影響により,自車を蛇行
させて,道路の右脇を歩行していた乙に衝突させ,乙に傷害を負わせた。
4.甲は,交通違反を繰り返して自動車運転免許の取消処分を受けていたものの,自動車の運転
経験が長く運転技術に自信があったので,事故を起こすことはないだろうと思って自動車の運
転を始めたが,運転中脇見をしてハンドル操作を誤り,自車を対向車線に進出させて乙運転の
対向車と衝突させ,乙に傷害を負わせた。
5.甲は,片側1車線の道路を自動車を運転して進行中,時速約50キロメートルで走行する乙
運転の先行車を追い越すに当たり,対向車両が接近しており,追越しを完了させるには乙車の
直前に進入する必要があったので,同車の通行を妨害することになるかもしれないと思いつ
つ,対向車線に自車を進出させて追越しを開始し,乙車の直前に自車を進入させたところ,乙
が驚いてハンドルを左に切り,乙車をガードレールに衝突させ,乙に傷害を負わせた。
〔第6問〕(配点:2)罪数
罪数に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれ
か。(解答欄は,[No.13])
1.甲は,夜間,車道上にロープを張って,車道を閉塞したところ,自動二輪車を運転して同所
を通り掛かった乙がこれに気付かないまま同ロープに引っ掛かり,転倒して負傷した。この場
合,甲に乙が負傷をすることについて故意があれば,甲には往来妨害罪と傷害罪が成立し,両
罪は牽連犯となる。
2.甲は,乙を殺害する目的で乙方に侵入し,屋内にいた乙を殺害した上,たまたま屋内に居合
わせた丙及び丁も殺害した。この場合,甲には,住居侵入罪並びに乙,丙及び丁に対する殺人
罪が成立し,住居侵入罪と乙に対する殺人罪が牽連犯として一罪となり,丙及び丁に対する殺
人罪と併合罪になる。
3.甲は,眼鏡を掛けた乙の顔面を,眼鏡の上から拳で殴打し,眼鏡を損壊するとともに,乙に
全治1週間を要する顔面打撲の傷害を負わせた。この場合,甲には傷害罪と器物損壊罪が成立
し,両罪は併合罪となる。
4.甲は,真実は,自己の経営する会社の運転資金に使う目的で,質権を設定するつもりもない
のに,乙に対して,「2000万円をA銀行の甲名義預金口座に振り込んでほしい。振り込ま
れた2000万円については,見せ金として使用するので,口座から引き出さないし,振込み
後,質権も設定する。」などと嘘を言い,これを信じた乙は,A銀行の甲名義預金口座に20
00万円を振り込んだ。その数日後,甲は,同預金に関するA銀行名義の質権設定承諾書1
通を偽造し,乙に交付した。この場合,甲には詐欺罪,有印私文書偽造及び同行使罪が成立
し,これらは牽連犯として一罪となる。
5.甲は,乙を監禁した上で現金を恐喝しようと企て,乙をマンションの一室に監禁し,暴行・
脅迫を加えて現金を脅し取った。この場合,甲には監禁罪と恐喝罪が成立し,両罪は併合罪と
なる。
〔第7問〕(配点:3)強盗殺人罪
強盗殺人罪に関する次の【見解】A説ないしC説に従って後記【事例】ⅠないしⅢにおける甲の
罪責を検討し,後記1から5までの【記述】のうち,正しいものを2個選びなさい。(解答欄は,[No.14],[No.15]順不同)
【見解】
強盗殺人罪が成立するためには,
A説:殺人行為が強盗の機会に行われなければならないとする。
B説:殺人行為が強盗の手段でなければならないとする。
C説:殺人行為が強盗の手段である場合に限らず,事後強盗(刑法第238条)類似の状況にお
ける殺人行為も含むとする。
【事例】
Ⅰ.甲は,強盗の目的で,乙に対し,持っていたナイフを突き付け,「金を出せ。出さなかった
ら殺す。」などと申し向け,反抗を抑圧された乙から現金を奪い取った後,逃走しようとした
が,乙に追跡され,犯行現場から約10メートル逃げたところで,捕まらないようにするため,
殺意をもって乙の胸部を刃物で突き刺し,乙を即死させた。
Ⅱ.甲は,乙所有の自動車1台を窃取し,犯行翌日,同車を犯行場所から約10キロメートル離
れた場所で駐車させ,用事を済ませた後,同車に戻ってきたところを乙に発見され,同車を放
置して逃走した。甲は,乙に追跡されたので,捕まらないようにするため,殺意をもって乙の
胸部を刃物で突き刺し,乙を即死させた。
Ⅲ.甲は,乙方において,乙をロープで縛り上げた上,乙所有の現金を奪い取った後,乙方から
逃走しようとしたが,乙方玄関先において,たまたま乙方を訪問した丙と鉢合わせとなり,丙
が悲鳴を上げたことから,犯行の発覚を恐れ,殺意をもって丙の胸部を刃物で突き刺し,丙を
即死させた。
【記述】
1.A説によれば,事例Ⅰでは強盗殺人罪が成立する。
2.A説によれば,事例Ⅲでは強盗殺人罪は成立しない。
3.B説によれば,事例Ⅱでは強盗殺人罪は成立しない。
4.B説によれば,事例Ⅲでは強盗殺人罪が成立する。
5.C説によれば,事例Ⅱでは強盗殺人罪が成立する。
〔第8問〕(配点:2)
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄
は,[No.16])
1.甲は,昼間の電車内において,多数の乗客が見ている状態で,恋人の乙が着ていたコートの
前を広げさせてその陰部を露出させた場面を写真撮影した。同写真撮影について乙があらかじ
め甲に対して承諾していた場合,公然わいせつ罪の違法性が阻却され,甲には同罪の共同正犯
は成立しない。
2.甲は,重病で苦しんでいる妻乙に同情して,同人の首を絞めて窒息死させた。乙の殺害につ
いて乙があらかじめ甲に対して承諾していた場合,甲の行為は,いずれの構成要件にも該当せ
ず,犯罪は成立しない。
3.甲は,乙が保険金をだまし取るのに協力する目的で,乙の右手の親指を包丁で切断した。親
指の切断について乙があらかじめ甲に対して承諾していた場合,甲の行為は,傷害罪の構成要
件に該当せず,同罪は成立しない。
4.甲は,11歳の乙の陰部を指で弄ぶなどのわいせつな行為を行った。わいせつな行為をする
ことについて乙があらかじめ甲に対して承諾していた場合,甲の行為は,強制わいせつ罪の構
成要件に該当せず,同罪は成立しない。
5.甲は,妊娠している妻乙と話し合った上,薬物を使用して堕胎させた。堕胎について乙があ
らかじめ甲に対して承諾していた場合,甲の行為は,不同意堕胎罪の構成要件に該当せず,同
罪は成立しない。
〔第9問〕(配点:3)
次の【事例】における甲の罪責に関する後記1から5までの【記述】を判例の立場に従って検討
し,正しいものを2個選びなさい(ただし,事例において,公共の危険は発生したものとする。)。
(解答欄は,[No.17],[No.18]順不同)
【事例】
甲は,乙が所有し単身で居住している木造家屋の玄関前において,同所に駐車中の乙所有の自
動二輪車の車体にガソリンをまいた上,新聞紙にライターで点火し,これを同車に投げ付け,同
車を炎上させたところ,火が上記家屋に燃え移って全焼した。
【記述】
1.火が家屋に燃え移ることを甲が認識・認容していなかった場合,同家屋に対する延焼罪が成
立する。
2.甲は,火が家屋に燃え移ることを認識・認容していたが,同家屋は居住する者のいない空き
家であって同家屋内には誰もいないものと誤信していた場合,他人所有非現住建造物等放火罪
が成立する。
3.火が家屋に燃え移ること及び同家屋に乙が居住していることを甲が認識・認容していた場合
において,甲と乙が,同家屋に掛けられていた火災保険の保険金をだまし取るため,放火する
ことを共謀していたときは,他人所有現住建造物等放火罪が成立する。
4.火が家屋に燃え移ること及び同家屋に乙が居住していることを甲が認識・認容していた場合
において,現実には同家屋内に乙がいたのに,乙は外出中で同家屋内には誰もいないものと甲
が誤信していたときは,現住建造物等放火罪が成立する。
5.甲は,火が家屋に燃え移ることを認識・認容していただけでなく,同家屋内で就寝中の乙が
焼け死ぬことを認識・認容していた場合,現実に乙が焼死したときには,現住建造物等放火罪
と殺人罪が成立し,後者は前者に吸収される。
〔第10問〕(配点:3)実行の着手
次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し,正しい場合には1を,誤っている場合
には2を選びなさい。(解答欄は,アからオの順に[No.19]から[No.23])
ア.甲は,乙を毒殺する目的で毒入り菓子をお歳暮として郵送するため,郵便局の窓口でその菓
子を包んだ小包の郵送を申し込んだが,誤って実際には存在しない住所を宛先として記載した
ために同小包はどこにも配達されずに甲宅に送り返された。この場合,甲には殺人未遂罪が成
立する。[No.19]
イ.甲は,自己が居住する建物に付した火災保険の保険金を保険会社からだまし取る目的で同建
物に放火したが,保険金を請求するに至らなかった。この場合,甲には詐欺未遂罪は成立しな
い。[No.20]
ウ.甲は,乙の住居内に侵入し,タンスの引き出しを開けるなどして金目の物を探したが,見付
けることができないうちに乙に発見された。甲は,逮捕を免れるため,乙に対して包丁を示し
て脅迫し,屋外に逃走したが,通報により駆けつけた警察官に現場付近で逮捕された。この場
合,甲には事後強盗未遂罪が成立する。[No.21]
エ.甲は,勾留状の執行により拘禁されている未決の被告人であったところ,逃走の目的で拘禁
場の換気孔の周辺の壁部分を削り取って損壊したが,いまだ脱出可能な穴を開けるに至らず,
逃走行為自体に及ばないうちに検挙された。この場合,甲には加重逃走未遂罪は成立しない。
[No.22]
オ.甲は,他人が居住する建物に放火することを企て,30分後に発火して導火材を経て同建物
に火が燃え移るように設定した時限発火装置を同建物に設置したが,設定した時刻が到来する
前に発覚して同装置の発火に至らなかった。この場合,甲には現住建造物等放火未遂罪は成立
しない。[No.23]
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# by strafrecht_bt | 2011-07-08 12:20 | 司法試験
2011年 06月 06日

2011年予備試験論文式問題

[刑 法]
以下の事例に基づき,甲の罪責について論じなさい。
1 甲(35歳)は,無職の妻乙(30歳)及び長女丙(3歳)と,郊外の住宅街に建てられた甲 所有の木造2階建て家屋 (以下「 甲宅」 という。) で生活していた。 甲宅の住宅ローンの返済は、会社員であった甲の給与収入によってなされていた。 しかし、甲が勤務先を解雇されたことから甲一家の収入が途絶え,ローンの返済ができず,住宅ローン会社から,甲宅に設定されていた抵当権の実行を通告された。甲は就職活動を行ったが,再就職先を見つけることができなかった。このような状況に将来を悲観した乙は,甲に対して 「生きているのが嫌になった。みんなで一緒に死にましょう。」と繰り返し言うようになったが,甲は,一家3人で心中する決意をすることができず,乙に対して,その都度「もう少し頑張ってみよう。」と答えていた。
2 ある日の夜,甲と丙が就寝した後,乙は、「丙を道連れに先に死のう。」と思い,衣装ダンスの中から甲のネクタイを取り出し,眠っている丙の首に巻き付けた上,絞め付けた。乙は,丙が身動きをしなくなったことから,丙の首を絞め付けるのをやめ,台所に行って果物ナイフを持ち出し,布団の上で自己の腹部に果物ナイフを突き刺し,そのまま横たわった。 甲は,乙のうめき声で目を覚ましたところ,丙の首にネクタイが巻き付けられていて,乙の腹部に果物ナイフが突き刺さっていることに気が付いた。
甲が乙に「どうしたんだ 。」と声を掛けると,乙は,甲に対し、「ごめんなさい。私にはもうこれ以上頑張ることはできなかった。早く楽にして 。」と言った。甲は、「助けを呼べば,乙が丙を殺害したことが発覚してしまう。しかし,このままだと乙が苦しむだけだ。」と考え,乙殺害を決意し,乙の首を両手で絞め付けたところ,乙が動かなくなり,うめき声も出さなくなったことから,乙が死亡したと思い,両手の力を抜いた。
3 その後,甲は、「乙が丙を殺した痕跡や,自分が乙を殺した痕跡を消してしまいたい。家を燃やせば乙や丙の遺体も燃えるので焼死したように装うことができる。」と考え,乙と丙の周囲に灯油をまき,ライターで点火した上,甲宅を離れた。その結果,甲宅は全焼し,焼け跡から乙と丙の遺体が発見された。
4 乙と丙の遺体を司法解剖した結果,両名の遺体の表皮は,熱により損傷を受けていること,乙の腹部の刺創は,主要な臓器や大血管を損傷しておらず,致命傷とはなり得ないこと,乙の死因は,頸部圧迫による窒息死ではなく,頸部圧迫による意識消失状態で多量の一酸化炭素を吸引したことによる一酸化炭素中毒死であること,丙の死因は,頸部圧迫による窒息死であることが判明した。

出題趣旨
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# by strafrecht_bt | 2011-06-06 07:24 | 司法試験予備試験
2007年 07月 01日

刑事法学の動き 足立友子「詐欺罪における欺罔行為について(1)~(5)完」

刑事法学の動き 足立友子「詐欺罪における欺罔行為について(1)~(5)完」
著者 松宮孝明
法律時報 79(8) (通号 985) 号162頁以下
出版社名
日本評論社
発行日
2007-07-01

内容
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# by strafrecht_bt | 2007-07-01 11:49 | 詐欺罪