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2011年 06月 06日

2011年予備試験論文式問題

[刑 法]
以下の事例に基づき,甲の罪責について論じなさい。
1 甲(35歳)は,無職の妻乙(30歳)及び長女丙(3歳)と,郊外の住宅街に建てられた甲 所有の木造2階建て家屋 (以下「 甲宅」 という。) で生活していた。 甲宅の住宅ローンの返済は、会社員であった甲の給与収入によってなされていた。 しかし、甲が勤務先を解雇されたことから甲一家の収入が途絶え,ローンの返済ができず,住宅ローン会社から,甲宅に設定されていた抵当権の実行を通告された。甲は就職活動を行ったが,再就職先を見つけることができなかった。このような状況に将来を悲観した乙は,甲に対して 「生きているのが嫌になった。みんなで一緒に死にましょう。」と繰り返し言うようになったが,甲は,一家3人で心中する決意をすることができず,乙に対して,その都度「もう少し頑張ってみよう。」と答えていた。
2 ある日の夜,甲と丙が就寝した後,乙は、「丙を道連れに先に死のう。」と思い,衣装ダンスの中から甲のネクタイを取り出し,眠っている丙の首に巻き付けた上,絞め付けた。乙は,丙が身動きをしなくなったことから,丙の首を絞め付けるのをやめ,台所に行って果物ナイフを持ち出し,布団の上で自己の腹部に果物ナイフを突き刺し,そのまま横たわった。 甲は,乙のうめき声で目を覚ましたところ,丙の首にネクタイが巻き付けられていて,乙の腹部に果物ナイフが突き刺さっていることに気が付いた。
甲が乙に「どうしたんだ 。」と声を掛けると,乙は,甲に対し、「ごめんなさい。私にはもうこれ以上頑張ることはできなかった。早く楽にして 。」と言った。甲は、「助けを呼べば,乙が丙を殺害したことが発覚してしまう。しかし,このままだと乙が苦しむだけだ。」と考え,乙殺害を決意し,乙の首を両手で絞め付けたところ,乙が動かなくなり,うめき声も出さなくなったことから,乙が死亡したと思い,両手の力を抜いた。
3 その後,甲は、「乙が丙を殺した痕跡や,自分が乙を殺した痕跡を消してしまいたい。家を燃やせば乙や丙の遺体も燃えるので焼死したように装うことができる。」と考え,乙と丙の周囲に灯油をまき,ライターで点火した上,甲宅を離れた。その結果,甲宅は全焼し,焼け跡から乙と丙の遺体が発見された。
4 乙と丙の遺体を司法解剖した結果,両名の遺体の表皮は,熱により損傷を受けていること,乙の腹部の刺創は,主要な臓器や大血管を損傷しておらず,致命傷とはなり得ないこと,乙の死因は,頸部圧迫による窒息死ではなく,頸部圧迫による意識消失状態で多量の一酸化炭素を吸引したことによる一酸化炭素中毒死であること,丙の死因は,頸部圧迫による窒息死であることが判明した。



(出題趣旨)
本問は,甲が,無理心中を図って子丙を殺害した妻乙から乙殺害の嘱託を受け,殺意をもって乙の首を絞め,乙が死亡したものと誤信し,乙及び丙それぞれの殺害に関する証拠を隠滅する目的で犯行現場である甲宅に放火し,甲宅を全焼させるとともに,乙と丙の遺体を焼損させたが,乙の死因は放火による一酸化炭素中毒であったという事案を素材として,事案を的確に分析する能力を問うとともに,行為者の行為の介在と因果関係,事実の錯誤,証拠隠滅罪等に関する理解とその事例への当てはめの適切さを問うものである。

by strafrecht_bt | 2011-06-06 07:24 | 司法試験予備試験


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