2013年 06月 19日
以下の事例(1)-(3)のそれぞれの場合について、甲及び乙の罪責を論じなさい。 甲(49歳)は、インターネット上の掲示板で被害者の女性Vに成りすまし、乗車日時や車両、服装などを記載し、「私に痴漢してくれる人いませんか」と痴漢を呼びかける内容の書き込みをした。これを見た大阪府内の男性乙(26歳)が、掲示板に記載された日時にJR和歌山線粉河―和歌山間を走行中の電車内でVの下半身などを触り、通報により駆けつけた県警警察官に現行犯逮捕された。 (1)乙は書き込みはV本人によってなされたものであり、当該行為に同意しているものと信じていた。 (2)乙はVが同意していないことことに気づいたが.それに関わらず実行行為を行った。 (3)乙が書き込みを信じて列車には乗ったが、本当にVが同意しているかどうか疑問が生じて実行行為は行わなかった。 産経新聞2013.6.15 参考 (1)の場合、同意の錯誤は故意を阻却するか? (2)の場合、間接正犯と教唆の錯誤はどのように考えるべきか?ー>司法試験2013第1問参照 (3)の場合でも甲(間接正犯)の実行の着手はあったといえるか、間接正犯の実行の着手時点はいつか? 解答例 (1) 強制わいせつ罪における同意は構成要件阻却的に作用するので,それに関して錯誤があれば(同意の誤想)過失犯であり、過失の強制わいせつ罪は不可罰である。したがって、乙はこの場合無罪となる。甲は、錯誤に陥った乙を道具として利用した強制わいせつ罪の間接正犯となる。 (2)乙がVの同意がないことに気づいていた場合、乙には強制わいせつ罪が成立するが、甲は(意図していた)間接正犯と(結果として生じた)教唆との間の錯誤に陥っているので、強制わいせつ罪の教唆の罪責を負うかが問題となる。間接正犯の故意には(軽い)教唆の故意が含まれているから、甲には強制わいせつ罪の教唆が成立する。 *(追加問題)因果共犯論からはこの結論が妥当だとする見解がある(山中)が、理論的にそれは必然的か?
by strafrecht_bt
| 2013-06-19 12:37
| 刑法演習
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