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2007年 07月 01日

刑事法学の動き 足立友子「詐欺罪における欺罔行為について(1)~(5)完」

刑事法学の動き 足立友子「詐欺罪における欺罔行為について(1)~(5)完」
著者 松宮孝明
法律時報 79(8) (通号 985) 号162頁以下
出版社名
日本評論社
発行日
2007-07-01




詐欺罪を、嘘をついて財物を交付させたり財産的利益を移転させたりするものとみる単純な把握では、今日の議論の間尺に合わなくなってきている。財産損害要件をめぐる「実質的損害説」の台頭は、このような事情を背景にした現象のひとつである。しかし、問題は、より根本的に、詐欺罪の保護法益が窃盗罪等の奪取罪と同じものか否かというところにある。このように、根本には詐欺罪の保護法益は何かという問題があるということに気づかせたのは、詐欺罪にも「法益関係的錯誤」の基準を適用しようとする見解の台頭である。すなわち、詐欺罪の成立にも、被害者に「法益関係的錯誤」が引き起こされたことを要すると考える場合、次に検討されるべきは、それは被害者を利用した窃盗罪の間接正犯とどのように区別されるのかという問題である。というのも、伝統的な理解のように、窃盗罪も詐欺罪も財産犯罪としては同質であり、その保護法益はー詐欺罪が財産的利益一般をも対象とするという違いはあるがー「財産」という意味で同じであると考えるのであれば、これらの罪の「法益関係的錯誤」も同じであって、そのため、財物の占有移転が「法益関係的錯誤」に陥れられた被害者の手によって行われた場合には、詐欺罪と同時に窃盗罪の間接正犯も成立するという結論になるからである。しかし、詐欺罪は窃盗罪のような「被害者の意思に反する占有移転」ではなく、暇症ある意思によってではあれ、被害者の意思に基づく財産の移転(処分)であるからこそ、独立の構成要件が用意されているのだと考えるべきであろう。したがって、両罪の保護法益は同じだとする前提は採用できないということになる。ゆえに、詐欺罪のーこの言葉が適切か否かは留保すべきであるがー「保護法益」は、窃盗罪とは異なるものとして理解されなければならない。ここで取り上げる論稿は、このように詐欺罪の保護法益が窃盗罪とは異なるものであることを明らかにし、同時に、それは、詐欺罪の固有の要素である「欺罔」を内在化させたものとして理解されなければならないことを示すものとして、わが国の詐欺罪研究の上で画期的なものであると思われる。

by strafrecht_bt | 2007-07-01 11:49 | 詐欺罪


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