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刑法授業補充ブログ

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2013年 12月 28日

【233/234条注釈】信用毀損罪(233条前段)/偽計業務妨害罪(同後段)/威力業務妨害罪(234条)

コアカリキュラム
刑法(条文)
【文献】野澤充「信用毀損罪について」立命館法学345=346号/今村暢好「刑法上の業務妨害罪と軽犯罪法上の業務妨害の罪との関係」松山法学24巻3号/岡田彩「偽計による警察職務の妨害と偽計業務妨害罪の成否―東京高等裁判所平成21年3月12日判決の論理構造と問題点―」立命館法政論集10号(2012年)/稲垣悠一「ネット上の虚偽の犯行予告と警察に対する偽計業務妨害罪」専修法学論集113号(2011年)167-181頁/生田勝義「警察への虚構犯罪通報は偽計業務妨害か?」立命館法学 337号(2011年)/前田雅英「警察官の職務と公務・業務」警察学論集64巻6号(2011年)145頁以下/奥村正雄「権力的公務と偽計業務妨害罪」 研修755号(2011年)3頁以下
第35章 信用及び業務に対する罪

(信用毀損及び業務妨害)
第233条  虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(威力業務妨害)
第234条  威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
(電子計算機損壊等業務妨害)
第234条の2  人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2  前項の罪の未遂は、罰する。

1. 信用毀損罪
(1)客体
(2)行為
 (i)  手段
(ii) 毀損
(3)罪数
2. 偽計業務妨害罪
(1)業務の意義と範囲
(2)業務と公務の関係
判例(山口271 f.)
1 )大判明 42・2・19 刑録15輯120頁
執行裁判所における不動産競売の公務を偽計によって妨害した事案
2 )大判大 4・5・21 刑録21輯663頁 (教育勅語事件)
小学校教員が校長保管の教育勅語謄本等を教室の天井裏に隠匿した事案
3 )大判大 8・4・2 刑録25輯375頁
郵便配達人の職務を暴行により妨害した事案
理由:郵便集配人は公務員ではないからー>判例変更(山口272注2参照)
4 )大判大 10・10・24 刑録27輯643頁
新聞社の創立事業を虚偽の風説を流布して妨害した事案
5) 最大判昭 26・7・18 刑集5巻8号1491頁 (理研小千谷工場生産管理事件)
警察官に対して,スクラムを組み労働歌を高唱する等して気勢をあげた事案
6) 最判昭 35・11・18 刑集14巻13号1713頁 (古河鉱業目尾鉱業所事件)
労働争議に際して旧国鉄職員の貨車運行業務を偽計ないし威力で妨害した事案(民間類似性・非権力性・現業業務性)
7) 最大判昭 41・11・30 刑集20巻9号1076頁 (摩周丸事件)
旧国鉄連絡船運行業務を実力によって妨害した事案
8)京都地判昭 44・8・30 刑月1巻8号841頁
バリケードを築いて通路を閉塞する等して入学試験開始を遷延させた事案
9)東京地判昭 48・9・6 刑月5巻9号1315頁;控訴審: 東京高判昭 50・3・25 刑月7巻3号162頁
衆議院本会議場に乱入し,威力を用いて議事を妨害した事案
10) 最判昭 53・3・3 刑集32巻2号97頁
郵便局内において臨時小包便の搬出等する事務補助員らの前面に立ち塞がる等した事案
11)長崎地判昭 55・8・22 判時1008号208頁
入口に内部から机を積み上げて封鎖する等して議会開催を妨害した事案
12)札幌高判昭 59・5・17 刑月16巻 5・6 号378頁
教職員組合員らが押し合う等して協議会参加者の会場への立入りを妨害した事案
13)千葉地判昭 60・3・19 判タ564号272頁
議場に乱入して喧騒しつつ滞留し,町議会の議事を妨害した事案
14)佐賀地判昭 60・3・19 判タ564号280頁
怒号してシュプレヒコールを繰り返す等して議会の議事進行を中断させた事案
15)京都地判昭 61・5・23 判タ608号137頁 ;控訴審:大阪高判昭 63・9・29 判時1306号138頁
税務調査に向かう国税調査官の車の前に立ちふさがる等して業務を妨害した事案
16 )最決昭 62・3・12 刑集41巻2号140頁 (新潟県議会事件)
新潟県議会総務文教委員会が条例案を採決するのを阻止するため, バリケードを築いて立てこもる等した事案
17)最決平 4・11・27 刑集46巻8号623頁
猫の死骸を消防長室の机の引き出し内に入れて発見させる等した事案
18) 最決平 12・2・17 刑集54巻2号38頁
選挙の受付順位決定くじを引こうとしない等して偽計及び威力を用いて選挙長の立候補届出受理業務を妨害した事案
19)横浜地判平 14・9・5 判タ1140号280頁
海上保安部警備救難当直職員に対して外国人が不法入国した旨の虚偽の犯罪事実を通報し,本来の行政事務,パトロール業務,出動待機業務等の遂行を妨害した事案
20 )最決平 14・9・30 刑集56巻7号395頁
東京都による動く歩道の設置に反対し,バリケードを構築する等した事案
21)東京高判平成21・3・12高刑集62巻1号21頁:犯罪予告の虚偽通報がなければ遂行されたはずの本来の警察の公務は,強制力を付与された権力的なものを含めて,その全体が偽計業務妨害罪にいう「業務」に当たるとされた。
22)大阪高判平 21・10・22 判タ1327号279頁
インターネット掲示板に「6月16日3時にアメリカ村で無差別殺人おこします」等と書き込み,警戒活動を行なわせる等して警察官の正常業務遂行を妨害した事案
「現在の判例によれば,強制力を行使する権力的業務については公務執行妨害罪ののみの適用があるが,その他の公務については、公務執行妨害罪及び業務妨害罪の双方の適用がある」(山口272)
学説
(イ)積極説(西原260、大谷、高山など)
(ロ)消極説(吉川116)
(ハ)身分振分け説:公務員の行う公務は業務に含まれないが,非公務員が行う公務は業務に含まれる(内藤・注釈5巻400)
(ニ)公務振分け説(団藤535、藤木20、中山150)
(ホ)限定積極説(大塚、福田、内田185)
(へ)修正限定積極説(山口、西田)
(ト)交差型振り分け説(山中):強制力を伴う権力的公務(公務)/強制力を伴わない権力的公務(公務・業務〔暴行・脅迫による場合ー>法条競合:95)/民間類似的・現業的公務(業務)
*関連論点:権力的公務の意義
判例:「強制力を行使する権力的公務」(上記16判例)
(3)偽計による業務妨害
手段=1.(2)(i)
判例
学説
(4)威力による業務妨害
(i) 威力の意義
(ii) 事例
(5)労働争議との関係(中山496 f.)



高山佳奈子「公職選挙法上の選挙長の立候補届出受理事務と業務妨害罪にいう「業務」--最二小決平成12.2.17」〔刑事判例研究(47)〕ジュリスト 1203号(2001年)141-144頁
本田稔「判批」法学セミナー664号(2010年)135頁,田山聡美「判批」刑事法ジャーナル20号(2010年)73頁以下,山﨑耕史「判批」警察学論集63巻
未公刊判例(岡田122 ff.による)
1)東京地判平 11・12・10(公刊物未登載)
内容虚偽の火災又は救急通報を行い,正常業務の遂行を妨害した事案で,消防法の「規定に反したものに対しては,いずれも罰則を科すことにより間接的に義務履行を図っているにすぎず,直接強制を許す
規定はないこと,消防部隊及び救急隊の出動活動は,それ自体強制力を行使する権力的公務とは考え難いこと等にかんがみれば,本件で妨害の対象とされた業務は刑法233条の業務に該当する」とし,偽計業務妨害罪の成立を認めた。
2)東京地判平 12・11・16(公刊物未登載)
ホームページを閲覧した者が爆弾様の印をクリックすると自動的に110番通報されるシステムを設定し,警察の通信指令業務を妨害したという事案で,偽計業務妨害罪の成立を認めた。
3)名古屋簡判平 16・4・28(公刊物未登載)
虚偽の自動車盗難被害届を提出し,自動車警ら隊員等の本来の機動警ら業務,事案発生に備えた出動待機業務,相談受付業務等各種業務の遂行を妨害した事案で,偽計業務妨害罪の成立を認めた。

by strafrecht_bt | 2013-12-28 09:26 | 刑法注釈


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