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2016年 10月 29日

法と環境5:環境法の歴史(5)

1 環境法の歴史:地球・国際環境問題の発生
(1)地球環境の悪化(1980年代中頃~):オゾン層の破壊/温室効果ガスの増加→地球温暖化/森林減少→ブルントラント委員会「持続可能な開発」の提唱(1987年)/アルシュ・サミット(1989年)経済宣言等
持続可能な社会
(2)国際環境問題
①日本企業の海外進出によるもの/②日本国内における資源の輸入と大量消費/③ODAによる環境破壊型開発/④廃棄物の越境移動/⑤長距離越境汚染(PM2.5等)
(3)リオデジャネイロ宣言:「環境と開発に関する国際会議」(1992年)
「アジェンダ21」→①「気候変動枠組条約」(→1997年:京都議定書)/②「生物多様性条約」/③森林原則声明等
【キーワード】 *ブルントラント委員会=「環境と開発に関する世界委員会」(WCED=World Commission on Environment and Development)/*Gro Harlem Brundtland(1939 -写真)/*アルシュ・サミット/*環境と開発に関するリオ宣言(Rio Declaration on Environment and Development)
2 環境法の歴史:環境基本法体系の成立(1)
(1)環境基本法の制定
・「リサイクル法」の制定(1991年)→環境基本法制定へ
・「環境基本法」の制定(1993年)
・・「環境基本法」の内容
目的:「この法律は、環境の保全について、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、環境の保全に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とする。」(1条)
環境保全の基本理念:
環境の恵沢の享受と継承(3条)
環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築等(4条)
国際的協調による地球環境保全の積極的推進(5条)
→環境基本計画(15条)

環境権
現代社会は、科学技術の進歩などによって急激に変化し、従来、考えられていなかった新しい「人権」が生まれています。プライバシーを守る権利は、他人によって個人の私生活がみだりに公開されない権利です。尊厳死や安楽死など、自分自身の意思で生き方を決める自己決定権。国民が国や地方公共団体に情報の公開を求めることのできる知る権利。健康で快適な環境の中で生活する権利、環境権も主張されるようになりました。環境権を少し詳しく見て見ましょう。戦後の高度経済成長期、水俣病やイタイイタイ病などの公害病が発生し、大気汚染や騒音も問題になりました。環境権を求める声は、そうした公害防止運動の中で広がりました。そして、1993年には環境基本法が制定され、97年には、大規模な工事を行う際、環境におよぼす影響調査を義務付けた環境アセスメント法が制定されました。このように、新しい人権を守るための法律が少しずつ整備されています。

京都議定書
1997年、京都市で「地球温暖化防止京都会議」開かれ、二酸化炭素の削減目標について話し合いが持たれました。そして、2008年から2012年までの間に、二酸化炭素の排出量を、1990年を基準に、全体として5%削減することを決め、京都議定書として採択しました。京都議定書には国ごとの目標もあります。日本の削減目標は6%。アメリカは7%。EUは8%です。しかし、アメリカは京都議定書の目標は実情に合わないとして2001年、離脱を表明しました。日本は2002年国会で批准し排出量の削減に向けて動き出しています。京都議定書にはCDM・クリーン開発メカニズムという規約も織り込まれています。これは、削減義務のない開発途上国の温暖化対策に協力すればその分を自国の削減量に加えてもいいというものです。日本は国内での削減努力を進める一方でCDMにも力を入れています。

・環境影響評価法(1997年)→環境アセスメント
高度経済成長期、日本では、公害や環境破壊が深刻化し、良好な生活環境を求める権利・環境権が提唱されるようになりました。1997年、環境影響評価法が制定され、国や企業が大規模開発を行う際には、事前に環境への影響を調査し、地域住民に説明した上で環境保全の対策をとることが義務付けられました。こうした環境影響評価を環境アセスメントといいます。そのため環境影響評価法は環境アセスメント法とも呼ばれています。環境アセスメントの対象になるのは道路の新設、河川の改修やダムの新築、鉄道の建設、空港整備、発電所の設置や廃棄物処理場の建設、都市の基盤整備事業など、環境に影響を与える大規模な事業です。

3 環境法の歴史:環境基本法体系の成立(2)
環境法の整備と環境基本計画の策定
 「環境基本計画」の策定(1994年)と改訂
第1次環境基本計画
第2次環境基本計画(2000年)
第3次環境基本計画(2006年)
第4次環境基本計画(2012年):
重点課題:①経済・社会のグリーン化とグリーン・イノベーションの推進、②国際情勢に的確に対応した戦略的取組の推進、③持続可能な社会を実現するための地域づくり・人づくり、基盤整備の推進、④地球温暖化に関する取組、⑤生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する取組、⑥物質循環の確保と循環型社会の構築のための取組、⑦水環境保全に関する取組、⑧大気環境保全に関する取組、⑨包括的な化学物質対策の確立と推進のための取組
+東日本大震災からの復旧・復興に際して環境の面から配慮すべき事項/放射性物質による環境汚染からの回復等
「環境影響評価法」の制定(1997年)
廃棄物処理法の強化とリサイクリング諸法(容器包装リサイクリング法[1995年]等)の制定
化学物質による環境汚染の対策・土壌汚染対策のための法律の制定

4 環境法の歴史:福島原発事故とその対応
竹下論文「予防原則と緊急事態(例外状態)―福島原発事故に即した法哲学的一考察」
1.はじめに
地震(M.9.0)⇒津波(最高40メートル)⇒福島原発事故
「想定外の出来事」=緊急・例外状態
予防原則(Vorsorgeprinzip)が日本法の原則となっているか?
原因者負担原則(ドイツ法):法原則(原因者主義原則)⇒費用負担に限定されない広範な義務・責任(入門159頁)*「原因者の性質」
≒汚染者支払原則(フランス法):経済的原則
予防原則⇔原因者負担原則-両者の関係
   事前的⇔事後的
*汚染者支払原則(Polluter-Pays-Principle=PPP)
2.環境法の領域における予防原則
*リオ宣言15原則
「被害のおそれ」⇔「完全な科学的確実性の欠如」
 比較衡量
*「疫学的因果関係」
*予防原則
先進国では既に採用⇔日本
環境基本法4条
生物多様性基本法3条3項
着手前の「予防的な取組方法」⇔着手後「順応的な取組方法」
生物多様性基本法
(基本原則)
第三条  生物の多様性の保全は、健全で恵み豊かな自然の維持が生物の多様性の保全に欠くことのできないものであることにかんがみ、野生生物の種の保存等が図られるとともに、多様な自然環境が地域の自然的社会的条件に応じて保全されることを旨として行われなければならない。
2  生物の多様性の利用は、社会経済活動の変化に伴い生物の多様性が損なわれてきたこと及び自然資源の利用により国内外の生物の多様性に影響を及ぼすおそれがあることを踏まえ、生物の多様性に及ぼす影響が回避され又は最小となるよう、国土及び自然資源を持続可能な方法で利用することを旨として行われなければならない。
3  生物の多様性の保全及び持続可能な利用は、生物の多様性が微妙な均衡を保つことによって成り立っており、科学的に解明されていない事象が多いこと及び一度損なわれた生物の多様性を再生することが困難であることにかんがみ、科学的知見の充実に努めつつ生物の多様性を保全する予防的な取組方法及び事業等の着手後においても生物の多様性の状況を監視し、その監視の結果に科学的な評価を加え、これを当該事業等に反映させる順応的な取組方法により対応することを旨として行われなければならない。
4  生物の多様性の保全及び持続可能な利用は、生物の多様性から長期的かつ継続的に多くの利益がもたらされることにかんがみ、長期的な観点から生態系等の保全及び再生に努めることを旨として行われなければならない。
5  生物の多様性の保全及び持続可能な利用は、地球温暖化が生物の多様性に深刻な影響を及ぼすおそれがあるとともに、生物の多様性の保全及び持続可能な利用は地球温暖化の防止等に資するとの認識の下に行われなければならない。

3.原子力発電に関わる現行法
原子力基本法(1955年)
原子炉等規制法(1957年):平和利用
電気事業法(1964年)⇒施行規則
災害対策基本法(1961年)9章災害緊急事態
*東海村JCO臨界事故
原子力災害対策特別措置法(1999年)
原子力緊急事態宣言⇒原子力災害対策本部
原子力事業者の予防義務
原子力損害賠償法(1962年):改正
*東海村JCO臨界事故
1999年9月30日に、茨城県那珂郡東海村に所在する住友金属鉱山の子会社の核燃料加工施設、株式会社ジェー・シー・オー(以下「JCO」)が起こした原子力事故(臨界事故)である。日本国内で初めて、事故被曝による死亡者を出した。
日本原子力史上初の刑事責任
この事故では、同時に会社側の刑事責任も問われた。事故から約1年後の2000年10月16日には茨城労働局・水戸労働基準監督署がJCOと同社東海事業所所長を労働安全衛生法違反容疑で書類送検、翌11月1日には水戸地検が所長の他、同社製造部長、計画グループ長、製造グループ職場長、計画グループ主任、製造部製造グループスペシャルクルー班副長、その他製造グループ副長の6名を業務上過失致死罪、法人としてのJCOと所長を原子炉等規制法違反及び労働安全衛生法違反罪でそれぞれ起訴した。 2003年3月3日、水戸地裁は被告企業としてのJCOに罰金刑、被告人6名に対し執行猶予付きの有罪判決を下した。

4.(福島原発)事故の概観
2011年3月11日:東日本大震災
地震⇒津波⇒福島第一原発事故
*福島第一原発
事故の経過
3/11:15:27(14メートルの津波)
3/12午後:メルトダウン⇒水素爆発(15:36)
3/13:2時ごろ3号機も冷却不能に
3/14:11:01・3号機水素爆発/2号機冷却システム消失
3/15:06:10・4号機水素爆発

5.予防的措置に関わる事実的経過
地震⇒津波⇒福島第一原発事故
「想定外の出来事」?⇒法的意義
原子力損害賠償法3条但書の「異常に巨大な天災地変」
「予防的措置」⇒どのように不足していたか?
事故の原因・回避に関する3つの事実
(1)ベント(排気)
(2)冷却水
(3)津波
耐震指針⇒2006年改定「残余のリスク」
*「残余のリスク」(残存リスク)
①異常な出来事の位置づけ/②確率理論による評価
*原子力損害の賠償に関する法律
(無過失責任、責任の集中等)
第3条  原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。
2  前項の場合において、その損害が原子力事業者間の核燃料物質等の運搬により生じたものであるときは、当該原子力事業者間に特約がない限り、当該核燃料物質等の発送人である原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。

*原子力災害対策特別措置法
(原子力事業者の責務)
第3条  原子力事業者は、この法律又は関係法律の規定に基づき、原子力災害の発生の防止に関し万全の措置を講ずるとともに、原子力災害(原子力災害が生ずる蓋然性を含む。)の拡大の防止及び原子力災害の復旧に関し、誠意をもって必要な措置を講ずる責務を有する。

沸騰水型原子炉圧力容器及び再循環回路の詳細図
1.原子炉本体 2.コンクリート遮蔽プラグ 3.設備プール 4.ドライウェルヘッド 5.使用済み核燃料プール 6.燃料充填空洞 7.ドライウェルフランジ 8.原子炉圧力容器 9.生物シールド 10.第二コンクリート遮蔽壁 11.立鋼ドライウェル 12.ビーム 13.コンクリート埋込部 14.ジェットノズル 15.拡張ベローズ 16.ベントヘッダー 17.排水管 18.水(ウェットウェル) 19.シェル接合領域 20.土台基盤 21.原子炉建屋(側壁) 22.プラットフォーム 23.バルクヘッド 24.減圧室 25.ベントバルブ 26.クレーン 27.使用済み核燃料 28.冷却液パイプ 29.冷水パイプ(発電機から) 30.蒸気パイプ(発電機へ) 31.制御棒作動装置 39.制御棒 40.スチームセパレーター 41.スチームドライヤー ⇒ ドライウェル (11.) 、ウェットウェル (18.) は原子炉格納容器冷却設備、原子炉格納容器および原子炉格納容器冷却方法に大きく関連。


6.むすび―法原理としての予防原則の実効性
「予防的措置」が不足していたのではないか?
事故の原因・回避に関する3つの事実(ベント/冷却水/津波)
予防原則:科学的因果関係⇒確率論に依拠した拡大
原子力事業者の義務規定
「残余のリスク」→津波には導入されず
ベント・冷却水注入に関する行政的混乱⇒行政制度の整備への予防原則の適用
*「フクシマの嘘」(ZDFの番組)



*地球環境問題
1 変わり始めた“奇跡の星”:地球は“奇跡の星”といわれます。地球を包む大気が地表の温度を一定に保ち、宇宙から来る有害な光を防いでいます。水に恵まれ、植物や動物などさまざまな命を育んできました。その地球が変わり始めています。北極や南極の氷が融け出しています。海水面が上昇し、標高の低い島や河口に海水が浸入してくるおそれも出ています。異常気象が増えています。日本では集中豪雨の回数が、過去20年に比べ、2倍になりました。
2 熱帯林の減少、砂漠化:地球環境に影響を与えているのが、人間の営みです。アマゾンや東南アジアに広がる熱帯林は、地球上の陸地面積の16%を占めていました。ところが、1975年ごろまでにその42%が伐採され、1万種類もの生物が絶滅したといわれています。熱帯林の減少と並ぶ大きな問題は、砂漠化です。過度な開発や放牧、伐採などに加え、異常気象により、猛烈な勢いで砂漠化が進んでいるのです。これまで住んでいた場所では生活できなくなり、環境難民になってしまう人が増えています。国連の専門機関UNESCO(ユネスコ)は、将来、地球の3分の1が砂漠化するのではないかと予測しています。
3 化学物質によるオゾン層の破壊:地球上の生物は、大気中のオゾン層によって太陽の強烈な紫外線から守られています。ところが、人工衛星のデータから作ったオゾンの分布図を見ると、1970年代からオゾン層が破壊され、巨大な穴があき始めました。「オゾンホール」と呼ばれます。スプレーなどに使われていたフロンなどの化学物質が、オゾン層を破壊したのです。オゾン層が破壊されると、有害な紫外線が入ってきます。そのため、植物や生物の発育が妨げられ、人間も皮膚がんなどを発症する危険性が高まります。
4 温室効果ガスによる地球温暖化:地球環境の悪化のなかでも最も懸念されているのが、地球温暖化です。国際的な専門家でつくる「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、2007年、地球温暖化に関する報告書を発表しました。これによると、地球の気温は、1900年代後半に比べ、100年後には最高で6.4℃も上昇すると予測されています。原因は、私たちが作り出しています。大気中に放出した二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスが、地球から放出される熱を再び地球に戻し、地球の温度を高くしてしまうのです。
5 地球温暖化がもたらす影響:地球温暖化は、私たちの生活にさまざまな影響を与えます。気象が不安定になり、豪雨や猛暑が増えると考えられます。乾燥地帯では砂漠化が進みます。気温の変化によって生態系が変わり、絶滅する生物や異常発生する生物が増えます。また、熱中症、感染症などの増加も懸念されています。
6 国連史上最大の会議“地球サミット”:地球環境へ世界の関心が高まるなか、1992年、ブラジルのリオデジャネイロで「環境と開発に関する国際連合会議」が開かれました。“地球サミット”と呼ばれます。会議には政府首脳のほか、世界のNGOなどが参加。4万人が集う国連史上最大の会議になりました。この会議にカナダから参加した12歳の少女、セヴァン・スズキのスピーチが、参加者に感動を与えました。『太陽のもとに出るのが私はこわい。オゾン層に穴があいたから。…こんな大変なことがものすごい勢いで起きているのに、私たち人間はまだまだ余裕があるような顔をしています…
7 “持続可能な開発”に取り組む:…でも大人にも知ってほしいんです。よい解決法なんてないってことを。オゾン層にあいた穴をどうやってふさぐのか、あなたは知らないでしょう。死んだ川にどうやってサケを呼びもどすのか、あなたは知らないでしょう。絶滅した動物をどうやって生き返らせるのか、あなたは知らないでしょう。砂漠となってしまった場所に森をよみがえらせることはできないでしょう。どうやって直すのかわからないものをこわしつづけるのはもうやめてください』。――会議では先進国と発展途上国の利害が鋭く対立しましたが、各国が協力し合い、“持続可能な開発”に取り組むことを確認しました。
8 「京都議定書」の締結:地球サミットを受け、1997年、日本の京都で、CO2などの温室効果ガス削減をめざす国際会議が開かれました。「地球温暖化防止京都会議」です。この会議の成果は、先進国が温室効果ガス排出の削減目標値を設定したことです。これを「京都議定書」といいます。京都議定書締結を機に、多くの先進国が温室効果ガス削減に向けて踏み出すようになりました。
9 「低炭素社会」の実現へ:世界各地で、大規模な太陽光発電、風力発電など、自然エネルギーの実用化が進みました。日本は、自然エネルギーの導入とともに、技術力を生かした「低炭素社会」実現に取り組んでいます。なかでも注目されるのが「トップランナー方式」です。トップランナー方式は、自動車や冷蔵庫などのメーカーが、最もエネルギー消費量の少ない製品を発売すると、他社にはそれより省エネ基準の高い製品の開発が義務付けられます。科学技術を生かし、日本はエネルギー消費量の少ない製品の開発を続けているのです。
10 地球環境に配慮した社会へ:20世紀、先進国は地球の資源を大量に消費し、環境を破壊してきました。そして今、私たち一人ひとりが、地球環境に配慮した社会に向けて、歩み始めています。

  *セヴァン・カリス=スズキ(Severn Cullis-Suzuki、1979年11月30日- )は、カナダの環境問題活動家、講演者、テレビホストで著述家。→写真(2007年)
*ブルンプラント委員会=1984年国連に設置された「環境と開発に関する世界委員会」(WCED=World Commission on Environment and Development):委員長が後にノルウェーの首相となったブルントラントであったことから、その名前をとってブルントラント委員会と呼ばれた。この委員会は委員個人の自由な立場で討議を行ういわゆる「賢人会議」として、21人の世界的な有識者により構成された。設置の経緯は、1982年に開催された国連環境計画(UNEP)管理理事会特別会合(ナイロビ会議)において、日本政府が特別委員会(21世紀における地球環境の理想の模索と、その実現に向けた戦略策定を任務とする)の設置を提案し、これを受けて、国連総会で承認されたもの。1987年までの約4年間で合計8回の会合が開かれ、その後にまとめられた報告書"Our Common Future"(邦題『地球の未来を守るために』)では、環境保全と開発の関係について「将来世代のニーズを損なうことなく現在の世代のニーズを満たすこと」という「持続可能な開発」の概念を打ち出した。この概念はその後の地球環境保全のための取組の重要な道しるべとなった。
  *Gro Harlem Brundtland:1939年4月20日 - :ノルウェー・バールム生まれの医師(小児科医)、政治家。世界保健機関(WHO)事務局長、ノルウェー首相を歴任。ノルウェー労働党党員。→写真(2011年)
*アルシュ・サミット=第15回先進国首脳会議
1989年7月14日から16日まで、フランスのパリ郊外で開催された先進国首脳会議。会場がラ・デファンス地区のグランダルシュだったため、「アルシュ・サミット」「グラン・アルシュ・サミット」「Summit of the Arch」「(le) Sommet de l'Arche」とも呼ばれる。
→(写真)超高層ビル群があるのがラ・デファンス地区。写真中央のグランダルシュにて開催。
* 環境と開発に関するリオ宣言(Rio Declaration on Environment and Development)
1992年にブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された環境と開発に関する国際連合会議(UNCED)において合意された27原則から成る宣言。UNCEDではこれを実践するための行動計画「アジェンダ21」の他、「森林原則声明」、2つの国際条約「気候変動枠組条約」「生物多様性条約」、併せて5つの文書が国際的に合意された
*環境権
新しい人権としての「環境権」:「健康で快適な生活を維持する条件としての良い環境を享受し、これを支配する権利(芦部・憲法6版272頁)⇒自由権的側面/社会権的側面
提唱当時、環境権は「環境を破壊から守るために、われわれには、環境を支配し、良き環境を享受する権利があり、みだりに環境を汚染し、われわれの快適な生活を妨げ、あるいは妨げようとしている者に対しては、この権利にもとづき、民事訴訟によって妨害の排除または予防を請求しうる」とされていた。人格権を基礎とする主張では、救済のタイミングが遅くなると考えられたからである。その後の憲法学説においても、「良好な環境を享受する権利」などとされ、抽象的権利としては認知されている。(北村・環境法48頁、126頁、210頁、277頁、283頁)
→国立市大学通りマンション事件最高裁判決(最判平成18年3月30日判タ1209号87頁)は、「景観利益」という概念を法的に認めつつも請求自体は棄却した。なぜだろうか。人格権および環境権と比較しつつ考えてみよう。
*持続可能な発展 (sustainable development)
「将来の世代が自らのニーズを満たそうとする能力を損なうことなく現在の世代のニーズを満たすような発展」を「持続可能な発展」という。1980年代から、国際的文書や条約のなかでしばしば明記されるようになった。環境基本法4条においても、「持続的に発展することができる社会が構築されること」が、環境法政策の基本的考え方であると規定きれ、公害対策基本法からのパラダイム転換がされたと評されている。「持続(sustainability)」という思想は、生物多様性基本法や海洋基本法などにも規定されている。(北村44頁、274頁、547頁、557頁)
*環境リスク
「環境リスク」とは、「人為的環境負荷が環境を介して生命・健康・生態系に支障を及ぼす可能性」である。その程度は、「支障の大きさ」と「その確率」をかけあわせたものとして認識される。発生確率に関する科学的知見が不確実であれば、リスクの算出ができない点に注意を要する。この事象への対応にあたっては、「どのタイミングで」「誰に対して」「どの程度の措置を」講ずべきかが、法政策的には問題になる。環境リスク問題に対して対応せざるをえない環境法は、「環境リスク管理法」の側面を強く持つことになる。(北村5頁、70頁、80頁、270頁)
*未然防止アプローチ (preventive approach)
事後対応アプローチが招いた人身被害や環境被害の反省に立って、対応のタイミングをより前倒しすべきというのが、未然防止アプローチのエッセンスである。現代環境法の根幹的アプローチであり、環境基本法4条がその趣旨を規定する。人身被害や環境影響という事実を待つことなく、その発生を未然に防止すべく行動すべきとされる。もっとも、この場合においても、原因行為とそれによる望ましくない結果の間の因果関係については、科学的知見がそれなりには存在していなければならない。(北村70頁、275頁、340頁、375頁、396頁)
*予防アプローチ (precautionary approach)
「深刻あるいは不可逆的被害のおそれがある場合には、十分な科学的確実性がないことをもって、環境悪化を防止するための費用対効果の大きな対策を延期する理由として用いてはならない」というのが、予防アプローチの考え方である。①被害の深刻性・不可逆性、②因果関係についての科学的知見の不備、がポイントになる。「少量、広域、不特定、長期、複合、不確実」という現代環境法が対処すべき現象の特徴に鑑みれば、このアプローチにもとづいた法政策を構築する必要性はますます高まっている。(北村73頁、81頁、140頁、275頁、391頁、547頁)
両アプローチの対比(北村76頁)
環境法(政策)の基本原理
環境権
環境法の目標:調和条項から「持続可能な発展」へ/環境公益の実現
環境リスク管理のあり方
事後対応アプローチ
未然防止アプローチ
予防アプローチ
*汚染者支払原則
「環境負荷の対策費用や劣化させられた環境資源の原状回復費用は、その原因行為者が支払うべき」というのが、汚染者支払原則(Polluter-Pays-Principle,PPP)である。政策的には、経済開発協力機構(OECD)において国際的に合意されたものであり、それが1970年代の日本に紹介されて、公害被害者に対する加害者の責任論をも包含する概念となった。しかし、エッセンスは、外部性を内部化させるための原因者の負担にあり、人的被害があるかどうかには直接的には関係がない。費用支払いの義務づけにより、それを回避しようとする行動選択をすることが期待されている。(北村23頁、57頁、260頁、447頁、453頁、500頁)
(1) 環境基本計画のなかでPPPに触れている部分を確認し、どのような法政策として具体化できるかを考えてみよう。
(2) 産業廃棄物の発生者は自ら処理をすることが原則であるのに(廃棄物処理法11条1項)、委託処理が認められているのは(同12条5項)、PPPに反するのではないか。
(3) PPPを硬直的に適用すれば、実行者は存在するが所在が不明の産業廃棄物不法投棄の原状回復に公費を投入するのは適切ではないことになる。どのように考えればよいのだろうか。
*フクシマの嘘→ドイツZDFの報道 ・フクシマの嘘① フクシマの嘘②オリジナル版(ZDF)
世界的規模の汚染

by strafrecht_bt | 2016-10-29 13:05 | 環境刑法


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