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2016年 11月 07日

法と環境7:環境倫理学(1)

環境倫理学
法と環境
環境倫理と環境(刑)法
前回の復習
福島第一原発事故に関する竹下論文の検討
原子力政策への予防原則の適用
予防原則への批判:特にサンスティンの議論【今回補充】
最近のニュースから(3)
水俣病犠牲者の慰霊式(5/1)
川内原発「仮処分却下の取り消しを」(NHKニュース5/6)
エネルギーリミックス案への批判(東洋経済オンライン5/9)
アメリカを中心に発展
環境倫理学の3つの柱(加藤尚武)
① 地球全体主義
「地球の生態系は開いた宇宙ではなく閉じた世界である。この閉じた世界では、利用可能な物質とエネルギーの総量は有限である。そのなかで生存可能性の保証に優先権が有る。しかも、次の世代に選択の形だけを与えるのではなく、現実の選択可能性を保証しなくてはならない。すると、この原則を守るために、他の価値を犠牲にしなければならなくなる。配分の問題が正義にとって根本の問題となる。」
② 世代間倫理
「現在世代は、未来世代の生存可能性に対して責任がある。」
③ 自然の生存権
「人間だけでなく、生物の種、生態系、景観などにも生存権があるので、かってにそれを否定してはならない。」
参考文献
人間中心主義批判
環境ファシズム(environmental fascism)
エコテロリズム(ecoterrorism)



*予防原則への批判:特にサンスティンの議論:サンスティンの提案に従うならば、政府は環境リスクを合理的にマネジメントするために強い予防原則ではなく簡便法的な(heuristic)CBAに依拠することが求められる。たとえば、科学的な証拠が 不十分な環境リスクの規制が問題となるとき、簡便法的CBAは政府に次のような取り組みを要求する。まず、規制の利益と不利益をできるかぎり定量化する。これができない場合は明確な質的表現を与える。次に、これらの情報を人々に提供し、彼ら自身が自らの認知的な限界を克服しうるように、教育的な支援をおこなう。これらをふまえて人々のあいだで十分な熟慮と討議が行われ、その過程で具体的な政策を支持する合理的な理由が明らかにされ、最終的に合意に至ることができれば、それにもとづいて政策を実施する。以上が、強い予防原則に批判的な立場が推奨すると思われる環境リスクの合理的なマネジメント方法の一つと考えられる。
【人物】*Cass R. Sunstein(1954-)
Cass R. Sunstein, Laws of fear: beyond the precautionary principle, Cambridge University Press, 2005(角松生史・内野美穂監訳、神戸大学ELSプログラム訳『恐怖の法則―予防原則を超えて』勁草書房、2015年):費用便益分析
*加藤 尚武(1937 -):
日本の哲学者、ヘーゲル研究者、東京大学特任教授。京都大学名誉教授、公立鳥取環境大学名誉学長(初代学長)、人間総合科学大学教授。東京出身。1979年哲学奨励山崎賞受賞。1980年代に〈バイオエシックス、生命倫理学〉を、日本に導入した。また近年は環境倫理についても積極的に発言を行っている。
*地球全体主義:地球の自然⇒生態系(エコシステム)⇒バランス喪失⇒すべての生物の生存の危機
「地球の生態系は開いた宇宙ではなく閉じた世界である。この閉じた世界では、利用可能な物質とエネルギーの総量は有限である。そのなかで生存可能性の保証に優先権が有る。しかも、次の世代に選択の形だけを与えるのではなく、現実の選択可能性を保証しなくてはならない。すると、この原則を守るために、他の価値を犠牲にしなければならなくなる。配分の問題が正義にとって根本の問題となる。」
【用語】*費用便益分析(CBA=cost benefit analysis【コストベネフィット分析】)あるプロジェクトにかかる費用とそこから得られる便益を比較して、そのプロジェクトを評価する手法。
【文献】松王政浩「予防原則に合理的根拠はあるのか」 21世紀倫理創成研究 = Journal of Innovative Ethics, 1: 109-128(2008)
高津融男「予防原則は政策の指針として役立たないのか?」京都女子大学現代社会研究第7号(2004年)163頁以下【要旨】 本稿の中心的な問いは「予防原則は政策の指針として役立たないのか」である。この問いを明らかにするために、予防原則に批判的な立場からの主張を検討する。予防原則批判の特徴は、 まずこの原則の定義を弱い理解と強い理解に還元し、それ以外の定義はすべて予防原則ではなく他の修正原理として位置づける点にある。その上で、予防原則を支持することは、今日広く受け入れられている弱い予防原則の主張か、そうでなければ極端な内容をもつ強い予防原則の主張かのいずれかになるとして後者の徹底的な批判が展開される。このような予防原則に批判的な議論によれば、この原則が人々の広範な支持をえているのは、人々のリスク認知の限界によるものである。この認知的な限界を克服するものとして提案されるのが、CBA(費用便益分析)の簡便法的な利用である。しかし、このアプローチが主要な目標とするのは環境リスクの適切な制御ではなく、むしろ環境リスクに関する社会的合意の形成にある。この合意を形成するために、人々は規制政策の利益と費用の定量化された情報に注目させられ、どのような社会に生きたいのか、あるいは新技術の導入は人々をリスクにさらすだけの価値があるのか、といった問いは排除される。予防原則の支持者が重視するのは後者のような問いであり、環境リスク政策の根底にすえられるべきものである。予防原則は、科学的なフレーミングの不断の更新や社会の在り方や人々の生き方に関する継続的な議論を導くものである。そうした継続的な活動によって環境リスク政策の信頼性と正当性が確保されうるのである。 【キーワード】環境リスク、予防原則、ヒューリスティック(あるいは簡便法)、費用便益分析 (CBA)
【ニュース】
*水俣病犠牲者慰霊式で黙とうする胎児性患者ら=1日午後、水俣湾埋め立て地(熊本日々新聞5月1日)
*水俣病公式確認から59年 きょう犠牲者の慰霊式(朝日新聞)2015年5月1日「水俣病の公式確認から59年を迎えた1日午後、熊本県水俣市で水俣病犠牲者の慰霊式が営まれる。患者や遺族、原因企業チッソ、望月義夫環境相をはじめ行政関係者ら計約800人が出席する。水俣病問題では今も多くの人が患者認定を求めているが熊本県の認定審査は滞っており、損害賠償を求める訴訟も続く。解決にはほど遠い状況だ。 水俣病の認定患者は2277人(うち死者1856人)。今も患者認定を求める人は3月末現在、熊本、鹿児島両県で1555人にのぼり、1年間で700人以上増えた。 認定について、国の認定基準では複数の症状の組み合わせが必要とされてきたが、最高裁は2013年4月、手足の感覚障害だけでも認定できると判断。その後、熊本県が認定申請を棄却した男性について、国の公害健康被害補償不服審査会が「認定相当」とする逆転裁決を出したことなどから、同県は「責任ある認定業務をできない」として、法定受託事務として行ってきた審査の返上を宣言した。 このため環境省は基準の運用に関する新指針を通知し、昨年4月、国が認定業務をする臨時水俣病認定審査会(臨水審)を12年ぶりに再開。1年間で処分が出た12人はすべて棄却され、うち4人は環境相に異議を申し立てた。 臨水審の審議を受けて鹿児島県は審査を再開した。熊本県は国の不服審査会の今後の裁決内容も検討するとして、2年以上、審査を休止したままだ。また、12年7月末で申請が締め切られた水俣病被害者救済法(特措法)による救済策では、国は水俣病の最終解決を目指したが、救済対象から漏れた千人を超す人たちが国などに損害賠償を求める訴訟を起こして争っている。」
川内原発「仮処分却下の取り消しを」:「鹿児島県の川内原子力発電所1号機と2号機を再稼働させないよう求める住民が申し立てた仮処分の手続きで、先月、鹿児島地方裁判所が、申し立てを退けたことを不服として、住民側は、6日、福岡高等裁判所宮崎支部に抗告しました。鹿児島県にある九州電力・川内原発1号機と2号機は、原子力規制委員会から新しい規制基準に適合していると認められ、全国の原発で、最も早く再稼働の手続きが進んでいます。再稼働に反対する鹿児島県、熊本県、宮崎県の住民12人が申し立てた仮処分の手続きで、鹿児島地方裁判所は、先月、「国の新しい規制基準に不合理な点は認められない」などとして、申し立てを退ける決定を出しました。これについて住民側は、「福島第一原発の事故を直視せず、新しい規制基準の合理性について、何の判断もせずに行政の判断を追認した不当な決定だ」として、6日、福岡高等裁判所宮崎支部に抗告しました。住民側は、今後、地震に対する安全性や火山の巨大噴火のリスクについて、専門家の見解などをまとめ、新たな証拠として提出したいとしています。住民側の弁護団の白鳥努弁護士は「鹿児島地裁は、大事な部分について判断を避けた。高裁には、正面から向き合ってほしい」と話しています。原発の再稼働を巡っては、福井県の高浜原発3号機と4号機について、先月、福井地方裁判所が再稼働を認めない仮処分の決定を出し、関西電力が異議を申し立てています。」

by strafrecht_bt | 2016-11-07 13:38 | 環境刑法


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