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2016年 10月 29日 ( 1 )


2016年 10月 29日

法と環境5:環境法の歴史(5)

1 環境法の歴史:地球・国際環境問題の発生
(1)地球環境の悪化(1980年代中頃~):オゾン層の破壊/温室効果ガスの増加→地球温暖化/森林減少→ブルントラント委員会「持続可能な開発」の提唱(1987年)/アルシュ・サミット(1989年)経済宣言等
持続可能な社会
(2)国際環境問題
①日本企業の海外進出によるもの/②日本国内における資源の輸入と大量消費/③ODAによる環境破壊型開発/④廃棄物の越境移動/⑤長距離越境汚染(PM2.5等)
(3)リオデジャネイロ宣言:「環境と開発に関する国際会議」(1992年)
「アジェンダ21」→①「気候変動枠組条約」(→1997年:京都議定書)/②「生物多様性条約」/③森林原則声明等
【キーワード】 *ブルントラント委員会=「環境と開発に関する世界委員会」(WCED=World Commission on Environment and Development)/*Gro Harlem Brundtland(1939 -写真)/*アルシュ・サミット/*環境と開発に関するリオ宣言(Rio Declaration on Environment and Development)
2 環境法の歴史:環境基本法体系の成立(1)
(1)環境基本法の制定
・「リサイクル法」の制定(1991年)→環境基本法制定へ
・「環境基本法」の制定(1993年)
・・「環境基本法」の内容
目的:「この法律は、環境の保全について、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、環境の保全に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とする。」(1条)
環境保全の基本理念:
環境の恵沢の享受と継承(3条)
環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築等(4条)
国際的協調による地球環境保全の積極的推進(5条)
→環境基本計画(15条)

環境権
現代社会は、科学技術の進歩などによって急激に変化し、従来、考えられていなかった新しい「人権」が生まれています。プライバシーを守る権利は、他人によって個人の私生活がみだりに公開されない権利です。尊厳死や安楽死など、自分自身の意思で生き方を決める自己決定権。国民が国や地方公共団体に情報の公開を求めることのできる知る権利。健康で快適な環境の中で生活する権利、環境権も主張されるようになりました。環境権を少し詳しく見て見ましょう。戦後の高度経済成長期、水俣病やイタイイタイ病などの公害病が発生し、大気汚染や騒音も問題になりました。環境権を求める声は、そうした公害防止運動の中で広がりました。そして、1993年には環境基本法が制定され、97年には、大規模な工事を行う際、環境におよぼす影響調査を義務付けた環境アセスメント法が制定されました。このように、新しい人権を守るための法律が少しずつ整備されています。

京都議定書
1997年、京都市で「地球温暖化防止京都会議」開かれ、二酸化炭素の削減目標について話し合いが持たれました。そして、2008年から2012年までの間に、二酸化炭素の排出量を、1990年を基準に、全体として5%削減することを決め、京都議定書として採択しました。京都議定書には国ごとの目標もあります。日本の削減目標は6%。アメリカは7%。EUは8%です。しかし、アメリカは京都議定書の目標は実情に合わないとして2001年、離脱を表明しました。日本は2002年国会で批准し排出量の削減に向けて動き出しています。京都議定書にはCDM・クリーン開発メカニズムという規約も織り込まれています。これは、削減義務のない開発途上国の温暖化対策に協力すればその分を自国の削減量に加えてもいいというものです。日本は国内での削減努力を進める一方でCDMにも力を入れています。

・環境影響評価法(1997年)→環境アセスメント
高度経済成長期、日本では、公害や環境破壊が深刻化し、良好な生活環境を求める権利・環境権が提唱されるようになりました。1997年、環境影響評価法が制定され、国や企業が大規模開発を行う際には、事前に環境への影響を調査し、地域住民に説明した上で環境保全の対策をとることが義務付けられました。こうした環境影響評価を環境アセスメントといいます。そのため環境影響評価法は環境アセスメント法とも呼ばれています。環境アセスメントの対象になるのは道路の新設、河川の改修やダムの新築、鉄道の建設、空港整備、発電所の設置や廃棄物処理場の建設、都市の基盤整備事業など、環境に影響を与える大規模な事業です。

3 環境法の歴史:環境基本法体系の成立(2)
環境法の整備と環境基本計画の策定
 「環境基本計画」の策定(1994年)と改訂
第1次環境基本計画
第2次環境基本計画(2000年)
第3次環境基本計画(2006年)
第4次環境基本計画(2012年):
重点課題:①経済・社会のグリーン化とグリーン・イノベーションの推進、②国際情勢に的確に対応した戦略的取組の推進、③持続可能な社会を実現するための地域づくり・人づくり、基盤整備の推進、④地球温暖化に関する取組、⑤生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する取組、⑥物質循環の確保と循環型社会の構築のための取組、⑦水環境保全に関する取組、⑧大気環境保全に関する取組、⑨包括的な化学物質対策の確立と推進のための取組
+東日本大震災からの復旧・復興に際して環境の面から配慮すべき事項/放射性物質による環境汚染からの回復等
「環境影響評価法」の制定(1997年)
廃棄物処理法の強化とリサイクリング諸法(容器包装リサイクリング法[1995年]等)の制定
化学物質による環境汚染の対策・土壌汚染対策のための法律の制定

4 環境法の歴史:福島原発事故とその対応
竹下論文「予防原則と緊急事態(例外状態)―福島原発事故に即した法哲学的一考察」
1.はじめに
地震(M.9.0)⇒津波(最高40メートル)⇒福島原発事故
「想定外の出来事」=緊急・例外状態
予防原則(Vorsorgeprinzip)が日本法の原則となっているか?
原因者負担原則(ドイツ法):法原則(原因者主義原則)⇒費用負担に限定されない広範な義務・責任(入門159頁)*「原因者の性質」
≒汚染者支払原則(フランス法):経済的原則
予防原則⇔原因者負担原則-両者の関係
   事前的⇔事後的
*汚染者支払原則(Polluter-Pays-Principle=PPP)
2.環境法の領域における予防原則
*リオ宣言15原則
「被害のおそれ」⇔「完全な科学的確実性の欠如」
 比較衡量
*「疫学的因果関係」
*予防原則
先進国では既に採用⇔日本
環境基本法4条
生物多様性基本法3条3項
着手前の「予防的な取組方法」⇔着手後「順応的な取組方法」
生物多様性基本法
(基本原則)
第三条  生物の多様性の保全は、健全で恵み豊かな自然の維持が生物の多様性の保全に欠くことのできないものであることにかんがみ、野生生物の種の保存等が図られるとともに、多様な自然環境が地域の自然的社会的条件に応じて保全されることを旨として行われなければならない。
2  生物の多様性の利用は、社会経済活動の変化に伴い生物の多様性が損なわれてきたこと及び自然資源の利用により国内外の生物の多様性に影響を及ぼすおそれがあることを踏まえ、生物の多様性に及ぼす影響が回避され又は最小となるよう、国土及び自然資源を持続可能な方法で利用することを旨として行われなければならない。
3  生物の多様性の保全及び持続可能な利用は、生物の多様性が微妙な均衡を保つことによって成り立っており、科学的に解明されていない事象が多いこと及び一度損なわれた生物の多様性を再生することが困難であることにかんがみ、科学的知見の充実に努めつつ生物の多様性を保全する予防的な取組方法及び事業等の着手後においても生物の多様性の状況を監視し、その監視の結果に科学的な評価を加え、これを当該事業等に反映させる順応的な取組方法により対応することを旨として行われなければならない。
4  生物の多様性の保全及び持続可能な利用は、生物の多様性から長期的かつ継続的に多くの利益がもたらされることにかんがみ、長期的な観点から生態系等の保全及び再生に努めることを旨として行われなければならない。
5  生物の多様性の保全及び持続可能な利用は、地球温暖化が生物の多様性に深刻な影響を及ぼすおそれがあるとともに、生物の多様性の保全及び持続可能な利用は地球温暖化の防止等に資するとの認識の下に行われなければならない。

3.原子力発電に関わる現行法
原子力基本法(1955年)
原子炉等規制法(1957年):平和利用
電気事業法(1964年)⇒施行規則
災害対策基本法(1961年)9章災害緊急事態
*東海村JCO臨界事故
原子力災害対策特別措置法(1999年)
原子力緊急事態宣言⇒原子力災害対策本部
原子力事業者の予防義務
原子力損害賠償法(1962年):改正
*東海村JCO臨界事故
1999年9月30日に、茨城県那珂郡東海村に所在する住友金属鉱山の子会社の核燃料加工施設、株式会社ジェー・シー・オー(以下「JCO」)が起こした原子力事故(臨界事故)である。日本国内で初めて、事故被曝による死亡者を出した。
日本原子力史上初の刑事責任
この事故では、同時に会社側の刑事責任も問われた。事故から約1年後の2000年10月16日には茨城労働局・水戸労働基準監督署がJCOと同社東海事業所所長を労働安全衛生法違反容疑で書類送検、翌11月1日には水戸地検が所長の他、同社製造部長、計画グループ長、製造グループ職場長、計画グループ主任、製造部製造グループスペシャルクルー班副長、その他製造グループ副長の6名を業務上過失致死罪、法人としてのJCOと所長を原子炉等規制法違反及び労働安全衛生法違反罪でそれぞれ起訴した。 2003年3月3日、水戸地裁は被告企業としてのJCOに罰金刑、被告人6名に対し執行猶予付きの有罪判決を下した。

4.(福島原発)事故の概観
2011年3月11日:東日本大震災
地震⇒津波⇒福島第一原発事故
*福島第一原発
事故の経過
3/11:15:27(14メートルの津波)
3/12午後:メルトダウン⇒水素爆発(15:36)
3/13:2時ごろ3号機も冷却不能に
3/14:11:01・3号機水素爆発/2号機冷却システム消失
3/15:06:10・4号機水素爆発

5.予防的措置に関わる事実的経過
地震⇒津波⇒福島第一原発事故
「想定外の出来事」?⇒法的意義
原子力損害賠償法3条但書の「異常に巨大な天災地変」
「予防的措置」⇒どのように不足していたか?
事故の原因・回避に関する3つの事実
(1)ベント(排気)
(2)冷却水
(3)津波
耐震指針⇒2006年改定「残余のリスク」
*「残余のリスク」(残存リスク)
①異常な出来事の位置づけ/②確率理論による評価
*原子力損害の賠償に関する法律
(無過失責任、責任の集中等)
第3条  原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。
2  前項の場合において、その損害が原子力事業者間の核燃料物質等の運搬により生じたものであるときは、当該原子力事業者間に特約がない限り、当該核燃料物質等の発送人である原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。

*原子力災害対策特別措置法
(原子力事業者の責務)
第3条  原子力事業者は、この法律又は関係法律の規定に基づき、原子力災害の発生の防止に関し万全の措置を講ずるとともに、原子力災害(原子力災害が生ずる蓋然性を含む。)の拡大の防止及び原子力災害の復旧に関し、誠意をもって必要な措置を講ずる責務を有する。

沸騰水型原子炉圧力容器及び再循環回路の詳細図
1.原子炉本体 2.コンクリート遮蔽プラグ 3.設備プール 4.ドライウェルヘッド 5.使用済み核燃料プール 6.燃料充填空洞 7.ドライウェルフランジ 8.原子炉圧力容器 9.生物シールド 10.第二コンクリート遮蔽壁 11.立鋼ドライウェル 12.ビーム 13.コンクリート埋込部 14.ジェットノズル 15.拡張ベローズ 16.ベントヘッダー 17.排水管 18.水(ウェットウェル) 19.シェル接合領域 20.土台基盤 21.原子炉建屋(側壁) 22.プラットフォーム 23.バルクヘッド 24.減圧室 25.ベントバルブ 26.クレーン 27.使用済み核燃料 28.冷却液パイプ 29.冷水パイプ(発電機から) 30.蒸気パイプ(発電機へ) 31.制御棒作動装置 39.制御棒 40.スチームセパレーター 41.スチームドライヤー ⇒ ドライウェル (11.) 、ウェットウェル (18.) は原子炉格納容器冷却設備、原子炉格納容器および原子炉格納容器冷却方法に大きく関連。


6.むすび―法原理としての予防原則の実効性
「予防的措置」が不足していたのではないか?
事故の原因・回避に関する3つの事実(ベント/冷却水/津波)
予防原則:科学的因果関係⇒確率論に依拠した拡大
原子力事業者の義務規定
「残余のリスク」→津波には導入されず
ベント・冷却水注入に関する行政的混乱⇒行政制度の整備への予防原則の適用
*「フクシマの嘘」(ZDFの番組)

基本用語

by strafrecht_bt | 2016-10-29 13:05 | 環境刑法