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カテゴリ:環境刑法( 24 )


2016年 10月 24日

法と環境4:環境法の歴史(4)

10月17日はイスタンブールに出張したので休講(補講は10月29日)
公害罪法の制定
略称「公害犯罪処罰法」または「公害罪法」
人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律(昭和45・12・25 法第142)施行昭和46・7・1(附則)
(目的)
第1条 この法律は、事業活動に伴って人の健康に係る公害を生じさせる行為等を処罰することにより、公害の防止に関する他の法令に基づく規制と相まって人の健康に係る公害の防止に資することを目的とする。 
(故意犯)
第2条 ①工場または事業場における事業活動に伴って人の健康を害する物質(身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質を含む。以下同じ。)を排出し、公衆の生命又は身体に危険を生じさせた者は、3年以下の懲役股は300万円以下の罰金に処する。
②前項の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処する。
(過失犯)
第3条 ①業務上必要な注意を怠り、工場又は事業場における事業活動に伴って人の健康を害する物質を排出し、公衆の生命又は身体に危険を生じさせた者は、2年以下の懲役若しくは禁錮又は200万円以下の罰金に処する。
②前項の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は300万円以下の罰金に処する。
(両罰)
第4条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の業者が、その法人又は人の業務に関して前2条の罪を犯したときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。 
(推定)
第5条 工場又は事業場における事業活動に伴い、当該排出のみによっても公衆の生命又は身体に危険が生じうる程度に人の健康を害する物質を排出した者がある場合において、その排出によりそのような危険が生じうる地域内に同種の物質による公衆の生命又は身体の危険が生じうる地域内に同種の物質による公衆の生命又は身体の危険が生じているときは、その危険は、その者の排出した物質によって生じたものと推定する。
(公訴の時効)
第6条 第4条の規定により法人又は人に罰金刑を科す場合における時効の期間は、各本条の罪についての時効の期間による。
(第1審の裁判権)
第7条 この法律の定める罪に係る訴訟の第1審の裁判権は、地方裁判所に属する。

判例の動向
①最判昭和62・9・22【百選113】
②最判昭和63・10・27【百選115】
「事業活動に伴って」(3条①)の意義
事故型事例への適用排除
*原発公害に公害犯罪処罰法の適用を→弁護士山本行雄氏の主張「放射能汚染を公害として扱うことの意味」も参照)
1970年(昭和45年)に成立
「公害国会」:14の公害関連の法案の一つ:「公害被害者の人たちが差別や偏見に苦しみながら勝ち取った法律」
同法不適用の理由
①放射性物質は「人の健康を害する物質」であるにもかかわらず、環境基本法をはじめとして環境・公害関係法は放射性物質を明文で適用除外としています。この法律には適用除外と書かれていません。書かれてはいないが環境基本法をはじめとして公害規制の対象から放射性物質を外しているので、公害法に属するこの法律も適用がないとして扱われているようです。環境法の専門書でもこの法律の解説の中に放射性物質は取り上げられていません。
*環境基本法13条の放射性物質適用除外規定の削除法案が成立しました。放射性物質は公害物質です。公害犯罪処罰法改正運動に弾みをつけましょう。2012.6・24
② 最高裁が骨抜きに:この法律はほとんど活用されていません。最高裁が事故による有毒物の漏洩事件について、「事業活動の一環としての排出」ではないから適用がないとして、事業者に連続して無罪判決を出したからです。このため、この法律で起訴されるということは実際上なくなってしまったのです。
放射性物質をこの法律の適用対象とする改正をする場合は、福島原発事故のような場合にも適用でされるように条文の手直し(改正)も必要です。最高裁も、法律そのものを改正すれば、それに従わなければなりません。     
「放射能汚染防止法を制定する札幌市民の会」の改正案(2011年11月11日)
<改正すべき内容> 
1 人の健康にかかる公害犯罪の処罰に関する法律(公害散在処罰法)の「人の健康を害する物質」に放射性物質を含める。
2 同法の「工場又は事業場における事業活動に伴って・・排出し、」を「工場又は事業場から・・排出し」に改めること。注①:最高裁が事故による漏えい事故について不適用とし、この法律の機能を失わせたことを立法により解決すること。
3 原子炉等(放射性物質を扱う全ての施設事業場)については特に危険性に関する通報制度を設けること。危険通報制度には、次の内容を含むこと。注② 通報先はとりあえず国としておく。
 ① 何人も(法人及び任意の団体を含むこと)原子力施設から放射性物質が漏えいする原因となる危険性について国に対し通報する権利を有すること。放射性物質が漏えいする原因となる危険性には、原子炉等の構造的機能的欠陥、その損傷やその恐れ人的安全態勢にの不備・欠陥、地震や津波など自然現象による放射性物質漏えい事故発生の可能性、飛行機事故、その他放射性物質による環境汚染の可能性ある事項すべてに及ぶこと。
 ② 国(担当環境省)は。前記の通報を受けた場合は、即日原子炉等設置者及び関係機関(国及び自治体など原子炉等の安全性に関与する機関)に通知し、3日以内に公示すると共に一般医周知する方法を講じなければならないこと。
 ③ 前記通報を受けた原子炉等設置者は通報内容について、調査計画書を作成し通報から7日以内に公示し、通報者に通知すること。調査の結果は1ケ月以内に全文を公示し通報者に文書で知らせること。この場合調査に使用したすべての資料の目録と資料の評価内容を通報者に知らせ、何人も資料を閲覧できかつ資料の写は無償で交付を受けることができること。上記期間内に調査が終わらない場合は、遅延の理由を付して国に延期の申請をし許可をしなければならないこと。延期の期間及び回数に制限を設けること。
 ④ 独立行政委員会である放射能汚染規制委員会を設置すること。規制委員会は国から前期通報の通知を受けたときは、通報内容について原子炉等設置者とは別に独自に調査し原子炉等設置者の調査結果の適否を審査し、必要に応じて再調査を命じ安全上の必要があるときは原子炉等の運転の停止や改善を命じなければならないこと。
 ⑤ 現行罰則規定について刑を重くすること。通報内容を無視し又は過少に評価し、必要な安全措置(原子炉等の運転停止を含む)を怠ったことと因果関係がある場合は、重過失放射性物質漏えい罪として、厳罰をもって臨むこと。

人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律改正(案)骨子
① 人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律の「人の健康を害する物質に放射性物質が含まれることを明記すること。
② 同法の「工場又は事業場における事業活動に伴って・・排出し、」を「工場又は事業場から排出し」に改めること。
③ 刑事罰は無期懲役を含む放射能汚染の重大性に対応したものとすること、原子力関連施設の危険性に関する情報を無視ないし軽視して放射性物質を放出させた者には特に重罰を規定すること。
④ 刑事罰を現場責任者に転嫁することを防止するために、事業経営者、安全規制機関に携わる者の刑事責任を明確に規定すること。


by strafrecht_bt | 2016-10-24 11:12 | 環境刑法
2016年 10月 10日

法と環境3:環境法の歴史(3)

第3回:環境法の歴史(3)
公害への刑事法的対応
     ①胎児性水俣病刑事判例
     ②公害罪法の制定と判例の展開
その後の展開:公害法から環境法へ

公害刑法に関する刑事事件
熊本(胎児性)水俣病事件刑事判例
①熊本地判昭和54・3・22
②福岡高判昭和55・12・17
③最決昭和63・2・29
関連判例:最決昭和55・12・17(川本事件)
公害罪法
立法趣旨
判例
大東鉄線塩素ガス噴出事件
日本アエロジル塩素ガス流失事件
福島原発事故への適用可能性
立法論的提案
時効問題
民法(改正案)
不法行為の場合
刑法(改正)
*刑の時効と公訴時効
刑の時効
死刑の場合
公訴時効
人を死亡させて、死刑に当たる罪

刑の時効と公訴時効

by strafrecht_bt | 2016-10-10 23:51 | 環境刑法
2016年 10月 03日

法と環境2:環境法の歴史(2)

法と環境
 第2回:環境法の歴史(2)
環境年表(1953-1980)
4大公害裁判
    公害への刑事法的対応
     ①胎児性水俣病刑事判例
     ②公害罪法の制定と判例の展開

公害対策基本法(1967年)
【小テスト】次のカッコ内の空欄に適当な語を入れ又は設問に答えなさい。
「1960年代、日本が達成した高度経済成長は、一方で、公害の発生という事態を伴いました。各地で、健康に被害を与える公害病が問題になったのです。中でも熊本の(①     )病、富山の(②   )病、(③ )病、(④ )ぜんそくは、四大公害病といわれました。いずれも、原因企業はもちろん、国や地方自治体の対応が遅れたため、被害が拡大しました。被害者は、1967年から69年にかけて訴訟を起こし、全て原告側が(⑤勝訴/敗訴←正しい方を選びなさない)。被害者たちの訴えにより、公害病の悲惨な実態が明らかとなりました。そして、立法や行政にも影響を及ぼします。1967年に成立した公害対策基本法には、事業者だけでなく、国や地方自治体にも、公害を防止する責任があることが明示されました。しかし、この法律は、あくまでも経済発展を優先する考え(⑥これを現した条項をなんというか)に立っていました。その後、公害対策基本法は、環境保全を重んじる内容に改正。(⑦どのように改正されたのか)1970年11月末に開かれた臨時国会でのことでした。」
意義と問題点(北村268-269頁)
「基本法」形式の採用
調和条項
「公害」の定義(2条1項):典型7公害=①大気汚染、②水質汚濁、③騒音、④振動、⑤地盤沈下、⑥悪臭、⑦土壌汚染(1970年改正で追加)
放射性物質による汚染の除外(⇒原子力基本法)⇒環境基本法にも継承(旧13条⇒2012年に削除)
公害防止計画(計画的対応)
公害国会(昭和45年第64国会)
公害対策基本法の改正
14の個別法の制定・改正
公害罪法(1971年〔昭和46年〕7月1日施行)
1971:環境庁(現環境省)の設置)
その後の立法
1972:大気汚染防止法(無過失損害賠償責任規定導入)
1973:公害健康被害補償法
四大公害裁判における民法的問題
過失
損害
疫学的因果関係
因果関係の証明責任→新潟水俣病第1次訴訟【百選18】
共同不法行為
疫学的因果関係→特にイタイイタイ病判決【百選19】
小テスト:疫学的因果関係の4要件を示しなさい。




四日市ぜん息損害賠償請求事件【百選3】
過失
受忍限度論
疫学的因果関係論
共同不法行為(客観的共同正論の導入)
損害
過失
受忍限度論
疫学的因果関係論
共同不法行為(客観的共同正論の導入)
損害
共同不法行為
民法第719条
①数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
②行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。
熊本水俣病事件民事判決【百選28】
→水俣病関西訴訟【百選29】:国・県の権限不行使

疫学的因果関係

by strafrecht_bt | 2016-10-03 21:58 | 環境刑法
2016年 09月 26日

法と環境1:環境法の歴史(1)

参考文献
北村喜宣『環境法』(第3版・2015年)
熊本学園大学水俣学研究センター編著『新版・ガイドブック 水俣を歩き、ミナマタに学ぶ』(2014年)
環境年表(1890-1945)
環境法の歴史:公害法から環境法へ
1 公害法前史:公害法の萌芽期
「公害法」=「環境汚染防止の法」
(明治時代~)戦前の環境問題と環境法
①公害の発生と公害法の不存在
②足尾鉱毒事件(1890~1914谷中村復活運動断念→調停成立1974年):被害民と対立:田中正造による救済活動
現在の栃木県日光市足尾地区では江戸時代から銅が採掘されていたが、明治維新後、1877年に古河市兵衛が経営となり、採鉱事業の近代化を進めた結果、足尾銅山は全国の産出量の1/4を占める日本最大の鉱山となった。その反面、精錬時の排煙・排水に含まれる鉱毒は、山林の大量伐採の影響もあって多発した渡良瀬川の氾濫などにより、付近の環境に多大な被害をもたらした。そこで地元出身の衆議院議員田中正造(1841ー1913)は、被害民と共に鉱害の防止・銅山の操業停止・被害民救済を求めて政府に度々請願した(被害民らの請願活動は「押出し」と呼ばれた)。これに対して政府は十分な対策を取らず、むしろ警察により「押出し」を阻止しようとし、それに抵抗した被害民らは逮捕され(現行刑法の「騒乱罪」の前身である)「兇徒聚集罪」(旧刑法137/138条)等で起訴されたが、前橋地判明治33・12・22では、治安警察法違反・(現行刑法の公務執行妨害罪の前身である)「官吏抗拒罪」(旧刑法139条)違反で、22名が有罪となったが、控訴・上告後の差戻審である宮城控判明治35・12・25では、検察側の手続的なミスが判明し、免訴となった(*川俣事件)。その間、田中正造は1901年12月10日に天皇に直訴しようとしたが失敗した。その後政府は、被害の多かった谷中村の土地を強制収用するなどして問題の収拾を図ったが、解決には至らず、最終的に調停が成立したのは谷中村復活運動断念から60年も経った1974年であった。
*旧刑法:第136条 兇徒多衆ヲ嘯聚(しょうしゅう)シテ暴動ヲ謀リ官吏ノ説諭ヲ受クルト雖モ仍ホ解散セサル者首魁及ヒ教唆者ハ三月以上三年以下ノ重禁錮ニ処ス附和随行シタル者ハ二円以上五円以下ノ罰金ニ処ス
第137条 兇徒多衆ヲ嘯聚シテ官庁ニ喧鬧(けんどう)シ官吏ニ強逼シ又ハ村市ヲ騒擾(そうじょう)シ其他暴動ヲ為シタル者首魁及ヒ教唆者ハ重懲役ニ処ス其嘯聚ニ応シ煽動シテ勢ヲ助ケタル者ハ軽懲役ニ処シ其情軽キ者ハ一等ヲ減ス附和随行シタル者ハ二円以上二十円以下ノ罰金ニ処ス
第139条①官吏其職務ヲ以テ法律規則ヲ執行シ又ハ行政司法官署ノ命令ヲ執行スルニ当リ暴行脅迫ヲ以テ其官吏ニ抗拒シタル者ハ四月以上四年以下ノ重禁錮ニ処シ五円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス
②暴行脅迫ヲ以テ其官吏ノ為ス可カラサル事件ヲ行ハシメタル者亦同シ
③日立煙害事件(1906~1914年頃):②との対応の相違:協調的
環境年表(1946-1967)
2 環境法の歴史:戦後(~1960年代中頃)の環境問題と環境法
自治体の条例(東京、大阪[1950年]、神奈川[1951年]
水俣病事件(公式確認1956年)
浦安漁民騒動と水質二法(1958年)の制定
「水質保全法」
「工場排水規制法」
水質二法の問題点:
①「産業との相互協和」目的条項=調和条項
②指定水域制度
③濃度規制(ppm)

問題点:
事後対応アプローチ⇔未然防止アプローチ/予防アプローチ(原則)
調和条項
地域指定制度(ゾーニング制)
濃度規制⇔総量規制


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by strafrecht_bt | 2016-09-26 15:13 | 環境刑法