2017年 07月 04日
2017.07.04(火)1時限(13):共犯の従属性:行為共同説と犯罪共同説 【復習問題】 2017〔第19問〕(配点:2)学生A,B及びCは,次の【事例】における甲の罪責について,後記【会話】のとおり検討している。【会話】中の①から⑤までの( )内から適切な語句を選んだ場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は, [№34]) 【事例】甲は,乙がVに対して暴行を加えていたところに通り掛かり,乙との間で共謀を遂げた上,乙と一緒にVに対して暴行を加えた。Vは,甲の共謀加担前後にわたる一連の暴行を加えられた際に1個の傷害を負ったが,Vの傷害が,甲の共謀加担前の乙の暴行により生じたのか,甲の共謀加担後の甲又は乙の暴行により生じたのかは,証拠上不明であった。 【会話】学生A.私は,共犯は自己の行為と因果関係を有する結果についてのみ責任を負うという見解に立ち,後行者は,共謀加担前の先行者の暴行により生じた傷害結果には因果性を及ぼし得ないと考えます。事例の場合,甲には①(a.暴行罪・b.傷害罪)の共同正犯が成立すると考えます。事例とは異なり,Vの傷害が甲の共謀加担後の甲又は乙の暴行により生じ たことが証拠上明らかな場合,甲には傷害罪の共同正犯が②(c.成立する・d.成立しない)と考えます。 学生B.A君の見解に対しては,甲に対する傷害罪の成立範囲が③(e.狭く・f.広く)なり過ぎるとの批判が可能ですね。 学生C.私は,事例の場合には,同時傷害の特例としての刑法第207条が適用され,甲は,Vの傷害結果について責任を負うと考えます。その理由の一つとして,仮に甲が乙と意思の連絡なく,Vに暴行を加えた場合に比べ,事例における甲が④(g.不利・h.有利)に扱われることになるのは不均衡であると考えられることが挙げられます。 学生B.乙には,甲の共謀加担前後にわたる一連の暴行の際にVに生じた傷害結果についての傷害罪が成立するのであり,傷害結果について責任を負う者が誰もいなくなるわけではないということは,C君の⑤(i.見解に対する批判・j.見解の根拠)となり得ますね。 1.①a ②c ③e ④h ⑤i/2.①b ②d ③f ④g ⑤j/3.①a ②c ③f ④g ⑤j/4.①b ②c ③e ④h ⑤i/5.①a ②c ③e ④g ⑤j 【確認問題】共犯の従属性には、①( )従属性、②( )従属性及び③( )従属性の3つの問題がある。教唆の未遂は①の従属性に、行為共同説/犯罪共同説は③の従属性に関連した問題である。 【短答問題】2017年〔第15問〕(配点:2)次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄は,[№26]) 1.甲が乙に対し,深夜の公園で待ち伏せしてAから金品を喝取するように教唆したところ,乙は,その旨決意し,深夜の公園でAを待ち伏せしたが,偶然通り掛かったBをAと誤認してBから金品を喝取した。乙は,人違いに気付き,引き続きAを待ち伏せして,通り掛かったAから金品を喝取しようとしてAを脅迫したが,Aに逃げられてしまい金品を喝取することができなかった。甲にはAに対する恐喝未遂罪の教唆犯のみが成立する。 2.甲が乙に対し,Aをナイフで脅してAから金品を強取するように教唆したところ,乙は,その旨決意し,Aをナイフで脅したが,その最中に殺意を抱き,Aの腹部をナイフで刺してAに傷害を負わせ,Aから金品を強取したものの,Aを殺害するには至らなかった。甲には強盗罪の教唆犯が成立するにとどまる。 3.甲が乙に対し,留守宅であるA方に侵入して金品を窃取するように教唆したところ,乙は,その旨決意したが,B方をA方と誤認してB方に侵入し,その場にいたBから金品を強取した。 甲にはB方への住居侵入罪及びBに対する窃盗罪の教唆犯が成立する。 4.甲が乙に対し,現住建造物であるA家屋に放火するように教唆したところ,乙は,その旨決意し,A家屋に延焼させる目的で,A家屋に隣接した現住建造物であるB家屋に放火したが,B家屋のみを焼損し,A家屋には燃え移らなかった。甲にはA家屋に対する現住建造物等放火未遂罪の教唆犯のみが成立する。 5.甲は,土建業者AがB市発注予定の土木工事を請け負うためB市役所土木係員乙に現金を供与しようと考えていることを知り,乙に対し,Aに工事予定価格を教える見返りとしてAから現金を受け取り,Aに工事予定価格を教えるように教唆したところ,乙は,その旨決意し,Aとの間で,Aに工事予定価格を教える旨約束して,Aから現金100万円を受け取ったが,その後,工事予定価格を教えなかった。甲には加重収賄罪の教唆犯が成立する。 【論文問題】甲は,自己の取引先であるA会社の倉庫には何も保管されていないことを知っていたにもかかわらず,乙の度胸を試そうと思い,何も知らない乙に対し,「夜中に,A会社の 倉庫に入って,中を探して金目の物を盗み出してこい。」と唆した。乙は,甲に唆されたとおり,深夜,その倉庫の中に侵入し,倉庫内を探したところ,A会社がたまたま当夜 に限って保管していた同社所有の絵画を見付けたので,これを手に持って倉庫を出て、逃亡した。 ■
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| 2017-07-04 09:00
| 刑法Ⅰ(総論)
2017年 06月 27日
2017.06.27(火)1時限(12):共犯の処罰根拠 【復習問題1】平成20年〔第13問〕(配点:3)学生A、Bは、不能犯の成否の判断基準に関する次のⅠ、Ⅱの【見解】のいずれかを採って後記【事例】について後記【会話】のとおり議論している。【会話】中の①から⑦までの( )内から適切な語句を選んだ場合、後記1から5までのうち誤りを含むものはどれか。(解答欄は、[№21]) 【見解】Ⅰ. 行為当時に一般人が認識し得た事情を基礎とし、一般人を基準に結果発生の具体的危険性があるか否かの判断による。 Ⅱ. 行為当時に存在したすべての客観的事情を基礎とし、結果発生の具体的危険性があるか否かの判断による。 【事例】甲は、健康な乙を毒殺するため、薬品棚から取り出した毒薬のラベルが付いた容器に入った粉を毒薬と認識してその水溶液を乙に多量に注射したが、同粉は、ラベルに表示された毒薬ではなくブドウ糖であったため乙は死亡しなかった。 【会話】A. 私は、甲の罪責については、①(a. 毒薬・b. ブドウ糖)の水溶液を注射する行為が危険であるかどうかを判断し、甲には殺人未遂罪が成立②(c. する・d. しない)と考える。 B. しかし、A君の見解だと、特定の食物の摂取によりショック死しかねないアレルギー体質を有する乙を、そのことを知った甲が、当該食物を乙に食べさせて殺害しようとした事案で、一般人が乙の体質を認識し得なかった場合には、③(e. 行為当時に存在した全事情を基礎として・f. 行為当時に一般人が認識し得た事情を基礎として)判断することになるから、未遂犯が成立しないこととなり、常識に反する。 A. そのような場合、私の立場でも、④(g. 行為時に行為者が特に認識していた事情・h. 事後的に明らかになった全事情)を考慮すべきと考えるので、B君の言う事案でも未遂犯の成立を認めることができる。それよりも、B君の立場を理論的に徹底すれば、結果が不発生に終わった事案は、ほとんど常に⑤(i. 不能犯・j. 未遂犯)となってしまうのではないか。 B. いや、私の立場であっても、事後的・科学的見地から、実際に存在した事実のほかにどのような事実があれば結果が発生し得たかを検討し、そのような事実が行為時に存在し得る可能性の程度を危険判断に取り込むべきと考える。したがって、前記【事例】でも、単に、⑥(k.ブドウ糖・l. 毒薬)を健康な乙に注射することの危険性を判断するのではなく、毒薬のラベルの付いた容器内にブドウ糖が入っていた原因・経緯なども考慮すべきだ。例えば、その原因・経緯が極めてまれで異常だったという事情は、不能犯を⑦(m. 肯定・n. 否定)する方向に働くと考える。 1. ①a、②c/2. ③f/3. ④g、⑤i/4. ⑥k/5. ⑦m 【復習問題2】2017〔第1問〕(配点:2)次の【見解】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,誤っているものはどれか。(解答欄は,[№1]) 【見解】間接正犯については,被利用者の行為時に実行の着手を認めるべきである。 【記述】1.【見解】は,実行行為時と実行の着手時期が一致することを要しないとする考え方と矛盾しない。 2.【見解】に対しては,利用者にとって偶然の事情で実行の着手時期を決することになり不合理であると批判できる。 3.【見解】は,離隔犯において到達時に実行の着手を認める考え方と矛盾しない。 4.【見解】に対しては,責任無能力者を利用する場合には,責任無能力者に規範意識の障害がないというだけで,直ちに結果発生の切迫した危険があるとはいえないと批判できる。 5.【見解】は,自然的に観察して結果発生に向けた直接の原因となる行為を重視する考え方と矛盾しない。 【短答問題】(配点:2)次の【事例】に関する後記1から5までの各記述のうち,甲に窃盗罪の従犯の成立を肯定する論拠となり得ないものはどれか。 【事例】甲は,乙又は乙の友人が窃盗罪を犯そうとしていることを知り,その手助けのため,乙に対し,同罪の遂行に必要な道具を貸したところ,さらに,乙はその道具を友人丙に貸し,丙がこれを用いて同罪を犯した。なお,丙には同罪の正犯が成立し,乙にはその従犯が成立するものとする。 1.従犯には独立した犯罪性が認められる。 2.従犯の幇助には,教唆者を教唆した者については正犯の刑を科すとする刑法第61条第2項のような規定がない。 3.共犯は修正された構成要件に該当する行為であるところ,従犯もその構成要件においては「正犯」となる。 4.幇助は正犯を容易にすることであるという定義からすると,幇助行為が直接的になされたか,間接的になされたかは必ずしも問われない。 5.教唆犯に対する幇助行為は従犯として処罰される。 【論文問題】甲は,乙がVに対して暴行を加えていたところに通り掛かり,乙との間で共謀を遂げた上,乙と一緒にVに対して暴行を加えた。Vは,甲の共謀加担前後にわたる一連の暴行を加えられた際に1個の傷害を負ったが,Vの傷害が,甲の共謀加担前の乙の暴行により生じたのか,甲の共謀加担後の甲又は乙の暴行により生じたのかは,証拠上不明であった。甲及び乙の罪責につき論じなさい(特別法違反の点は除く。) ■
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| 2017-06-27 09:00
| 刑法Ⅰ(総論)
2017年 04月 26日
事件番号 平成28(あ)307 事件名 殺人,器物損壊被告事件 裁判年月日 平成29年4月26日 法廷名 最高裁判所第二小法廷 裁判種別 決定 結果 棄却 判例集等巻・号・頁 原審裁判所名 大阪高等裁判所 原審事件番号 平成27(う)1120 原審裁判年月日 平成28年2月10日 判示事項 侵害を予期した上で対抗行為に及んだ場合における刑法36条の急迫性の判断方法 裁判要旨 行為者が侵害を予期した上で対抗行為に及んだ場合,侵害の急迫性の要件については,対抗行為に先行する事情を含めた行為全般の状況に照らして検討すべきであり,事案に応じ,行為者と相手方との従前の関係,予期された侵害の内容,侵害の予期の程度,侵害回避の容易性,侵害場所に出向く必要性,侵害場所にとどまる相当性,対抗行為の準備の状況(特に,凶器の準備の有無や準備した凶器の性状等),実際の侵害行為の内容と予期された侵害との異同,行為者が侵害に臨んだ状況及びその際の意思内容等を考慮し,緊急状況の下で公的機関による法的保護を求めることが期待できないときに私人による対抗行為を許容した刑法36条の趣旨に照らし許容されるものとはいえない場合には,侵害の急迫性の要件を充たさないものというべきである。 参照法条 刑法36条
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| 2017-04-26 08:26
| 刑法Ⅰ(総論)
2017年 04月 18日
罪刑法定主義 第1章 刑法の基礎理論 More ■
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| 2017-04-18 09:00
| 刑法Ⅰ(総論)
2017年 04月 11日
刑法1【日程】①2017.04.11(火)1時限:刑法の意義・刑罰論 刑法1(1)刑法の意義・刑罰論 【教科書】山口厚『刑法』(第3版・2015年) 【参考文献】(最新のもの)松宮孝明『刑法総論講義』(第5版・2017年);松原芳博『刑法総論』(第2版・2017年) 第199条 (殺人) 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。 ① 刑法の意義 ・実質的意義の刑法:「いかなる行為が犯罪であり、それに対していかなる刑罰が科されるかを規定した法」(山口3頁) ・形式的意義の刑法(刑法典):刑法(明治40年4月24日法律第45号) ・刑法総則(総論):第1篇「総則」 ・刑法各則(各論):第2編「罪」 特別法上の刑罰法規:「特別刑法」(広義)とは *「特別法違反の点を除く。」の意味 * 刑法8条:総則の規定は、特別刑法にも適用される ② 刑罰論 ・応報刑論(松原3-5頁:被害応報・秩序応報・責任応報) *予防刑論(目的刑論) ・一般予防論 ・消極的一般予防論(抑止刑論) ・積極的一般予防論(規範的予防論)(松原6-8頁:国民の規範意識・規範への信頼確保・規範妥当性確証) ・特別予防論(再犯防止)(松原8-9頁:消極的特別予防[隔離・排除・特別抑止]・積極的特別予防[改善・教育]) ③ 刑法理論との関係 ・応報刑論 (後期)旧派 意思自由論 ・一般予防論 (前期)旧派 意思自由論(合理的判断能力) ・特別予防論 新派(近代学派) 決定論 *短答出題例:2014〔第1問〕(配点:2)刑罰論に関する次の1から5までの各記述のうち、正しいものはどれか。(解答欄は、[№1]) 1.応報刑論は、産業革命に伴う工業化・都市化によって累犯が増加したことを契機として、支持者が増えた。 2.応報刑論に対しては、重大な犯罪を犯した者であっても、再犯可能性がなければ刑罰を科すことができなくなるとの批判がある。 3.応報刑論に対しては、論者が前提としている人間の意思の自由が科学的に証明されていないとの批判がある。 4.応報刑論に対しては、犯罪を防止するために罪刑の均衡を失した重罰化を招くおそれがあるとの批判がある。 5.応報刑論に対しては、刑罰と保安処分の区別がなくなるとの批判がある。 ④ 刑罰の種類(刑法9条以下、山口196-9頁) ・生命刑:死刑 ・自由刑:懲役・禁錮・拘留 *懲役・禁錮の一本化(改正案)→問題点(松宮・ⅱ頁[はしがき]):「自由刑純化論」(松宮344頁)ではなく「拡大された懲役刑一本化」 ・財産刑:罰金・科料:没収 *主刑と付加刑 *代替(換刑)処分:労役場留置/追徴→刑罰でないことに注意(松宮346頁参照) *執行猶予(25条以下)/一部執行猶予(27条の2以下)/仮釈放(28条)/仮出場(30条) *一部執行猶予の問題点(松宮352−3頁):「全部実刑と全部執行猶予の中間的制度」か? 出題例:2013〔第9問〕(配点:4) :刑罰に関する次のアからオまでの各記述を検討し、正しい場合には1を、誤っている場合には2 を選びなさい。(解答欄は、アからオの順に[No14]から[No18]) ア.自由刑には、懲役、禁錮及び労役場留置が含まれる。[No14] イ.財産刑には、罰金、没収及び追徴が含まれる。[No15] ウ.有期の懲役又は禁錮は、1月以上15年以下であり、これを加重する場合においては30年にまで上げることができる。[No16] エ.有期の懲役又は禁錮を減軽する場合においては1月未満に下げることができる。[No17] オ.懲役は、受刑者を刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる刑罰であり、禁錮は、受刑者を刑事施設に拘置する刑罰である。[No18] 【次回】②2017.04.18(火)1時限:罪刑法定主義・犯罪の意義
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| 2017-04-11 09:00
| 刑法Ⅰ(総論)
2017年 01月 23日
自由刑の単一化論とは懲役を廃止し、強制作業を伴わない自由刑(行なった作業に対しては賃金制を導入する場合が多い)の一本化論だが、法務省の一本化案はそれとは異なるようだ。従来禁錮処罰されてきた類型についても裁量で刑務作業が課されうることになるのは重罰化ではないだろうか。むしろ強制的な刑務作業を廃止し、刑務所内での(任意な)労働については適正な賃金制を導入し、教育プログラムなどは受刑者の希望に応じて受けることができるようにすることが、社会復帰にもつながるのではないだろうか。
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| 2017-01-23 21:04
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2016年 11月 08日
2016年 06月 07日
【講義項目】緊急避難:臓器移植の事例 自招侵害・自招危難 過剰防衛 過剰避難(補充性の過剰も含むか) 誤想防衛・誤想避難と故意の阻却(違法性の錯誤か事実の錯誤か) 誤想過剰防衛・誤想過剰避難 ーーーーーーーーー 2015年の授業レジュメ 第4節 正当防衛 【条文】刑法36条「(正当防衛)第三十六条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。 2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。」 1.正当防衛の違法性阻却根拠 3-4-1○正当防衛が違法性阻却事由となる根拠について理解し、その概要を説明することができる。 ・個人主義的見解「自己保全」 ・超個人主義的見解「法秩序の確証」 ・二元説(山中など) 2.正当防衛の要件 (1)侵害の急迫性 3-4-2◎侵害の急迫性の要件を理解し、具体的事例に即して説明することができる。 *侵害の予期と積極的加害意思 3-4-6◎行為者が侵害を予期していた場合における正当防衛の成否について理解し、具体的事例に即して説明することができる。 *予防的防衛 (2)侵害の不正性 3-4-3◎侵害の不正性の要件を理解し、具体的事例に即して説明することができる。 *対物防衛 (3)防衛の意思 3-4-4◎防衛の意思の要否及び内容について理解し、具体的事例に即して説明することができる。 *偶然防衛 *防衛の意思と積極的加害意思 (4)防衛の必要性および相当性 3-4-5◎「やむを得ずにした行為」の要件を理解し、具体的事例に即して説明することができる。 3.正当防衛の制限 *自招防衛 3-4-7◎行為者自らが不正の侵害を招致した場合における正当防衛の成否について理解し、具体的事例に即して説明することができる。 4.過剰防衛と関連問題ー>責任 (1)任意的減免根拠 3-4-8◎過剰防衛が刑の任意的減免事由とされる根拠を理解し、その成否について具体的事例に即して説明することができる。 ・違法減少説 ・責任減少説 ・二元説 (2)過剰防衛の類型 ・量的過剰防衛 ・質的過剰防衛 (3)誤想過剰防衛 3-4-9◎誤想防衛、誤想過剰防衛の諸類型及びその法的処理について理解し、具体的事例に即して説明することができる。 *違法阻却事由の錯誤 第5節 緊急避難 【条文】刑法37条 「(緊急避難)第三十七条 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。 2 前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。」 1.緊急避難の意義と法的性格 3-5-1○緊急避難の法的性格をめぐる基本的な考え方について理解し、その概要を説明することができる。 ・違法阻却説(通説) ・責任阻却説 ・二元説(有力説) 2. 緊急避難の要件 (1)現在の危難 3-5-2◎「現在の危難」の要件を理解し、具体的事例に即して説明することができる。 (2)補充性 3-5-3◎「やむを得ずにした行為」の要件を理解し、具体的事例に即して説明することができる。 (3)害の均衡 3-5-4◎害の均衡の要件を理解し、具体的事例に即して説明することができる。 3.緊急避難の制限 (1)業務上の特別義務者(37条2項) *特別義務者には常に否定されるのか? (2)自招危難 3-5-5◎行為者自らが現在の危難を招致した場合における緊急避難の成否について理解し、具体的事例に即して説明することができる。 短答問題 【追加項目】 *防御的緊急避難と攻撃的緊急避難 参考条文:民法720条「(正当防衛及び緊急避難)第七百二十条 他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。ただし、被害者から不法行為をした者に対する損害賠償の請求を妨げない。/2 前項の規定は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合について準用する。」 工作物・動物の所有者の無過失責任(民法717条;民法718条参照) 講義日程 ■
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| 2016-06-07 12:23
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2016年 05月 17日
【講義項目】事実の錯誤、特に客体/方法の錯誤事例・因果関係の錯誤(補充・琵琶湖にピラニア事例)クロロホルム事件(下記事例⑦)まで議論したところで時間となった。 【レジュメ】: 第2章 犯罪の積極的成立要件 第5節 故意 (2) 1 故意の概念(前回) 2 錯誤論(今回) (1)錯誤の分類 事実の錯誤 ・具体的事実の錯誤 ・抽象的事実の錯誤 法律の錯誤 *違法阻却事由の錯誤ー>違法阻却事由のなかで後述 (2)錯誤の現象類型 ・客体の錯誤 ・方法(打撃)の錯誤 ・因果関係の錯誤 (3)事実の錯誤 ア 具体的事実の錯誤 (ア)客体の錯誤および(イ)方法の錯誤 ◎予見していた客体とは異なる客体に法益侵害が生じた錯誤事例における故意犯の成否について理解し、具体的事例に即して説明することができる。 (ウ)因果関係の錯誤 ◎因果経過について錯誤が生じた事例における故意犯の成否について理解し、具体的事例に即して説明することができる。 *早すぎた構成要件の実現 *遅すぎた構成要件の実現(ウェーバーの概括的故意) イ 抽象的事実の錯誤 ◎認識・予見した事実と発生した事実とが異なる構成要件に属する事例における故意犯の成否について理解し、具体的事例に即して説明することができる。 【事例】(*=授業で扱った事例) *①Xは夜道を一人で歩いていたBをAと人違いをして射殺した。 *②XはAを殺そうと思いBと二人で並んで歩いていたAに向けて発砲したが、 (i)弾はAに当たらずBに当たり、Bが死亡した。 (ii)AとBの両方に当たり、 a)Aは傷害を負い、Bは死亡した。 b)Bは傷害を負い、Aは死亡した。 c)AもBも死亡した。 *③Xは電話でAを脅迫しようとしたが、番号を間違えたためBにかかりAが出たと勘違いしてBを脅迫した。(山中169頁Q11-10) *④Xは、殺し屋のYにAを殺すように教唆したが、Yは人違いでBを殺害した。(山中170頁Q11-11) *⑤Xは、夫Aを殺そうと思い夕食で出すカレーの中に毒をいれておいた。Xの外出中にAが会社を早退して帰宅し、なべのカレーを自分で食べて死亡した。 *⑥XはAを溺死させようとして明石海峡大橋の上からつき落としたところAは橋脚に頭をぶつけて死亡した。 *⑦Xは、保険金を掛けていたVにクロロホルムを嗅がせて気を失わせた後、車に乗せてその車を海に転落させて事故に見せかけて殺害しようとしたが、Vはクロロホルムの作用によって既に死亡した。(山中182頁Q12-10) *⑧XはAを絞殺するつもり首を絞め、Aが動かなくなったので死んだと思い死体を隠そそうと思って穴を掘ってAを埋めたが、実はAはまだ生きており穴の中で窒息死した。(山中180頁Q12-8) *⑨XはAを殺そうと思いAに向かって発砲したが、弾はAに当たらずAの飼い犬Bに当たりBが死亡した。 ⑩Xは、覚せい剤のつもりで麻薬を輸入した。 (参考:山中173頁Q12-2②:麻薬→実は覚せい剤所持) ⑪ Xは、Aに襲われていた自分の兄Yを助けようとしてAに向かって発砲したが、弾がYに当たりYが死亡した。 (参考:山中262頁Q17-9) ⑫Xは、ふざけてバットを振り上げたAを襲いかかってきたと思い、防衛のつもりでとっさにその場にあった別のバットでAを殴り重傷を負わせた。 ⑬Xは法律で捕獲を禁止されている「タヌキ」を「ムジナ」だと思い捕獲した(山中312頁Q20-10①) ⑭Xは法律で捕獲を禁止されている「ムササビ」を「モマ」だと思い捕獲した(山中312頁Q20-10②) ⑮Xは、狩猟禁止区域であることを知らずに狩猟した(山中310頁Q20-8②) ⑯Xは、無主犬の殺害を許可した警察規則を誤解して、鑑札をつけていない犬は他人の犬であっても無主犬とみなされると思い、鑑札をつけていなかったAの飼い犬を撲殺した。(山中309頁Q20-8①) (3)法律の錯誤<ーコア第4章/第3節 違法性の意識 ◎事実の錯誤と違法性の錯誤を区別することにどのような意義があるかを理解し、具体的事例に即して説明することができる。 →私見によればそもそも両者を厳格に区別することはできず、事実の錯誤はむしろ禁止の錯誤の下位事例である(Vgl. Pawlik, Unrecht, S. 311 f.) ・(広義の)禁止の錯誤 ・・狭義の禁止の錯誤 ・・いわゆる事実の錯誤(事実について錯誤があったために禁止についても錯誤が生じた場合) ◎違法性の意識とは何か(概要説明) ◎違法性の意識を欠く場合における犯罪の成否について理解し、具体的事例に即して説明することができる。 *故意と違法性の意識は、明確に区別することができるか? **違法性(禁止)に関する過失をすべて故意としてしまってよいか? ***事実に関する無関心を過失犯として扱ってよいか?->「間接故意」(dolus indirectus)論 私見:基本的には厳格故意説が妥当、但し間接故意論による修正が必要(「修正故意説」) ■
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| 2016-05-17 14:06
| 刑法Ⅰ(総論)
2016年 05月 10日
【講義項目】不作為の因果関係(前回の補充・復習)、38条1項の意義、故意の認識対象、違法性の認識、確定故意と不確定故意、概括的故意、択一的故意、未必の故意 【質問事項】不作為における危険の現実化の判断方法 ■
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| 2016-05-10 15:03
| 刑法Ⅰ(総論)
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